盗撮・のぞきは軽犯罪法違反?迷惑防止条例との違いや対処法など

盗撮・のぞきは軽犯罪法違反?迷惑防止条例との違いや対処法など

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕

監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士

盗撮やのぞきは、処罰の対象となる犯罪行為です。
これらの行為には、主に「軽犯罪法違反」や各都道府県が定める「迷惑防止条例違反」が適用されます。

本記事では、盗撮・のぞきがどのような罪に問われるのか、性的姿態撮影罪新設の影響、そして万が一逮捕された場合の弁護士によるサポート内容について詳しく解説します。

盗撮・のぞきは軽犯罪法違反に該当する?

盗撮やのぞきを行った場合、行為の態様や場所に応じて、軽犯罪法違反、迷惑防止条例違反、あるいはその両方が適用される可能性があります。

軽犯罪法とは、比較的軽微な犯罪行為に対して拘留や科料を科す法律です。

このうち、軽犯罪法1条第23号では「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」を処罰対象として規定しています。

目枠防止条例とは、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止するための条例です。
各都道府県によって定められており、それぞれの条例の内容には若干の違いがあります。

法改正により撮影罪が新設

これまで盗撮は主に条例や軽犯罪法で処罰されてきましたが、法改正により「性的姿態撮影等処罰法」が新設されました。

「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」である性的姿態撮影等処罰法で性的姿態等撮影罪(撮影罪)が規定されています。

この法律の施行日である令和5年7月13日以降に行われた、盗撮やのぞき行為は、原則としてこの撮影罪が適用されることになります。
一方で、法改正前に行われた盗撮行為や、新法の要件に該当しないケースについては、引き続き軽犯罪法や従来の迷惑防止条例が適用されます。

盗撮の状況によっては他の罪にも問われる

盗撮やのぞきは、その手段や対象によって他の重大な罪に問われることがあります。

たとえば、撮影やのぞき目的で他人の住居や管理する建造物に侵入した場合は、住居侵入罪建造物侵入罪が成立します。
また、18歳未満の児童の裸や半裸、性交等の様子を盗撮した場合は、児童ポルノ禁止法違反に抵触し、より厳格な処罰を受ける可能性があります。

このように、一つの行為が複数の犯罪を構成することも少なくありません。

軽犯罪法と迷惑防止条例の違い

軽犯罪法と迷惑防止条例の大きな違いは、適用される場所と、科される刑罰の重さにあります。

迷惑防止条例違反の適用される場所は駅構内や公衆の風呂場など公共の場所ですが、軽犯罪法の場所はビル内のトイレや会社の更衣室など公共の場所以外も適用対象となります。
また、刑罰の内容についても以下のように条例違反の方が重い刑罰設定されている傾向にあります。

  刑罰
軽犯罪法 拘留(1日以上30日未満)
または科料(1000円以上1万円未満)
迷惑防止条例(東京都の場合) 1年以下の懲役または100万円以下の罰金

軽犯罪法にあたる盗撮

軽犯罪法は、主に「公共の場所ではない場所」で行われるのぞきや盗撮行為を規制しています。

具体的には、ビル内のトイレ、会社の更衣室、私有地の風呂場などが該当します。
ただし、法改正後の犯罪行為の場合には、軽犯罪法よりも厳しい撮影罪に問われる可能性があります。

迷惑防止条例にあたる盗撮

迷惑防止条例は、主に公共のトイレ、駅、電車内などの「公共の場所」や「公共の乗物」における盗撮やのぞき行為を規制対象としています。階段でのスカート内の盗撮や、公共のトイレでの撮影などがこれに該当します。

このような、公共の場所で盗撮やのぞき行為を行うと、行った都道府県の迷惑防止条例違反として処罰される可能性が高いです。

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盗撮・のぞきの軽犯罪法違反で逮捕されるケース

盗撮やのぞき行為が発覚した場合、警察による身柄拘束(逮捕)が行われる可能性があります。
逮捕には大きく分けて「現行犯逮捕」「後日逮捕(通常逮捕)」の2つのパターンがあります。

現行犯逮捕

盗撮やのぞきにおいては、その場に居合わせた被害者や周囲の人、あるいは巡回中の警察官によって現行犯逮捕されるケースが圧倒的に多いです。

現行犯逮捕とは、犯行中または犯行直後の犯人を、逮捕状なしに逮捕する手続を指します。
証拠(スマートフォン内の画像やカメラ機材など)が犯行現場で確認されるため、そのまま警察署へ連行されることになるでしょう。

後日逮捕(通常逮捕)

盗撮やのぞき行為でも後日裁判官の令状に基づいて通常逮捕(後日逮捕)されることがあります。

たとえば、盗撮のために設置した隠しカメラが発見され、その所有者が特定された場合や防犯カメラの映像から身元が判明した場合などです。

この場合、警察によって犯人が特定できたため、裁判所に逮捕状を請求し、その逮捕状に基づいて逮捕されることになります。

盗撮・のぞきで逮捕された場合の流れ

逮捕後の手続は厳格な時間制限のもとで進行します。
まず、逮捕から48時間以内に警察から検察庁へ身柄が送致されます。
送致後、検察官がさらなる拘束が必要と判断すれば、24時間以内に裁判官へ勾留を請求します。

勾留が決定すると、まずは10日間、延長が認められればさらに最長10日間、合計で最大20日間の身柄拘束が続きます。
その後、検察官が起訴・不起訴を決定し、起訴されれば刑事裁判を受けることになります。

軽犯罪法違反で逮捕されると前科がつく?

前科は、過去に有罪判決を受けた経歴があることを意味します。
盗撮やのぞきで逮捕されても不起訴になるなど有罪判決を受けなければ前科がつくわけではありません。

前科がつくと、仕事のうえでは解雇や懲戒処分のおそれ、特定の職業への就職制限や資格の喪失がありえ、家庭においては離婚の可能性もあります。
また、インターネット上に事件の情報が残り、他人にこのことを知られるおそれがあります。

前科によるデメリットは大きく、前科を回避するために不起訴処分を獲得するなど早急な対応が必要となります。

盗撮・のぞきの軽犯罪法違反について弁護士に相談するメリット

被害者との示談交渉を任せることができる

盗撮事件の解決において、被害者との示談成立は極めて重要です。

被害者が加害者に対して恐怖心や処罰感情をもっていることが多いため、被害者が容易に示談に応じることは考えにくく、加害者本人が直接示談交渉を試みることは避けるべきです。

弁護士が代理人となることで、被害者の感情に配慮しつつ、適切な謝罪と賠償を行うなどをして示談成立の可能性を高めてくれるでしょう。

早期の身柄解放が期待できる

逮捕されると、起訴前の段階で最長23日間の身柄拘束を受ける恐れがあります。

長期間の拘束は、会社への欠勤や学校への欠席を余儀なくさせ、解雇や退学といった深刻な社会的制裁に繋がりかねません。

弁護士は、被害者との示談成立や証拠隠滅や逃亡の恐れがないことを理由に捜査機関や裁判所に対して早期釈放の働きかけを行ってくれます。

起訴されたとしても減刑や不起訴処分を目指せる

万が一起訴された場合でも、弁護士は刑罰を軽くするための弁護活動を行います。

法廷での適切な主張や再犯防止のための具体的な環境整備(通院治療の提示など)を証明することで、執行猶予の獲得や減刑を目指します。
また、捜査段階から関与することで、反省の態度や示談の結果を検察官に示し、裁判そのものを回避する「不起訴処分」を目指すことが最大のメリットとなります。

盗撮・のぞき行為による軽犯罪法違反で逮捕された場合はすぐに弁護士にご相談ください

逮捕という事態に直面した際、ご本人やご家族だけで解決しようとすることは、かえって状況を悪化させることにもなりかねません。刑事手続は時間が勝負です。

当事務所では、被害者の方への誠実な対応による示談成立に向けた活動、早期の身柄解放、前科をつけないための弁護活動など高品質なサービスを提供できるよう尽力いたします。

一人で悩まず、まずは専門家である弁護士にご相談ください。

盗撮やのぞき行為をしてしまった際、多くの方が最も不安に感じるのは「仕事への影響」ではないでしょうか。特に「即座にクビになるのでは?」という恐怖は計り知れないものです。

結論から申し上げますと、盗撮・のぞきをしたからといって、必ずしも即座に解雇されるわけではありません。解雇の有効性は、民間企業の会社員なのか公務員なのかといった立場や、犯行が社内で行われたのか私生活上のものなのかなど、個別の状況によって大きく異なります。

本記事では、盗撮・のぞきによる懲戒解雇の可能性や、職場に発覚するルート、そして解雇を回避するために弁護士ができることについて詳しく解説します。

盗撮・のぞきで懲戒解雇される可能性はある?

盗撮・のぞき行為で勤務先から懲戒解雇(公務員の場合は懲戒免職)となる可能性は、残念ながらゼロではありません。しかし、実際に解雇という極めて重い処分が下されるかどうかは、逮捕の有無や不起訴処分の獲得状況、そして何より勤務先の種類や規定に左右されます。

そもそも「懲戒解雇」とは、従業員が著しく企業秩序を乱した場合に、制裁として行われる最も重い解雇処分です。法的には、単に「犯罪を犯したから」という理由だけで自由に解雇できるわけではなく、一定の厳格な条件を満たす必要があります。

会社員の場合

民間企業に勤める会社員の場合、解雇の可否はまず第一に「就業規則」の定めに依拠します。

会社の就業規則によって決まる

盗撮・のぞきを理由に解雇されるかは、勤務先の就業規則にどのように記載されているかが重要です。

多くの企業では「刑罰法規に抵触する行為」や「著しく会社の社会的信用を傷つける行為」を懲戒解雇事由として挙げています。
ただし、就業規則に記載があるからといって、無条件に懲戒解雇が認められるわけではありません。

裁判例においても、企業の社会的信用が著しく低下し、会社が多大な実害を被ったと客観的に認められない限り、解雇は有効とはなりにくい傾向にあります。

懲戒解雇が有効となる条件

労働契約法第15条により、懲戒処分が有効となるには以下の条件を満たす必要があります。

  • 懲戒権の根拠
    就業規則に懲戒の種別と事由が明記され、周知されていること
  • 客観的に合理的な理由
    誰が見ても解雇がやむを得ないといえる、客観的な事実があること
  • 社会通念上の相当性
    処分の重さが、犯した行為に対してバランスを欠いていない(重すぎない)こと

盗撮・のぞきをした状況も考慮される

解雇の「相当性」を判断する上で、犯行の状況は極めて重要です。

  • 職場での犯行
    同僚や顧客を対象に職場で盗撮・のぞきを行った場合、企業の秩序を直接的に乱す行為とみなされ、懲戒解雇の合理性・相当性が認められやすくなります。
  • 私生活での犯行
    通勤途中や休日など、仕事とは無関係な場所での犯行は、原則として企業の秩序維持とは直接関係がないと判断されます。そのため、逮捕・報道などで会社の名誉が著しく毀損されない限り、原則として懲戒解雇は認められにくいといえます。

解雇以外の懲戒処分になる可能性もある

たとえ解雇を免れたとしても、何らかの制裁が下される可能性は高いでしょう。
主な懲戒処分には以下のものがあります。

  • 戒告・訓戒・けん責:厳重注意を行い、反省を促す最も軽い処分
  • 減給:一定期間、給与の一部をカットする処分
  • 出勤停止・停職・懲戒休職:一定期間の就労を禁じ、その間の賃金を支払わない処分
  • 降格・降職:役職や資格を引き下げる処分
  • 諭旨解雇・諭旨退職:本人に退職届の提出を勧告し、応じない場合に懲戒解雇とする、懲戒解雇に次いで重い処分

公務員の場合

公務員の場合は、民間企業の従業員よりも格段に厳しい立場にあります。

懲戒免職される可能性は高い

公務員には「全体の奉仕者」として高い倫理性と信用が求められます。
そのため、盗撮・のぞきといった性犯罪については、私生活上の行為であっても、悪質性が高いと判断されれば「懲戒免職」になるリスクが非常に高いのが実情です。

公務員の懲戒処分の指針とは

国家公務員の場合、人事院が策定した「懲戒処分の指針について」に基づき処分が決定されます。
指針によれば、私生活上の盗撮行為は原則として「停職または減給」とされていますが、以下の事情がある場合はより重い処分(免職など)が検討されます。

  • 動機・態様が極めて悪質、あるいは結果が極めて重大な場合
  • 職員の職責が特に高い(管理職など)場合
  • 公務内外に及ぼす影響が特に大きい場合

禁錮以上の処分を受けた場合は失職する

最も注意すべきは「当然失職」の規定です。

公務員が盗撮・のぞきを理由に起訴され、裁判で禁錮以上の刑(執行猶予付きを含む)が確定した場合、懲戒免職の手続きを待たずして自動的に職を失います。
一方で、罰金刑や拘留、科料にとどまった場合は、この当然失職の規定には該当しません。

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盗撮・のぞきが会社にばれてしまう理由とは?

「会社に黙っていればバレないのでは」とかんがえる方もいますが、実際には、①社内に被害者や目撃者がいる場合、②実名報道により発覚する場合、③警察から会社へ連絡が行く場合、④無断欠勤の長期化によってバレる場合の4ルートから発覚するケースがほとんどです。以下にて詳細に見て行きます。

社内に被害者や目撃者がいる

社内や通勤ルートで同僚などを対象にした場合、被害者や目撃者が直接会社に通報・相談することで発覚します。会社側は申告を受けて内部調査を行い、本人への聞き取りや防犯カメラの確認等を経て事実が特定されます。

実名報道によって発覚する

盗撮・のぞきで逮捕されると、ニュースやSNSで実名報道されるリスクがあります。
特に公務員や教育職、大企業の従業員などの場合は公共性が高いと判断され、実名が出るケースが多く見られます。

警察から会社へ連絡がいく

警察が必ず会社に連絡するわけではありませんが、捜査上必要な場合には連絡がいくことがあります。
例えば、職場のパソコンや備品が犯行に使われた疑いがある場合や、職場内での犯行で裏付け捜査が必要な場合などがこれに該当します。

無断欠勤の長期化によってばれる

逮捕されると、外部との連絡が遮断されたまま、最大で23日間も身柄を拘束される可能性があります。
何日も無断欠勤が続き、会社からの自宅連絡にも応じられない状態になれば、不審に思った会社が家族や警察を通じて事実を知ることになります。

盗撮・のぞきで解雇を防ぐ3つの方法

以上で見てきたように盗撮・のぞきが会社にバレた場合には、職場を解雇される可能性が一定程度残ってしまうところは正直、否定できないところです。

そこで、職場を辞めずに済む可能性を最大限に高めるには、①早期に弁護士に依頼をした上で被害者等に示談交渉をする、②逮捕や実名報道を回避する、③早期釈放や不起訴処分を目指すの3つのステップが不可欠です。

➀早期に弁護士に依頼して示談交渉する

解雇回避において最も重要なのは、被害者との「示談」です。
示談が成立し、被害者から許し(宥恕)を得ることができれば、検察官が不起訴判断を下しやすくなります。

ただし、加害者本人が示談交渉を行うことは極めて困難です。警察が連絡先を教えることはありませんし、無理に接触しようとすれば証拠隠滅や脅迫とみなされ、かえって状況を悪化させます。
また、加害者の家族等によって示談交渉を行うこと困難であることがほとんどです。

必ず弁護士を介して誠実に交渉を進める必要があります。

②逮捕や実名報道を回避する

職場に知られないためには、そもそも逮捕されない(在宅事件とする)ことが重要です。
弁護士を通じて「逃亡や証拠隠滅の恐れがない」ことを論理的に主張すれば、逮捕を回避できる可能性があります。

逮捕されなければ実名報道のリスクも大幅に下がり、無断欠勤も発生しないため、職場に知られる可能性を最小限に抑えられます。
また、万一逮捕された場合でも、弁護士から報道機関や捜査機関に対し、実名報道を控えるよう申し入れることも可能です。

③早期釈放や不起訴処分を目指す

もし逮捕されてしまった場合は、1日も早い釈放を目指します。
その上で、不起訴処分となることを目指すこととなります。

・早期釈放
勾留決定が出る前に釈放されれば、欠勤を3日程度に抑えられるため、病欠などで説明がつく場合があります。

釈放される主なタイミングは以下のとおりです。

  • 検察官による勾留請求がなされなかったとき
  • 裁判所が勾留請求を却下したとき
  • 準抗告(勾留決定に対する不服申し立て)が認められたとき
  • 示談成立等により勾留が取り消されたとき

・不起訴処分
不起訴になれば「前科」がつきません。
特に、禁錮以上の刑で失職してしまう公務員にとって、不起訴処分の獲得は職を守るための生命線となります。

盗撮・のぞき事件で解雇を避けるためにもすぐに弁護士にご相談ください

盗撮やのぞき行為は、一瞬の過ちであったとしても、その後の人生やキャリアに甚大な影響を及ぼします。
しかし、適切な法的措置を講じることで、懲戒解雇という最悪の事態を回避できる可能性は残されています。

「会社にバレたらどうしよう」「明日から仕事に行けなくなるかもしれない」と一人で悩んでいても、状況は好転しません。むしろ、時間が経過するほど示談のチャンスや早期釈放の機会を失ってしまいます。

弁護士は、あなたのプライバシーを守りながら、被害者への謝罪、示談交渉、そして職場復帰を見据えた最善の弁護活動を行います。

まずは一度、守秘義務のある弁護士へありのままの状況をご相談ください。
あなたの再出発を全力でサポートいたします。

配偶者やパートナーからの暴力(DV)に苦しんでいる方の中には、恐怖で身動きが取れず、誰にも相談できないまま孤立してしまうケースが少なくありません。
しかし、法律には被害者の安全を確保するための強力な手段として「保護命令」という制度が用意されています。

本記事では、保護命令の中でも主要な「接近禁止命令」について、その仕組みや効力、申し立てを行うための具体的な手順や費用、注意点について詳しく解説します。

接近禁止命令とは?

接近禁止命令とは、配偶者暴力防止法(DV防止法)に基づき、裁判所が加害者に対して、被害者の身辺につきまとったり、住居や勤務先等の付近を徘徊したりすることを禁止する命令です。

この命令が発令されると、加害者は被害者に近づくことができなくなるため、被害者は物理的な距離を確保し、身の安全を守ることが可能となります。
2024年4月の法改正により、命令の有効期間は従来の6か月から1年間へと伸長されました。

違反した場合

接近禁止命令は、裁判所による強力な命令であり、これに違反した場合には刑事罰が科されます。
具体的には、2年以下の拘禁刑(懲役)又は200万円以下の罰金という重い刑罰が規定されています(DV防止法第29条)。

警察も保護命令の発令事実を把握しているため、加害者が命令に違反して接近してきた場合、被害者が110番通報をすれば、警察は現行犯逮捕を含む迅速な対応をとることができます。

接近禁止命令が出る条件

接近禁止命令が発令されるためには、主に以下の2つの要件を満たす必要があります。

第一に、配偶者(事実婚や生活の本拠を共にする交際相手を含む)から身体に対する暴力を受けたこと、又は生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫されたことです。

第二に、今後も加害者からの暴力等により、被害者の生命又は心身に重大な危害を受けるおそれが大きいと認められることが必要です。

接近禁止命令以外の申し立てておくべき保護命令

電話等禁止命令

加害者が被害者に対して、面会を強要したり、無言電話をかけたりする行為を禁止する命令です。

電話だけでなく、メールやSNS等の連続送信、ファックスの送信、緊急時以外の深夜早朝の連絡も対象となります。
また、法改正により、GPS機器を用いて被害者の位置情報を取得する行為や、その位置情報を監視している旨を告げる行為についても禁止の対象として追加されました。期間は1年間です。

子への接近禁止命令

加害者が、被害者と同居している未成年の子どもを連れ戻すと疑わせる言動を行っている場合など、子どもを利用して被害者に面会を強要することを防ぐための命令です。

加害者に対し、子どもの身辺につきまとったり、学校や住居の付近を徘徊したりすることを禁止します。
期間は1年間ですが、子どもが15歳以上の場合は、その子ども自身の同意が必要となります。

親族等への接近禁止命令

加害者が、被害者の実家の両親や親族等の住居に押し掛け、著しく粗野な言動を行っている場合などに発令されます。

親族等を介して被害者に接触を迫ることを防ぐための命令です。
対象となるのは、被害者の親族や、被害者が社会生活を営む上で密接な関係にある者です。

この命令の発令には、対象となる親族等本人の同意が必要となります。期間は1年間です。

退去命令

被害者と加害者が同居している場合において、被害者が住居から転居する準備期間を確保するために、加害者に対して住居からの退去及び住居付近の徘徊禁止を命じるものです。

接近禁止命令とは異なり、この命令の効力は2か月間と短期間に設定されています。
被害者が安全に別居を開始するための、一時的かつ緊急的な措置として位置づけられています。

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接近禁止命令の申立ての流れ

①DVセンターや警察への相談

接近禁止命令を申し立てる前には、原則として配偶者暴力相談支援センター(DVセンター)や警察署へ相談に行く必要があります。
これは、裁判所への申立ての際に、事前に公的機関へ相談した事実を記載する必要があるためです。

相談時には、暴力の内容や経緯を具体的に伝え、相談証明書を発行してもらうか、相談日時や担当者名、相談番号などを正確に控えておくようにしてください。

相談実績がない場合

DVセンターや警察への相談実績がない場合でも、接近禁止命令の申立て自体は可能です。
しかし、この場合には公証役場で「宣誓供述書」を作成し、申立書に添付しなければなりません。

宣誓供述書とは、被害事実について公証人の前で真実であることを宣誓し、書面化したものです。
作成には別途費用と手間がかかるため、緊急時を除いては、事前に公的機関へ相談しておくことが推奨されます。

②裁判所に申立てを行う

申し立てができるのは本人だけ

保護命令の申立てを行うことができるのは、DVの被害を受けている本人に限られます。

親族や友人が代理で申し立てることはできません。
ただし、弁護士を代理人として選任し、手続きを一任することは可能です。

申立先

申立てを行う裁判所は、地方裁判所です。管轄は、「相手方(加害者)の住所地」、「被害者(申立人)の住所地又は居所地」、あるいは「DV被害が発生した場所」を管轄する地方裁判所のいずれかになります。

被害者がすでに避難しており、避難先の住所を知られたくない場合は、DV被害が発生した場所や相手方の住所地を管轄する裁判所を選択することも一般的です。

必要書類

申立てには、主に以下の書類が必要です。

  • 保護命令申立書:請求の趣旨や原因(暴力の事実等)を記載したもの。
  • 証拠書類:医師の診断書、怪我の写真、暴力の経緯を記した陳述書、脅迫メールの写し等。
  • 戸籍謄本及び住民票:当事者の関係や住所を証明するため。
  • 相談等の事実を証明する資料:DVセンターや警察への相談記録等。これらは正本と副本(相手方送付用)の2部を用意する必要があります。

申立てに必要な費用

申立てにかかる主な費用は以下の通りです。

  • 申立手数料:1,000円(収入印紙で納付)
  • 予納郵便切手:数千円程度(裁判所により異なりますが、概ね2,000円~3,000円程度です)
    これ以外に、戸籍謄本等の取得実費がかかります。弁護士に依頼する場合は、別途弁護士費用が必要です。

③口頭弁論・審尋

申立書が受理されると、裁判官による面接(審尋)が行われます。
通常、迅速性を期すため、申立人(被害者)への審尋が即日または数日中に行われます。

その後、相手方(加害者)への審尋も行われますが、被害者と顔を合わせることがないよう、期日をずらすなどの配慮がなされます。
裁判官は双方の言い分を聞き、証拠を確認した上で、保護命令を発令するかどうかを判断します。

④接近禁止命令の発令

要件が満たされていると判断された場合、裁判所は速やかに接近禁止命令を発令します。

命令書は、申立人と相手方の双方に送達されるとともに、管轄の警察署にも通知されます。
これにより、万が一相手方が命令に違反した場合には、警察が即座に対応できる体制が整います。申立てから発令までの期間は事案によりますが、早ければ1週間から2週間程度です。

接近禁止命令における注意点

発令されるためにはDVの証拠が必要

裁判所が命令を出すためには、客観的な証拠が極めて重要です。
単に「怖い」という主観的な訴えだけでは認められにくいのが実情です。

医師の診断書(受傷日時や原因が明記されたもの)、暴力を受けた患部の写真、暴言や脅迫が録音されたデータ、具体的な被害日時や状況を記録した日記などが有力な証拠となります。
証拠が不十分な場合は、陳述書で詳細かつ具体的に被害状況を説明する必要があります。

相手に離婚後の住所や避難先を知られないよう注意

申立書や添付書類には、申立人の現住所が記載されます。そのまま相手方に副本が送達されると、避難先が知られてしまう危険があります。

これを防ぐためには、申立てと同時に「秘匿決定」の申立て「閲覧制限」の申立てを行う必要があります。これにより、相手方に送られる書類上の住所を黒塗りする等の措置をとることができ、居場所を隠したまま手続きを進めることが可能です。

モラハラは対象にならない

いわゆる「モラルハラスメント(モラハラ)」については注意が必要です。

無視や人格否定などの言葉の暴力は精神的に辛いものですが、法改正により精神的暴力も対象に含まれたとはいえ、そのハードルは依然として高いものです。

単なる性格の不一致や不仲、軽度の嫌がらせ程度では、保護命令の要件である「生命又は心身に重大な危害を受けるおそれ」とは認められにくい傾向にあります。

モラハラで申立てを行う場合は、それが自由を著しく制限し、恐怖を感じさせるレベルであることを立証する必要があります。

接近禁止命令に違反した場合の対処法

接近禁止命令が発令されているにもかかわらず、相手方がつきまとったり、自宅付近を徘徊したりした場合は、直ちに最寄りの警察署へ通報してください。

保護命令違反は犯罪ですので、警察は加害者を現行犯逮捕することができます。
また、通報の際には「裁判所から接近禁止命令が出ていること」を明確に伝えると、警察も事態の緊急性を把握しやすくなり、迅速な対応が期待できます。

身の安全を最優先に行動してください。

接近禁止命令に関するQ&A

接近禁止命令の期間を延長したい場合はどうしたらいいですか?

接近禁止命令の有効期間(1年間)が満了した後も、依然として加害者からの被害を受けるおそれが高い場合には、再度申立てを行うことで命令を得ることができます。
ただし、これは自動的な「延長」ではなく、あくまで「再度の申立て」という扱いになります。

そのため、前回の命令発令後にどのような事情変更があったか、現在もなお生命や身体等に重大な危害を受けるおそれが継続しているかについて、改めて主張・立証する必要があります。

接近禁止命令はどれくらいの距離が指定されるのでしょうか?

接近禁止命令では、「半径〇メートル以内」といった具体的な距離が数値で指定されることは一般的ではありません。

命令の内容は「住居、勤務先その他通常所在する場所の付近を徘徊してはならない」というものであり、この「付近」が具体的にどの範囲を指すかは、現場の状況や社会通念によって判断されます。
一般的には、相手を視認できる距離や、大声を出せば届く距離などが該当すると考えられています。

離婚後でも接近禁止命令を出してもらえますか?つきまとわれて困っています。

はい、離婚後であっても接近禁止命令を申し立てることは可能です。
DV防止法は、婚姻中の暴力だけでなく、離婚後に元配偶者から受ける暴力や脅迫についても保護の対象としています。

過去の婚姻期間中に暴力を受け、離婚後も引き続き生命や身体に危害を受けるおそれがある場合は、元配偶者を相手方として申立てを行うことができます。

DVで接近禁止命令を申し立てる際は弁護士にご相談ください

接近禁止命令は、DV被害者の命と生活を守るための非常に有効な法的手段です。

しかし、申立てには迅速な証拠収集や、裁判所を納得させるための法的な主張構成が求められます。
また、相手方に住所を知られないようにするための配慮も欠かせません。

弁護士に依頼することで、申立書の作成や証拠の整理、裁判所での面談への同行など、全面的にサポートを受けることができます。一人で抱え込まず、まずは弁護士にご相談ください。

交通事故の被害に遭われた方にとって、精神的・肉体的な苦痛に加え、いつ示談金が支払われるのかという経済的な不安は非常に大きなものです。

一般的に、示談交渉の開始から成立までには数ヶ月から1年以上の期間を要することが多く、事故の態様や怪我の程度によってその期間は大きく変動します。

本稿では、交通事故の示談にかかる期間の目安や、交渉が長期化する要因、そして適切な賠償金を早期に受け取るための方法について、専門的な見地から解説いたします。

示談交渉には何日くらいかかる?事故別の期間目安

示談交渉にかかる期間は、一般的に交渉開始から2ヶ月ないし1年程度が目安とされていますが、これはあくまで標準的なケースにおける期間であり、事案によって大きく異なります。

重要な点は、示談交渉は損害額が確定してからでなければ開始できないということです。
したがって、怪我の治療期間や後遺障害の認定手続にかかる期間を含めると、事故発生から解決までの期間はさらに長期化する傾向にあります。

以下、事故の類型別に具体的な期間の目安をご説明します。

物損事故の場合

物損事故とは、死傷者がおらず、車両や建物などの「物」のみに損害が発生した事故を指します。

物損事故の場合、修理費用の見積もりや買替費用の算定などによって損害額を比較的早期に確定できるため、事故発生から2ヶ月ないし3ヶ月程度で示談が成立するケースが多く見られます。

ただし、修理の必要性や過失割合について当事者間で見解の相違が生じた場合には、交渉が長期化し、半年以上の期間を要することも稀ではありません。

人身事故の場合

人身事故の場合、怪我の治療が終了し、完治または症状固定(これ以上治療を続けても症状の改善が見込めない状態)に至って初めて損害額が確定し、示談交渉を開始することができます。

たとえば、むちうち等の場合、治療に3ヶ月から6ヶ月程度、その後の示談交渉に1ヶ月から3ヶ月程度を要するため、事故発生から半年から1年程度が解決の目安となります。

他方、後遺症が残り後遺障害等級認定の申請を行う場合は、認定審査に数ヶ月を要するため、解決までに1年以上かかることも珍しくありません。

死亡事故の場合

死亡事故においては、被害者が亡くなられた時点で損害額の算定自体は可能となりますが、ご遺族の心情に配慮し、四十九日の法要が過ぎたあたりから交渉を開始するのが一般的です。

示談成立までの期間は、概ね半年から1年程度が目安となります。

死亡事故では、死亡慰謝料や逸失利益など請求額が高額になるため、保険会社側の審査が慎重になることに加え、生前の収入や生活状況等の事実認定を巡って争いが生じやすく、交渉が長期化する傾向にあります。

当て逃げ、ひき逃げの場合

加害者が特定できない当て逃げやひき逃げの場合、相手方が判明するまでは損害賠償請求を行うこと自体が困難となります。

警察の捜査により後日加害者が判明したとしても、逃走を図るような加害者は誠実な交渉に応じない可能性が高く、連絡が取れない、あるいは資力がない等の理由で協議が難航することが予想されます。

このように交渉が進展しない場合は、時効の完成を阻止するために訴訟提起等の法的措置を検討する必要があります。

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示談にかかる期間を短くできないの?時間がかかる理由は?

経済的な事情や「早く事故のことを忘れたい」という心理から、早期の解決を望まれる方は少なくありません。
しかし、保険会社からの提示額を安易に受け入れて早期に示談を成立させることは推奨できません。

一度示談が成立すると、原則として合意内容を覆すことはできず、後から本来受け取るべきであった正当な賠償金を請求することが不可能になるからです。
適正な補償を受ける権利を放棄することにならないよう、慎重な判断が求められます。

示談に時間がかかる理由

示談交渉が長期化する主な理由は、当事者双方の主張に食い違いが生じるためです。
特に、事故状況に基づく過失割合や、慰謝料の算定基準について争いになることが多くあります。

保険会社は営利企業であるため、自社の支出を抑えるべく低額な賠償案を提示する傾向にありますが、被害者としては適正な被害回復を求めるため、この金額差を埋めるための交渉に時間を要することになります。
また、後遺障害等級の認定結果に対する異議申立てを行う場合も、手続に時間を要する要因となります。

自分で示談交渉をしようとしたら期間はどれくらいかかる?

被害者ご本人が単独で保険会社と交渉を行う場合、弁護士が介入する場合と比較して解決までの期間が長引く傾向にあります。

百戦錬磨の交渉プロである保険会社に対し、知識や経験の少ない被害者が対等に交渉することは困難であり、保険会社側の主張に反論するための根拠集めに時間を取られるからです。
また、相手方保険会社が被害者個人の主張を軽視し、誠実な対応を怠ることで交渉が停滞するケースも散見されます。

交通事故の示談は弁護士にお任せください

弁護士に依頼することで、交渉のプロである保険会社と対等以上の立場での交渉が可能となり、早期かつ適正な解決が期待できます。

特に、損害賠償請求権には消滅時効が存在し、民法第724条および第724条の2に基づき、物損については事故発生の翌日から3年、人身損害については5年で権利が消滅してしまいます。

当事務所では、弁護士基準を用いた適正な賠償額の獲得はもちろん、時効管理を含めた法的手続を全面的にサポートいたしますので、お早めにご相談ください。

被相続人が多額の負債を遺して逝去した場合、相続人は「相続放棄」を選択することで、借金等の債務を一切承継しないことが可能です。
しかし、相続放棄を検討する際、遺族の生活の糧となる「生命保険金」までもが受け取れなくなるのではないかと懸念される方は少なくありません。

結論から申し上げますと、受取人の指定状況によっては、相続放棄をした後であっても生命保険金を受け取ることが可能です。
ただし、受け取った保険金には税金が課される場合があり、相続税の計算において相続放棄者特有の不利益が生じることもあります。

本記事では、相続放棄と生命保険の受取可否、課税関係、並びに死亡退職金や遺族年金等の取り扱いについて解説いたします。

相続放棄しても生命保険(死亡保険金)は受け取れる?

相続放棄を行うと、その相続人は「初めから相続人とならなかったもの」とみなされます(民法第939条)。

しかし、生命保険金は、被相続人の財産(相続財産)ではなく、保険契約に基づき受取人が固有の権利として取得する「受取人固有の財産」と解釈されるため、原則として相続放棄の影響を受けません。

したがって、相続放棄の手続きを家庭裁判所にて行ったとしても、生命保険金を受け取る権利自体は消滅いたしません。

相続放棄しても生命保険が受け取れるケース

相続放棄をした相続人が生命保険金を受け取ることができるのは、保険契約において特定の「受取人」として指定されている場合です。

特定の相続人が受取人として指定されている場合、例えば「受取人:妻〇〇」のように指定されているときは、その保険金は受取人の固有財産となります。

また、受取人が「相続人」と指定されている場合であっても、最高裁判所の判例により、これは「各相続人がその固有の権利として取得するもの」と判断されています。

これらのケースでは、保険金は相続財産に含まれないため、相続放棄をしても受け取りに支障はありません。

相続放棄すると生命保険が受け取れないケース

一方で、生命保険金が被相続人の相続財産の一部を構成すると判断される場合には、相続放棄によってその受け取りができなくなります。

例えば、被保険者である被相続人自身が受取人となっている場合、保険金は一度被相続人の財産となり、それが相続の対象となります。

また、満期保険金や解約返戻金、並びに被相続人の疾病等に対して支払われる入院給付金等で、本人が受け取るべきであったものは相続財産に該当いたします。

これらを相続放棄後に取得すると、後述する「単純承認」とみなされるリスクが生じるため、注意が必要です。

生命保険を受け取ってしまったら相続放棄できない?

特定の受取人として指定されている者が生命保険金を受け取る行為は、自己の「固有の権利」を行使するものであり、相続財産を処分したことには当たりません。

したがって、保険金を受け取った後であっても、家庭裁判所へ相続放棄を申し立てることは可能です。

ただし、被相続人が受取人である保険金や、本来は被相続人に帰属すべき入院給付金などを相続人が受け取り、これを生活費等に消費した場合には、民法上の「相続財産の処分」に該当し、単純承認したものとみなされます。

この場合、以後相続放棄をすることは認められなくなるため、受取人の名義を慎重に確認しなければなりません。

相続放棄後の生命保険にも相続税がかかる

被相続人の死亡によって取得した生命保険金のうち、その保険料を被相続人自身が支払っていたものについては、相続等によって取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります。

これは、相続放棄をした場合であっても同様です。法的には、被相続人以外の者が受取人に指定されている生命保険金は、受取人固有の財産として扱われます。

また、相続放棄をした者は、初めから相続人ではなかったものとみなされますが、税法上の側面においては、相続税が課税される点に注意が必要です。

相続放棄した本人は非課税枠が使えない

相続税法には、残された家族の生活保障という観点から、生命保険金に対して「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠が設けられています。
しかし、この非課税規定の適用を受けることができるのは、相続税法上の「相続人」に限定されています。

相続放棄をした者は、税法上も相続人として扱われないため、この非課税枠を利用することはできません。

例えば、相続放棄をした子が保険金を受け取った場合、他の相続人はその人数分の非課税枠を利用できますが、放棄をした子本人が受け取った保険金については、その全額が課税対象となります。

相続放棄しても基礎控除は適用される

相続税の計算においては、遺産総額から差し引くことができる「基礎控除」が認められており、その額は「3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で算出されます。

ここで重要な点は、相続放棄をした者が存在する場合であっても、基礎控除額を算出するための「法定相続人の数」には、その放棄した者も含まれるということです。

したがって、相続放棄をした者が保険金を受け取ったとしても、遺産全体がこの基礎控除額の範囲内に収まるのであれば、結果として相続税は課税されないこととなります。

贈与税や所得税が課税されるケースも

生命保険金に課される税金の種類は、保険料の負担者、被保険者、及び受取人の関係性によって変化します。

例えば、保険料の負担者と受取人が同一人物である場合には、所得税の対象となります。
また、保険料負担者、被保険者、及び受取人がすべて異なる人物である場合には、贈与税が課されることとなります。

相続放棄を検討する際には、保険証券の内容を精査し、どの税目が適用されるのかを正確に把握しておくことが肝要です。

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相続放棄で死亡退職金・遺族年金の受け取りはどうなる?

被相続人の死亡に伴い支払われる金銭には、生命保険金の他に死亡退職金や遺族年金があり、これらも個別の検討を要します。

死亡退職金

死亡退職金については、勤務先の就業規則等の根拠となる規程内容により取り扱いが異なります。

当該規定において受取人が被相続人以外の者に指定されている場合、その死亡退職金は受取人の固有の権利として取得するものとされます。
この場合、相続放棄をしていても受け取ることが可能であり、単純承認にも該当しません。

一方で、規定に定めがなく、当然に被相続人の遺産として取り扱われる性質のものであれば、相続放棄をすると受け取れなくなります。

遺族年金

遺族年金は、残された遺族の生活を保障することを目的として、各法律に基づき受給権者が定められています。

遺族年金を受給する権利は受給権者本人の固有の権利であり、被相続人の相続財産には含まれません。

したがって、相続放棄をしても遺族年金を受け取ることに支障はなく、また、受給したことによって相続を承認したとみなされることもありません。

相続放棄と生命保険に関する判例

相続放棄と生命保険金の帰属については、最高裁判所の判例が重要な指針を示しています。

判例によれば、保険金受取人として「相続人」と指定されている場合、これは死亡当時の相続人という資格を有する者に取得させる趣旨であり、その権利は保険契約に基づき直接発生するものと解釈されます。

たとえ相続放棄によって相続人としての地位を遡及的に喪失したとしても、受取人としての地位まで否定されるものではないというのが判例の論理です。

これにより、相続放棄をした者であっても保険金の受取人としての権利を保持し得ることが法的に確立しています。

よくある質問

受取人指定なしの生命保険の場合、相続順位はどうなりますか?

生命保険の受取人が指定されていない場合、多くの保険会社では「約款」に従い受取人を決定します。

一般的には、約款において「被保険者の配偶者及び子」といった順位が定められており、この規定に従って受取人が決まります。
この場合も約款に基づき直接受取権が発生するため、相続放棄をしていても保険金を受け取れるのが通例です。

相続放棄しても入院給付金を受け取ることはできますか?

入院給付金については、原則として相続放棄をすると受け取ることができません。これらは本来被相続人が生前に受領すべき権利であり、相続財産に該当するためです。

相続放棄をする者がこれを受け取ると「相続財産の処分」とみなされる恐れがあるため、注意が必要です。

被相続人が借金を残していた場合、受け取った生命保険は差し押さえの対象になりますか?

受取人固有の財産として受け取った生命保険金は、被相続人の債権者が差し押さえることはできません。
借金は被相続人の負債であり、相続放棄をすれば相続人がその義務を負うことはありません。

保険金は相続人の固有財産であるため、被相続人の債務の清算に充てる法的義務は生じません。

相続放棄時の生命保険について不明点があれば、弁護士に相談することをおすすめします。

これまで解説したとおり、相続放棄と生命保険の関係は、契約形態や約款、税務上の取り扱いなど、専門的な判断を要する場面が多々あります。

特に、誤って相続財産に該当する金銭を受け取り、意図せず単純承認とみなされてしまうと、本来免れるはずであった多額の借金を背負うという重大な不利益を招きかねません。

弁護士に相談することで、保険証券の精査や適正な相続放棄の手続きを確実に進めることが可能となります。将来の不安を解消するためにも、相続放棄を検討される際は、ぜひ専門家である弁護士へご相談ください。

公務員が業務中に管理する金銭を着服した場合、業務上横領罪だけでなく、文書偽造などの犯罪も成立する可能性があります。

万が一、横領をしてしまった場合、逮捕や懲戒免職のリスクが高まりますので、早期に弁護士へ相談し、被害弁償や示談交渉を行うなど、適切な対応をとることが重要です。

公務員が公金などを横領すると業務上横領罪が成立する可能性がある

公務員が業務として管理している「公金」を、自身の私的な目的で使用したり持ち出したりした場合、刑法253条の業務上横領罪が成立する可能性があります。

公金は国民の税金等から成るという性質上、極めて厳格な管理が求められており、これを着服する行為は国民の信頼を裏切るものとして厳しく処罰される傾向にあります。

金額の多寡にかかわらず、1円であっても自己の占有する他人の物を領得すれば犯罪は成立し得ます。

業務上横領罪とは

業務上横領罪とは、業務上自己の占有する他人の物を横領した場合に成立する犯罪です。
単純な横領罪よりも刑が重く規定されています。

業務上横領罪の詳細な成立要件や刑罰については、別の記事で詳しく解説していますので、そちらをご参照ください。

業務上横領罪について詳しく見る

領収書の偽造や改ざんを行った場合は私文書偽造罪が成立する可能性もある

横領の事実を隠蔽するために、領収書の金額を書き換えたり、架空の領収書を作成したりするケースがあります。

このような行為を行った場合、刑法159条の私文書偽造罪および同行使罪が成立する可能性があります。

横領行為そのものに加え、証拠となる文書を改ざんする行為は、犯行の隠蔽工作として悪質性が高いと判断され、量刑判断においても重く考慮され得る重大な要素となります。

私文書偽造罪とは

私文書偽造罪とは、行使の目的で、他人の印章や署名を使用して権利義務や事実証明に関する文書を偽造する犯罪です。

例えば、店舗が発行した領収書の金額を勝手に書き換える行為や、白紙の領収書に店舗の印鑑を無断で使用して作成する行為などがこれに該当します。

作成権限のない文書を作成すること自体が処罰の対象となります。

公務員の場合、横領の際に書類を偽造すると虚偽公文書作成罪が成立する可能性もある

公務員が、その職務に関し、行使の目的で虚偽の文書を作成した場合、刑法156条の虚偽公文書作成罪が成立する可能性があります。

公務員という立場を利用して、決裁文書や会計報告書などに嘘の記載を行い、公金を不正に引き出した場合などがこれに該当します。

公文書に対する社会的信用を損なう犯罪であるため、私文書偽造よりも厳しく処罰される傾向にあります。

虚偽公文書作成罪とは

虚偽公文書作成罪とは、公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したときに成立する犯罪です。

公務員が作成する文書は社会的に高い信用性を有しているため、その内容に嘘を記載することは、公務に対する信用を害する行為として処罰の対象となります。

実際にあった公務員の横領事件

例えば、ある自治体の職員が、生活保護費の支給業務を担当していた際、架空の受給者をシステムに登録し、数千万円単位の公金を自身の管理する口座に振り込ませて横領した事例があります。

また、公立学校の事務職員が、PTA会費や給食費などの公金外現金を管理していることを奇貨として、数年間にわたり着服し、発覚後に懲戒免職および業務上横領罪で起訴されたケースも存在します。

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横領した公務員の責任

公務員が横領を行った場合、単に職を失うだけでなく、法律上の重い責任を負うことになります。
具体的には、国や自治体に対する損害を賠償する民事上の責任と、国家から刑罰を受ける刑事上の責任の双方です。

これらは別個の手続きで追及されるため、民事上の全額返済が完了しても、刑事責任が当然に消滅するわけではありません。

刑事上の責任

刑事上の責任としては、刑法253条の業務上横領罪により、10年以下の懲役に処せられる可能性があります。

公務員の場合、公金を取り扱うという職務の性質上、社会的影響が大きく、初犯であっても金額が高額であれば実刑判決が下されるリスクがあります。

起訴され有罪となれば前科がつき、その後の社会生活に多大な影響を及ぼす可能性があります。

民事上の責任

民事上の責任として、横領した公金全額に加え、遅延損害金を付して返還する義務を負います。
これは民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求にあたります。

横領した金銭を既に遊興費などで費消してしまっている場合でも、原則として、返還義務は免れません。
場合によっては、監督不届き等を理由に上司等が処分を受けることもありますが、本人の賠償責任が免除されるわけではありません。

懲戒免職について横領した公務員は懲戒免職の可能性がある

国家公務員法や地方公務員法、各自治体の条例・規則に基づき、懲戒処分が行われる可能性があります。

公金の横領は、公務員に対する国民の信用を著しく失墜させる行為であるため、最も重い懲戒免職処分となる可能性が極めて高いものです。

懲戒免職となると、退職金が支給されない、あるいは全額没収されるケースが一般的であり、経済的にも大きな打撃を受ける可能性があります。

将来の再就職のためにも弁護士にご相談ください

再就職を目指すにあたり、前職での横領による懲戒免職事由は大きな不利益になり得ます。
しかし、横領した公金を全額返済し、真摯に反省している事実は、採用選考における情状として考慮される可能性があります。

返済計画の履行を含め、法的な観点からどのように身の振り方を考えるべきか、将来の生活再建に向けて弁護士にご相談ください。

横領に時効はあるのか

業務上横領罪の公訴時効は7年と定められており(刑事訴訟法250条2項4号)、この期間が経過すると検察官は起訴することができなくなります。

他方、民事上の損害賠償請求権の消滅時効は、被害者である国や地方公共団体が損害及び加害者を知った時から3年、または不法行為の時から20年(民法724条)です。

刑事と民事で時効期間が異なる点に注意が必要です。

公務員の横領は必ず逮捕される?

公務員の横領は社会的関心が高く、事件化する可能性は否定できません。
しかし、必ず逮捕されるわけではありません。

捜査機関が介入する前に、弁護士を通じて職場である役所等と交渉し、全額を弁償して示談が成立すれば、刑事告訴を行わないとの合意を取り付けることが可能な場合もあります。

逮捕を回避するためには、早期の対応が不可欠です。

自宅待機を命じられた場合にできること

横領の疑いで自宅待機を命じられた場合、懲戒処分や刑事告発が差し迫っている状況といえますので、できる限り早い段階で弁護士へ相談されることをおすすめします。

弁護士が代理人として職場と交渉し、被害弁償の申し入れや事実関係の精査を行うことで、懲戒処分の軽減や刑事事件化の回避を目指します。

何もしないまま待機していると、事態は悪化する可能性があります。

逮捕された場合は減刑に向けて弁護士がサポートします

万が一、事件化し逮捕された場合、弁護士は直ちに接見を行い、取調べへの対応をアドバイスします。
また、被害弁償を行い、職場や関係者からの嘆願書を集めるなどして、裁判所や検察官に対して情状酌量を求めます。

これらの活動により、起訴猶予(不起訴)や、起訴された場合でも執行猶予付き判決などの減刑を目指して、全力で弁護活動を行います。

身柄が拘束されてしまった場合は解放に向けて動きます

逮捕・勾留により警察署に身柄が拘束されると、防御の準備が十分にできません。

弁護士は、証拠隠滅や逃亡の恐れがないことを客観的な証拠とともに主張し、勾留請求の却下や保釈許可決定を求めます。

弁護活動が功を奏し、早期に身柄が解放されれば、会社への対応や社会生活への影響を最小限に留めつつ、裁判に向けた準備を整えることが可能になります。

横領に関するご相談はお早めに弁護士へご相談ください 

公務員による横領は、社会的信用を失い、人生を大きく左右する重大な問題です。
しかし、早期に対処することで、最悪の事態を回避できる可能性は残されていますので、一人で抱え込まず、まずは弁護士へご相談ください。

交通事故の示談交渉では、過失割合が最も揉めやすいポイントです。

過失割合とは、事故原因について被害者側と加害者側がどの程度責任を負うかを示すもので、事故状況や双方の不注意の程度を踏まえて決められます。

しかし、具体的な事故状況等に対する評価に幅があるため、保険会社を含めた当事者間で意見が対立しやすく、賠償額にも大きく影響します。

そのため、適正な過失割合を主張し、必要に応じて修正を求めることが交通事故の賠償請求では重要です。
本記事では、経験豊富な弁護士が揉めやすいケースや対処法等について解説します。

交通事故の過失割合で揉める理由とは?

交通事故の過失割合は、具体的な事故状況等に対する評価に幅があるうえ、当事者双方が「相手が悪い」と感じやすいことから感情面でも対立し、揉めやすくなります。

まずは過失割合がなぜ重要な争点となるかを理解し、適切な対処の方向性を掴むことが重要です。

損害賠償の金額に影響するため

交通事故の過失割合が揉める大きな理由の一つは、損害賠償金に直接影響するためです。
被害者側に過失が認められると、その割合分だけ賠償金が減額される「過失相殺」が適用されます。

被害者としては、当然ながら少しでも多くの賠償を受け取りたいと考えます。
一方、相手方保険会社は支払額を抑えたいという立場にあり、双方の利害が真っ向から対立します。

このように、金銭面での思惑が大きく関係するため、過失割合は示談交渉で特に争いが生じやすいのです。

警察は過失割合に関与しないため

交通事故の過失割合が揉める理由の二つ目に、警察が過失割合の判断に関与しないことが挙げられます。

事故発生時には警察が現場検証や実況見分を行い、事情聴取も実施するため、一見すると警察が過失も判断してくれそうに思われがちです。
しかし、警察が扱うのはあくまで「刑事事件」であり、被害者が加害者に賠償を求める「民事上の過失割合」については判断しません。

そのため、双方の主張が対立したまま調整機関が存在せず、結果として過失割合が争いになりやすくなるのです。

事故状況の食い違いがあるため

交通事故の過失割合が揉める理由の三つ目は、事故状況の認識に食い違いが生じやすいことが挙げられます。

過失割合は、被害者側と加害者側の注意義務違反の程度を事故状況から判断して決められますが、その前提となる事実関係が一致していない場合、双方の主張は大きく対立します。

たとえば「信号は自分が青だった」と当事者双方が主張するようなケースでは、過失の評価自体が進まず、示談交渉が難航しがちです。
このように、事故状況の食い違いは過失割合が揉める典型的な原因の一つといえます。

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過失割合について揉めやすい4つのパターン

次に、過失割合について揉めやすいパターンとしてどのようなものがあるか、4つに分類して、以下、解説していきます。

①交通事故に関する証拠が不足している

過失割合が揉めやすい典型例の一つが、交通事故に関する証拠が不足しているケースです。

過失割合は、事故状況や双方の不注意の程度を基に判断されますが、当事者の主張が食い違っているにもかかわらず、状況を客観的に示す証拠がない場合、どちらの言い分が正しいのか判断しにくく、対立が深まりやすくなります。

証拠としては、ドライブレコーダー映像、監視カメラ、目撃証言、事故直後の写真や動画、実況見分調書などが挙げられます。
特にドライブレコーダーは事故状況を鮮明に示す有力な証拠となり得ます。

証拠が無い場合の対処法

では、交通事故に関する証拠が不足している場合、どのように対応すべきでしょうか。
一つの方法として、相手方保険会社に対し、提示された過失割合の理由や根拠を書面で明示するよう求めることが挙げられます。

必要に応じて、相手方が保有している警察の捜査記録や記録映像などの証拠の確認も求めましょう。示談交渉では、相手方の主張とその裏付けを把握することが重要です。

自ら証拠を持っていない場合でも、相手方に根拠を提示させることで、過失割合の適正性を検討しやすくなります。

②損害賠償額が大きい

過失割合が揉めやすいパターンの二つ目は、損害賠償額が高額なケースです。
損害が大きいほど、過失割合の違いによる受取額の差が拡大するため、当事者の利害が強く対立します。

たとえば損害額が1000万円の場合、被害者の過失が3割であれば請求額は700万円、1割であれば900万円となり、その差は200万円にも及びます。

このように、わずかな過失割合の違いでも賠償額が大きく変動するため、重症を負った事故や高額損害の事案では過失割合が特に争われやすくなります。

損害賠償額が大きい場合の対処法

損害賠償額が大きい場合は、過失割合のわずかな差で受け取れる賠償金が大きく変動するため、安易な妥協は避けることが重要です。

相手方保険会社の提示をそのまま受け入れる前に、事故状況や証拠に照らして過失割合が妥当か慎重に確認する必要があります。

そのうえで、交通事故に精通した弁護士へ早期に相談し、専門的な視点から主張の組み立て方や反論の可否を検討しましょう。

また、交渉で折り合いがつかない場合には、ADR(紛争解決手続)や訴訟も選択肢となるため、適切な手続きを視野に入れて進めることが望まれます。

③どちらが悪いか判断がしにくい

過失割合が揉めやすい三つ目のパターンは、どちらが悪いか判断しにくいケースです。

過失割合は、事故状況や双方の不注意の程度から決められますが、双方に一定の注意義務違反がある場合、どちらの過失がどの程度重いのか判断が難しく、主張が対立しやすくなります。

たとえば、同一方向走行中の車線変更に伴う事故で、変更車両が駐車車両を避けようとして衝突したケースや、信号機も道路幅の差もない交差点での出合い頭事故などは典型です。
このような事案では、事故状況を把握しても過失割合の評価が分かれやすく、示談が難航しがちです。

判断がしにくい場合の対処法

どちらが悪いか判断しにくい場合は、過失の評価自体が分かれやすいため、示談交渉が難航する傾向があります。
そのため、被害者としても一定の範囲で妥協して示談に応じるという選択肢があり得ます。

一方で、提示された過失割合が不当だと感じる場合には、中立的な判断を求めるためにADR(紛争解決手続)や訴訟を利用する方法も考えられます。

いずれにしても、事故類型ごとの相場や判断基準を踏まえる必要があるため、交通事故に精通した弁護士に相談し、交渉方針や適切な手続を検討することが重要です。

④駐車場内での事故

過失割合が揉めやすい四つ目のパターンは、駐車場内で発生した事故です。
駐車場内の事故については、参照できるデータや判例が相対的に少なく、典型的な過失割合が明確に示されていない点が問題となります。

判例タイムズや赤い本に掲載されている過失割合は主に道路交通を前提としており、駐車区画内の低速走行や後退、歩行者の動きなど特徴的な事故態様には十分対応していません。

そのため、基準に当てはめにくく、双方の主張が対立しやすいのが実情です。
このように駐車場事故は過失割合で特に揉めやすいため注意が必要です。

駐車場内の事故の対処法

駐車場内での事故は、参照できる基準が少なく過失割合の判断が難しいため、双方の主張がぶつかりやすい類型です。そのため、被害者としても、一定の範囲で妥協しつつ示談を検討するという選択肢があります。

一方で、提示された過失割合が明らかに不合理と感じられる場合には、中立的な判断を求めてADRや訴訟を利用する方法も有効です。

駐車場特有の状況(後退、徐行義務、死角など)がどのように評価されるかを踏まえる必要があるため、交通事故に詳しい弁護士へ早めに相談し、適切な交渉方針や手続の選択を検討することが重要です。

交通事故の過失割合で揉めた場合はどうする?

交通事故の過失割合でもめた場合には、いくつかの対処法があります。

まず、①相手方保険会社に対し、提示された過失割合の根拠を明示するよう求めることが基本となります。
次に、②交通事故紛争処理センターなどのADR機関を利用して、中立的な第三者に判断を求める方法があります。

さらに、③調停や裁判で法的に解決を図ることも可能です。
また、迅速な解決を優先する場合には、④双方が一定の負担を認め合う「片側賠償」などの妥協案を提案することも考えられます。

そして最も重要なのは、⑤交通事故に精通した弁護士に相談し、適切な戦略や証拠収集の方針を確認することです。

保険会社に対して根拠を提示するよう求める

交通事故の過失割合に納得できない場合は、まず相手方保険会社に「提示した過失割合の理由と根拠」を書面で示すよう求めることが有効です。

保険会社は支払額を抑えるため加害者側に有利な割合を提示することがあるため、安易に同意すべきではありません。必要に応じて、警察の捜査記録や映像などの証拠も確認し、相手方の主張内容と根拠を正確に把握することが重要です。

ADRを利用する

交通事故の過失割合で交渉が難航した場合、ADR(裁判外紛争解決手続)の利用が有効です。代表的な機関として、交通事故紛争処理センターと日弁連交通事故相談センターがあり、いずれも無料で利用できます。

ADRでは中立的立場から過去事例を踏まえたあっ旋案や裁定案が示されますが、必ずしも被害者に有利とは限らず、主張が大きく対立していると和解が難しいこともあるため注意が必要です。

調停や裁判で解決する

過失割合で合意に至らない場合、調停や裁判での解決が選択肢となります。
調停は、裁判所で調停委員が双方の間に入り、話し合いによる解決を促す手続きで、感情的な対立を和らげながら協議を進められます。

一方、裁判は当事者が提出する主張や証拠に基づき、最終的に裁判所が判断を下す方法です。交渉や調停で折り合いがつかなければ裁判を検討することになります。

いずれも適切な主張と証拠が重要であり、専門的判断が必要なため、交通事故に詳しい弁護士への相談が望まれます。

妥協案として片側賠償を提案する

過失割合で交渉が平行線となった場合、折衷案として「片側賠償」を提案する方法があります。片側賠償とは、双方に過失があるケースでも、一方のみが損害賠償責任を負う形で示談する方法です。

たとえば、加害者側が「9対1」、被害者側が「10対0」と主張して対立している場合、双方が譲らなければ「9対0」で合意し、被害者は1割を支払わず、加害者は9割のみ支払う形で示談することが可能です。

この方法を用いれば、完全な折り合いがつかない場合でも、双方が一定程度譲歩した形で解決を図ることができます。

弁護士に相談・依頼する

過失割合で相手方保険会社と対立した場合は、弁護士への相談・依頼が有効です。

弁護士に依頼すれば、煩雑な交渉を任せられ、被害者は仕事や生活への影響を最小限にできます。また、弁護士は過去の裁判例や見逃されがちな修正要素を踏まえて主張・立証するため、過失割合が有利に修正される可能性もあります。

さらに、「弁護士基準」による損害賠償金の請求が可能となるため、賠償額が増額される見込みも高まります。過失割合で揉めている場合は、交通事故に精通した弁護士へ早めに相談することをおすすめします。

交通事故の過失割合について揉めた場合は、お早めに弁護士にご相談ください

以上のとおり、過失割合は最終的に受け取る賠償金額に直結するため、相手方保険会社の提示に安易に応じるべきではありません。
なぜ過失割合でもめやすいのか、また対処法についてもご理解いただけたかと思います。

過失割合の主張・立証には、事故状況の分析や専門的な判断が不可欠であり、被害者ご自身で十分に対応するのは難しい場合が多くあります。

そのため、交通事故案件を多数扱う経験豊富な弁護士に依頼し、より納得のいく解決を目指すことをおすすめします。過失割合でお困りの方は、ぜひ弁護士法人ALGへお気軽にご相談ください。

別居中の配偶者から生活費(婚姻費用)を請求された際、相手の勝手な別居や離婚を前提としていることなどを理由に、支払いを拒否したいと考える方は少なくありません。

しかし、法律上、婚姻費用の分担は夫婦の義務であり、自己判断で拒否することは大きなリスクを伴います。

この記事では、婚姻費用の支払いを拒否できる例外的なケースや拒否し続けた場合のリスクなど適正な額に減額するための方法について解説します。

婚姻費用の支払いは拒否できない

原則として、婚姻費用の支払いを完全に拒否することはできません。
民法760条は「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」と定めています。

この「婚姻から生ずる費用」がいわゆる婚姻費用であり、夫婦が別居していても、法律上の夫婦である限り、収入の多い側(義務者)は少ない側(権利者)に対して、自分と同程度の生活水準を保持させる義務(生活保持義務)を負います。

そのため、単に「相手の顔を見たくない」「離婚するつもりだ」といった理由だけで支払いを拒否することは、法律上認められません。

拒否できる可能性があるケース

原則として支払いは必須ですが、例外的に支払いを拒否、あるいは大幅に減額できるケースがあります。
それは、婚姻費用を請求する側(権利者)に、婚姻関係破綻の主な原因がある場合です。

具体的には、権利者自身が不倫(いわゆる不貞行為)を行って家を出て行った場合などが該当します。

このような場合、自身の不始末で別居しておきながら生活費を請求することは信義則に反するとして、請求が認められない、または、子どもの養育費相当分にまで減額されることがあります。

相手が勝手に別居した場合は?

相手が勝手に家を出て行ったのだから、生活費を渡す必要はないと考える方も多いですが、単に無断で別居したというだけでは、支払いを拒否する正当な理由にはならないことが一般的です。

相手が同居しないことを理由に婚姻費用の支払を拒否できるのは、社会通念上、極めて例外的な場合に限られます。

単に夫婦喧嘩の末に家を出た、実家に帰ってしまったという程度では、婚姻費用分担義務は消滅しないと判断されるのが通常です。

婚姻費用の支払いを拒否し続けるリスク

話し合いがまとまらないからといって婚姻費用の支払いを勝手に止めてしまうと、以下のようなリスクが生じます。

婚姻費用の支払い義務は、請求した時から発生すると考えられています。

支払いを拒否して調停や審判が長引いたとしても、最終的には申立時まで遡って未払い分を一括で支払うよう命じられる可能性が高く、その場合には数百万円単位の多額の債務を負うことになりかねません。

調停や審判で金額が確定したにもかかわらず支払わない場合、相手方は裁判所に強制執行を申し立てることができます。

生活費を渡さないということは、離婚訴訟において悪意の遺棄や婚姻を継続し難い重大な事由として、有責性の判断で不利に働く可能性があります。

また、親権争いにおいても、子の養育環境を顧みない親としてマイナス評価を受けるおそれがあります。

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婚姻費用の支払いを減額することはできる?

一度決まった婚姻費用であっても、その後に事情変更があった場合には、減額を求めることができます。

事情変更とは、合意や審判の当時には予測できなかった事情の変化を指します。
具体的には以下のようなケースで減額が認められる可能性があります。

  • リストラによる失業や病気による休職、倒産など、自己の責任によらない理由で収入が激減した場合
  • 専業主婦だった妻が就職して収入を得るようになった場合
  • 義務者が再婚して扶養すべき家族が増えた場合や、子どもが就職して自立した場合

などが挙げられます。

弁護士の介入により婚姻費用を減額できた事例

婚姻費用の減額が認められた事例を紹介します。

妻が子を連れて別居し、夫名義の自宅に住み続けているケースで、夫は別居後も住宅ローンを支払い続けていました。この場合、夫は自分の住居費と妻子の住居費(住宅ローン)を二重に負担している状態となります。

妻は夫の負担によって住居費の支払いを免れていると主張し、標準的な算定表の金額から、妻の収入に応じた標準的な住居関係費を控除するよう求めました。

裁判所はこの主張を認め、夫が支払うべき婚姻費用から一定額(妻の住居費相当額)を差し引く決定をしました。

このように、単に算定表の数字を当てはめるだけでなく、個別の事情(住宅ローンの負担など)を主張することで、減額が認められるケースがあります。

婚姻費用の拒否に関するQ&A

離婚を前提として別居しているため婚姻費用の支払いを拒否したいです。可能ですか?

原則としてできません。
離婚を前提としていても、離婚届が受理され戸籍上の夫婦関係が解消されるまでは、婚姻費用を支払う必要があります。

離婚協議中だから払わないという対応は、未払い分を累積させるだけであり、得策ではありません。

子供と会わせてもらえないことを理由に婚姻費用の支払いを拒否できますか?

原則としてできません。
面会交流と婚姻費用の支払いは、法律上別の問題として扱われます。会わせてくれないなら金は払わないという主張は認められません。

面会交流が実現しないことへの不満がある場合は、婚姻費用の支払いを止めるのではなく、別途面会交流調停を申し立てるなどして、適切な交流のルールを決める必要があります。

生活が苦しいため婚姻費用の支払いが難しいです。拒否できますか?

完全に拒否することは難しいですが、減額の余地はあります。

生活が苦しい場合でも、自己と同程度の生活を相手にも保障する必要があるため、支払い義務自体は減免されにくい傾向にあります。

しかし、失業や病気などで収入が著しく減少し、算定表の基準通りに支払うと自身の最低生活費すら維持できないような場合には、その状況を説明することで、支払い額の減額が認められる可能性があります。

算定表で決めた婚姻費用を支払っています。子供の進学費として追加で請求されているのですが、拒否できますか?

義務者の承諾がない私立学校の学費などは、拒否できる可能性があります。

家庭裁判所が使用している算定表の金額には、公立学校の教育費相当額があらかじめ含まれています。したがって、公立学校の費用であれば追加で支払う必要はありません。

私立学校の学費や塾代などの高額な教育費については、義務者がその進学や通塾を承諾していた場合や、義務者の収入・学歴等から見て不合理でない場合を除き、原則として加算は認められません。

そのため、承諾していない高額な費用については、支払いを拒否できる可能性があります。
なお、ここでいう承諾とは、明らかに承認しているような場合だけではなく、黙示的な承認(黙認)を含みますのでご注意ください。

婚姻費用の支払いを拒否したいと思ったら弁護士にご相談ください

婚姻費用の支払いは、原則として拒否できませんが、相手方に不貞行為などの有責性がある場合や、ご自身の経済状況が急変した場合など、例外的に減額や免除が認められるケースがあります。

しかし、自己判断で支払いを止めてしまうと、給与の差し押さえなどの強制執行を受けたり、離婚条件で不利な立場に立たされたりするリスクが高まります。

相手の請求額に納得がいかない、住宅ローンを払っているのに二重払いはきつい、相手が不倫をして出て行ったといった事情がある場合は、適正な金額を算定し直すことで、負担を軽減できる可能性があります。

交渉や調停において、法的な根拠に基づいた適正な主張を行うためにも、まずは弁護士にご相談ください。

突然ですが、あなたは「遺留分」という言葉を聞いたことがありますか?

故人(被相続人)が遺言書を作成していても、一定の法定相続人には最低限受け取れる財産の割合が民法で保障されています。これが「遺留分」です。
しかし、この遺留分は、相続人自身の意思で「放棄」することが可能です。

本記事では、この「遺留分放棄」について、それがどのような制度なのか、生前(相続開始前)と相続開始後で手続きがどのように異なるのか、さらには放棄のメリット・デメリット、「相続放棄」との違いなど、法律実務を踏まえて弁護士が分かりやすく解説します。

ご自身やご家族の相続対策、事業承継などを検討されている方は、ぜひこの記事を最後までお読みいただき、検討の一要素としてください。

「遺留分」は放棄できるのか?

結論から申し上げますと、遺留分は放棄することができます。
ただし、遺留分を放棄する手続きは、「相続開始前(生前)」「相続開始後(死後)」とで大きく異なります。

特に生前に放棄をする場合は、家庭裁判所の許可が必要となり、非常に厳格な要件が定められています(民法1049条1項)。

遺留分は、相続人の生活保障や相続財産の公平な分配という観点から、民法が強く保護している権利です。
そのため、その権利を失う「放棄」については、本人の自由な意思と合理性が特に重視されます。

まずは、この遺留分と遺留分放棄の制度について、基本的な点から解説していきましょう。

そもそも遺留分とは

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者、子、直系尊属)のために、民法上保障されている最低限の遺産の取り分のことです(民法1042条1項参照)。

被相続人は、生前に自らの財産をどのように処分するか、あるいは遺言書を作成して誰にどれだけ相続させるかを自由に決定できます(遺言自由の原則)。

しかし、もし遺言書によって特定の相続人にすべての財産が集中したり、特定の第三者に多額の財産が遺贈されたりした場合、他の近しい相続人の生活が脅かされたり、公平さを欠いたりする事態が生じかねません。

このような事態を防ぎ、相続人の生活保障や相続財産の最低限の公平性を確保するために設けられたのが遺留分制度です。

遺留分が侵害された相続人は、財産を受け取った人に対して、侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます。
この権利を遺留分侵害額請求権といいます。

ここでのポイントは、遺留分の権利を持つ人(遺留分権利者)は、配偶者、子(代襲相続人を含む)、直系尊属であり、兄弟姉妹は法定相続人であっても遺留分はないところです。

遺留分放棄とは

遺留分放棄とは、遺留分権利者である相続人が、将来的にまたは現に発生した遺留分侵害額請求権を行使する権利を自らの意思で手放すことです。

つまり、遺留分権利者が遺留分放棄をすると、他の相続人や受遺者が遺言書通りに財産を取得したとしても、その相続人は「遺留分が侵害された」として金銭を請求する権利を失います。

遺留分放棄は、被相続人の生前に行う場合と、相続開始後に行う場合とで、その法的性質と手続きが異なります。

生前(相続開始前)の遺留分放棄:
まだ発生していない将来の遺留分侵害額請求権をあらかじめ放棄することであり、家庭裁判所の許可が必要です。

相続開始後(死後)の遺留分放棄:
既に発生している遺留分侵害額請求権を、権利行使しない旨を表明することであり、特定の厳格な手続きは不要です。

遺留分放棄は、特に事業承継の場面や、特定の相続人に特定の財産を集中させたいという被相続人の強い意向がある場合に、相続トラブルを未然に防ぐために検討されることが多い手続きです。

遺留分放棄のメリット・デメリット

遺留分放棄は、被相続人側と遺留分権利者側の双方にメリット・デメリットが生じます。
特に被相続人の意思を尊重し、円滑な相続を実現するうえで大きな効果がありますが、一方で権利者側には注意すべき点もあります。

メリット

遺留分放棄の最も大きなメリットは、「被相続人の意思を確実に実現し、相続争いを未然に防げること」にあります。

  • 事業承継の円滑化
    中小企業の経営者などが、後継者である特定の子に自社の株式や事業用資産を集中させたい場合、他の相続人に遺留分を放棄してもらうことで、後継者の事業基盤が揺るがされるリスクを排除できます。
    これにより、遺留分侵害額請求による会社の不安定化を防ぎ、円滑な事業承継が可能となります。
  • 特定の財産保全
    自宅などの特定の不動産を特定の相続人に確実に残したい、あるいは、長年の介護に対する報償として特定の相続人に多くの財産を譲りたいといった被相続人の意向を、遺留分侵害額請求によって覆されることなく実現できます。
  • 相続開始後の紛争防止
    遺留分侵害額請求権は、相続開始後に行使されると、他の相続人との間で感情的な対立を生み、長期的な紛争に発展しやすい傾向があります。
    生前に放棄が完了していれば、この紛争の火種を事前に消すことができます。

デメリット

遺留分放棄は、放棄した相続人自身にとっては大きなデメリットを伴う可能性があります。

  • 権利の喪失
    最も大きなデメリットは、被相続人の財産に対して最低限保障されていた取り分(遺留分)を一切請求できなくなることです。
    被相続人が、遺言書で放棄者に財産を全く残さない内容を書いても、放棄者はそれに対して何も主張できなくなります。
  • 生前放棄の厳格な要件
    生前に遺留分を放棄するためには、家庭裁判所の許可が必要です。
    この許可を得るためには、「本人の自由な意思」「合理的な理由」「代償措置の有無」といった厳格な要件を満たさなければならず、手間と時間がかかります。
  • 放棄後の撤回は原則不可能
    一度、家庭裁判所の許可を得て遺留分を放棄した場合、原則としてその放棄を撤回することはできません。
    後になって「やっぱり放棄しなければよかった」と思っても、基本的に権利を回復することは不可能です。
  • 相続人としての地位は維持
    遺留分放棄をしても、その人は相続人としての地位を失うわけではありません。
    例えば、借金などのマイナスの財産を含めた相続財産全体を放棄したい場合は、遺留分放棄とは別に「相続放棄」の手続きが必要になります。
    この点は、次の章で詳しく解説します。

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相続開始前(生前)に遺留分放棄する方法

生前に遺留分を放棄するためには、必ず遺留分権利者本人が家庭裁判所に対して許可の申立てを行い、許可を得る必要があります。

この手続きは、遺留分制度が相続人の生活保障を目的とする強力な権利であるため、本人の意思を尊重しつつ、不当な強制がないかを厳格に審査するためです。

ここで注意するべき点は、生前に親族間で「遺留分はいらない」という念書や覚書を交わしても、家庭裁判所の許可がない限り、その遺留分放棄は法的な効力を持ちません。

遺留分放棄の手続きの流れ

生前の遺留分放棄は、以下の流れで進められます。

  1. 1 必要書類の準備:申立書、戸籍謄本、被相続人の財産目録(分かる範囲で)、放棄に至る経緯を記載した書面、代償措置に関する資料(ある場合)などを準備します。
  2. 2 家庭裁判所への申立て:遺留分権利者本人が、被相続人(財産を遺す人)の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、「遺留分放棄の許可の申立て」を行います。
  3. 3 家庭裁判所による調査(審問):裁判所の調査官や裁判官が、申立人(放棄する人)や被相続人に対して、申立ての経緯、放棄の真意、放棄に至る合理的な理由、代償措置の有無や内容などについて聞き取り調査(審問)を行います。
  4. 4 許可の審判:家庭裁判所が上記の要件をすべて満たしていると判断した場合、遺留分放棄を許可する旨の審判を下します。

この手続きは、あくまで本人の自由な意思と合理性を審査するものであり、単に「親が望んでいるから」という理由だけでは許可が出ないことが多いことに留意が必要です。

家庭裁判所が遺留分放棄の許可を出す要件

家庭裁判所が遺留分放棄の許可を出すかどうかは、主に以下の3つの要件を総合的に判断して決定されます。

これらの要件は、遺留分権利者の権利を不当に侵害しないための重要なチェック機能となっています。

①本人の自由な意思に基づいているか

遺留分放棄は、遺留分権利者本人の自由な意思に基づいていることが大前提です。

  • 強制・欺罔の有無
    被相続人や他の相続人から、脅迫や強要、あるいは欺罔によって放棄をさせられたのではないか、精神的に追い込まれてやむを得ず放棄する状況ではないか、といった点が厳しく審査されます。
  • 意思能力の確認
    放棄する人が、遺留分という権利の内容や、放棄によってどのような効果が生じるかを正しく理解し、判断できる能力(意思能力)を有しているかも確認されます。
  • 自由な意思の立証
    申立書や審問において、放棄が自発的な選択であることを説得的に説明する必要があります。

②遺留分放棄をする合理的な理由があるか

単に「親の言うことだから」という理由だけでは不十分で、遺留分を放棄することに客観的・合理的な理由がなければなりません。

  • 先行して財産を受け取っている
    例えば、放棄する相続人が既に被相続人から多額の生前贈与を受けている、あるいは海外留学や起業の資金援助など、特別の利益を受けているといった事情は合理的な理由として認められやすいです。
  • 被相続人の事業への協力
    被相続人の事業承継を円滑にするために、後継者でない相続人が放棄をすることに合理性が認められるケースもあります。
  • 他の相続人との公平
    他の相続人の生活状況や介護への貢献度などを総合的に考慮し、放棄することが家族全体の公平に資すると認められる場合も、合理的な理由となり得ます。

③放棄する遺留分と同等の代償があるか

家庭裁判所は、遺留分権利者がその権利を放棄することによって、経済的に不利益を被らないよう、代償措置の有無と相当性を重視します。

  • 代償措置の例
    放棄の見返りとして、被相続人から金銭を受け取っている、または特定の不動産を譲り受けている、あるいは生命保険金の受取人になっているといった事実がこれに当たります。
  • 代償額の相当性
    代償措置がある場合、その経済的価値が、放棄する遺留分の価値と比べて著しく不均衡でないかが審査されます。不均衡が大きすぎる場合は、自由な意思に基づく放棄と認められない可能性があります。
  • 代償がない場合
    代償が全くない場合でも、上記の「合理的な理由」で述べたように、既に多額の生前贈与を受けているなどの特別な事情があれば、許可が下りる可能性はあります。
    しかし、代償がない場合は、より厳格な審査が行われることになります。

生前に書いた遺留分放棄の念書は有効か?

前述の通り、被相続人の生前に、遺留分権利者が「遺留分はいらない」という内容の念書や覚書を単独で作成したり、親族間で交わしたりしても、それ自体には法的な遺留分放棄の効力は認められません。

民法上、生前の遺留分放棄の効力発生要件として、家庭裁判所の許可が必須と定められているからです。
したがって、もし念書を作成していたとしても、相続開始後に遺留分を請求されれば、その念書を理由に請求を拒むことはできません。

念書は、裁判所に提出する際の「放棄の意思を示す資料の一つ」として機能し得るに過ぎず、単独で法的効力を持つことはないため注意が必要です。

生前に確実に放棄の効果を得たいのであれば、必ず家庭裁判所へ申立てを行う必要があります。

遺留分放棄を撤回することはできるか?

原則として、家庭裁判所の許可を得て有効に成立した生前の遺留分放棄は、撤回することができません。

遺留分放棄は、被相続人の遺言作成の自由を保障し、円滑な財産承継の基盤を確立するための制度であり、法律関係の安定が極めて重要だからです。
ただし、例外的に以下のようなケースでは、無効または取り消しが認められる可能性があります。

  • 詐欺・強迫による放棄
    家庭裁判所の許可を得る過程で、他の相続人や被相続人から詐欺や強迫があったことが判明した場合、民法の規定に基づいて放棄の意思表示を取り消すことができます。
  • 錯誤による放棄
    放棄の内容について、重大な勘違い(錯誤)があった場合、その放棄は無効となる可能性があります。

しかし、これらの主張が認められるためのハードルは非常に高く、裁判で立証していく必要があり、簡単なことではありません。

相続開始後(死後)に遺留分放棄する方法

相続が開始された後(被相続人の死後)の遺留分放棄は、生前の放棄とは全く異なります。

相続開始後においては、遺留分権利者に与えられた権利は「遺留分侵害額請求権」という具体的な金銭債権です。
この金銭債権を行使しないことを表明したり、権利を行使する期限が過ぎたりすることで、結果的に遺留分を放棄したのと同じ状態になります。

相続開始後の遺留分放棄に、家庭裁判所の許可は不要です。
放棄の方法としては、内容証明郵便など書面で、財産を受け取った人(受贈者・受遺者)に対して「遺留分侵害額請求権を行使しない」旨を通知する方法などが一般的です。

これは、相手方に権利不行使の意思を明確に伝えることで、後日の紛争を防ぐためです。

遺留分放棄に期限はあるのか?

相続開始後の遺留分侵害額請求権には、厳格な期限が定められています。

この期限内に権利を行使しなければ、時効により請求権は消滅し、結果的に遺留分を放棄したのと同じ効果となります。
そのため、遺留分放棄自体には、期限はないですが、消滅時効の期間を迎えてしまうと放棄するか否かを選択することができなくなります。

遺留分侵害額請求権の行使期間(消滅時効)は、以下のいずれか早い方です。

  • 「相続の開始を知り、かつ、遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時」から1年間
  • 「相続開始の時」から10年間

このうち特に重要なのは1年間の期限です。

1年間の期限は、相続人(遺留分権利者)が「被相続人が亡くなったこと(相続の開始)」と「自分の遺留分が侵害されているという事実」の両方を知った時点からスタートします。

この1年という期間は非常に短いため、遺留分を請求するか放棄するかは、速やかに判断する必要があります。

また、10年間の期限は、仮に遺留分の侵害を知らなかったとしても、相続開始から10年が経過すると、時効により遺留分侵害額請求権は完全に消滅するものです。

遺留分侵害額請求権を行使するのか、あるいは行使せずに放棄するのかを迷っている場合でも、この1年間の期限を徒過しないよう、まずは弁護士に相談し、現状の権利関係を把握することが極めて重要です。

「遺留分放棄」と「相続放棄」の違い

「遺留分放棄」と「相続放棄」は、どちらも「放棄」という言葉が入っていますが、放棄の対象、法的効果が全く異なる別個の制度です。まず、放棄の対象が異なります。

「遺留分放棄」は、これまでの記載のとおり、遺留分侵害額請求権のみを放棄します。
そのため、相続人としての地位は維持されます。

しかしながら、「相続放棄」は相続人としての地位をすべて放棄することになります。
他にも違いはありますが、最も重要な違いは、「相続人としての地位を失うかどうか」です。

「遺留分放棄」は、遺留分侵害額請求権を失うだけなので、相続人の地位として故人(被相続人)の財産を承継することができます。

一方で、「相続放棄」は、初めから相続人ではなかったことになるので、故人(被相続人)の財産の一切を承継しないこととなります。

したがって、被相続人に多額の借金があり、財産を一切受け継ぎたくない場合は、「遺留分放棄」ではなく「相続放棄」の手続きをする必要があるため、混同しないよう注意が必要です。

このように、「遺留分放棄」は、事業承継、特定の財産保全、特定の相続人への集中的な財産承継等を特定の人やモノを保護するために用いられることがほとんどです。

その一方で、「相続放棄」は、個人(被相続人)に多額の借金がある、相続争いに巻き込まれたくない等、相続の舞台から離れることを目的として用いられることがほとんどです。

遺留分放棄すべきかどうかで判断に迷ったら、まずは弁護士にご相談下さい。

遺留分放棄は、一度有効に成立すると原則として撤回できないという、非常に重い法律行為です。
特に生前放棄の場合は、家庭裁判所の許可要件をクリアするための合理的な理由の準備や資料の提出が不可欠となります。

故人(被相続人)側では、特定の相続人に確実に財産を集中させたい、事業承継を円滑に進めたいが、遺留分が紛争の火種にならないかという不安があると思います。

一方で、相続人側では、親から「遺留分を放棄してほしい」と言われたが、放棄することで将来の生活が不安で、代償として提示された額が適正なのか判断できないという不安があると思います。

このように、遺留分放棄は、単なる法律手続きではなく、ご家族の将来の生活や事業の安定に直結する、極めてデリケートな問題を含んでいます。

なので、判断に迷う場合は、一度、相続問題に強い弁護士にご相談ください。

弁護士は、あなたの状況を正確に分析し、遺留分の金額の試算、代償措置の適正性の判断、家庭裁判所への申立に必要な書類作成、裁判所とのやり取りまで、一貫してサポートいたします。

会社の社長という立場にある者が、その地位を利用して会社の資金を私的に流用したり、不当に財産上の損害を与えたりする行為は、業務上横領罪や特別背任罪といった重大な犯罪に該当する可能性があります。

これらの犯罪が成立した場合、社長は刑事上の責任を負うだけでなく、会社に対する民事上の損害賠償責任、さらには解任請求を受ける可能性もあります。

本記事では、会社社長による横領はどのような犯罪が成立し、どのような責任を負うことになるのか、具体的に解説します。

会社社長が会社のお金を横領すると業務上横領罪が成立する可能性がある

会社社長が会社の金銭を私的に費消するなど、自己の利益のために利用する行為は、業務上横領罪に問われる可能性があります。

社長は、会社の財産管理を業務として担っており、この職務上の立場を利用して会社の財産を自分のものにしようとすれば、業務上横領罪の構成要件に該当します。

会社の子会社の資金を着服する行為も同様に、業務上横領罪が成立する可能性があります。

業務上横領罪とは

業務上横領罪は、刑法第253条に規定されており、「業務上自己の占有する他人の物を横領した者」に成立する犯罪です。
法定刑は10年以下の懲役と、通常の横領罪(刑法第252条)よりも重く設定されています。

この犯罪は、会社から信任されて財産を任されているにもかかわらず、その信頼を裏切る行為を特に重く罰するものです。

業務上横領罪の概要を簡単に述べましたが、より詳細な解説については、こちらの記事をご参照ください。

業務上横領罪について詳しく見る

中小企業では社長による横領事件は多い

一般的に、中小企業においては、社長が会社の資金を自由に扱う権限を強く持っている場合が多く、他の役員や従業員、株主によるチェック機能が十分に働いていないことがあります。

特に、社長が経理業務も兼任しているような小規模な会社では、監視の目が緩みがちであるため、社長が私的な目的で会社の財産を流用(着服)する事件が発生しやすい傾向があります。

社長による横領事件の例

社長による横領事件の事例としては、以下のような手口が考えられます。

  • ①取引の仮装による着服
    社長が、実際には存在しない取引先との間で架空の取引を捏造し、その代金名目で会社の資金を経費として計上し、最終的に自らの口座に送金する手口。
  • ②子会社を利用した資金流用
    社長が、支配下にある子会社との間の送金や融資を装い、実態のない名目で会社から資金を流出させ、私的な借金の返済などに充てる手口。
  • ③不透明な経費の計上
    社長自身の飲食費や旅行費、趣味の物品購入費など、個人的な支出を業務上の経費であると偽って精算させ、会社のお金を着服する手口。

これらの手口で会社の財産を不法に領得した場合、社長には業務上横領罪が成立します。

会社社長の地位を利用して横領行為をすることは刑の重さに影響するの?

会社社長という、会社財産の管理における最も重要な地位を利用して横領行為に及ぶことは、裁判になった際に刑の重さに影響します。

業務上横領罪は、会社からの信任に背いた行為であるため、その責任は元々重いものですが、社長という最高責任者の立場が悪用されたことは、悪質性が高いと判断され、より重い刑罰が科される傾向があります。

特別背任罪と業務上横領罪の違い

社長による不当な財産処分行為は、業務上横領罪と特別背任罪の2つの犯罪が問題となる可能性がありますが、その成立要件には明確な違いがあります。

業務上横領罪は、社長が自己の占有下にある会社の財産を着服し、自分のものにする(不法領得の意思)行為であるのに対し、特別背任罪は、自己または第三者の利益を図る目的、あるいは会社に損害を与える目的で、任務に背く行為をし、会社に財産上の損害を与えることで成立します。

例えば、会社の資金を直接着服すれば横領罪、会社の利益にならない高額な不動産を第三者から購入させ、会社に損失を与えれば特別背任罪が問題となります。

特別背任罪とは

特別背任罪は、会社法第960条等に規定されている犯罪です。これは、会社の取締役などの役員が、その任務に背き、会社に財産上の損害を与える行為をした場合に成立します。

会社法第960条(特別背任)
「発起人、取締役、執行役、監査役若しくは会社法第59条第1項の清算人又は支配人その他の会社を代表する者(以下略)が、自己若しくは第三者の利益を図り、又は会社に損害を加える目的をもって、その任務に背く行為をし、当該会社に財産上の損害を加えたときは、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」

この特別背任罪は、自己のために着服することを目的としている「不法領得の意思」までは必要とせず、子会社を利用した不当な利益供与や、会社に不利益な取引の締結など、任務違背行為によって会社に損害を与えた場合に成立する点が、業務上横領罪との大きな違いです。

横領を行った社長の責任

横領を行った社長は、その行為に対して、刑事上の責任、民事上の責任を負うことになり、さらに会社に損害を与えたことにより、解任請求の可能性があります。

刑事上の責任

社長が横領を行った場合、その行為は業務上横領罪(刑法第253条)または特別背任罪(会社法第960条等)という犯罪に該当し、刑事上の責任を問われます。

これらの犯罪が成立すると、社長は10年以下の懲役に処せられる可能性があり、特別背任罪の場合は1000万円以下の罰金が併科される可能性もあります。

社長による横領は悪質性が高いと判断されやすいため、起訴された場合には実刑判決となるリスクも高まります。

民事上の責任

社長が横領行為により会社に損害を与えた場合、会社に対して民事上の責任を負います。

これは、民法上の不法行為責任(民法第709条)または会社法上の取締役の任務懈怠による損害賠償責任(会社法第423条第1項)に基づき、会社が被った損害額を賠償しなければならないというものです。

具体的には、横領した金銭の全額(着服した金額)並びに、その行為によって会社が被った間接的な損害(例:調査費用、信用毀損による逸失利益など)についても賠償を求められる可能性があります。

会社に損害を与えたことにより解任請求の可能性がある

社長は会社との間で雇用契約を結んでいるわけではないため、「解雇」されることはありませんが、取締役という地位にあります。

しかし、社長が横領行為によって会社に対して重大な損害を与えた場合や、法令に違反した責任を負うことになった場合、会社法に基づき、株主総会において解任請求を受ける可能性があります。

具体的には、以下のいずれかの手続きにより、取締役の地位を失うことになります。

  • ①株主総会の特別決議による解任
    会社法第339条に基づき、株主総会の特別決議(議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)によって取締役を解任することができます。
    横領行為は、取締役としての適格性を著しく欠く行為であり、解任請求の正当な理由となります。
  • ②訴訟による解任の請求
    会社法第854条に基づき、総株主の議決権の100分の3以上を有する株主は、取締役がその職務に関し不正の行為をし、又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があるにもかかわらず、当該株主総会においてその解任の議案が否決された場合には、株主総会の日から30日以内に、訴えをもって解任の請求をすることができます。
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横領した会社のお金を返済さえすれば逮捕されない?

業務上横領罪は、被害者である会社からの刑事告訴を受けて事件化するケースが多い犯罪です。

したがって、社長が横領した会社のお金を全額弁済するなどして会社との間で示談が成立し、会社が刑事告訴を行わない、あるいは既に提出した刑事告訴を取り下げるという合意が得られれば、警察の捜査が開始されない、または事件化しても不起訴処分となる可能性があります。

着服したお金を返済し、被害弁償を尽くすことが、逮捕を回避し、または刑を軽くするための最も重要な要素となります。

示談交渉は弁護士にお任せください

社長という会社のトップの地位を利用して横領してしまった責任は重く、被害者である会社側も厳しい態度で臨むことが予想されます。

このような状況の中、当事者同士で示談交渉を進めることは極めて困難であり、冷静な話し合いが実現しない可能性が高いです。
そのため、社長だからこそ、速やかに弁護士に相談し、示談交渉のサポートを依頼することが不可欠です。

弁護士が代理人として交渉することで、客観的な立場から示談条件の調整を行い、会社側の感情的な反発を抑えつつ、穏便な解決を目指すことができます。

事件化した際も減刑にむけてサポートします

業務上横領罪で警察の捜査が入り、事件化してしまった場合でも、弁護士は減刑にむけた最大限のサポートを行います。

具体的には、検察官や裁判所に対して、示談の成立や被害金額の全額弁済など、被疑者・被告人にとって有利な情状事実を主張・立証します。

反省の意思、再発防止策の策定、家族などの監督環境の整備といった要素も減刑の重要な判断材料となるため、これらを客観的に示すための証拠収集及び主張活動を行います。

身柄が拘束されている場合は解放に向けて活動します

業務上横領罪は重い犯罪であり、逮捕された場合、身柄が拘束される期間が長くなる可能性があります。
社長が逮捕され、身柄が拘束されてしまうと、会社の業務が滞り、事業にも深刻な影響を与えかねません。

弁護士は、逮捕後の警察や検察による取調べへの対応を助言するとともに、勾留阻止のための意見書の提出や、勾留が決定された場合の準抗告手続きなどにより、早期の身柄解放に向けて活動します。

横領したお金を返済する際に分割払いは可能なのか

横領した金額が大きく、一括での返済は難しいが、返済の意思はあるというケースは少なくありません。
このような場合、会社側との示談交渉において、分割払いを認めてもらえる可能性もあります。

会社側としても、分割払いであっても確実に返済を受ける方が、刑事告訴により事件化させ、一切の返済を受けられない可能性があるよりも現実的だと判断する場合があります。

この分割払いの交渉においても、会社側の同意を得るためには、返済計画の確実性を示すなど、専門的な知見と交渉力が必要となるため、弁護士のサポートが不可欠です。

横領による返済については、こちらの記事でより詳しく解説しています。

横領による返済について詳しく見る

会社のお金を横領してしまったらお早めに弁護士にご相談ください

会社の社長による横領行為は、業務上横領罪や特別背任罪という重い犯罪に該当する可能性があり、刑事、民事、さらには解任請求といった複数の問題が同時に発生します。

特に、社長という立場を利用した行為は悪質性が高いと判断されやすく、ご自身だけで解決を図ることは極めて困難です。

逮捕を回避し、会社との示談を成立させ、減刑を目指すためには、一刻も早く弁護士に相談し、適切な法的手続きと示談交渉のサポートを受けることが重要です。

横領が発覚する前、あるいは着服が始まった早い段階でご相談いただくことで、とり得る選択肢を増やし、最も円満な解決を目指すことが可能です。
まずはお気軽に当事務所の弁護士にご相談ください。

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
監修:弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長
保有資格
弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。