監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
暴行罪と聞くと、殴ったり蹴ったりという行為がまず思い浮かぶのではないでしょうか。しかし、暴行罪に当たる行為は、実は単純な殴る蹴るだけではありません。本記事では、どのような行為が暴行罪にあたるのか、暴行罪と類似する犯罪との違い、暴行罪で逮捕されたときの対処法等について解説しています。
暴行罪に関してお困りの方は、ぜひご覧ください。
暴行罪とは
暴行罪は「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」に成立する犯罪です(刑法第208条)。ここでの「暴行」とは「人の身体に対する不法な有形力の行使」と解釈されています。そのため、後ほど詳しくご説明させていただくように、直接的に殴る蹴る以外の行為も「暴行」に含まれます。
また、暴行罪は親告罪ではありません。そのため、被害者からの告訴がなくとも、刑事事件として扱われる場合があります。
暴行罪の刑罰
暴行罪の刑罰は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。
2年の懲役や30万円の罰金はあくまで法律上の上限であるため、より短い期間の懲役や拘留、より低額な罰金や科料になる可能性もあります。
暴行罪の時効
犯罪には、犯罪の種類と刑罰の重さによって異なる公訴時効の期間が設定されています。暴行罪は、「長期5年未満の懲役若しくは禁固又は罰金に当たる罪」(刑事訴訟法第250条第2項第6号)ですので、公訴時効は3年となります。
暴行罪にあたる行為
「人の身体に対する不法な有形力の行使」に含まれるのは、殴ったり蹴ったりという典型的な行為だけではありません。身体や服を引っ張るといった比較的軽度な接触や、音や光などを浴びせるといった身体同士の接触を含まない行為も「不法な有形力の行使」に当たり、暴行罪が成立する場合があります。
直接的に身体に触れる行為
直接的に身体に触れる行為、例えば、身体や衣服をつかんだり引っ張ったりする行為や、握手、相手の肩を抱くといった行為も、威力によっては「不法な有形力の行使」に当たる場合があります。
実際に警察が捜査をしたり、裁判が行われたりするかは別として、相手を攻撃する意図や威力で身体に直接的に触れる行為は、暴行罪が成立する可能性があります。
身体に触れない行為
直接的に身体に触れない行為であっても、大きな音や強い光を浴びせたりする行為は、暴行罪が成立する可能性があります。
また、石やイス等を投げる行為については、実際に相手に当たっていない場合でも暴行罪が成立しています。他の例として、嫌がらせでの車の幅寄せについても暴行罪が認められたケースがあります。
暴行罪にあたらない場合
暴行罪の成立には故意が必要であるため、暴行罪(または傷害罪)の故意がなければ暴行罪は成立しません。
もっとも、裁判では、暴行罪の故意があるかは暴行までの経緯、暴行の方法や内容、暴行の後の言動などから総合的に判断されます。そのため、例えば大きな石を投げつけて「わざと当てるつもりはなかった」と説明したとしても、故意は認められる可能性が高いです。
全くの偶然の行為は暴行罪に当たりませんが、ケガを負わせる危険性のある行為をわざと取った場合には、暴行罪に当たる可能性があります。
傷害罪との違い
「人を傷害するに至らなかったとき」との規定のとおり、暴行の結果として人の身体を傷つけた場合は傷害罪に当たり、人の身体を傷つけるまでにはいかなかった場合は暴行罪となります。
このように暴行罪は「暴行」という行為の態様に着目した犯罪であるため、「傷害」という結果が発生した場合には、他の犯罪が成立する可能性があります。具体的には、傷害罪、過失傷害罪、傷害致死罪などが成立する可能性があります。
過失傷害罪
傷害罪の成立にも、暴行罪と同様に暴行罪または傷害罪の故意が必要とされています。そのため、傷害の結果が発生しているものの、そもそも暴行自体に故意がなかったケースでは、傷害罪ではなく過失傷害罪が問題となります。例えば、よそ見をしていて相手にぶつかってしまい、転倒してケガをしたような場合などです。
傷害致死罪
暴行によって生じた傷害が原因で被害者が死亡した場合には、傷害致死罪が成立します。殺人罪との違いは故意の程度であり、自分の行為によって相手が死亡する可能性があると認識していたような場合には、殺人罪の故意があったと認められ、殺人罪が成立する可能性があります。他方で、暴行または傷害の故意しかなかった場合には、殺人罪の故意がないため、傷害致死罪の成立が問題となります。
酒に酔っていた場合も罪になるか?
酒に酔っていた場合でも、暴行罪は成立します。異常酩酊(複雑酩酊、病的酩酊)の場合には、心神耗弱、心神喪失に該当し、刑罰が軽くなったり、暴行罪が成立しなかったりする可能性がないわけではありません。しかし、飲酒前に異常酩酊に陥る可能性が高いことの認識がある場合には、そもそも飲酒を控えるべきであったといえるため、心神耗弱や心神喪失の主張も認められない可能性が高いです。
酒に酔うと我を忘れるような危険がある方は、飲酒後に他人とトラブルが生じることのないように、飲酒の量や場所にはくれぐれも気を付けましょう。
暴行罪で逮捕されたときの対処法
暴行罪で逮捕された場合、主に身柄拘束からの解放と、示談の成立を目指すこととなります。検察官による起訴や量刑の選択にあたっては、被害者への賠償や被害者の処罰感情の有無が影響します。そのため、被害者との間で示談が成立すると、不起訴や減刑に有利に働きます。
一方で、逮捕された本人や家族の方が示談交渉をしようとしても、被害者が連絡先を教えたがらないなど交渉が上手く進まないことも多いです。弁護士が入ると「弁護士であれば」と連絡先を教えてもらえたり、弁護士を通じて反省文や謝罪文の受渡しができたり、状況が好転することもあります。
暴行事件で逮捕されてしまったら弁護士へご相談ください!
暴行罪で逮捕された状況では、迅速な社会への復帰のためには身柄拘束からの解放、不起訴や減刑の実現のためには取調べ等の捜査に対する対応、示談交渉などが重要となります。いずれも本人が一人でできることには限界があり、自分では正しいと思ってした行動でかえって悪い結果を招いてしまうこともあります。
まずは専門家としっかり相談することが重要です。暴行事件で逮捕されてしまったら、まずは弁護士にご相談ください。
| 迷惑防止条例違反 6月以下の懲役又は50万円以下の罰金 (東京都の場合) |
|---|
以下では、迷惑防止条例とは何か、迷惑防止条例に違反した場合にどのようになるのかなどについて説明します。
迷惑防止条例とは
迷惑防止条例とは、粗暴な行為や卑猥な行為を規律する各都道府県の条例を意味し、その名称は各都道府県によって異なります。例えば、刃物を振り回したりする粗暴な行為や、痴漢や盗撮などが禁止されていることが一般的です。
各都道府県の迷惑防止条例
| 都道府県 | 条例 |
|---|---|
| 北海道 | 北海道迷惑行為防止条例 |
| 青森県 | 青森県迷惑行為等防止条例 |
| 秋田県 | 秋田県迷惑行為防止条例 |
| 岩手県 | 公衆に著しく迷惑をかける行為等の防止に関する条例 |
| 宮城県 | 迷惑行為防止条例 |
| 山形県 | 山形県迷惑行為防止条例 |
| 福島県 | 福島県迷惑行為等防止条例 |
| 茨城県 | 茨城県迷惑行為防止条例 |
| 栃木県 | 栃木県公衆に著しく迷惑をかける行為等の防止に関する条例 |
| 群馬県 | 群馬県迷惑行為防止条例 |
| 埼玉県 | 埼玉県迷惑行為防止条例 |
| 千葉県 | 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 |
| 東京都 | 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 |
| 神奈川県 | 神奈川県迷惑行為防止条例 |
| 新潟県 | 新潟県迷惑行為等防止条例 |
| 長野県 | 長野県迷惑行為等防止条例 |
| 山梨県 | 山梨県迷惑行為防止条例 |
| 静岡県 | 静岡県迷惑行為等防止条例 |
| 愛知県 | 愛知県迷惑行為防止条例 |
| 岐阜県 | 岐阜県迷惑行為防止条例 |
| 富山県 | 富山県迷惑行為等防止条例 |
| 石川県 | 石川県迷惑行為等防止条例 |
| 福井県 | 福井県迷惑行為等の防止に関する条例 |
| 三重県 | 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 |
| 滋賀県 | 滋賀県迷惑行為等防止条例 |
| 京都府 | 京都府迷惑行為等防止条例 |
| 奈良県 | 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 |
| 大阪府 | 大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 |
| 兵庫県 | 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 |
| 和歌山県 | 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 |
| 岡山県 | 岡山県迷惑行為防止条例 |
| 広島県 | 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 |
| 山口県 | 山口県迷惑行為防止条例 |
| 鳥取県 | 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 |
| 島根県 | 島根県迷惑行為防止条例 |
| 愛媛県 | 愛媛県迷惑行為防止条例 |
| 香川県 | 香川県迷惑行為等防止条例 |
| 高知県 | 高知県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 |
| 徳島県 | 徳島県迷惑行為防止条例 |
| 福岡県 | 福岡県迷惑行為防止条例 |
| 佐賀県 | 佐賀県迷惑行為防止条例 |
| 長崎県 | 長崎県迷惑行為等防止条例 |
| 大分県 | 大分県迷惑行為防止条例 |
| 熊本県 | 熊本県迷惑行為等防止条例 |
| 宮崎県 | 宮崎県迷惑行為防止条例 |
| 鹿児島県 | 公衆に不安等を覚えさせる行為の防止に関する条例 |
| 沖縄県 | 沖縄県迷惑行為防止条例 |
刑罰について
迷惑防止条例違反の罰則は、各行為や都道府県によって多少異なりますが、数か月から2年程度の懲役刑と数十万円から百万円程度の罰金刑が中心となっています。罪が軽いものについては、科料という少額の罰金刑が科されることもあります。
時効について
迷惑防止条例違反の公訴時効は、3年となるものがほとんどです。
法律では、長期5年未満の懲役もしくは禁固または罰金に当たる罪の公訴時効は3年と定められているため、迷惑防止条例違反の罪はほとんどこの中に入ります。
迷惑防止条例と不同意わいせつ
迷惑防止条例では痴漢や盗撮などが禁止されているのが一般的です。このうち、痴漢については、不同意わいせつ罪にも当たる可能性があります。両者の違いですが、行為が行われた場所や行為の態様、程度等によって異なります。
例えば、暴行や脅迫を用いて行われた場合などには不同意わいせつ罪になると考えられます。また、迷惑防止条例違反の痴漢は公共の場で行われた場合に該当しますが、密室で行われた場合などには該当しないと考えられます。
迷惑防止条例違反となる主な犯罪
迷惑防止条例違反となる犯罪には、主に、痴漢、盗撮、つきまとい等の行為があります。
痴漢
痴漢は、公共の場で、服の上から又は直接身体に触れる行為をいいます。電車の中で前に立っている人の臀部を服の上から触るような行為が典型的な痴漢です。
痴漢について詳しく見る盗撮
盗撮は、公共の場で、通常衣服で覆われている下着や身体を写真やビデオで撮影することをいいます。エスカレーターなどで前に立っている人のスカートの中をスマートフォンなどで撮影する行為が典型的な盗撮行為です。
盗撮について詳しく見るつきまとい等
つきまとい等とは、正当な理由なく、つきまとったり待ち伏せしたりするなどして、他人に対して不安を覚えさせるような行為をすることをいいます。
その他
迷惑防止条例違反には、以上の行為の他に、粗暴行為や入場券の転売行為、不当な客引き行為、迷惑ビラの配布行為等様々な行為が禁止されており、違反した場合には懲役刑や罰金刑に科される可能性があります。
迷惑防止条例違反で逮捕されたら
迷惑防止条例違反で逮捕されてしまった場合には、取調べを受けた上で起訴されるかどうかが決まります。
逮捕されてから48時間以内に検察に事件が送致され、検察は送致を受けてから24時間以内勾留請求するかどうかを決定します。勾留請求が認められると最大20日間身柄が拘束される可能性があります。
被害者の供述が有利になりがち
例えば、痴漢事件の場合、客観的な証拠が乏しいため、証拠が被害者の供述のみということも少なくありません。このような場合、被害者の供述がとても重視されることになります。
どのような対応をすべきか
逮捕されてしまった場合に、どのように対応すべきは各事件によって異なります。早めに弁護士と相談してどのように対応すべきかを相談することが重要となります。当番弁護を利用するのがおすすめです。
迷惑防止条例違反の裁判例
痴漢のケース
さいたま地方裁判所平成30年11月21日判決をご紹介します。
この事件は、電車に乗っていた男性が事件当時14歳の女性に対して、女性の陰部を着衣の上から触ったかどうかが争われたという事案です。男性が痴漢行為をしていたという客観的な証拠は全くなく、被害者の証言が唯一の証拠となっている事案でした。
裁判所は、事件当時電車内がある程度空いていて被害者の周りには数人立っているだけで、周りから痴漢行為が発見されやすいという状況で痴漢行為に及ぶとは考え難いこと、被害者が痴漢被害から逃れるための行動をとっていないこと、被害者の供述に一貫しない部分があること、被害者の供述は実際に痴漢行為に遭った者でなければ供述できない程の具体性や迫真性のある内容となっていないことなどの理由から、被害者の証言は必ずしも信用しきれないとして、被告人に対し無罪判決を言い渡しました。
盗撮のケース
福岡地方裁判所平成30年9月7日判決をご紹介します。
この事件は、とある店舗内にいたワンピースを着た女性の下に動画撮影機能を起動した二つ折りの携帯電話機を差し入れたかどうかが争われたものです。
この事件も核心的な客観証拠がなく、被害者の証言と被告人の自白のみが証拠となっていました(撮影した動画は内容が判然としないものであり、下着が写っているわけではありませんでした。)。
裁判所は、被害者の供述は具体的で、供述態度も紳士であり、内容も客観的な証拠とも矛盾していないことから信用できるとした上で、被害者は携帯電話で下着を撮影されているところまでは見ていないので、被害者の供述だけでは盗撮の事実は認定できないとしました。
また、被告人の盗撮したという自白については不自然なところが多く信用できないとしました。結局、携帯電話をワンピースを着た女性の下に差し入れたということの証拠がないため、無罪となりました。
迷惑防止条例違反でよくある質問
カーテンが開いており隣家の住人が下着姿でいるところを覗いてしまいました。
カーテンが空いていて、例えば道路から見えるような状況であったとすれば、そのような姿を見ても迷惑防止条例違反になることはありません。
迷惑防止条例違反となるのぞきというのは、駅は商業施設などの公共の場所でスカートの中をのぞき込むような行為です。隣家は公共の場所とはいえませんので、迷惑防止条例違反にはなりません。
電車内でつり革を掴もうとしたところ誤って女性の胸に手が当たってしまいました。
電車内で女性の胸を故意に触った場合には、いわゆる痴漢ですので、迷惑防止条例違反となります。しかし、つり革をつかもうとして偶然手が女性の胸に当たってしまったということであれば、犯罪の故意がないので、迷惑防止条例違反にはなりません。
旦那の浮気相手に何度も電話をしましたが迷惑防止条例に違反するのでしょうか。
相手に拒まれているにもかかわらず電話を連続してかけ続けると迷惑防止条例違反になります。ただし、電話をかけることに正当な理由がある場合には、迷惑防止条例違反にはなりません。浮気相手に対して、例えば慰謝料請求をする目的であれば、多少連続して電話をかけたとしても、正当な理由があるため、迷惑防止条例違反にはならないと考えられます。
迷惑防止条例違反を犯した場合、すぐに弁護士へご相談下さい。
迷惑防止条例違反は、犯罪の中では比較的軽いものではありますが、逮捕・勾留されることによって仕事や日常生活に大きな影響が出ることになります。
このような悪影響を最小限に抑えるためには、迅速に被害者と示談をするなど身柄解放及び不起訴処分の獲得に向けた弁護活動をすることが重要となります。
迷惑防止条例に違反してしまったり、違反の疑いをかけられてしまった場合には、すぐに弁護士にご相談下さい。
被相続人が遺言書に「遺産はすべて甲に相続させる」などといった記載をしていると、相続人は何も遺産を相続することができないのでしょうか。このような場合、相続人は遺留分侵害額請求という手段により、被相続人の遺産をすべて遺贈された甲に対して遺留分を請求することができます。
ただし、遺留分の行使には「時効」があります。以下、遺留分の期限について詳しくみていきましょう。
遺留分はいつまで請求できる?期限はあるのか?
遺留分とは、一定の相続人に法律上確保されている最低限の経済的利益のことです。
遺留分を請求できる相続人は「兄弟姉妹以外の相続人」で、具体的には配偶者や子、親が想定されています。
遺留分侵害額請求は、遺留分を有する相続人が相続の開始と遺留分があることを知った時から1年、または相続開始の時から10年が経過すると遺留分を請求することができなくなってしまいます。
①遺留分があることを知った時から1年(時効)
遺留分侵害額請求権は、「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時」で時効により消滅します。
生前贈与は相続開始前の1年間にしたものが遺留分の対象になりますが、相続に対する生前贈与の場合には相続開始の10年間は遺留分の対象になります。他方、遺贈の場合には、遺留分を侵害するものは遺留分の対象になります。
時効はいつからカウントされる?起算点について
「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時」とは、相続の開始と贈与又は遺贈があったことを知ったことに加えて、その贈与や遺贈が自らの遺留分を侵害することを具体的に認識したこととされています。
しかし、その認識の程度にはある程度抽象的なものでもよいと考えられることもあるので、基本的には相続が開始された後1年以内に遺留分侵害額請求権を行使することが安全と言えます。
②相続開始から10年(除斥期間)
「相続開始の時から十年を経過したとき」に遺留分侵害額請求はできなくなります。
すなわち、遺留分が遺贈や贈与により侵害されていることを知らなくても、相続が開始してから10年が経過すると、遺留分侵害額請求が時効にかかり行使することができなくなるということです。
遺留分侵害額請求権の時効を止める方法
遺留分侵害額請求が時効により行使できなくなる前に、遺留分侵害額の請求をするという意思表示をしましょう。意思表示とはいっても、具体的にどのように行うかについてその方法を解説します。
相手方に内容証明郵便を送る
相手方に遺留分請求の意思表示をするにあたっては、「配達証明付きの内容証明郵便」で行うのが安全です。
遺留分侵害額請求を口頭で伝えるのみで書面で残さずにいると、「言った、言わない」といった紛争が生じることがあり、内容証明であれば郵便局がどのような内容かについて証明してくれます。また、配達証明であれば郵便局が相手に届いたことを証明してくれます。
内容証明郵便に記載する事項
内容証明郵便を利用する場合には以下の事項を記載するのが一般的です。
- 遺留分を請求する人の氏名
- 請求相手の氏名
- 被相続人についての情報
- 遺留分を侵害している贈与や遺贈についての情報
- どの遺産について遺留分侵害額請求を行うか
- 請求の日時
以上の事項等を記載するのが一般的ですが、具体的にどのように記載すべきか、自分で作成したもので本当に遺留分侵害額請求の意思表示として妥当なのかといったご不安があれば、一度弁護士に相談してみるとよいと思います。
遺留分を請求した後の時効にも要注意!
内容証明郵便で遺留分侵害額請求権を行使する旨の意思表示をしたことで安心してはいけません。
遺留分侵害額請求の意思表示をすると、遺留分侵害額に相当する金銭債権が生じることになります。
この金銭債権は遺留分侵害額請求権とは別に消滅時効にかかります。具体的には、意思表示をした時から5年です。
なお、民法改正の影響により、意思表示をしたのが2020年4月1日より前か後かによって、消滅時効期間が異なるので注意が必要です。
金銭債権の時効を止める方法はある?
遺留分侵害額請求の意思表示をしたのちに相手が金銭を支払わないような場合には、調停や裁判と言った法的手続を行うことが望ましいといえます。相手が金銭債権を支払うことを認めたような場合には、時効が更新されることもありますが、金銭を回収するためにも法的手続に進む方が得策といえます。
遺言や遺贈の無効についても争う場合の注意点
遺留分が問題となるような場合には、そもそも遺言の効力自体を争いたいと考えている相続人の方も多くいらっしゃいます。このような場合には、遺言について無効であると主張するのに加えて、予備的に遺留分侵害額請求も行使することが安全です。というのも、遺言の効力を争っているうちに、遺留分侵害額請求権についての時効が進行してしまうことになるためです。そのため、遺言の効力を無効とすることができればいいですが、そうでない場合に遺留分侵害額請求までもできなくなる可能性をつぶしておく必要があるのです。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
遺留分の期限に関するQ&A
遺留分は放棄できますか?また、放棄するのに期限はありますか?
遺留分の放棄は、特に制限がなく、相続開始の前後を問わずに放棄することができます。 ただ、相続が開始する前に遺留分を放棄する際には、家庭裁判所の許可が必要となります。相続が開始した後は家庭裁判所の許可は不要です。
遺留分の時効が迫っているのですが、相手が請求に応じない場合はどうしたらいいですか?
早急に遺留分侵害額請求権を行使することの意思表示を行い、遺留分侵害額請求権の行使によって発生した金銭債権について訴訟や調停等でその支払いを求めるべきといえます。
調停や裁判を起こすことで、遺留分の期間制限を止めることはできますか?
遺留分侵害額請求の調停や裁判を起こすと、その手続が終了するまでは時効が完成しなくなります。訴訟の場合には確定判決がでるまでの間は時効期間が満了しなくなるわけです。
遺留分の請求には時効があります。なるべく早めに弁護士にご相談下さい。
ここまでみてきたように、遺留分侵害額請求には時効期間があり、その期間は必ずしも長いものではありません。また、遺留分侵害額請求権の行使やその金銭の回収には適切な知識と経験が必要になる部分が多くあります。
遺留分を請求したい、遺留分の期間について不安があると考えられている方はぜひ弁護士に相談することをお勧めします。
子どもがいる夫婦が離婚した場合、どちらか一方のみの配偶者が子どもの親権者となります。
他方、親権者とならなかった配偶者であっても、民法上、養育費を負担する義務を負っています。
以下では、夫婦が離婚した場合の養育費について、子どもが3人いる場合を想定して解説していきます。
養育費の決め方
養育費とは、子どもの監護をしない者(以下「義務者」といいます。)から子どもの監護をする者(以下「権利者」といいます。)に対して支払う、子の監護・養育に必要な金銭のことをいいます。
例えば、夫婦の間で子どもが3人いる状態で離婚をした場合で、一方の配偶者が3人の子どもの親権者となった場合は、義務者は3人の子どもがそれぞれ生活するために必要な費用を負担する必要があります。
養育費の金額は、子どもの人数、年齢、権利者と義務者の収入、職業の種別(会社員か自営業か)等の要素が考慮され決定されます。
おおよその目安については、裁判所が向上している算定表を用いることで判明します。
養育費に含まれるもの
養育費は子の監護・養育に必要な金銭であるため、主に以下の費用が含まれることになります。
- 衣食住に必要な費用(食費、家賃、水道光熱費、日用品代等)
- 教育費(義務教育費用、公立高校の授業料等)
- 医療費(※子どもが重大な病気にかかった際の治療費・手術代等は含まれない)
- 通常想定される範囲での子どもへのお小遣いや遊興費
子供が3人いた場合の養育費の相場
| 養育費を支払う側の年収 | 子供3人0~14歳 | 子供2人0~14歳 子供1人15~19歳 |
子供1人0~14歳 子供2人15~19歳 |
子供3人15~19歳 |
|---|---|---|---|---|
| 200万円 | 0~6万円 | 0~6万円 | 0~6万円 | 0~6万円 |
| 300万円 | 0~8万円 | 0~8万円 | 0~8万円 | 1~8万円 |
| 400万円 | 2~10万円 | 2~10万円 | 3~11万円 | 4~11万円 |
| 500万円 | 4~13万円 | 5~13万円 | 6~14万円 | 6~14万円 |
| 600万円 | 7~15万円 | 8~16万円 | 8~16万円 | 9~16万円 |
| 700万円 | 9~18万円 | 10~18万円 | 11~18万円 | 11~19万円 |
| 800万円 | 11~20万円 | 12~20万円 | 13~20万円 | 14~21万円 |
| 900万円 | 14~22万円 | 14~23万円 | 16~23万円 | 16~24万円 |
| 1000万円 | 16~25万円 | 17~25万円 | 18~26万円 | 19~26万円 |
以上の表は、養育費の支払義務者(会社員を想定)の収入と、子ども3人の年齢ごとに区別された養育費のおおよその目安をまとめたものです。
養育費は義務者と権利者の収入によって、金額が増減します。
例えば、権利者の収入が高く、義務者の収入が低ければ、相場の中では低い金額(0~6万円であれば0円になる場合もあります。)となり、権利者の収入が低く、義務者の収入が高ければ、相場の中では高い金額(0~6万円であれば6万円になる場合もあります。)となります。
なお、子どもが4人以上いる方の場合は、裁判所が公表している養育費の相場をまとめた養育費算定表が存在しないため、個別に計算する必要があります。
養育費の増減について
| 増額するケース | ・昇進、昇格により義務者の収入が上がった場合 ・失業や病気により権利者の収入が減少した場合 ・子が成長し、大学などに進学した場合 |
|---|---|
| 減額 | ・昇進、昇格により権利者の収入が上がった場合 ・失業や病気により義務者の収入が減少した場合 ・義務者が再婚して扶養家族が増えた場合 |
一度決まった養育費を増減させるためには、増減させるに足る事情の変更が必要です。
養育費は、主に子の人数や権利者・義務者の職業・収入により算定されるものですから、これら事項に関する事情の変更が養育費額の増減にあたって考慮されることになります。
なお、養育費額の確定後算定表が新しくなったことや離婚後子どもと会わせてもらえていないことといった事項は養育費増減の理由にはなりません。
また、養育費の金額を変更するためには、改めて養育費分担調停や審判を申立てる必要があります。義務者の一方的な判断によって養育費の金額を下げないようにしましょう。
3人の養育費が支払われる期間
養育費の終期は実務上20歳までと定めることが一般的です。これは、子どもが単独で法律行為ができ、自分自身で働いて生計を立てることが可能だと考えられる成人年齢であることを考慮したものです。
なお、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられた現在においても、18歳や20歳であれば、大学等に進学するなどして就職しておらず、経済的に自立できていない方も多いため、養育費の終期に影響を与えないのではないかと考えられます。
また、現在の日本においては大学への進学率が高いため、両者の合意によって養育費の終期を一般的な大学卒業時の年齢である22歳までとするケースもあります。
養育費の対象とならない期間
養育費が支払われる期間であると思われるケースであっても、以下のような場合、支払われないこともあります。
- 子どもが高校卒業して働き始めた場合
- 子どもは成人しているが、仕事をせず自立ができていない場合
- 子どもが大学院に進学した場合
- 子どもが留学をして、大学の卒業が1年延びた場合
子供が3人いた場合の養育費に関するよくある質問
3人分の養育費を一括で受け取ることはできますか?
基本的に養育費は子どもの生活のために必要とされる費用という性質上、その支払いは月払いが原則です。もっとも、月払いはあくまでも一般論であるため、当事者間での合意によって一括払いと定めることも可能です。
もちろん、3人分の養育費となると、子どもの年齢によってはかなりの金額になりますので、そもそも支払義務者が支払えない可能性や、一括払いに合意しない場合もあります。
再婚した場合は養育費を受け取ることはできませんか?
権利者が再婚した場合であっても養育費を受け取ることはできます。
しかし、養育費の対象となっている子どもが再婚相手と養子縁組を結んだ場合には、当該子どもの第一次的な養育義務は再婚相手が負うことになります。
そのため、再婚相手の資力が不十分であるような場合を除き、権利者は義務者(元配偶者)からの養育費を受け取ることはできなくなります。
他方で、義務者が再婚した場合、義務者がその再婚相手や再婚相手との子どもを扶養する義務を負う可能性があります。その結果、権利者との間の子どもに関する養育費の金額が下がる場合があります。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
3人の子供の養育費について離婚問題に詳しい弁護士にぜひご相談ください
養育費は、子どもを監護養育するにあたって重要な金銭です。当事者間で具体的な金額や支払い方法等について不足なく合意をして、その合意どおりに養育費を払ってもらえるのであれば特段問題ありません。
しかし、適正な養育費の金額を算定するにあたっては種々の事情を考慮する必要があり、その計算方法も複雑です。
適切な養育費額を算定し、子の権利を損なわないためにも、養育費について何か疑問を持たれた際には、離婚問題に詳しい弁護士にぜひ一度ご相談ください。
交通事故で受傷後、しばらく時間が経過してもめまいが続くことがあります。
このような場合に慰謝料を請求できるのでしょうか。
このことについて、以下述べていきます。
交通事故によるめまいで慰謝料はもらえるのか
交通事故によるめまいが生じた場合に、生じているめまいが後遺障害に該当すれば、慰謝料を請求することができます。
後遺障害認定には、治療の経過や内容、医師の意見が重要です。めまいがある場合には医師の症状を説明して、記録に残してもらう必要があります。
交通事故でめまいが起こる原因
交通事故によるめまいには、以下の各項目のとおりのいくつかの原因が考えられます
良性発作性頭位めまい症
交通事故の衝撃で、耳石が後半規管等に誤って入り込むことにより生じる回転性のめまいのことで、難聴や耳鳴りを伴うことはありません。
交通事故により頭部付近に衝撃を受けた後にめまいが生じた場合には良性発作性頭位めまい症である可能性があります。
耳石を元の位置に戻せば治癒するため、自然治癒することもあります。
外リンパ瘻
外リンパ瘻とは、耳の内耳を満たしているリンパ液が内耳から中耳に漏れることによって、めまいや難聴等の様々な症状を引き起こす疾患です。
交通事故による衝撃等で内耳の一部に穴があき、リンパ液が中耳に漏れることで、中耳の役割がうまく果たせなくなることにより、症状が引き起こされます。
外リンパ瘻には、薬を使う保存治療法と手術による治療法があります。めまいや難聴等の一部の症状が後遺症として残ることがあります。
むちうち
むちうちによってめまいが生じることもあります。自律神経の一種である交換神経は頸椎の前方に存在し、交通事故によって頸椎の周辺に炎症が発生すると、交換神経が刺激されることによって耳の機能をつかさどる部分の血流が低下することがあります。その結果、めまいが生じることがあります。
バレリュー症候群
むち打ち等により、首の痛み以外にも頭痛やめまい、耳鳴り等の自律神経失調症状が出ることがあります。むち打ちに自律神経失調症状が合併した病態がバレリュー症候群といわれています。
交換神経が刺激され、内耳動脈が収縮して血流低下を引き起こして、耳鳴りやめまいが生じるとされています。
軽度外傷性脳損傷
脳へ衝撃が加わったことにより、30分以内の意識消失や記憶喪失等の症状が生じる外傷性の軽度の脳損傷を軽度外傷性脳損傷といいます。
脳脊髄液減少症
交通事故等により、体に強い衝撃を受けて、脳脊髄液が漏れ続け減少することにより、頭痛やめまい、吐き気、耳鳴り等の症状を引き起こす病気です。
髄液は血液からつくられる透明の液体で、クモ膜下腔を循環して脳や脊髄を衝撃から守ったり脳や脊髄の機能を正常に保ったりする働きがあります。
この脳脊髄液が漏れ続けることによって、上記のような様々な症状を引き起こします。
交通事故から数日後にめまいがした場合は、むちうちであることが多い
事故から数日後にめまいがするようになった場合、上記に挙げてきたような原因が考えられます。
めまいで後遺障害認定を受けるためには検査が必要
めまいの検査には、めまいの症状の程度を調べる眼振検査が必須となります。めまいが生じているときには、眼球に激しい揺れが生じているので、その揺れを検査します。
その他体のバランスを調べる両足立ちや片足立ちをして、体の傾きを調べたり、文字を書いたときの傾きを調べる等の検査を行うこともあります、
このような種々の検査を受け、めまいと交通事故に因果関係が認められれば、後遺障害が認定されることがあります。
めまいで認定される可能性のある後遺障害等級
3級 生命の維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高度の失調または平衡機能障害のために労務に服することができないもの
5級 著しい失調または平衡機能障害のために、労働能力がきわめて低下し一般平均人の1/4程度しか残されていないもの
7級 中等度の失調または平衡機能障害のために、労働能力が一般平均人の1/2以下程度に明らかに低下しているもの
9級 通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状が強く、かつ、眼振その他平衡機能検査に明らかな異常所見が認められ、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの
12級 通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状があり、かつ、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの
14級 めまいの自覚症状はあるが、眼振その他平衡機能障害検査の結果に異常所見が認められないものの、めまいのあることが医学的にみて合理的に推測できるもの
まずは交通事故事件専属のスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
めまいが後遺障害認定された裁判例
バスが急停車し、被害者がバスの窓ガラスや壁に打ち付けた事案において、回転性めまいの後遺障害該当性が問題になりました。当該事案において、裁判例は外リンパ瘻を原因とする回転性めまいが「局部に頑固な神経症状を残すもの」として12級13号に該当することを認めました(福岡地判平成28年4月15日)。
交通事故後にめまいが続く方は弁護士にご相談ください
めまいの症状は後遺障害として認定を受けにくい症状であるため、交通事故後にめまいが続く方はぜひ弁護士にご相談ください。
捜査機関に任意出頭を要請された場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
任意出頭の要請に応じる義務はあるのか、応じなかったときにどのようなリスクがあるのかといったことについて知らなければ適切に対応できません。
そこで、その記事では任意出頭について解説させていただきます。
任意出頭とは
任意出頭とは被疑者等が強制の手段によらず任意に捜査機関に出頭することをいいます。
任意同行と任意出頭の違い
任意同行は、一般的に、捜査機関が警察署等への同行を求め、それに応じた被疑者等が警察署等に同行することをいいます。
これに対して任意出頭は、被疑者等に自ら出頭することをいいます。
任意出頭の目的とは
強制の手段を用いずに、取り調べを行うことを目的にしています。
任意出頭を拒否できるか
任意捜査ですから、当然断ることは可能です。
拒否した場合
被疑者が任意出頭を拒否した場合、それを拒否したことに正当な理由がなければ、任意出頭を拒否したことが逮捕の必要があると考えられる事情の1つとなってしまい、逮捕につながる可能性があります。
無視するとどうなる?
被疑者が正当な理由なく任意出頭を拒否した場合と同様に、捜査機関に逮捕の必要性があると判断され、逮捕されてしまう可能性があります。
事情聴取はどのような内容か
被疑者として、任意出頭の要請に応じ、取り調べを受ける場合には、逮捕された場合と同様に、犯罪を行ったのか、故意はあったのか等のことを聞かれることになるでしょう。
逮捕されることはある?
任意出頭に応じていたとしても、取り調べ等の捜査の結果、逮捕の要件を満たした場合には、逮捕される可能性がありますし、逮捕されることもあります。 逮捕された時の流れを図で分かりやすく解説します取り調べの途中退席は可能?
任意捜査ですから、途中退席は可能です。
ただし、ほとんど取り調べに応じず、すぐに途中退席する等、任意出頭を拒否するのと実質的に変わらないといえる場合には、任意出頭を拒否した場合と同様に逮捕につながる可能性はあります。
事前に対策をしておきましょう
任意出頭の要請に応じ、捜査機関の取り調べを受けるに際しては、事前に取り調べに対してどのように対応するかについて事前に準備しておいた方がよいです。どのような対応をとるかによって、その後の捜査に大きな影響があるからです。
どのような対応するかについては、事案ごとに全く異なりますから、弁護士に相談して助言を求めるべきだと思います。
任意出頭に関するよくある質問
任意出頭の日程を何度も変更すると不利になりますか?
不合理な理由で何度も日程を変更し、任意出頭に応じないと、捜査機関に任意出頭を拒否していると判断される可能性があります。任意出頭を拒否した場合にどうなるかは前述のとおりです。
警察と検察からの呼び出しで違いはありますか?
いずれも取り調べ等の捜査が行われるもので、ほとんど違いはありません。
多くの場合には、警察署に任意出頭するよう要請され、取り調べが実施されて、その後、検察庁に出頭するよう要請される取り調べが実施されることが多く、初めから検察庁に任意出頭するよう要請されることは稀です。
任意出頭の際に自白すれば減刑の可能性はありますか。
任意出頭の要請を受けて、任意出頭しているので、自首とはならず、自白によって減刑されることはありません。しかし、自白したことが反省していることを示す情状の1つとして量刑上考慮されることはあります。
地方に住んでおり、関東の警察署へ任意出頭が求められたのですが出頭拒否しても良いですか?
任意出頭を要請した捜査機関の所在地と、任意出頭を要請される者の現住所が遠方であることは起こりうることです。交通費は自己負担となってしまいますが、任意出頭の要請を拒否した場合には、逮捕につながる可能性があります。
任意出頭の連絡がありお困りなら弁護士が力になります
任意出頭の要請に応じ、捜査機関の取り調べを受ける際に、どのような対応をとるかによって、その後の捜査に大きな影響があります。どのような対応するかについては、事案ごとに異なり、専門知識が必要ですから、任意出頭の要請を受けた場合には、弁護士に相談されることをおすすめします。
相続に関する手続きは以下の表のとおり多くありますが、一定の期限が設定されているものが大多数を占めます。対象となる手続に期限がある場合、適切にかつ期限内に必要な手続を採らないと、思わぬところで損害を被ることがあります。
そのような損害を防止するため、本記事では、相続手続の期限について解説します。
相続手続きの期限について
期限のある手続き
- 相続の単純承認・限定承認・相続放棄(民法915条1項本文 ※伸長可。同但書)
- 相続の承認・放棄の取り消し(民法919条3項)
- 相続財産の財産分離(民法941条1項)
- 遺留分侵害額の請求(民法1048条)
- 相続分の取戻権(民法905条2項)
- 相続回復請求権(民法884条)
- 準確定申告
- 相続税の申告・納税・還付請求
- 生命保険金の請求
期限のない手続き
- 遺産分割
- 相続分の譲渡(民法905条)
- 相続分の放棄
相続放棄は3ヶ月以内に手続きが必要
相続放棄とは、被相続人の財産や負債について、相続することを放棄するための手続のことをいいます。この相続放棄の申立てが家庭裁判所に受理されれば、相続放棄をした者は、相続人としての地位を失い、資産も負債も承継しないこととなります。
この相続放棄は、『自己のために相続の開始があったことを知った時』から3か月以内に、家庭裁判所に対して手続をしなければなりません。この期間を徒過した場合には原則として相続放棄が認められません。相続人が多額の債務を負っている場合には、同債務を相続しなければならないため、相続に関する手続の中で、特に注意しなければならない手続といえます。
もっとも、この期間は家庭裁判所に適切な手続きをすることで、期間を延長することができます(民法915条1項但書)。また、期間を過ぎた後に想定外の負債が見つかった場合など、例外的な場合には、3か月の期間を過ぎていても相続放棄が認められることもあります。
このように、熟慮期間を過ぎていても、相続放棄が認められることもありますので、諦めずに弁護士に相談してください。
準確定申告は4ヶ月以内
準確定申告とは、年の途中で亡くなった被相続人の相続人全員が共同で、被相続人が死亡した年の1月1日から死亡した日までに確定した所得金額及び税額を計算して、申告と納税をすることをいいます。
この準確定申告は、相続人が、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内にする必要があります。
期限内に申告できなかった場合にはペナルティとして、延滞税及び無申告加算税が発生することがありますので、注意が必要です。
相続税の申告・納税期限は10か月以内
相続をする場合には、相続税の申告と納税をする必要があります。
この相続税の申告及び納税は、相続人が、被相続人の死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。
相続人間で遺産の分割について争いが無ければさほど短い期間ではありませんが、問題は、遺産分割協議はまとまっていない場合です。
そのような場合であっても、10か月という相続税申告・納税の期限は延長することができません。
そこで取り急ぎ、各相続人の法定相続分で申告・納税したうえで、遺産分割が完了した後に更正の請求(税額が減少する場合)や修正申告(税額が増加する場合)するといった対応が必要となります。
このように相続税の申告も注意が必要ですし、手続きに時間を要する場合もあります。また、相続税には、死亡保険金の非課税控除、小規模宅地等の特例、配偶者、未成年者の税額免除等の各種の特例があるため、期限内に適切な相続税の申告をするために税理士に依頼することをお勧めします。
土地の遺産相続登記の期限
現在施行されている法律では、相続した不動産に相続登記をする期限は特段設けられておらず、早期に手続をすることが推奨されるという運用になっています。
しかし、令和3年の法改正(民法等の一部を改正する法律(令和3年4月28日法律第24号))により、相続登記の申請が義務化されることになりました。
それにより、相続によって不動産を取得する場合には、不動産を相続する相続人が、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請をしなければならなくなりました(改正後の不動産登記法76条の2)。
この法改正は、令和6年4月1日から施行されることになりますので注意が必要です。
遺留分減殺請求の期限は1年以内
「遺留分」とは、法定相続人(被相続人の兄弟姉妹を除く。)に、法律上最低限保障された遺産の取り分をいいます。遺言に従った遺産の分割、遺贈等により、この遺留分を侵害する場合があります。
その侵害額相当分の金銭の支払い求める請求を「遺留分侵害額請求」(令和元年(2019年)7月1日以前に発生した相続については「遺留分減殺請求権」)といいます。
遺留分侵害額請求には、相続の発生と遺留分を侵害する贈与や遺贈等があったことを知ったときから1年、または相続開始の時から10年という期間制限があります。
特に、相続の開始、贈与、遺贈を知った時から1年という短い期間制限となっているため、遺言書があり、遺留分を侵害するような相続の場合には、注意が必要です。
生命保険金は3年以内に請求
保険金請求権は、保険金の支払事由が発生したときから3年間という期間制限があります(保険法95条1項)。
もっとも、期間内に保険金を請求できなかった事情次第では、保険会社が支払いに対応してくれるケースもあります。時効期間が過ぎていてもあきらめずに、保険会社に確認してみましょう。
遺産分割協議は10年経過していても行うことができる
現在施行されている法律では、遺産分割に期間制限はありません。
もっとも、上述のように相続税の申告の期限があることや、遺産分割を行う際に、必要となる各種資料(特別受益を立証する場合の取引履歴等)には、保存期間があること等からすれば、遺産分割はなるべく早く行うのが望ましいといえます。
なお、令和3年の法改正(民法等の一部を改正する法律(令和3年4月28日法律第24号))により、具体的相続分(特別受益や寄与分を考慮した相続分)による遺産分割は、原則として、相続開始後10年を経過した後はすることができないという制限が設けられることとなりました(改正後の民法904条の3)。この法改正は、令和5年4月1日から施行されることになりますので注意が必要です。
遺産分割のやり直し期限
原則として一度行った遺産分割をやり直すことはできません。
これを自由にできるとすると、やり直しを希望する相続人以外の相続人に不利益になりかねないためです。
逆に考えれば、相続人全員の合意があればやり直しができるということです。このやり直しについて特段期間制限等はありません。
また、遺産分割をやり直すことができる例外として、遺産分割における意思表示の瑕疵(錯誤や強迫等)があった場合が挙げられます。これを理由として遺産分割のやり直しをする場合には、5年間という期間制限があります(民法126条)。
遺産分割の期限について詳しくは弁護士にご相談ください
各相続手続きは、期間制限に従って必要な手続きを行わないと、多大な不利益やペナルティが発生するリスクがあります。また、法改正により、今後、ますます、短期間での適切な意思決定が求められるといえます。
被相続人が亡くなり、多忙となる中で、適切な選択を行い、最適な相続を実現するためには、ご自身だけで対応するのではなく、相続手続きの専門知識を持った弁護士や税理士に相談することが有用です。
相続があったときは、一度、お近くの専門家にご相談ください。
離婚調停は、調停委員を通じて、離婚に向けた話し合いを行う手続きです。
調停では、調停を申し立てた人(申立人)と申し立てられた人(相手方)が交互に調停室に入り、離婚の意向や条件について調停委員に説明することになります。
調停委員は、あくまで中立的な立場であり、基本的には当事者一方に肩入れはしません。しかし、自分の発言や行動によっては、相手の味方になってしまうような場合もあります。
本コラムでは、離婚調停中にすると不利になる可能性のある発言や行動を解説しています。離婚調停に臨む際には、ぜひ本コラムをご覧ください。
離婚調停でしてはいけない不利な発言
離婚調停では、裁判所で実際に話し合いをする日(期日)が設けられ、期日の場で、これまでの夫婦生活などの事実関係や、離婚自体や離婚条件に関する意向について、調停委員に説明することになります。
調停委員への説明として調停の席上でする発言の一つ一つが、離婚調停の最終的な合意に影響を及ぼす可能性があります。その中でも、次のような発言は、調停委員から信頼を得られなくなったり、調停員が相手の見方をしたりするきっかけになることがあるため、特に注意が必要です。
①相手の悪口や批判
離婚調停は、当事者本人同士での協議では、離婚自体や離婚条件について合意ができなかった場合に申し立てられることが多いです。そのため、相手に対して不平や不満を抱えているのは、当然のことではあります。
しかし、これまでの事実関係を良く知っている当事者本人と異なり、調停委員は調停までの当事者の様子について正確には分かりません。当事者同士で話が食い違うことも多く、調停委員には何が事実なのかの判断がつかないことも多いです。
そのような状態で感情的に相手の悪口や批判をすると、調停委員としては「この人は、離婚自体や条件の話し合いの席で、感情的に悪口や批判をするような人なのだ」という印象だけが残ってしまうことになります。
相手に対する不平や不満については、悪口や批判ではなく、具体的な事実を話すことを心がけましょう。
②矛盾する発言
離婚調停の場合、問題となる離婚条件などにもよりますが、4~6回程度の期日が開かれることが多いです。そのため、同じ事実や離婚条件について、複数回にわたって説明することもあります。
その際、以前の説明と矛盾する説明をすると、調停委員に、事実と異なることを話していると思われたり、きちんと考えていないと思われたりする可能性があります。どちらの場合でも、調停委員からの信頼を傷つける可能性があります。
調停で説明する際は、事前に事実関係を思い出しておいたり、離婚条件について考えをまとめたりして、発言に矛盾ができないように注意しましょう。また、事実の詳細が分からない場合や、離婚条件について検討中である場合は、そのことを素直に調停委員に伝えるようにしましょう。
③固執しすぎる発言
自分が積極的に離婚を望んでいる場合や、離婚を望んでいるのは相手方であるものの自分も離婚に応じるつもりである場合は、離婚条件に固執しすぎる発言は避けた方が望ましいです。
離婚について話がまとまらない場合、調停は不成立となります。離婚条件に固執しすぎ、互いの主張が平行線の状態が続くと、調停委員が話し合いでの解決はできないと考えて、調停が不成立とさせられるためです。
離婚条件について考える際は、自分にとって一番良い条件だけではなく、どこまで譲歩できるかも一緒に検討しておきましょう。また、同じ条件について譲れないかの確認を何度も受けた場合は、安易に譲れないと回答するのではなく、本当に譲ることができないのかを良く検討した上で回答しましょう。
④譲歩しそうだと思われる発言
一方で、複数の離婚条件について大きく譲歩できるような発言も、望ましくありません。
調停委員としては、離婚訴訟は当事者の負担も大きいことから、どうにか調停でまとめられないかと考えることが多いです。そのため、時として当事者を説得することもあり、あまり譲歩するような姿勢を見せると、調停委員からは「こちらを説得した方がよさそうだ」と思われてしまう可能性があります。
調停のメリットの一つは、調停の外でのパワーバランスを調停の中には持ち込ませず、対等に話し合いができる点です。譲歩しそうだと思われるような発言は、声の大きい方の望んだままの条件での合意につながる可能性があり、せっかく調停を行うメリットを失わせてしまうものです。
離婚条件に付いて譲歩することを伝える際は、発言の内容に注意しましょう。
⑤他の異性との交際などをほのめかす発言
離婚調停が成立するまでは、あくまで当事者は夫婦のままです。そのため、既に別居している場合でも、配偶者以外の異性との交際は、不貞行為にあたる可能性があります。また、実際には、別居後に交際を開始していたとしても、同居中から交際が続いていたのではないかと思われる可能性もあります。
不貞行為にあたれば慰謝料の問題が生じるだけでなく、調停委員からは社会的なルールを守れない人であると思われてしまう可能性もあります。
他の異性との交際については、不貞行為にあたらないから問題ないと自分で判断して話してしまうことがないように気をつけましょう。
⑥相手に直接交渉するといった発言
話し合いが思うように進まない場合に、「本人と話せればもっと上手くいくはずだ」と思うことはめずらしくありません。
しかし、実際に相手に直接交渉すると調停委員に伝えることは避けましょう。
調停委員から「自己中心的な人だ」「相手方に気が気を加えるのではないか」といったマイナスの印象を抱かせてしまう可能性があるためです。
自分で相手に直接交渉するのではなく、離婚条件の伝え方などを調停委員に提案して、調停委員に対応してもらえるようにしましょう。
離婚調停で聞かれること
申立人が聞かれる内容
- 結婚をした経緯
- 離婚を決意した理由
- 調停を申し立てた経緯
- 現在の夫婦関係
- 子供に関する離婚条件(親権、面会交流、養育費)についての意向
- その他の離婚条件(財産分与、慰謝料等)についての意向
- 離婚後の生活の予定
相手方が聞かれる内容
- 離婚の意思の有無
- 結婚してからの状況
- 現在の夫婦関係
- 子供に関する離婚条件(親権、面会交流、養育費)についての意向
- その他の離婚条件(財産分与、慰謝料等)についての意向
離婚調停中にしてはいけない行動
離婚調停が続いている間は、期日上の発言に気をつけるだけではなく、期日外の行動にも注意が必要です。
具体的には、次のような行動を取ると、調停委員からの信頼を傷つけたり、不利な離婚条件で離婚したりすることになる可能性があります。離婚調停の期間中は、このような行動は取らないように気をつけましょう。
①配偶者以外との交際や同棲
不利な発言の部分でも触れたように、離婚調停中の配偶者以外との交際や同棲は、不貞行為と判断される可能性があります。不貞行為にあたる場合は、慰謝料の問題が生じるだけではなく、相手が心情的な理由で離婚に応じなくなることもあるため、離婚が成立しにくくなります。
また、仮に婚姻関係の破綻後に交際や同棲であったとしても、調停委員が不誠実であるとの印象を抱く可能性も否定できません。
離婚調停中は、配偶者以外の異性との交際や同棲は控えましょう。
②相手に直接連絡する
不利な発言の部分でも触れたように、相手に直接連絡する行為は、調停委員にマイナスの印象を与える可能性があります。
また、調停委員には調停外のやり取りは分からないため、調停外のやり取りの内容について当事者間で争いが生じると、調停委員にはどちらが本当のことを言っているのかも分かりません。そうなると、ただ調停を紛糾させるだけで、話し合いは進まないことになってしまいます。
そして、相手が拒否している場合に執拗に連絡をすると、ストーカー規制法違反として警察から警告を受ける可能性もあります。
離婚調停中は、相手に対する直接の連絡は避けましょう。
③離婚調停を欠席する
期日は平日の日中に設けられるため、仕事などの予定の調整が難しいことが度々あります。
特に、裁判所と申立人だけで決定する初回期日は、相手方の方で出席できないことがほとんどです。
しかし、裁判所への連絡なく期日を欠席した場合、話し合いに非協力的であると判断されたり、欠席が続けば調停が不成立となったりする可能性があります。
自身や家族の体調不良、急な仕事などでやむを得ず期日に出席できなくなった場合は、事前に裁判所に連絡をしておきましょう。
④子供を勝手に連れ去る
当事者が別居をしている場合、子供と一緒に居たいあまりに連れ去ってしまう方もいます。
しかし、子供の連れ去りは、子供の生活環境に大きな変化を来たし、子供に精神的に負担を与える行為です。そのため、子供を勝手に連れ去ることは、親権の獲得にあたって大きく不利に働く危険性が高いです。また、調停委員からも、子供のことを考えていないと思われる可能性が高いでしょう。
自分で子供の世話をしたい場合には、監護者指定の審判などの法的手続きを利用するようにしましょう。
離婚調停を有利に進めるためのポイント
離婚調停は、調停委員に取りもってもらい、離婚に向けた話し合いをする手続きです。
そのため、調停委員に悪い印象を持たれたり、自分に不利な離婚条件を提案されたりしないようにすることが重要となります。
調停を進めるにあたっては、自分の発言や行動が、調停委員にどのような印象を与えることになるのかを良く考えておくことが重要です。
調停外で望ましくない行動を避けるだけではなく、話すべき内容を取捨選別して、調停委員に誤解されることがないような方法で伝えることが、離婚調停を有利に進めるためのポイントとなります。
離婚調停で不利な発言をしないようまずは弁護士にご相談ください
多くの方にとって、離婚調停は初めての経験です。また、以前に離婚調停を経験されている方の場合でも、夫婦関係や調停委員の違いによって、対応の方法は異なります。
そのような状況で、調停委員に伝えるべき内容や伝え方を適切に選択することは、どうしても難しい面が多いです。調停委員が当事者の発言を真っ向から否定することは少ないため、自分では適切に説明をできているつもりでも、実は調停委員からの信頼を徐々に失っているという場合もあります。
離婚調停の経験がある弁護士であれば、伝えるべき内容や伝え方について、他のケースと比較しながら選択することができます。本人から伝える内容や方法を事前に相談できるだけではなく、弁護士から調停委員に対して説明することも可能です。
離婚調停の申立てを考えられている方や、申立てをされた方は、まずは一度弁護士にご相談ください。
交通事故被害に遭うと、ご自身の怪我の治療のみならず、相手方や相手方が加入する保険会社(以下では「相手方保険会社」といいます。)に対応しなければならないなど、大きな負担が生じます。そうした際、相手方や相手方保険会社との交渉を弁護士に任せたいと思われた方は多くいるのではないでしょうか。
ただ、弁護士に依頼するとご自身の負担が軽減する反面、着手金や成功報酬などの費用が発生するのではないかと心配になることもあるかと思います。この点、加入する自動車保険に弁護士費用特約が付帯していれば、弁護士費用を大幅に抑えることができます。
では、弁護士費用特約が付帯していない場合には、多額の弁護士費用を支払わなければならないのでしょうか。
そこで、今回は、弁護士費用特約が付帯していない場合にも、弁護士費用を抑える方法があるのか、弁護士に依頼するメリットはあるのかという点について解説します。
弁護士費用特約なしの場合の対処法
加入する自動車保険に弁護士費用特約が付帯しない場合の対処法としては、大きく分けて、
・自動車保険以外の保険を確認する
・家族や同乗者の保険を確認する
ということが考えられます。
自動車保険以外の保険を確認する
そもそも弁護士費用特約は自動車保険のみに付帯するものであると思われる方も多くいますが、実は、自動車保険以外でも同様の特約が付帯している場合があります。
この場合、当該保険に付帯する特約を使用して、交通事故における相手方や相手方保険会社との交渉を弁護士に依頼することが可能です。
自動車保険以外に弁護士費用特約が付帯している可能性のある保険の代表例は以下のものとなります。
- バイク保険
- 自転車保険
- 火災保険
- 建物、家財保険
もし、ご自身の加入する自動車保険に弁護士費用特約が付帯していない場合には、上記の保険に弁護士費用特約が付帯しているか確認することをおすすめします。
家族や同乗者の保険を確認する
また、弁護士費用特約の適用対象は、契約者本人のみならず、本人に関係する一定の範囲の人も含まれる場合があります。
加入する自動車保険によって適用範囲が変わる場合もありますので、ご自身の加入する自動車保険に弁護士費用特約が付帯していない場合でも、家族や同乗者が加入する自動車保険の弁護士費用特約を使用することができるか確認することをおすすめします。
特約がない場合、弁護士費用はどれくらいかかる?
では、上記の方法を確認しても弁護士費用特約を使用することができない場合、実際の弁護士費用はいくらくらいかかるでしょうか。
以下では、弁護士費用の代表的なものを個別に紹介します。
相談料
相談料とは、弁護士に交通事故に関する法律相談をする際に発生する費用のことをいいます。
各弁護士事務所により料金設定は変わりますが、相談時間30分あたり5000円(税別)の相談料が相場となります。
着手金
着手金とは、弁護士が交通事故の交渉などを受任して事件処理に当たる際の対価として発生する費用のことをいい、文字どおり事件に着手する際に発生する費用のことをいいます。
着手金については、相談料よりも弁護士事務所ごとに料金設定が変わることが多く、依頼内容の類型(交渉、訴訟など)ごとに定めていることもあれば、「請求金額または獲得金額の〇%」と定めている弁護士事務所もあります。
実費
実費とは、弁護士の仕事に対する対価ではなく、例えば訴訟を提起する際に裁判所に納める手数料など事務処理を進めるために発生する費用のことをいいます。
裁判所に納める手数料については、民事訴訟費用等に関する法律において定められており、裁判所のホームページでも確認をすることができます。
成功報酬
成功報酬とは、弁護士に依頼して示談交渉が成立するなど事件が解決した際に発生する費用のことをいいます。
これも着手金と同様に、依頼内容、請求金額、獲得金額に応じて、弁護士事務所ごとに料金設定がされています。
弁護士費用特約がなくても弁護士に依頼すべき?
弁護士費用特約を使用することができない場合、上記のとおり、種々の弁護士費用や実費が発生することとなり、事件が解決しても結果的に費用倒れになってしまう可能性も全くないわけではありません。
では、どのような場合が費用倒れとなってしまうのでしょうか。
物損の場合
交通事故における物損とは、人以外の物に損害が生じた場合のことをいいます。
そのため、ご自身の自動車だけでなく、交通事故により自動車に積載していた物が壊れたような場合や自動車を修理している間にレンタカーを借りる場合の費用(交通事故に遭わなければレンタカー費用を支出する必要はないため、そのような損害も物に生じた損害と考えられています。)なども物損に含まれることになります。
物損で費用倒れとなる場合として代表的なものは、
・軽微な物損事故(壊れたものに金銭的な価値がないような場合を含みます。)
・被害者の過失割合が大きい
などが挙げられます。
人身事故の場合
交通事故における人損とは、人に生じた損害、すなわち、交通事故により人が亡くなった場合や怪我をした場合に生じる損害のことをいいます。
人損で費用倒れとなる場合として代表的なものは、
・軽微な人身事故(軽い擦り傷などで病院での治療を継続する必要が無い場合など。)
・被害者の過失割合が大きい
などが挙げられます。
費用倒れのリスクがないかは確認してもらえる
このように、せっかく弁護士に依頼をしたとしても費用倒れになってしまう可能性も全くないわけではありません。
そこで、費用倒れを回避するために、法律相談時に弁護士に損害額の見積もりを出してもらったり、着手金がかからない完全成功報酬型の弁護士事務所に依頼するといった点も検討することが重要であるといえます。
特約なしの交通事故の解決事例
依頼者の方は道路誘導の際に車と接触し、足の指の骨を折るなどの傷害を負いました。
その方はご自身で車を運転される方ではなかったため、自動車保険に加入しておらず、弁護士費用特約を使用することができない状況で弊所に相談に来られました。
弁護士に相談することが初めてだったとのことで、弁護士費用も含め色々と心配をされていましたが、弊所の弁護士が丁寧に説明をしたことにより、納得され依頼をされました。
その結果、依頼者の方は、相手方保険会社の当初の提示から130万円も増額した金額を賠償金として受け取ることができました。
弁護士費用特約に加入していなくても、まずはご相談ください
今までは、ご自身の加入する自動車保険に弁護士費用特約が付帯していないために、弁護士に依頼することを諦めてしまっていた方も多くいたのではないでしょうか。
しかしながら、上記のとおり、弁護士費用特約が使用できなかったとしても、弁護士に依頼することは可能です。また、上記で紹介した事例のように、弁護士費用特約が使用できなくても多額の示談金を回収することができるケースもあります。
そのため、弁護士費用特約が使用できずに費用倒れになってしまうのではないかと疑問に思われている方も、まずは一度弁護士に相談されることをおすすめします。
逮捕とは、逃亡や罪証隠滅(証拠を隠すことをいいます。)を防止するため、被疑者の身体の自由を指定場所にて短期間拘束することを意味します。
逮捕には、①通常逮捕(刑訴法199条)、②現行犯逮捕(刑訴法212条、同法213条)、③緊急逮捕(刑訴法210条)の3種類があります。
逮捕の種類
上述のとおり、逮捕には、①通常逮捕、②現行犯逮捕、③緊急逮捕の3種類があります。
①通常逮捕とは、裁判所が発する逮捕令状によって行う逮捕のことをいいます。
②現行犯逮捕は、令状なく現行犯人を逮捕することをいい、これは私人であっても行うことができます。
③緊急逮捕は、一定の犯罪を犯したと疑うに足りる十分な理由がある場合に、無令状(ただし逮捕後速やかに令状請求が必要)で行う逮捕のことをいいます。
逮捕の種類を知っておく重要性
逮捕は短期間であったとしても、身柄を拘束され外部との連絡も遮断されるため、私人の自由に対する制約は甚大です。そのため、刑事訴訟法は逮捕の要件を明確に定めています。
逮捕の各種類・要件を理解しておくことで、ご自身やご親族が万一逮捕されてしまった場合に、どの種類の逮捕によって身体拘束がなされているか、その要件は何か、この逮捕は要件を満たさず違法ではないか、等を識別できるようになり、捜査機関に対して適切な対応をとることができる場合もあります。
通常逮捕
通常逮捕とは、裁判所が発する逮捕令状による逮捕のことです。一般の方にとっては一番なじみのある逮捕だと思われます。逮捕は令状によってされることが刑事訴訟法の大原則であるため、通常逮捕が一般的な逮捕である、ということができます。
通常逮捕の要件
通常逮捕の要件は、①逮捕の理由、➁逮捕の必要性、③逮捕状の取得になります。
捜査機関が裁判所に逮捕状の発布を請求し、裁判所において、①と➁があると認めた場合に、③逮捕状を発布します。ここでいう➀逮捕の理由とは「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(刑訴法199条1項)を意味します。➁逮捕の必要性とは逃亡もしくは罪証隠滅のおそれを意味します。
なお、通常逮捕の場合には、逮捕をする際に逮捕状を被疑者に提示することが必要です。
逮捕状について
逮捕状とは、検察官または司法警察員の書面による請求によって、裁判官が発行する令状の一種です。
逮捕状の請求は、逮捕の理由・必要性を明らかにする資料を添付して行われ、当該資料に基づき、裁判官が逮捕の各要件を充たしているか否かを判断します。
逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認めるときは、明らかに逮捕の必要がないと認める場合を除き、逮捕状を発付しなければなりません。
通常逮捕の多い犯罪
通常逮捕される犯罪で多いものとしては、贈収賄等の犯行現場を取り押さえることが困難な犯罪があげられますが、万引き等の窃盗罪、痴漢行為等の条例違反であっても通常逮捕がなされることが多いのが実情です。
なお、軽微な犯罪(30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪)については、住居不定又は正当な理由なく任意出頭に応じない場合にのみ通常逮捕することができます(刑訴法199条1項但書)。
現行犯逮捕
現行犯逮捕とは、「現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者」(現行犯人といいます。)を無令状で逮捕することをいいます。現行犯逮捕の特徴としては、通常逮捕と異なり、私人であっても現行犯逮捕をすることができること、無令状で行えることが挙げられます。
これは、令状の発布を受けるまで、また司法警察員でないと逮捕できないとすると、現行犯人が逃亡や罪証隠滅をするおそれがあるためです。
準現行犯逮捕
準現行犯逮捕とは、ある一定の要件に該当する場合に、「現行犯人とみなす」ことで、無令状で逮捕することをいいます。
ある一定の要件とは、被疑者が①犯人として追呼されているとき、②贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき、③身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき、④誰何されて逃走しようとするとき、に該当し、罪を行い終わってから間がないと明らかに認められるときです。
私人逮捕
私人逮捕とは、犯罪の被害者本人や、目撃者がその場で犯人を拘束することをいいます。
現行犯逮捕は誰でも逮捕状無くして行うことが可能であるため、捜査機関以外の一般私人が行うことが認められています。
なお、私人が現行犯人を逮捕した時には、直ちにこれを検察官や司法警察職員に引き渡さなければなりません。
現行犯逮捕の要件
現行犯逮捕の要件は、①その犯人による特定の犯罪であることが、逮捕者にとって明白であること、②その犯罪が現に行われていること、又はその犯罪が現に終わったことが、逮捕者にとって明白であることです。
なお、現行犯逮捕においても、通常逮捕と同様に逮捕の必要性が要求されると考える見解が有力です。
現行犯逮捕が多い罪名
現行犯逮捕は「現に罪を行い、又は現に行い終わった」者に対してしか行うことができません。そのため、その場で犯罪と犯人を現認できるような状況が必要となります。
現行犯逮捕が行われる典型例としては、①所持品検査によって発覚した覚せい剤等の違法薬物所持、②万引きGメンによって覚知された万引きなどがあげられます。
被害者との示談で不起訴となる可能性があります
万が一逮捕された場合であっても、必ずしも起訴されるとは限りません。
そのため、逮捕直後から不起訴に向けた弁護活動を早期に行うことが重要となります。
特に被害者がいる犯罪については、被害者との示談が成立しているかどうかは、検察官が起訴・不起訴を判断する上で極めて重要な事情となります。
逮捕をされてしまった場合には、できる限り早期に弁護士に依頼することをおすすめします。
緊急逮捕
緊急逮捕とは、一定の犯罪を犯したと疑うに足りる十分な理由がある場合で、裁判官の逮捕状の発付を待っていたのでは、その目的を達し得ないときに、逮捕の理由を被疑者に告げて、無令状(ただし逮捕後速やかに令状請求が必要)で行う逮捕のことをいいます。
緊急逮捕の要件
緊急逮捕の要件は、①死刑または無期もしくは長期3年以上の懲役もしくは禁固にあたる罪であること、②犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合であること、③急速を要し、裁判官の令状を求めることができないこと、④逮捕後直ちに裁判官の逮捕状を求める手続きをとることです。
逮捕された場合の流れ
逮捕された場合、逮捕後48時間以内に警察官から検察官に身柄が送致されます。検察官に送致されてから24時間以内に検察官から裁判所に対して勾留(身柄拘束の延長のことです。)請求が行われます。裁判官による面談を経て、勾留の決定がなされた場合、勾留の請求がされた日から10日間、勾留延長決定がなされた場合はさらに最大10日間勾留され、その勾留期間中に検察官にて起訴・不起訴の判断をします。
逮捕後の流れについて詳しく見る逮捕されてしまった場合の対処について
このように、逮捕された場合には身体拘束について厳格な期間が定められているため、検察官による起訴・不起訴の判断が行われるまでに、時間的な猶予は無いと言っていいでしょう。
そのため、逮捕後できる限り速やかに、弁護士に依頼の上、逮捕時の要件(必要性や理由)を争うことや、示談等により逮捕の必要性がないことを主張する等の身柄解放や不起訴に向けた適切な弁護活動を行うことが極めて重要といえるでしょう。
接見・面会について
逮捕期間中は、警察署の留置所に身柄を拘束されることがほとんどであり、弁護士以外の者との接見や面会はできません。弁護人との接見については、逮捕直後から警察官の立ち合いなしで行うことができます。
勾留後には、弁護人以外の一般の方と面会することができますが、警察官も立ち会うことになります。また、面会時間も短時間に制限されることが多いです。
不起訴で釈放されたい場合
逮捕された場合、検察官による起訴・不起訴の判断が出るまでに、時間的な猶予はないため、逮捕直後から不起訴に向けて適切な弁護活動を行うことが重要です。特に被害者がいる犯罪の場合、被害者との示談が成立しているかどうかが検察官による起訴・不起訴の判断で重要な要素となりますので、逮捕後速やかに弁護人を選任し、被害者との間で示談交渉を開始しましょう。
もちろん、告げられた犯罪事実に身に覚えがない場合には、起訴するだけの嫌疑が無いという資料を収集して検察官に説明していく必要があります。
逮捕の種類に関するよくある質問
準現行犯逮捕は、どの程度距離や時間に間がある場合認められるのでしょうか。
準現行犯における「罪を行い終わってから間がない」とは、犯罪の実行行為の終了時点から時間的に近接した時点をいいます。ただ、準現行犯逮捕が無令状で行える根拠は、誤認逮捕のおそれが低い点にありますから、例えば、被害者が犯行後逮捕時まで一貫して被疑者を現認しているという状況であれば、比較的長く現場との距離や時間が開いても準現行犯逮捕は認められるでしょうし、逆に、一度見失うなど現認が途切れた場合等には、準現行犯逮捕は認められにくくなるといえます。
万引きで、後日通常逮捕されることはあり得ますか?
現行犯逮捕でない限り、先ずは任意出頭が求められると思われますが、逮捕の要件を満たす限り、通常逮捕されることもあります。
緊急逮捕の場合、警察が家に上がり込むことはあるのでしょうか?
自宅家宅捜索中に緊急逮捕の必要が生じたような場合には、自宅内で緊急逮捕されることはあり得ます。そもそも緊急逮捕は例外的な手続きであり、緊急逮捕することを前提に捜査機関が自宅を訪れることはあまりないと思われます
再逮捕とはなんですか?
被疑者の逮捕・勾留については「一罪一逮捕一勾留の原則」が妥当しますので、同一の犯罪事実で複数回逮捕・勾留されることは通常ありません。もっとも、同じ被疑者が別の余罪等の犯罪事実で、複数回逮捕・勾留が継続することがあります。
弁護士への依頼が被疑者の命運を分けます
逮捕後、検察官が起訴・不起訴の判断が出るまでの時間的猶予はあまりないため、兎にも角にも刑事弁護はスピードが命です。早い段階で弁護士に依頼することで、起訴・不起訴という結果に大きな影響を与えるのみならず、ご家族や勤務先等の外部との連携も取れるようになります。
このように、特に逮捕されてから勾留されるまでの最大72時間は、被疑者にとって重要な時間である一方で、力になれるのは弁護士しかいません。万が一に備え、頼りがいのある弁護士や法律事務所を探しておくことをお勧めいたします。

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- 保有資格
- 弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
