監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
刑事裁判手続きにおける起訴とは何か、起訴されるまでの手続きの流れに沿って、起訴前と起訴後で、できることは何かを以下でご説明します。
刑事事件における起訴とその種類
起訴とは、検察官が捜査の対象となった「事件」のうち、不起訴とせずに裁判所に公訴を提起することをいいます。起訴には、身柄を拘束されたまま起訴される通常の起訴、身柄を拘束されていない状態で起訴される在宅起訴があります。また、通常の公判手続きのほかに、公判手続きによらずに書面審理のみで、100万円以下の罰金等を支払うことになる略式起訴があります。
通常の起訴
検察官が、被疑者の身柄を拘束(逮捕とこれに引き続く勾留を意味します。)したまま裁判所に公訴を提起します。
在宅起訴
通常の起訴と異なり、在宅起訴は、検察官が、被疑者の身柄を拘束しないまま裁判所に公訴を提起します。在宅起訴とするかどうかは、犯罪の重大性・悪質性・逃亡のおそれ、証拠隠滅のおそれなどの事情を総合して判断されています。
略式起訴
略式起訴とは、検察官が、簡易裁判所の管轄に属する事件について、公判手続によらないで、書面審理のみで被告人に100万円以下の罰金または科料の裁判を公訴の提起と同時に裁判所に請求することをいいます。
不起訴
検察官は、公訴提起の要件を満たし証拠に基づいて有罪判決を得られる高度の見込みがある場合であっても、必ず起訴しなければならないわけではありません。犯人の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重、情状、犯罪後の情況等により訴追を必要としないときには、公訴を提起しない、すなわち、不起訴処分とすることが認められています。
起訴されたらどうなる?
以下では、検察官によって、起訴された場合について、ご説明します。
立場が変わる
事件の犯人であると疑われていた被疑者という立場から、犯罪をしたと確実な嫌疑を有する被告人という立場に変わります。
身柄の拘束が続く
被疑者として身体拘束を受けていた者は、被告人として引き続き身体拘束を受けることになります。ただ、被告人勾留では、被疑者勾留の段階では認められていなかった保釈を請求することができるようになります。
在宅起訴の場合には、被疑者段階と同じように、身体拘束を受けることなく、裁判の日を待つことになります。
生活への影響が大きくなる
起訴されて、有罪判決を受けた場合には、前科がついてしまいます。そのため、前科がつくことにより、解雇される可能性があったり、一定の職業に就くことが制限されたり、履歴書の賞罰欄への記載が求められたりするなどの社会生活への影響が生じます。
起訴までの流れ
起訴されるまでの流れ、起訴された後に何ができるのかをご説明します。
身柄事件の起訴までの流れ
検察官は、身柄送致された被疑者を受け取り、逮捕に引き続き勾留する必要があると判断した場合には、裁判官に勾留の請求をし、裁判官によって勾留がなされます。そして、被疑者勾留の期間内に、検察官が起訴するかしないかを決定します。
逮捕から判決までの流れを詳しく見る起訴・不起訴決定までの期間
司法警察職員によって逮捕された場合を想定すると、最短で、逮捕から72時間以内で、検察官が公訴を提起するかを決定します。逮捕・勾留をともなう身柄事件であれば、当初の勾留の10日間、延長を含め最長20日間で公訴されるか釈放されるかが決定します。
在宅事件の起訴までの流れ
在宅事件では、検察官が被疑者を起訴するか釈放するかの判断のための法定期間は特に定められていません。そのため、捜査が続行され、起訴されるまでに場合によっては半年かかることもあります。
起訴された場合の有罪率
99%を超える有罪率です。これは、検察官が、無実の人が訴訟負担の不利益を被ることを避けるため、的確な証拠によって有罪判決が得られる高度の見込みのある場合に限って起訴するという運用になっているからです。
起訴後の勾留と保釈について
①勾留の理由または必要がなくなった場合、②勾留による拘禁が不当に長くなったときは勾留が取り消されることがあります。
また、勾留の執行を停止して、被告人の身体拘束を解く制度に「保釈」制度があります。保釈は、逃亡や罪証隠滅のおそれの程度、被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上または防御の準備上の不利益の程度その他の事情が考慮された結果、身元引受人が存在すること、一定額の保釈金を納付すること等を条件に勾留の執行が停止され、身体拘束が解かれます。
起訴されたくない場合は?
検察官が、起訴するかまたは不起訴処分とするかを決定します。起訴されると前科がつく可能性があり、前科がつかないようにするために、「罪とならず」、「嫌疑不十分」「起訴猶予」等の不起訴処分を獲得することが重要です。
不起訴処分の獲得
痴漢事件や窃盗事件のような被害者がいる犯罪については、被害者との示談交渉が重要になってきます。被害者との間で示談が成立していることで、不起訴処分になる可能性が高くなるからです。
起訴前・起訴後に弁護士ができること
起訴前にできること
起訴前には、被害者との示談交渉を行うことで不起訴処分を目指すことができます。また、被疑者が無罪を主張している場合には、被疑者の供述の裏付け証拠の収集活動、それらの証拠を基に検察官に嫌疑不十分を理由として不起訴処分を求める意見書を提出することなどができます。
起訴されるまでの初動のタイミングでどれだけ弁護活動ができたのかによって、結果は変わったものになりかねません。
起訴後にできること
起訴後でも、起訴前に実現できなかった被害者との示談交渉を行うことで、示談が成立すれば、情状面で量刑に有利に働かせることができます。 また、執行猶予付きの判決を獲得するための弁護活動をすることができます。
起訴に関するよくある質問
在宅起訴と略式起訴の違いがよくわかりません。
在宅起訴は、身柄が拘束されたままの状態で検察官によって起訴されることを言います。略式起訴は、身柄の拘束とは関係なく、略式手続という簡易な手続きで検察官が起訴するものです。そのため、在宅起訴であり、かつ、略式起訴ということもあり得ます。
被害者と示談出来た場合、起訴を取り消してもらうことはできますか?
起訴された後での被害者との示談が成立した場合には、起訴の取り消し事由になりませんが、量刑で考慮されることになります。
起訴と逮捕は何が違いますか?
起訴は、検察官が、裁判所に提起するものであり、逮捕とは、犯罪の証拠隠滅及び被疑者の逃亡を防ぐための身柄拘束をいい、全くの別物です。
起訴された後、裁判までの期間はどれ位かかるのですか?
起訴後、裁判までの期間は、事件によって異なります。即決裁判では、起訴後14日以内に裁判が行われ、当日中に判決が言い渡されますが、通常の裁判では、約1ヶ月程度で、日程が決まります。
ご家族が起訴されるかもしれない場合、一刻も早く弁護士へご連絡ください
逮捕された場合には、弁護士に一刻も早くご相談ください。そのときそのときにできる弁護活動がありますし、不起訴処分にできる可能性があるからです。前科がつかないようにするためにも、早めのご相談をお勧めします。
家屋を相続するにあたっては、相続登記の手続きが必要になります。相続登記をしなかった場合には、相続登記していない不動産を売却できないなど多くの問題が発生する可能性があります。相続登記について、現在は義務ではありませんが、法改正によって義務化されることになっています。
それでは、以下、相続登記について解説していきます。
家屋の相続手続きには相続登記が必要
相続によって家屋を取得した場合、家屋が自己のものになったということを第三者に明らかにする必要があります。このことによって、家屋を売却するなど有効活用することができるようになるので、相続登記は、なるべく速やかに行った方が良いといえます。
相続登記をするとできるようになること
登記によって第三者に、家屋の所有者を示すことができるので、家屋の処分を行うことができるようになります。具体的には、家屋の売却したり、家屋を貸したり、家屋に担保権を設定したりするなどのことができるようになります。
相続登記の手続きに期限はある?
相続登記の手続きに期限はありません。
ただし、法改正後は、相続登記をすることが義務となり、相続登記の手続きについての期限も設けられることになっています。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
家屋の相続手続きの流れ
まず、遺産分割協議をすることになります。遺産分割協議によって、家屋を取得する者が決定した後、相続登記のために必要な書類を集め、相続登記の申請をします。
相続登記の必要書類
相続登記の申請をする際に必要となる書類には以下のものが挙げられます。
基本的に必要なもの
- 家屋の登記簿謄本
入手先は法務局です。 - 被相続人の固定資産評価証明書
入手先は市町村の税務課です。 - 被相続人の戸籍謄本等
相続人を把握するために、被相続人の出生から死亡までのすべてのものが必要になります。入手先は市町村の戸籍課です。 - 被相続人の住民票除票
入手先は市町村の戸籍課です。 - 相続人の戸籍
入手先は市町村の戸籍課です。
遺言書がない場合の追加書類
遺言書がない場合に、遺産分割協議によって、家屋を取得するものを決定したときには、遺産分割協議書が必要になります。
遺産分割協議書には、法定相続人が実印で押印する必要があるので、法定相続人の印鑑登録証明書も必要です。
遺言書があり、遺贈がない場合の追加書類
家屋を特定の相続人に取得させるというような旨の記載が遺言書にあるような場合には、当該遺言書が必要になります。
遺言書があり、遺贈がある場合の追加書類
このような場合には、遺言執行者が相続登記の申請を行うことになります。したがって遺言執行者の指定についての書類が必要になります。
書類の郵送先
申請の際に必要な書類は、法務局の窓口に持参するほか、法務局に郵送することもできます。
何を相続するのかによって相続登記の範囲が異なる
家屋といっても、土地、建物、マンション等様々なものがあり、不動産の種類によって注意すべき点は異なります
相続する家屋が戸建ての場合
被相続人が戸建てに居住していた場合、まず土地とその上に建つ建物の所有者を確認する必要があります。建物については所有していても、土地については所有しておらず、借地権を有しているだけであったということがあり得ます。
土地、建物、ともに所有していたという場合には、それぞれについて相続登記が必要です。
分譲マンションを相続する場合
分譲マンションの場合にも、土地を建物とは別に考える必要があります。
敷地権の相続登記には注意が必要で、建物が1つであったとしても、複数の土地にまたがっていることがあるので、複数の敷地権がある場合には、すべてについて相続登記を行うことが必要です。
手続きせず空き家として放置したらどうなる?
家屋を相続したものの、相続登記手続きをせずに空き家にしてしまった場合、倒壊のおそれがある状態等になると、特定空き家に指定され、固定資産税の軽減措置が適用されず、相続税の税額が高くなるおそれがあります。
また、空き家の放置により、空き家が倒壊したりして、近隣住民に損害が発生すれば、損害賠償責任を負うリスクもあります。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
家屋の相続は揉めやすいので弁護士への相談をお勧めします
家屋の相続については、遺産分割協議書の作成、登記、税金等様々な問題がかかわってくるため、当事者本人だけでは、適切に対応することが難しい場合も多々あります。是非弁護士にご相談ください。
高齢化が急速に進む現代日本において、老々介護という言葉が身近になっていると日々感じます。そのような時代で、介護が離婚の原因となってしまう事例は、決して珍しいことではありません。義両親、子ども、配偶者等介護の対象のみならず、周りの協力、理解の有無、経済的支援等介護の態様は様々であり、介護対する想いも人それぞれでしょう。いずれにせよ、介護が身体的・精神的に負担が大きいものであることには変わりありません。
この記事では、介護が原因となる離婚とはどのようなものか、介護離婚における慰謝料等の離婚条件について、離婚問題を多く取り扱う弁護士が解説します。ぜひ、最後までご覧ください。
介護離婚とは
介護離婚とは、介護が原因となって離婚することをいいます。
代表的な例として、義理の両親の介護を任され、身体的・精神的な負担により、配偶者や義親との間にすれ違いが生じ、離婚に至ってしまうケースが挙げられます。
それ以外にも、配偶者の介護、障がいを持つ子どもの介護によって離婚を考えるケースもあります。ケースごとに詳細をご紹介いたします。
義両親の介護を理由に離婚するケース
介護離婚のうち大多数を占めているのは、妻が夫の両親の介護をすることとなり、身体的・精神的負担から耐えられず、離婚に至ってしまうケースでしょう。時代は変わったとはいえ、「夫の両親の介護をするのは嫁の務め」という価値観は未だ根強いです。
介護の対象が、義両親といえども、元々は血のつながっていない他人ですから、それらの負担がより大きいといえます。さらに追い打ちをかけるように、義両親と不仲であることや、夫から感謝の言葉もないこと、介護方針の対立等事情が加わることも決して珍しいことではありません。そのような状況になってしまえば、離婚という選択をしたとしても、なんら不思議ではないでしょう。
介護した義両親の遺産は離婚時にもらえるのか
原則として、介護した義両親の遺産は離婚時にもらうことはできません。なぜなら、配偶者の両親が有する財産の相続権は、被相続人の配偶者やその実子にあるからです。配偶者の両親から遺産をもらうためには、生前に、介護の報酬金として生前贈与を受ける、遺言で遺贈をしてもらう等の手続きが必要でした。
しかし、相続法改正により、「特別寄与料」というものを請求できるようになりました。「特別寄与料」とは、被相続人を無償で介護していた場合、その分を寄与分として請求できるというものです(民法1050条、2019年7月施行)。
義両親の介護をしなければならないのは誰?
本来、扶養・介護する義務のある者は、直系血族(親、祖父母、子ども、孫など)であると、民法上定められています(民法877条1項)。つまり、義両親を扶養・介護する義務を有するのは実子であり、そもそもその実子の配偶者は義務者ではありません。
一方で、夫婦はお互いに扶助義務を負うこと、同居の親族は扶助義務を負うことも民法上定められています(民法752条、730条)。
このような法律上の規定から、本来的には親の介護は実子である者が中心となって行うべきであり、その配偶者は義両親に対して一定の責任を負うということに過ぎないといえます。
しかし、家父長制の名残として「長男の嫁が夫の両親を介護する」という風潮はいまだ根深く残っているのが現状です。それは女性の社会進出が活発となり、共働きの家庭が増加している現代でも変わっていません。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
実親の介護を理由に離婚するケース
介護離婚の中には、実親の介護を理由とするケースも存在します。
上述のとおり、実子が実親の介護をすることは法律上も当然の前提です。しかし、問題は介護に理解のない配偶者によるモラハラ等です。介護に専念していることや、介護費等の経済的負担が増加することによって、配偶者から心無い言葉を浴びせられることも少なくありません。
ただでさえ介護によって苦労を感じられている状態で、そのような態度をとってくる配偶者から解放されたいと思うのは無理もないことです。
夫(妻)の介護を理由に離婚するケース
介護離婚の中には夫や妻という配偶者に対する介護が理由となってしまうケースも当然存在します。配偶者に対する介護もまた、他のケースと同様に想像を絶する負担があります。
長年連れ添い、特段不仲でもなければ、万が一配偶者が要介護状態になったとしても、乗り越えることができるかもしれませんが、夫婦仲が良好でなかった場合には、介護の負担によって離婚という選択肢が頭をよぎることも当然考えられます。たとえ夫婦仲が良好であったとしても、この先の人生、介護を続けていかなければならないというネガティブな感情を持ってしまうこともごく自然なことです。
介護を放棄した場合の財産分与はどうなる?
そもそも「財産分与」とは、婚姻後の夫婦が共同で築き上げた財産を、離婚をする際に、原則的に2分の1ずつ分けることをいいます。この点、配偶者の介護を放棄したとしても、それ自体は財産の取り分に直接的には影響しません。なぜなら、介護を放棄したとしても、婚姻期間に共同の財産を築いてきたことに変わりないといえるからです。
一般的に、財産分与の割合が修正されるのは、財産形成の貢献度が半々とはいえない場合や、夫婦の一方の特有財産が多く含まれる場合等です。原則として財産分与は2分の1であることは念頭においておきましょう。
民法上、離婚の事由として「回復の見込みのない重度の精神病」や「婚姻を継続しがたい重大な事由」が定められていますが、前者に認知症は該当しないという裁判例があります。
そのため、配偶者の認知症を理由に離婚したい場合には、後者を理由に訴えるのが多数です。後者の該当性が争われた事例で「認知症により夫婦の扶助義務を果たせていない」として離婚が認められた裁判例もあります。
配偶者の認知症が軽度である場合で、協議や調停のなかで双方合意することができれば、裁判を経ることなく離婚することができます。他方で、配偶者の認知症が重度である場合(=精神上の障がいにより事理を弁識する能力を欠く状況にある又はその能力が著しく不十分である場合)には、その者に成年後見人(=判断能力が不十分な配偶者の代わりに法律行為等を行う者)を選定し、成年後見人を相手方として訴訟を起こすことになります。
このような各手続等で少しでも不安がある場合には、一度弁護士に相談することをおすすめいたします。
障がい児の介護を理由に離婚するケース
子どもに障がいがあることを理由として離婚をするケースもあります。自身の子であったとしても、この先の人生、ずっと介護をし続けることに精神的・身体的な限界を感じることに加え、介護に消極的な配偶者に怒りや呆れを覚え、離婚を求めることが考えられます。
この場合、離婚をすることについて双方が合意をしていなければ、介護を直接の理由とする離婚することは難しいといえます。なぜなら、民法上、離婚の事由として規定されているのはどれも夫婦間の問題であり、子どもに関する明確な規定は存在しないからです。
もっとも、一方の配偶者が子どもの介護をしていることを理由に、もう一方の配偶者が不倫、DV・モラハラをした場合等には、それを理由として離婚できる場合があります。
養育費は増額される?
結論として、子どもに障がいがある場合であっても、通常の養育費と変わりません。
なぜなら、養育費は養育費算定表というものを用いて、双方の収入に照らし合わせ算定することが一般的であり、その算定に当たって子どもの障がいの有無は考慮されず、標準的な医療費や教育費等は織り込み済みであるからです。
もっとも、交渉や調停の中で、障がいを理由に養育費の増額を請求すること自体は可能であり、それに相手方が同意すれば、通常よりも多い養育費を得ることができます。
親権はどちらになる?
夫婦間に子どもがいる場合の離婚には、親権の問題を避けては通れません。
一般的に母親が親権者となるケースが多いといえますが、本来、親権者を定める際には、子どもの年齢、子どもへの接し方、経済力、子どもの世話を補助してくれる親族の有無、子の環境の変化の有無、障がいの有無・程度等多くの要素が考慮されます。
これらの考慮要素を念頭に、どちらが親権者となることが「子どもにとって幸せか」について親同士で協議することをお勧めいたします。
介護離婚のときに慰謝料はもらえるのか
介護を直接の理由とした離婚の場合、慰謝料を請求することは難しいといえます。
しかし、介護に関連して、暴力・モラハラ、不貞等があった場合には、慰謝料を請求できることがあります。例として、要介護者や配偶者からのDV・モラハラ、一方の配偶者が介護中にもう一方の配偶者が外で不倫をしている場合等が挙げられます。
これら理由とした慰謝料請求には、各事実を証明する証拠が必要となります。特にモラハラの事案では、証拠が乏しく、双方の言い分が食い違うことが往々にしてあります。
そのため、どのような事例においても、証拠をご自身で収集しておくことが、慰謝料請求をするにあたって重要であるといえます。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
介護離婚を考えたら弁護士にご相談ください
少子高齢化が進むにつれて、介護離婚も年々増加傾向にあります。
特に、夫の両親(義両親)の介護によって身体的にも精神的にも疲弊し、「誰に相談すればよいのか」、「離婚したとして、その後の生活はどうすればよいのか」等と一人で抱え込まれている方も多いと思われます。皆様の大切な人生です。介護から解放されて自由な人生を生きることを望むことは何も悪いことではありません。
ご自身の一度きりの人生を介護で終わらせたくないとお悩みの方は、ぜひ一度、弁護士にご相談することをお勧めいたします。
この点、弁護士法人ALG埼玉法律事務所の弁護士は、介護離婚をはじめ、多くの離婚事件を取り扱っている実績がございます。
我々は皆様の味方です。皆様の新たな人生への第一歩を全力でサポートいたします。
交通事故には、車同士の事故や車対歩行者の事故など、様々な類型があります。その中でも、バイク事故は、大けがにつながることが多いです。鉄のかたまりである車側とヘルメット以外は生身のバイク側とで、どちらが大きな損害が生じるかについては想像に難くないでしょう。
以下、バイク事故について詳しく記載していきます。
バイクが被害者の交通事故慰謝料は車同士と比べて高額になりやすい
バイク側が被害者の事故は、大けがにつながりやすいため慰謝料が高くなります。交通事故の場合の慰謝料には、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料とがあります。大けがをすればその分、入通院期間は伸びるため入通院慰謝料は高額になります。また、大けがの場合には認められる後遺障害の等級も上がりやすくなり、後遺障害慰謝料も高額になる傾向があります。
バイクは、鉄のかたまりに身を守られている車と異なり、ヘルメット以外は体がむき出しの状態になります。また、タイヤが2つのため、車と比べて不安定でもあります。その上、バイクはバイク自体もスピードが出やすいため、交通事故を起こした際、バイクに乗っている人の衝撃も大きいと言えます。そのため、バイク事故の怪我は大けがにつながりやすいのです。
基準による慰謝料の差について
実務上、慰謝料には3つの基準があります。
自賠責基準:被害者に対し、最低限の補償を目的とする自動車損害賠償責任保険に基づく基準です。
任意保険基準:保険会社が独自に設定している非公開の基準で、自賠責基準よりは少々高額です。
弁護士基準:裁判所で交通事故の賠償額を争った場合に認められるであろう額を前提として、弁護士が交渉の際に用いる基準です。
上記2つの基準よりも高額になります。
バイク事故は、上述したとおり、大けがにつながりやすいため、参考にする基準によっては、大きく慰謝料の額に差が出ます。
まずは交通事故事件専属のスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
反面、バイクが加害者だった場合は慰謝料を回収しきれない場合も
バイクと歩行者との交通事故の場合には、バイク側が加害者となることが通常であり、歩行者からバイク側に慰謝料等を請求されることになります。
バイク側は、車とは異なり、任意保険に未加入のまま、運転をしていることも多く、その場合には、自賠責保険から受けられる補償を超える部分は加害者本人(バイク側)に請求することになります。
自賠責保険から受けられる補償額は120万円が上限となりますので、加害者から支払いを受けられないと歩行者側は泣き寝入りということになりかねません。
バイク特有の過失割合と慰謝料への影響
バイクのすり抜けによる事故が過失割合に影響するケース
バイクは、四輪の車と異なり、比較的自由に運転することができます。そのため、バイクは、車の横をすり抜けたり、車両間をジグザグに走行することも可能です。車の左側からのすり抜けや黄色い車線をまたぐような追い越しは、道路交通法違反となります。このような行為は、損害賠償額を定めるにあたって負担部分である過失割合に大きく影響します。そのため、バイク側に2~3割の過失がつくことも多いです。
ドア開放車にぶつかった場合
バイクを走行していたところ、前方に停車している車のドアがいきなり開き、そのドアにバイクが衝突した場合、基本的な過失割合は「バイク側:車側=1:9」です。具体的な事故の状況によって、過失割合が修正されていくことになります。
ドアが開くことがある程度予想されるような場合、例えばタクシーの乗り降りや駅のロータリーなどの場合には、バイク側に過失が1割程度加算されることも多いです。
過失があると受け取れる慰謝料が減る
バイク事故に限らず、自己の過失が大きくなれば受け取れる賠償額は低くなります。過失割合がどのように受け取れる損害額に差が出るかをバイクのみが破損した場合の例でみてみましょう。
- 停車していたバイクに後ろから車が追突した場合
過失割合 バイク側:車側=0:10
損害金 300万円
受け取れる損害賠償金 300万円 - 直進していたバイクに左折しようとした車に巻き込まれた場合
過失割合 バイク側:車側=2:8
損害金 300万円
受け取れる損害賠償金 240万円
過失が2割で損害金が300万円の例でみてみましたが、60万円も減額されてしまいます。
弁護士の介入によってバイク事故の慰謝料を増額できた事例
ここで、埼玉法律事務所で解決した事例を一つ紹介します。
ご紹介する事案は、バイクを運転していたご依頼者様と進路変更をした相手方車両との間で起きた交通事故に関するものです。
ご依頼者様は、治療終了後、併合14級の後遺障害等級認定を受け、相手方保険会社とご自身で損害額について交渉をしていました。しかし、相手方保険会社の提示額は低く、不満を感じたため、弊所に相談に来られました。
相手方保険会社の提示額は以下のとおりでした。
- 休業損害:約25万円
- 通院慰謝料:約110万円
- 逸失利益:約30万円等
- 計:約190万円
ご依頼者様の治療が1年以上にわたっており、相手方保険会社は長期にわたる治療の必要性を争い、休業損害と通院慰謝料について増額を認めませんでした。
そこで、弊所弁護士は、当該事案の特殊性などの観点から、相手方保険会社と粘り強く交渉しました。
その結果、最終的な損害額については以下のとおりになりました。
- 休業損害:約90万円(65万円増額)
- 通院慰謝料:約160万円(50万円増額)
- 逸失利益:約80万円(50万円増額)
- 計:約350万円(160万円増額)
相手方保険会社の当初の提示額より160万円も増額した損害額において示談をすることに成功しています。
まずは交通事故事件専属のスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
バイク事故の慰謝料は弁護士にご相談ください
バイクは体がむき出しであることに加え、2輪であることから車との事故の際には、交通弱者になります。
このことから、事故にあうと大きなけがを負うことが多いと言えます。事故にあった被害者であり、けがに苦しんでいるにも関わらず、相手方保険会社からは低い提示額を提示されるなどして、その精神的な負担は計り知れないものと言えます。
大けがにつながりやすいバイク事故は、その損害額も大きくなりやすく、任意保険基準や自賠責基準では、弁護士基準と比べて大きく損をすることになりかねません。
バイク事故の正当な慰謝料を獲得するためにも、ぜひ弊所までご相談ください。
家族が逮捕されたと聞いてあわてて警察署に向かったのに、家族に会わせてもらえない――そのような事態が生じる理由の一つが「接見禁止」です。
接見禁止とはいったい何なのでしょうか。また、接見禁止にはどのように対応したらよいのでしょうか。
本コラムでは、接見禁止について解説しています。接見禁止に関してお困りの方は、ぜひ本コラムをご覧ください。
接見禁止とは?
罪を犯したと疑われている方(被疑者)は、捜査上必要がある場合に逮捕や勾留をされ、警察署に留置されることがあります。また、刑事裁判を受けている方(被告人)も勾留される場合があります。そのように留置されている被疑者や被告人と会うことを「接見」や「面会」といいます。
接見や面会は、原則的には自由に行えます。しかし、弁護士以外の方が被疑者や被告人と会うと、捜査等が適切に行えない場合があります。そこで、弁護士以外との接見や面会を禁止されることがあり、これを「接見禁止」と呼びます。
接見禁止となるのはなぜか
接見禁止は、被疑者や被告人に逃亡のおそれがある場合、または証拠隠滅のおそれがある場合に、裁判所の判断によってなされます(刑事訴訟法第81条)。具体的には、本人や共犯者が罪を犯したことを否認していたり、暴力団が関与している組織的犯罪であったりすると、接見を通じて証拠隠滅等の依頼がされてしまう可能性があります。そのため、そのようなケースでは接見禁止が認められる可能性が高いです。
接見禁止の期間
接見禁止の期間について、法律上の規定はなく、明確な基準があるわけではありません。もっとも、検察による起訴前は、捜査機関が証拠収集の途中であるため、接見禁止がなされることが一般的です。
他方、起訴後は、捜査機関が既に必要な証拠の収集を完了していますから、証拠隠滅のおそれも小さくなっています。そのため、共犯者の捜査が必要な場合等でなければ、接見禁止が解除されることが多いです。
接見禁止で制限されること
弁護士以外との面会禁止
接見禁止となった場合は、弁護士以外とは接見や面会ができなくなります。被疑者や被告人の勤務先の関係者や友人だけでなく、被疑者や被告人の家族であっても接見を実施することはできません。
手紙のやり取りの禁止
接見禁止がされると、直接接見をすることだけでなく、手紙のやりとりも禁止されます。被疑者や被告人に伝えたいことがある場合は、接見禁止の状態でも被疑者や被告人と接見を行うことができる弁護士に伝言してもらうことになります。
生活必需品以外の差し入れ禁止
接見禁止の状態では、手紙だけでなく、生活必需品(現金や衣服など)以外の差し入れができない場合があります。差し入れしたい物について差し入れが認め得られるか不安な場合には、事前に留置施設に確認をしておきましょう。
宅下げの禁止
差し入れとは反対に、被疑者や被告人から物品を受け取ることを「宅下げ」といいます。宅下げも、証拠物品の所在を示すことなどによって証拠隠滅を招くおそれがあるため、接見禁止がなされていると基本的に行えません。
接見禁止でも弁護士は接見可能
被疑者や被告人が取調べや裁判に適切に対応するためには、弁護士と接見する機会を持つことがとても重要です。そのため、弁護士と被疑者や被告人とは自由に接見が行えることとされています(接見交通権、刑事訴訟法第39条第1項、憲法34条)。
弁護士以外では接見が行えない逮捕から72時間以内でも、弁護士であれば接見が行えます。また、以下のような弁護士以外の方が受ける制限も、弁護士による接見であれば受けません。
時間制限、回数制限なく面会できる
留置施設の設備の関係で、弁護士以外の接見は、接見の時間帯、1日の接見回数や接見1回あたりの時間が制限されているケースが多いです。しかし、弁護士による接見であれば、それらの制限を受けることはありません。土日や夜間であっても接見を実施でき、1日の間に複数回接見することも可能です。
警察官の立ち合いはない
弁護士以外の接見には警察官が立ち会いますが、弁護士による接見の場合は警察官が立ち会いません。弁護士による接見であれば、捜査機関に知られたくない事柄であっても気兼ねなく話すことができます。
回数制限なく差し入れができる
弁護士以外の方からの差し入れは回数が制限され、被疑者や被告人の方が必要だと思った物が翌日にならないと差し入れられないことがあります。弁護士からの差し入れであれば、そのような回数制限は受けません。
接見禁止を解除する方法
準抗告・抗告
裁判所が行う接見禁止処分について、取消しや変更を請求するための方法として、準抗告(起訴後は抗告)という手続が規定されています(刑事訴訟法第429条第1項第2号)。準抗告または抗告では、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを、具体的な事実関係を踏まえて主張することになります。準抗告または抗告が認められると、接見禁止処分は解除されます。
接見禁止処分の一部解除申し立て
被疑者や被告人の家族との関係でも接見禁止がなされている場合、一部解除の申し立てを行うことも考えられます。裁判官が、弁護士以外のすべての方との接見は認められないものの、家族との関係では接見を認めるべきであると考えれば、接見禁止の一部解除がなされることになります。
勾留理由開示請求
勾留理由開示は、勾留の理由について、公開の法廷において開示する手続です(刑事訴訟法第第82条から第86条)。勾留理由開示では、裁判官から勾留理由の告知が行われた後、検察官、被疑者・被告人、弁護士、勾留理由開示を請求した方(被疑者・被告人や弁護士以外の場合)は、法廷で裁判官に意見を述べることができます。
直接被疑者や被告人と家族等が話すことはできませんが、公開の法廷で行われるため、お互いの状況を確認することができます。
接見禁止になっても弁護士なら被疑者との面会や接見禁止解除の働きかけができます。
接見禁止がなされていると、直接の接見が行えないため、被疑者や被告人の家族では本人の状況が分からず、本人の方では家族や職場の状況が分からないという状況になりやすいです。逮捕や勾留といった非日常的な状態に置かれた中でお互いの状況が分からないことは、心身ともに大きなストレスとなります。
弁護士であれば、本人と家族との橋渡しになってお互いの状況を共有することが可能です。また、接見禁止の解消に向けて、法的な知識を踏まえた適切な提案が行えます。
接見禁止でお困りの際は、まずは一度弁護士にご相談ください。
弁護人は、起訴前の段階においては、ほとんど情報を持っていないことが多く、接見において身体拘束を受けている方から事情を聴取することは、貴重な情報収集手段の機会となります。また、身体拘束を受けている方に取調べ対応について助言を行うことは、有利な処分を獲得するため、起訴後の公判の準備をするためにも不可欠なものとなります。さらに、接見は、身体拘束を受けている方と外部とのつながりを維持するためにも重要な役割を担っているといえます。
そこで、今回は、接見の重要性、接見の具体的な内容について解説をします。
接見について
接見交通権とは
接見交通権とは、身体拘束を受けている方が、立会人(警察官など)なくして弁護人と面会ができる権利のことをいいます。
一般面会(家族や友人が面会をすること)と異なり、立会人がいないことから、接見で弁護人に話した内容は、基本的に外部に漏れることはありません。そのため、弁護人と接見できる権利のことを、秘密交通権ともいいます。
なぜ接見交通権が必要か?
上記のとおり、接見は、情報収集手段・有利な処分の獲得・公判の準備・外部とのつながりという観点から、非常に重要なものであるといえます。
とりわけ、身体拘束を受けている方からすると、通信機器を使用して家族や友人に連絡を取ったり、学校や職場に連絡をすることもできず、精神的にも大きな苦痛を受けることになります。このような精神的苦痛を受けると、身体拘束から免れるために、虚偽の自白をしてしまうこと(やっていないこともやったと認めてしまうこと)にもつながりかねません。
そのため、弁護人と接見し、取調べ対応の助言を受けたり、外部とのつながりを維持することは、非常に重要であるといえます。
逮捕直後の接見についての重要性
捜査機関は、原則として、逮捕直後72時間は、弁護人または弁護人となろうとする者以外の接見を認めません。これは、逮捕直後は、捜査機関も証拠収集が不十分であることが多いため、家族や友人などを通じて証拠を隠滅されることを防ぐためであると考えられています。
他方で、初回接見(逮捕直後の接見)は、身体拘束を受けている方にとって、精神的な安定、取調べ対応の助言、外部とのつながりを確保するためにも非常に重要な機会であるといえます。
逮捕直後の動きで重要なポイント
上記のとおり、逮捕直後72時間は、家族や友人と面会をすることができません。
家族や友人にも会えず、精神的に不安定な状態になると、虚偽の自白をしてしまう危険性もあります。
しかしながら、自白は、古くから「証拠の女王」と呼ばれており、他の証拠に比べ証拠価値及び信用性が非常に高いと言われています。
そうすると、虚偽であっても、自白をしてしまうと、捜査機関に重要な証拠を握られることになり、身体拘束を受けている方にとって不利益な処分が下されることになりかねません。
そのため、初回接見において、弁護人から助言を受けることは、虚偽の自白を避けるためにも特に重要といえます。
逮捕されたら早期に動くことが重要です!弁護士へご相談下さい
このように、身体拘束を受けている方は、逮捕され身体拘束をされることにより、多大なる精神的苦痛を受けることになります。
そのような状況を少しでも緩和するためにも、逮捕されたら早期に動くことが重要です。
そのため、例えば自分の家族や友人が逮捕された場合には、ぜひ一度弁護士に相談されることをおすすめします。
接見禁止・接見指定とは
接見禁止とは、弁護人又は弁護人となろうとする者以外と、身体拘束を受けている方との面会が禁止されることをいいます。
また、接見指定とは、捜査機関が、捜査のために必要があるときに、弁護人又は弁護人となろうとする者と身体拘束を受けている方との接見の日時などを指定(制限)することをいいます。
一般面会について
一般面会とは、立会人の下、身体拘束を受けている方とその家族や友人が面会を行うことをいいます。
リアルな刑事ドラマを想像してもらうと、接見室の後ろでメモを取っている警察官がいると思います。
このように一般面会は、弁護人との接見と異なる点が多くあります。
接見との違い
上記のとおり、一般面会と弁護人との接見は、立会人の有無という点で大きな違いがあります。
また、弁護人との接見には、基本的に時間制限はありませんが、一般面会の場合は、1回の面会につき15分から20分程度の時間制限があります。
さらに、一般面会の場合は、1日に1回しか面会ができず、面会できる人数が限られるなど、様々な制約があります。
差し入れがしたい場合
家族から何か差し入れを行いたい場合、留置所の窓口に直接持ち込む方法をとるのが一般的です。
差し入れができるものとしては、衣類、本、手紙、写真、現金などが挙げられます。
他方で、差し入れができないものとしては、食べ物、タバコなどの嗜好品、ゲームなどの娯楽用品が挙げられます。
弁護士ができること
逮捕直後の接見
上記のとおり、逮捕直後から身体拘束を受けている方と接見をすることができるのは、弁護人又は弁護人となろうとする者だけになります。
弁護人は時間制限や回数制限を受けることなく、身体拘束を受けている方と、立会人なく接見することができます。
接見禁止を受けた場合の解除
接見禁止とは、弁護人又は弁護人となろうとする者以外と、身体拘束を受けている方との面会が禁止されることをいいます。そのため、裁判所から接見禁止処分が下されると、家族や友人は面会を行うことができません。
接見禁止を解除するためには、接見禁止処分に対する準抗告の申立て、接見禁止処分の一部解除の申立てなどの方法があります。
精神的なサポート
逮捕直後の接見や、接見禁止処分が下された場合、弁護人又は弁護人となろうとする者以外は接見を行うことができません。
そのような場合、弁護人が身体拘束を受けている方と接見を行うことにより、上記のとおり、精神的なサポートを行うことができます。
社会生活への影響緩和
上記のとおり、逮捕をされると、外部への連絡が一切できなくなります。
例えば、会社に勤められている方は、無断で会社を休むことになり、上司や同僚に心配をかけることにもなりかねません。
そのようなとき、弁護人が身体拘束を受けている方から依頼を受け、会社に連絡し、事情を説明することにより、会社への影響を緩和することもできます。
弁護士がご家族との懸け橋となりサポート致します
また、突然連絡が途絶えた場合、身体拘束を受けている方のご家族に対しても心配をかけることにもなりかねません。
このような場合も、弁護人であれば、ご家族と身体拘束を受けている方との懸け橋となり、ご家族の不安を緩和できるようサポートすることも可能です。
接見に関するよくある質問
友人が勾留されたのですが、家族ではなくても接見・面会は可能ですか?
家族でなくても面会することは可能です。
ただし、上記のとおり、接見禁止処分が下されている場合には、面会をすることができません。
差し入れと併せて手紙を渡したいのですが。
手紙を差し入れることは可能です。
ただし、手紙は、内容に問題(証拠隠滅のおそれ)がないかなど、事前にチェックをされた上で、身体拘束を受けている方に渡されることになります。
勾留が決定したら面会に行きたいと思うのですが。
勾留決定がされた場合も、身体拘束を受けている方は、一般的には警察署内で留置されることになります。
そのため、面会を希望する場合は、留置されている警察署に問い合わせをした上で、面会をすることが、最もスムーズな方法といえるでしょう。
接見・面会の時間はどの程度なのでしょうか?
上記のとおり、一般面会の場合、面会時間は15分から20分程度が一般的です。
他方で、弁護人の場合には、時間制限なく接見を行うことができます。
弁護士への依頼で早期解決できる可能性があります
冒頭にもあるとおり、接見は、情報収集手段・有利な処分の獲得・公判の準備・外部とのつながりという観点から、非常に重要なものであるといえます。
また、弁護士でなければ、このような対応をとることもできません。
逮捕直後の早期の段階で、弁護士に依頼することで、身体拘束を受けている方はもちろんのこと、そのご家族や友人、会社の方にとっても、ご不安を緩和させることができます。
そのため、ご家族や友人が逮捕されてしまった場合には、ぜひ一度、弁護士に相談されることをおすすめします。
被相続人の遺言が発見されたが、遺言作成時には被相続人は認知症等の精神上の障害により有効な遺言を残せないはずであった場合などには、遺言の効力を争う必要があります。
遺言が無効であることを主張するための法的手段として遺言無効確認訴訟というものがあります。
遺言無効確認訴訟(遺言無効確認の訴え)とは
遺言無効確認訴訟とは文字通り、裁判所に対して、遺言が無効であることの確認を求める訴訟のことをいいます。遺言が無効であることを確認しなければ、基本的には遺言書の内容の内容に沿って遺産分割がなされてしまいます。そこで、遺言が無効であるときには、遺言無効訴訟を提起する必要があります。
遺言無効確認訴訟にかかる期間
訴訟を提起する前に医療記録等の収集が必要になることが多いので、その準備だけで数カ月かかります。
訴訟を提起した後も、審理期間が1年を超えることも珍しくありません。
比較的多くの時間を要する訴訟類型といえます。
遺言無効確認訴訟の時効
遺言無効確認訴訟には時効がありません。
ただし、遺言の作成から期間が経過すれば、証拠も散逸し、立証が困難になっていきますから、なるべくはやく訴訟を提起することが望ましいといえます。
また、遺留分侵害額請求の時効は相続が開始したこと及び遺留分を侵害する遺言や贈与等があったことを知ったときから1年です。遺言が無効であることを信じ遺留分減殺額請求権を行使しなかったことが相当であるとし得る特段の事情がない場合には遺留分減殺額請求権についての時効は進行してしまいますから、注意が必要です。
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遺言無効確認訴訟の準備~訴訟終了までの流れ
遺言無効確認事件は家事に関する事件であり家事調停の対象ですから、訴訟を提起する前に調停手続きを経ている必要があります。
したがって本来であればまずは遺言無効確認調停を申立て、それが不成立になってから、遺言無効確認訴訟を提起できるようになります。しかし、これは、実務上、調停を経ないで遺言無効確認訴訟を提起したとしても、却下はされず、手続きが進むことが一般的になっています。
証拠を準備する
遺言無効確認訴訟は遺言の効力を争う訴訟ですから、まずは遺言が必要になってきます。
遺言作成時の意思能力の有無が争われる場合には、医療記録や医師の鑑定書等が重要な証拠になります。
遺言無効確認訴訟を提起する
遺言無効確認訴訟の相手方は遺言が有効であることを主張する他の相続人、受遺者等です。
管轄裁判所は被告の住所地または被相続人の相続開始時の住所を管轄する裁判所です。
判決の効力は当事者間にしか及びませんから、判決の効力を及ぼす必要のあるものは相手方に加えて訴訟を提起する必要があります。
勝訴した場合は、相続人で遺産分割協議
勝訴した場合には遺言が無効となります。当該訴訟で効力を争った遺言より前に有効は遺言がある場合には、その遺言に沿って遺産が分けられることになります。
有効は遺言がない場合には、相続人間で遺産分割協議を行うことになります。
遺言無効確認訴訟で敗訴した場合
敗訴した場合には、控訴しなければ、当該訴訟で効力が争われた遺言が有効であることが判決で確定され、この遺言に沿って遺産を分割していくことになります。
遺言が無効だと主張されやすいケース
ここまでは遺言無効確認訴訟を概観してきましたが、以下具体的に遺言が無効であると主張されやすいケースについて述べていきます
認知症等で遺言能力がない(遺言能力の欠如)
有効な遺言を残すためには、遺言者に遺言能力が必要です。
遺言者は高齢者であることが多く、認知症の罹患者であることがよくあります。
認知症であるからといって直ちに遺言能力が認められないというわけではなく、遺言の内容、知能検査の結果、医療記録や介護記録、その他遺言内容の合理性や筆跡等、様々な事情が考慮されて、遺言能力の有無についての判断がなされます。
遺言書の様式に違反している(方式違背)
民法で定められている方式に従って作成されていない遺言は無効となります。
例えば、押印のない自筆証書遺言や証人のいない公正証書遺言などは、遺言全体が無効となってしまいます。
相続人に強迫された、または騙されて書いた遺言書(詐欺・強迫による遺言)
遺言者が強迫されたり、だまされて遺言を書いた場合には、当該遺言は遺言者の自由な意思に基づいた遺言とはいえませんから、無効となります。
遺言者が勘違いをしていた(錯誤による無効・要素の錯誤)
遺言者が勘違いに基づいて作成した遺言についても、この遺言の効力は認められず、無効となります。
しかし、ささいな勘違いに基づいた遺言も無効となるというわけではなく、重要な事項について勘違いがある場合にのみ遺言が無効となります。
共同遺言
2人以上の者が同一の遺言を残すことは禁止されています。
2人以上で遺言を残すとなると、お互い自由に遺言を残すことができません。遺言はいつでも撤回できるものですが、共同での遺言を認めれば、自由に撤回ができなくなってしまいます。
このような理由等から共同遺言は禁止されています。
公序良俗・強行法規に反する場合
公序良俗に反するような遺言の効力も認められません。
たとえば、不貞相手にすべての財産を渡す旨の内容の遺言は効力が認めらない可能性があります。
遺言の「撤回の撤回」
遺言は自由に撤回することができます。遺言のすべてを撤回することもできますし、遺言の一部を撤回することもできます。
ここで遺言の「撤回の撤回」をして一度撤回した遺言の効力を復活させることもできるかということが問題になりますが、これは認められておらず、撤回した遺言の効力を復活させたいときには、これと同じ内容の遺言を作成することになります。
偽造の遺言書
偽造された遺言は当然無効です。
偽装されたかどうかは、遺言の内容、遺言者の状態、遺言を作成する経緯、遺言の保管状況等の事情が考慮されて判断されます。
遺言が無効だと認められた裁判例
遺言能力が無効だと認められた裁判例として、東京地裁平成28年8月25日判決を取り上げます。
本事案は、遺言作成の直前に認知症という診断を受けた被相続人作成の公正証書遺言の効力について被相続人の遺言能力を否定して、遺言は無効である判断がされたものです。
判決においては、被相続人の診断をした医師や公証人の見解を踏まえて、遺言能力の判断がなされました。判断能力が不十分になった相続人を、無効とされた遺言において被相続人の財産をすべて譲り受けることになっていた被告夫婦が誘導し、そのようない遺言を書かせた旨の事実を認めるような内容の判決になっています。
遺言無効確認訴訟に関するQ&A
遺言無効確認訴訟の弁護士費用はどれくらいかかりますか?
法律事務所や事件の難易度、獲得できる経済的利益によっても異なりますが、着手金は50万円~、成功報酬は経済的利益の10%から20%程度の費用がかかります。
遺言書を無効として争う場合の管轄裁判所はどこになりますか?
遺言無効確認訴訟管轄は、被告の住所地又は相続開始時の相続人の住所を管轄する裁判所です。
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弁護士なら、遺言無効確認訴訟から遺産分割協議まで相続に幅広く対応できます
遺言無効確認訴訟を提起し、勝訴するためには、入念に証拠を準備し、主張を組み立てる必要があります。弁護士でないと難しいといえますから、弁護士に相談することをおすすめします。
結婚した夫婦にとって、マンションの購入は最も高額な買い物の一つといえます。離婚の際、そのマンションを財産分与するにあたっては、適切な方法で検討しなければ、大きく損をすることもあります。また、頭金の支払いやローン残高によっては、財産分与で分配されるべき金額が異なります。以下、具体的にみていきましょう。
マンションは財産分与の対象になるか
財産分与の対象になるのは、基本的に結婚した後に購入したマンションになります。頭金の支払いやローンの返済を夫婦で協力して行った場合であれば、財産分与により原則として2分の1ずつ分配されます。頭金の支払いを夫婦の親から援助を受けた場合や夫婦のどちらかがもともと持っていたお金で購入したような場合には別途考慮する必要があります。
親から相続したマンションの場合
親から相続した財産は、基本的に「特有財産」として、財産分与の対象とはなりません。親からマンションを相続した場合で、ローンがすでに完済されているようなときは、財産分与の対象にはなりません。
もっとも、ローンを夫婦で返済していったような場合には、返済した分についてはマンションを「共有財産」として、財産分与の対象とすることができます。
別居後に購入したマンションの場合
別居後に購入したマンションは基本的に財産分与の対象とはなりません。
ここでいう別居とは離婚を前提とした別居のことであり、単身赴任のように離婚を前提としてはいない別居は含まれません。
他方、離婚を前提とした別居後に購入したマンションであっても、その頭金に夫婦で婚姻中にためていた預貯金をあてているような場合には、頭金の部分は財産分与の対象となる場合もあります。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚時にマンションの財産分与をする方法
マンションの財産分与をするにあたり、マンションを物理的に半分にすることは現実的ではありません。
そのため、財産分与の方法としては、どちらかが住み続ける、または売却するのが一般的といえます。
どちらかが住み続ける
査定をするなどして判明したマンションの価値を半分にすることにはなりますが、ローンが残っているか、ローンを完済しているかにより異なります。
マンションのローンが残っている場合で、マンションの価値がローン残高を超えているときは、その上回っている分を半分ずつ分配することになります。他方、マンションの価値がローン残高を下回っているときは、財産分与の対象とすることはできません。
マンションのローンを完済している場合には、マンションの価値を半分ずつ分配するだけです。
売却
マンションを売却してその代金を半分ずつ分配することになります。非常に簡明な方法といえます。
ローンが残っている場合には、売却代金をローンに充てて残った部分を半分ずつに分配することになります。ただし、マンションの価値をローンの残高が上回っている場合には、売却しても分配すべき売却代金が発生しないため、この方法をとるメリットがあまりないかもしれません。
マンションの評価方法
マンションの評価方法には様々な方法がありますが、固定資産税評価額や査定評価額、公示価格、路線価などを基準にすることが多いといえます。
マンションの評価方法によっては、その金額が大きく変わることがあります。その金額が妥当なのかは、判断が難しく、財産分与をするにあたって損をすることもあり、注意が必要といえます。マンションの価値に疑問が生じた際には弁護士に相談することをおすすめします。また、ご自宅の価値を知る方法も同様です。
所有者が変わる場合は名義変更を忘れずに
例えば、離婚後、マンションの名義人が夫で今後住んでいくのは妻の場合、名義人が異なり、後々トラブルを発生させ得るため、注意が必要です。所有者名義だけではなく、ローンの名義や連帯保証人の名義も変更する必要があります。
ローンの名義については、ローンを組んでいる金融機関での審査が必要になることが多く、審査が通らないと名義変更ができないことも考えられます。
マンションの頭金を特有財産から出していた場合、どのように財産分与すればいい?
マンションを購入するに際し、頭金をご両親から援助してもらっていた場合にはその頭金を考慮する必要があります。
例えば、マンションを6000万円で購入し、頭金1000万円を両親から援助してもらったとします。そして、離婚するに際し、マンションの価値を査定したところ、価値は5000万円でローンが2000万円残っていることが判明しましょう。
この場合、計算は以下のとおりになります。
頭金が購入価格に占める割合:1000万円÷6000万円=6分の1
マンションの売却益相当額:5000万円-2000万円=3000万円
頭金がマンションの売却益相当額に占める割合:3000万円×6分の1=500万円
財産分与の額:3000万円-500万円=2500万円
以上より、一人当たりの取り分は2500万円の半分である1250万円ということになります。
ほかにも、通常は半分にすべき取り分に頭金を考慮にいれてその財産分与をすべき額を計算する方法もあります。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
マンションの財産分与でかかる税金
マンションを財産分与する場合には、通常、贈与税や不動産取得税はかかりません。
名義変更時の登録免許税や毎年の固定資産税がかかることは考えられます。
ただし、マンションの評価額よりも売却価格の方が高くなった場合には譲渡所得税がかかることもあります。
また、財産分与が不自然なほど高額な場合には、税務署から税金逃れを疑われることもあるので注意が必要です。
マンションの財産分与に関するQ&A
婚姻前に購入したマンションで家賃収入があります。家賃分は財産分与の対象になりますか?
マンションの家賃収入に関し、夫婦が協力してマンションの維持・管理をしていたのであれば、家賃収入が財産分与の対象となることもあります。ただし、赤字経営の期間があったり、マンションの維持・管理に際し、一方のみが行っていたような場合には財産分与の対象とならないことも考えられます。
夫が私に内緒で投資用にマンションを購入していました。結婚後に購入されたもので、ローンが残っています。これは財産分与の対象になりますか?
投資用マンションの購入の原資が夫婦でためていった預貯金であるような場合には、財産分与の対象になる可能性があります。ただし、ローンが残っていて、マンションの価値よりもローン残高が高いような場合には負債を分与されることもあり得ます。内緒で投資用マンションを購入していたにもかかわらず、負債だけ負わされることに納得できないことは当然であり、協議により決定すべきことともいえますので、弁護士に一度相談することをおすすめします。
マンションの管理費や修繕積立金は財産分与の対象になりますか?
マンションの管理費・修繕積立金はマンションの管理等のためにあるものといえます。そのため、返金を予定されていないことも多く、夫婦の財産として財産分与の対象にならないことが通常といえます。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
マンションの財産分与を有利に進めるためにも、弁護士に相談してみましょう
マンションは高額であり、財産分与をするにあたっても、争点となることが多い分野の一つといえます。しかし、その算定方法等は難しく、場合によっては大きく損をすることもあり得ます。そもそも、何から手を付けていいのかわからないこともあると思います。弁護士にご相談いただければ、財産分与を適切に行い、安心して離婚後の生活に備えることができると思います。弁護士法人ALG埼玉法律事務所では、離婚事件を数多く取り扱い、マンションの財産分与についても多数解決に導いてきました。ぜひ一度お問い合わせください。
万が一交通事故に遭ってしまった場合、どのくらい慰謝料を請求できるのか、どのような基準で額が設定されているのか等、疑問に思われる方も少なくないでしょう。せっかく慰謝料を請求するなら、適正な額を請求したいものですが、安易に示談してしまうと適正な金額を受け取れない可能性もあります。
そこで、本ページでは、慰謝料を計算する3つの算定基準について解説していきます。
ぜひ最後までご一読ください。
交通事故の慰謝料の算定基準とは?
交通事故事案における慰謝料の算定基準とは、慰謝料の相場価格を決定するための指標のことをいいます。この算定基準には3種類あり、実際の入院・通院期間や怪我の内容、後遺症の重さ等をもとに算出します。しかし、それぞれ数値や計算式が異なり、当然、算定結果の金額も異なります。
算定基準に影響のある慰謝料として入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料があります。
つまり、最も高額に慰謝料を決定できる算定基準を使えば、これらの賠償金の総額も大幅に増える可能性が高いといえます。
そもそも、なぜ算定基準が必要なの?
そもそも慰謝料は、事故によって生じた精神的損害を補償するためのものです。そのため、交通事故に遭われた方々それぞれで損害の程度は異なります。それを客観的な証拠に基づき証明し、金銭に評価することは困難ですし、時間もかかります。同じような事故であっても算出された額にばらつきが生じてしまうことも考えられます。
また、一定の基準がなければ慰謝料の額、算定方法について交通事故の被害者と保険会社の言い分が対立し続け、紛争の早期解決の実現が困難になる可能性もあります。
このように、慰謝料の額が過度にばらつくことを防止し、紛争を早期に解決するため、算定基準が必要になります。
まずは交通事故事件専属のスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
3つの算定基準の違い
先ほども述べたとおり、慰謝料の相場価格を決定するための指標である算定基準は3つあり、自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準となります。
同一の交通事故につき、これらの基準を用いて慰謝料の額を計算すると、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の順に高額になることが一般的です。
それぞれの特徴や違いを確認してみましょう。
自賠責保険基準について
自賠責保険基準は強制加入の保険である自賠責保険が保険金の算定に用いる基準です。そもそも自賠責保険自体が交通事故の被害者を国が最低限補償することを目的としているため、支払の確実性は高いものの、この基準自体が最低限の設定となっており、十分な補償を受けられないケースが殆どです。
例えば、支払われる保険金は治療費などを含めて限度額が120万円となっていること、算定方法が法律で定められているため、増額交渉の余地もがないこと、車の修理費等の物的損害は補償の対象外であること等がその特徴として挙げられます。
そのため3つの基準の中では自賠責保険基準が最も低い基準と言えるでしょう。
任意保険基準について
任意保険基準は、各任意保険会社が保険金を算定するために独自に設定している基準のことで、自賠責保険ではカバーできない損害を補償することを目的としています。
この基準は基本的には社外秘であるため、詳細については伏せられているものの、営利目的企業である各保険会社が自社の利益を追求した内容になっています。つまり、自社の出費をできるだけ抑えようとするため、高額な慰謝料は期待できない、ということです。
具体的な算定額の相場としては、自賠責保険による最低限補償に少々上乗せした程度の額となることが一般的です。
ちなみに、加害者が任意保険に加入している場合、最終的には自賠責保険分も併せて加害者の任意保険会社から一括で保険金が支払われるのが一般的です。そのため、自賠責保険分に加え別途、任意保険会社からの保険金を受け取るという二重取りできるわけではありません。
弁護士基準について
弁護士基準は、弁護士や裁判所が慰謝料の算定に用いる基準であり、適正な慰謝料を算出することによって損害を補償することを目的としています。過去の裁判例を基にして設けられた基準であることから、裁判基準とも呼ばれます。
3つの基準の中では弁護士基準を使った場合の慰謝料が最も高額かつ適正になるのが一般的です。ただ、この基準は交通事故被害者と保険会社との交渉に弁護士が介入した場合や、慰謝料の額について裁判になった場合に初めて用いられることが多い基準となります。
被害者個人が弁護士に依頼しないと、保険会社が弁護士基準で慰謝料を算出してくれることは、ほとんどない以上、ご自身で示談する前に、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
赤本と青本とは?
この弁護士基準の計算でよく用いられる書籍として、「赤本」、「青本」というものがあります。これらは日弁連交通事故相談センターから発行されており、過去の裁判例や弁護士基準の具体的な内容、慰謝料算定表等が記載されています。
両者の違いとして、赤本には首都圏における事故例を基にした弁護士基準の具体的な数値が掲載されており、青本には事故の範囲を全国にした内容が掲載されています。そのため、青本では地域差を考慮して、上限、下限という幅を持たせた金額設定になっています。
ちなみに、実務上は赤本が多く用いられる傾向にあります。
交通事故慰謝料の相場比較
交通事故の慰謝料には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類があります。各基準によって各慰謝料の額にどのくらい差があるのか、比較してみましょう。
また、後遺症が残った場合や、被害者が亡くなった場合の慰謝料額も紹介していきます。
入通院慰謝料の相場
入通院慰謝料とは、入院・通院を強いられることで生じる精神的苦痛に対する慰謝料のことです。
実際の交通事故の中には入院の必要性がないものもありますが、このような場合であっても通院期間のみで請求できます。
入通院慰謝料の額は、治療に要した期間、日数、怪我の内容等から算出することが一般的です。そのため、治療が長引くほど高額になるのが通常です。
以下で、具体的に確認していきましょう。
なお、先ほども述べたとおり、任意保険基準は保険会社が独自に設定している基準であるため、非公開となっています。
通院日数が15日の場合の慰謝料の相場
自賠責基準と弁護士基準では、入通院慰謝料の算出方法が異なります。
【自賠責基準】
計算式:入通院慰謝料=日額4300円×対象日数
まず、自賠責基準では日額が4300円と定められています。
そして、対象日数については、①「入院+通院期間」と、②「(入院期間+実通院日数)×2」のうち、少ない日数の方を採用します。その日額4300円と対象日数を掛けることで、入通院慰謝料が算出されます。
本例の場合、通院日数が15日であるという事実のみであるため、
4300円×(15×2)=129000円=入通院慰謝料
となります。
【弁護士基準】
弁護士基準は、「実通院日数」ではなく「期間」によって、入通院慰謝料を算出します。
また、弁護士基準では、他覚所見がある場合には赤本別表Iを参照し、各期間の交差する点が入通院慰謝料の額となります。
本例の場合、通院日数が15日であるという事実のみであるため、赤本別表Iより28万円となります。
| 自賠責基準の入通院慰謝料 | 弁護士基準の入通院慰謝料 |
|---|---|
| 12万9000円 | 28万円 |
通院日数が6ヶ月だった場合の慰謝料の相場
【自賠責基準】
先ほど述べた自賠責基準の計算式によれば、本例の場合、次のようになります。
① 「1ヶ月+6ヶ月=210日」
② 「(30日+70日)×2=200日」
この場合、②<①となるため、入通院慰謝料は4300円×200日=86万円となります。
【弁護士基準】
本例の場合にも赤本別表Ⅰを参照し、各期間の交差する点を確認すると、入通院慰謝料は149万円となります。
| 自賠責基準の入通院慰謝料 | 弁護士基準の入通院慰謝料 |
|---|---|
| 86万円 | 149万円 |
むちうちになった場合の慰謝料の相場
【自賠責基準】
自賠責基準では、症状によって計算式が変わることはありません。
そのため、先ほど述べた基準のとおり計算すると次のようになります。
① 「2か月+4か月=180日」
② 「(60日+80日)×2=280日」
この場合、①<②となるため、入通院慰謝料は4300円×180日=774000円となります。
【弁護士基準】
他覚的所見がないむちうち等の軽傷の場合には、赤本別表Ⅱを参照し、各期間の交差する点が入通院慰謝料の額となります。
よって、本例の場合には入通院慰謝料は119万円となります。
| 自賠責基準の入通院慰謝料 | 弁護士基準の入通院慰謝料 |
|---|---|
| 77万4000円 | 119万円 |
後遺障害慰謝料の相場
後遺障害慰謝料とは、治療を施しても治りきらなかった症状について、後遺障害等級の認定がされた場合に請求できる慰謝料のことです。
この慰謝料は、入通院慰謝料とは異なり、計算式等は存在せず、自賠責基準、弁護士基準いずれも、後遺障害の重さを示す等級によって、一律の金額設定になっています。
それぞれの具体的な慰謝料の相場は下表のとおりです。どの等級であっても2倍以上の差があることが分かります。
なお、任意保険基準は公表されていませんが、その金額は自賠責基準以上、弁護士基準未満であることが殆どです。
| 後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
|---|---|---|
| 1級 | 1150万円 | 2800万円 |
| 2級 | 998万円 | 2370万円 |
| 3級 | 861万円 | 1990万円 |
| 4級 | 737万円 | 1670万円 |
| 5級 | 618万円 | 1400万円 |
| 6級 | 512万円 | 1180万円 |
| 7級 | 419万円 | 1000万円 |
| 8級 | 331万円 | 830万円 |
| 9級 | 249万円 | 690万円 |
| 10級 | 190万円 | 550万円 |
| 11級 | 136万円 | 420万円 |
| 12級 | 94万円 | 290万円 |
| 13級 | 57万円 | 180万円 |
| 14級 | 32万円 | 110万円 |
死亡慰謝料の相場
【自賠責基準】
自賠責基準の場合、死亡した本人に対する死亡慰謝料は年齢・性別などにかかわらず一律400万円となっています。
被害者に父母・配偶者・子ども等の遺族がいる場合には、その人数に応じて慰謝料が支払われます。この場合、それぞれの遺族が、被害者に扶養されていたのであれば慰謝料が200万円加算されます。
なお、遺族が一般的な人数より多い場合であっても、合計1350万円という上限があります。
【弁護士基準】
弁護士基準では、死亡した本人の属性に着目し、その他個別具体的な事情が考慮され調整されることがあります。死亡した本人が一家の大黒柱であったのか、家事従事者であったのか、子どもであったのか等によって金額が変わるということです。
具体的には、一家の大黒柱が死亡した場合には、死亡慰謝料は2800万円、配偶者であれば2500万円となります。これらは、基本的には遺族に対しての慰謝料を含んだ金額設定になっています。
なお、死亡慰謝料は、亡くなった被害者本人と遺族に対して支払われますが、被害者はすでに死亡していますので、被害者の死亡慰謝料請求権は相続人に受け継がれることになります。
弁護士に依頼しないと、弁護士基準での慰謝料獲得は難しい?
以上のような解説をご覧になられた交通事故の被害者の方は、慰謝料が高額になる弁護士基準を使って交渉したいと当然思われるでしょう。
しかし、先ほども述べたとおり、弁護士基準は裁判にも用いられている基準であり、弁護士が交渉に介入して初めて用いられることが多いため、一個人が交渉のプロである保険会社に弁護士基準を用いてもらうことは難しいでしょう。
もし、交渉段階から弁護士基準を適用したいとお考えの場合には、一度弁護士にご相談することをお勧めいたします。
弁護士の介入によって弁護士基準に近い金額まで増額できた解決事例
ここで、我々が慰謝料の増額を実現できた実際の事例をご紹介いたします。
この事例は、青信号で交差点進入時、赤信号無視の相手方車両が追突してきたという交通事故でした。当該交通事故の被害者は事故によって右脛の開放骨折という重症を負い、長期の治療を余儀なくされました。さらに、その方は事故により心的外傷後ストレス障害(PTSD)をも発症しました。
しかし保険会社からは後遺障害等級を12級と認定され、提示された慰謝料は600万円という、被害者の治療期間や後遺障害の程度からすると不当に低い金額でした。
そこで我々は、事故の詳細を綿密に調べ上げ、事故態様の重大さ、怪我・後遺障害の程度等にも着目し、割増金額が妥当であるという強い態度、譲らない姿勢を示しました。
その結果、交渉段階であるにもかかわらず、通常の弁護士基準で予想される金額よりも高い水準である約1700万円の慰謝料を獲得することに成功しました。
まずは交通事故事件専属のスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
交通事故慰謝料を適正な算定基準で計算するためにもまずは弁護士にご相談ください
不運にも交通事故に遭ってしまった場合には、適正な慰謝料を受け取るべきです。しかし、多くの保険会社は、被害者に支払う慰謝料をなるべく抑えたいと考えています。そのため、交渉の初期段階では低額な自賠責保険基準や、自賠責基準より少しだけ上乗せした任意保険基準を提示してくることが多いです。
このような考え方を持ち、交渉をしてくる保険会社に対し、被害者ご本人が弁護士基準を主張したとしても、応じてくれることはほとんどありません。
さらに、弁護士基準に応じてもらったとしても、それを基に適正な慰謝料を提示するためにはいくつかの着眼点、交渉のコツが必要であり、基準を用いれば容易に慰謝料を増額できるという簡単な話ではありません。
この点、弁護士法人ALG埼玉法律事務所の弁護士には、交通事故に精通した弁護士が多数在籍しており、これまでも多数の交通事故案件を経験してきております。
また、ご自身が加入されている任意保険の弁護士費用特約を利用することで、基本的には弁護士費用の負担なくご依頼いただけます。
弁護士事務所に連絡をすることにハードルを感じられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、弊所は交通事故専門の受付を設けておりますので、不安に思われることをお気軽にご相談ください。
この記事では、前歴とは何か、似たような言葉である前科との違いは何か、前科がつくのを回避するためにはどうすればいいかなどについて、解説していきます。また、前歴がついたことによるデメリットについても解説していきます。
前歴とは
前歴とは、犯罪の警察などの捜査機関に、犯罪の嫌疑をかけられて捜査の対象とされた履歴のことをいいます。前歴という言葉は、法令上の用語ではないため、明確な定義があるわけではないのですが、一般的にこのようにいわれております。
例えば、他人を殴ってけがをさせたことで逮捕された人が、被害者と示談したことにより、不起訴処分となった場合は、前歴がつくことになります。
前科と前歴の違い
前科とは、有罪判決の言い渡し(刑の言い渡し)を受けたことをいいます。前科も前歴と同様で、法令上の用語ではありません。
前歴というのは、上記のように、捜査の対象とされた履歴のことをいうのに対し、前科は捜査の対象とされた後、検察官によって起訴され、裁判所に有罪判決を言い渡されたことをいうので、前科と前歴は明確に異なります。
他人を殴ってけがをさせたことで逮捕された人が、被害者と示談したことにより、不起訴処分となったという例ですと、前歴はつきますが、前科はつかないことになります。
前科とは?前歴がつくことによるデメリット
前歴がつくことにより、法的にデメリットが生じることはありません。前歴は犯罪の嫌疑をかけられて捜査の対象にされた履歴にすぎないからです。極端な例でいうと、人違いで捜査の対象とされた場合でも、前歴がつくということになります。このような場合も含みますので、前歴がついてことによる不利益は生じません。
前科がついた場合は、一部の国家資格の取得に制限が生じるなどの不利益が生じる可能性があります。他方、前歴には、このような制限は全く生じません。
しかし、実際上、以下のようなデメリットが生じる可能性はあります。
インターネット上に記録が残る可能性がある
例えば、犯罪の嫌疑をかけられて逮捕された場合、テレビやインターネットで実名で大きく報道されてしまうことがあります。本来は、逮捕された段階では、その人が本当に罪を犯したかどうかはわからないのですが、実際上、逮捕された段階で犯人であるかのように報道されてしまいます。
この逮捕された人が、後に嫌疑が不十分で不起訴処分となったり、裁判所で無罪判決を受けた場合は、前科はつきませんが、前歴はつくことになります。そうすると、その人は犯罪者ではないということになりますが、インターネットなどにはその人が逮捕されたという履歴は残ることになりますので、まわりの人からは犯罪者のように扱われてしまう可能性はのこります。
再犯の際に不利になる
例えば、罪を犯して逮捕された人が、自身の行為についてとても反省していることなどを理由に、不起訴処分となることがあります。この人が再び犯罪行為に及んでしまったとします。
前歴は、捜査の対象となった履歴のことをいいますので、当然、警察や検察といった捜査機関はその履歴を管理しております。そうすると、警察や検察は、その人が前にも犯罪行為に及んだという事実を知っていることになります。前回は本人がとても反省していたため、不起訴処分にしましたが、再び犯罪行為に及んでしまったのであれば、今度は起訴されてしまう可能性があります。
このように、再犯の際には、初犯の場合と比べて不利益に取り扱われる可能性があります。
前歴は調べられるか
警察や検察といった捜査機関は前歴の存在を把握しています。また、逮捕された事実がテレビやインターネットで報道されてしまった場合には、インターネットで検索することなどにより前歴を調べることも可能です。
しかし、それ以外のほとんどの前歴については調査することはできません。一般人が捜査機関に照会したとしても、捜査機関が回答することはまずありません。前歴がついたとしても、それほど気にすることはないでしょう。
前歴は消せるか
前歴は、捜査機関の捜査の対象となった履歴ですので、これが消えることはありませんし、個人が消すことができるようなものではありません。消えなくても、特に不利益はありませんので、心配することはないでしょう。
前歴は履歴書に書く必要があるのか
前歴は、就職する際などに提出する履歴書に記載する必要はありません。特に記載しなかったことにより不利益を受けることもありません。ただし、就職先から、前歴の有無を問われた際に、嘘の回答をすると、嘘の回答をしたことにより不利益に扱われる可能性はありますので、注意しましょう。
前歴があっても海外旅行はできるか
前歴があっても国内、海外を問わず、旅行に行くことは可能です。ただし、たとえば保釈中の場合などには、事実上、旅行が制限されてしまう可能性はあります。
前歴に留め、前科を回避するには
前科がつくと、一定の国家資格の受験が制限されたり、場合によっては家族にまでその影響を及ぼすことがあり、社会生活への影響が大きいといえます。他方、前歴にとどまる場合は、特にこのような不利益はありません。そのため、前科をつけず、前歴にとどめることが重要となります。
前歴にとどめるためには、検察官に起訴されないことが重要です。起訴されてしまうと、ほとんど確実に前科がついてしまうからです。起訴を回避するためには、検察官に対し、①犯罪の嫌疑がない(あるいは不十分である)と判断させる、または、②犯罪の嫌疑があるが様々な事情に鑑みて起訴することが相当でないと判断させる必要があります。検察官が①や②のように判断した場合、起訴をしない(不起訴)という判断をすることになります。
前科とは?前歴で留め、前科がつくことを避けるには弁護士へご相談ください
検察官が不起訴の判断をするためには、弁護士の活動が重要となります。取調べに対してどのように対応するのか、または、反省していることをどのように検察官に伝えればいいのかなどについて、弁護士が適切にアドバイスすることにより、不起訴になる可能性が高まります。
また、いわゆる認め事件の場合で、被害者がいる事件のときは、被害者と示談していることが不起訴の判断の重要なポイントとなります。しかし、被害者は、加害者本人と会ってくれる可能性が低いため、被害者と示談交渉をすることができるのは弁護士のみとなります。
このように、不起訴処分にとどめ、前科をつけないためには、弁護士による弁護活動が重要となりますので、前科をつけることを避けるためには、まずは弁護士に相談してみましょう。

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- 保有資格
- 弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
