モラハラを理由に離婚できる?離婚する際に知っておくべきこと

離婚問題

モラハラを理由に離婚できる?離婚する際に知っておくべきこと

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕

監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士

モラハラとは、「モラルハラスメント」の略称で、夫婦の一方が、言葉や態度で相手に対し攻撃を加え、相手の精神を追い詰めることをいいます。昨今では、DVやモラハラが離婚理由となる場合も増えており、結婚生活上、夫婦間のモラハラは重要な問題となっています。
そこで、今回は、モラハラを理由として離婚することができるのか、モラハラで離婚する場合に注意した方が良いことなどについて解説します。

モラハラを理由に離婚できるのか?

そもそも、離婚には、大きく分けて、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3種類があります。このうち、協議離婚と調停離婚は、夫婦が互いに合意をすれば、どのような理由であっても離婚をすることができます。他方で、裁判離婚の場合は、民法が定める離婚事由が認められない限り、離婚をすることができません。モラハラの場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当すると認められれば、離婚をすることができます。ただし、「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、様々な事由によって夫婦関係が破綻していると言える場合に認められるものです。そのため、モラハラも程度によっては、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当しないと判断されることもあります。

モラハラをしているのが姑の場合

原則として、姑は夫婦にとっては第三者にあたるため、姑のモラハラを理由として離婚をすることはできません。しかし、例えば、姑が夫婦の一方にモラハラを繰り返していることが明らかであるにもかかわらず、他方がそれを黙認している場合や姑のモラハラに加担している場合には、姑のモラハラに与しているものとして、「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたると判断される可能性があります。

子供がモラハラされている場合

子どもへのモラハラのみを理由として、「婚姻を継続し難い重大な事由」があると判断される可能性は低いです。もっとも、子どもへのモラハラは、子どもの安全や健全な成長に害を及ぼすおそれがあります。そのため、まずは、子どもの安全を守るべく、子どもを連れて別居をすることが大切です。また、別居が難しい場合には、児童相談所へ相談をし、子どもを一時的に保護してもらうという方法もあります。警察などの公的機関への相談をし、相談記録を残すことで、離婚に向けた証拠を残すという方法も有益です。
さらに、子どもへのモラハラを行った夫婦の一方が、離婚後の子どもの親権者になる可能性も低いといえます。裁判所は、子どもの福祉という観点から、親権者の決定を行うためです。また、実務上、子どもが10歳前後になっていれば、親権者の決定にあたって子どもの意向を確認する運用が取られています。

モラハラの慰謝料はもらえる?

夫婦の一方がモラハラを行い、夫婦関係が破綻する主な原因を作ったといえる場合には、モラハラによる慰謝料をもらえる可能性があります。ただし、あくまでも夫婦関係が破綻する程度でなくてはならないため、夫婦喧嘩の際にきつい言い方をされた、普段から多少言い方がきつい程度では、慰謝料を請求することは難しいです。

モラハラを理由に離婚する場合の進め方

先にも述べたとおり、離婚には、大きく分けて、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3種類があります。

協議離婚は、夫婦(当事者)同士で話し合いをし、離婚の合意をすることです。調停離婚は、調停委員会という第三者を挟んで話し合いをし、離婚の合意をすることです。裁判離婚は、裁判所が離婚事由の有無を判断して、離婚事由がある場合には離婚を認めるとの判断を下すことです。 このうち、モラハラを行う配偶者(以下では「モラハラ配偶者」といいます。)は、自分に非があると認めることが少ないため、協議離婚は難しいといえます。また、調停離婚も、第三者を挟むものの、最終的には夫婦の離婚に対する合意がなければ成立しないため、協議離婚と同様に離婚をすることが難しいといえます。
したがって、多くの場合は、裁判離婚になるのですが、裁判所が離婚事由(モラハラ)の有無を判断するためには、客観的な証拠が必要になります。

モラハラの証拠として有効なもの

モラハラは、精神的暴力であるため、身体的暴行と比べて客観的な証拠が残りにくいという特徴があります。
では、どのようなものがモラハラの証拠として有効といえるでしょうか。
一般的には、

  • モラハラの現場を録音録画したデータ
  • モラハラの内容が記載されたメール
  • モラハラの内容を記載した日記やメモ
  • モラハラを理由に精神科や心療内科に通院した際の通院履歴や医師の診断書
  • モラハラ現場を目撃していた第三者の証言
  • 警察などの公的機関への相談記録

などが挙げられます。

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モラハラ配偶者が離婚してくれない場合の対抗手段

先にも述べたとおり、モラハラ配偶者は、自分に非があると認めることが少ないため、離婚に応じてくれないことも少なくありません。
そこで、モラハラ配偶者が離婚に応じない場合の対抗手段を解説します。

思い切って別居する

モラハラ配偶者は、相手を精神的に支配しようとする傾向があります。また、モラハラ被害を受けた配偶者も、その支配下にあると、知らず知らずのうちに正常な判断をすることができなってしまう場合もあります。
そのため、ひとまず距離を置くためにも、思い切って別居をするという選択肢があります。

別居したいけれどお金がない場合

別居したいけれどお金がない場合には、一時的に実家に戻ることや友人などの家に身を寄せるという方法を検討してみてください。
モラハラ被害を受けた配偶者が、モラハラ配偶者よりも収入が低い場合には、別居後、モラハラ配偶者に対して婚姻費用を請求することができます。
実家や友人などの家に身を寄せている間に、婚姻費用やアルバイトなどで別居費用を貯めるという方法をとることも可能です。

別居にあたっての注意点

別居をする際は、手紙やメールなどで構わないので、モラハラ配偶者に対して別居理由を明確にしておきましょう。
また、家族や共通の友人がいる場合には、モラハラ配偶者に居場所を知られないよう、伝えておくことも大切です。

相手が下手に出ても受け入れない

別居後、モラハラ配偶者が下手に出てきたとしても、簡単に受け入れないように注意しましょう。
モラハラには、大きく分けて、蓄積期、爆発期、ハネムーン期という3つのサイクルがあります。
蓄積期とは、モラハラ配偶者が相手に対してストレスを溜めている時期です。爆発期とは、イライラやストレスが爆発して、一気にモラハラを行ってくる時期です。ハネムーン期とは、爆発期を経てストレスが解消され穏やかになる時期です。そして、この3つは循環すると考えられています。そのため、例えば、ハネムーン期にモラハラ配偶者が下手に出てきて、大丈夫かなと思い、同居を開始したとしても、サイクルによっては、またモラハラ被害を受ける可能性があります。

話し合いは第三者に介入してもらう

モラハラ配偶者は、相手を懐柔して支配する傾向にあります。そのため、モラハラ配偶者と話し合いをするためには、公平な話し合いを期待できる専門家の介入をおすすめします。

モラハラでの離婚について不安なことがあれば弁護士に依頼してみましょう

以上、モラハラについて様々な角度から解説をしてきましたが、

  • 離婚ができるモラハラの程度とはどの程度か
  • モラハラの慰謝料の相場はいくらくらいなのか
  • モラハラを証明するために有効な証拠とは何か
  • モラハラ配偶者と接することが怖い

など、ここでは解説しきれなかったことについて、不安や悩みをかかえている方も多くいると思います。
そのような場合は、夫婦間の問題に強い弁護士にぜひ一度相談してみましょう。

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
監修:弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長
保有資格
弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。