監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
配偶者やパートナーからの暴力(DV)に苦しんでいる方の中には、恐怖で身動きが取れず、誰にも相談できないまま孤立してしまうケースが少なくありません。
しかし、法律には被害者の安全を確保するための強力な手段として「保護命令」という制度が用意されています。
本記事では、保護命令の中でも主要な「接近禁止命令」について、その仕組みや効力、申し立てを行うための具体的な手順や費用、注意点について詳しく解説します。
接近禁止命令とは?
接近禁止命令とは、配偶者暴力防止法(DV防止法)に基づき、裁判所が加害者に対して、被害者の身辺につきまとったり、住居や勤務先等の付近を徘徊したりすることを禁止する命令です。
この命令が発令されると、加害者は被害者に近づくことができなくなるため、被害者は物理的な距離を確保し、身の安全を守ることが可能となります。
2024年4月の法改正により、命令の有効期間は従来の6か月から1年間へと伸長されました。
違反した場合
接近禁止命令は、裁判所による強力な命令であり、これに違反した場合には刑事罰が科されます。
具体的には、2年以下の拘禁刑(懲役)又は200万円以下の罰金という重い刑罰が規定されています(DV防止法第29条)。
警察も保護命令の発令事実を把握しているため、加害者が命令に違反して接近してきた場合、被害者が110番通報をすれば、警察は現行犯逮捕を含む迅速な対応をとることができます。
接近禁止命令が出る条件
接近禁止命令が発令されるためには、主に以下の2つの要件を満たす必要があります。
第一に、配偶者(事実婚や生活の本拠を共にする交際相手を含む)から身体に対する暴力を受けたこと、又は生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫されたことです。
第二に、今後も加害者からの暴力等により、被害者の生命又は心身に重大な危害を受けるおそれが大きいと認められることが必要です。
接近禁止命令以外の申し立てておくべき保護命令
電話等禁止命令
加害者が被害者に対して、面会を強要したり、無言電話をかけたりする行為を禁止する命令です。
電話だけでなく、メールやSNS等の連続送信、ファックスの送信、緊急時以外の深夜早朝の連絡も対象となります。
また、法改正により、GPS機器を用いて被害者の位置情報を取得する行為や、その位置情報を監視している旨を告げる行為についても禁止の対象として追加されました。期間は1年間です。
子への接近禁止命令
加害者が、被害者と同居している未成年の子どもを連れ戻すと疑わせる言動を行っている場合など、子どもを利用して被害者に面会を強要することを防ぐための命令です。
加害者に対し、子どもの身辺につきまとったり、学校や住居の付近を徘徊したりすることを禁止します。
期間は1年間ですが、子どもが15歳以上の場合は、その子ども自身の同意が必要となります。
親族等への接近禁止命令
加害者が、被害者の実家の両親や親族等の住居に押し掛け、著しく粗野な言動を行っている場合などに発令されます。
親族等を介して被害者に接触を迫ることを防ぐための命令です。
対象となるのは、被害者の親族や、被害者が社会生活を営む上で密接な関係にある者です。
この命令の発令には、対象となる親族等本人の同意が必要となります。期間は1年間です。
退去命令
被害者と加害者が同居している場合において、被害者が住居から転居する準備期間を確保するために、加害者に対して住居からの退去及び住居付近の徘徊禁止を命じるものです。
接近禁止命令とは異なり、この命令の効力は2か月間と短期間に設定されています。
被害者が安全に別居を開始するための、一時的かつ緊急的な措置として位置づけられています。
接近禁止命令の申立ての流れ
①DVセンターや警察への相談
接近禁止命令を申し立てる前には、原則として配偶者暴力相談支援センター(DVセンター)や警察署へ相談に行く必要があります。
これは、裁判所への申立ての際に、事前に公的機関へ相談した事実を記載する必要があるためです。
相談時には、暴力の内容や経緯を具体的に伝え、相談証明書を発行してもらうか、相談日時や担当者名、相談番号などを正確に控えておくようにしてください。
相談実績がない場合
DVセンターや警察への相談実績がない場合でも、接近禁止命令の申立て自体は可能です。
しかし、この場合には公証役場で「宣誓供述書」を作成し、申立書に添付しなければなりません。
宣誓供述書とは、被害事実について公証人の前で真実であることを宣誓し、書面化したものです。
作成には別途費用と手間がかかるため、緊急時を除いては、事前に公的機関へ相談しておくことが推奨されます。
②裁判所に申立てを行う
申し立てができるのは本人だけ
保護命令の申立てを行うことができるのは、DVの被害を受けている本人に限られます。
親族や友人が代理で申し立てることはできません。
ただし、弁護士を代理人として選任し、手続きを一任することは可能です。
申立先
申立てを行う裁判所は、地方裁判所です。管轄は、「相手方(加害者)の住所地」、「被害者(申立人)の住所地又は居所地」、あるいは「DV被害が発生した場所」を管轄する地方裁判所のいずれかになります。
被害者がすでに避難しており、避難先の住所を知られたくない場合は、DV被害が発生した場所や相手方の住所地を管轄する裁判所を選択することも一般的です。
必要書類
申立てには、主に以下の書類が必要です。
- 保護命令申立書:請求の趣旨や原因(暴力の事実等)を記載したもの。
- 証拠書類:医師の診断書、怪我の写真、暴力の経緯を記した陳述書、脅迫メールの写し等。
- 戸籍謄本及び住民票:当事者の関係や住所を証明するため。
- 相談等の事実を証明する資料:DVセンターや警察への相談記録等。これらは正本と副本(相手方送付用)の2部を用意する必要があります。
申立てに必要な費用
申立てにかかる主な費用は以下の通りです。
- 申立手数料:1,000円(収入印紙で納付)
- 予納郵便切手:数千円程度(裁判所により異なりますが、概ね2,000円~3,000円程度です)
これ以外に、戸籍謄本等の取得実費がかかります。弁護士に依頼する場合は、別途弁護士費用が必要です。
③口頭弁論・審尋
申立書が受理されると、裁判官による面接(審尋)が行われます。
通常、迅速性を期すため、申立人(被害者)への審尋が即日または数日中に行われます。
その後、相手方(加害者)への審尋も行われますが、被害者と顔を合わせることがないよう、期日をずらすなどの配慮がなされます。
裁判官は双方の言い分を聞き、証拠を確認した上で、保護命令を発令するかどうかを判断します。
④接近禁止命令の発令
要件が満たされていると判断された場合、裁判所は速やかに接近禁止命令を発令します。
命令書は、申立人と相手方の双方に送達されるとともに、管轄の警察署にも通知されます。
これにより、万が一相手方が命令に違反した場合には、警察が即座に対応できる体制が整います。申立てから発令までの期間は事案によりますが、早ければ1週間から2週間程度です。
接近禁止命令における注意点
発令されるためにはDVの証拠が必要
裁判所が命令を出すためには、客観的な証拠が極めて重要です。
単に「怖い」という主観的な訴えだけでは認められにくいのが実情です。
医師の診断書(受傷日時や原因が明記されたもの)、暴力を受けた患部の写真、暴言や脅迫が録音されたデータ、具体的な被害日時や状況を記録した日記などが有力な証拠となります。
証拠が不十分な場合は、陳述書で詳細かつ具体的に被害状況を説明する必要があります。
相手に離婚後の住所や避難先を知られないよう注意
申立書や添付書類には、申立人の現住所が記載されます。そのまま相手方に副本が送達されると、避難先が知られてしまう危険があります。
これを防ぐためには、申立てと同時に「秘匿決定」の申立てや「閲覧制限」の申立てを行う必要があります。これにより、相手方に送られる書類上の住所を黒塗りする等の措置をとることができ、居場所を隠したまま手続きを進めることが可能です。
モラハラは対象にならない
いわゆる「モラルハラスメント(モラハラ)」については注意が必要です。
無視や人格否定などの言葉の暴力は精神的に辛いものですが、法改正により精神的暴力も対象に含まれたとはいえ、そのハードルは依然として高いものです。
単なる性格の不一致や不仲、軽度の嫌がらせ程度では、保護命令の要件である「生命又は心身に重大な危害を受けるおそれ」とは認められにくい傾向にあります。
モラハラで申立てを行う場合は、それが自由を著しく制限し、恐怖を感じさせるレベルであることを立証する必要があります。
接近禁止命令に違反した場合の対処法
接近禁止命令が発令されているにもかかわらず、相手方がつきまとったり、自宅付近を徘徊したりした場合は、直ちに最寄りの警察署へ通報してください。
保護命令違反は犯罪ですので、警察は加害者を現行犯逮捕することができます。
また、通報の際には「裁判所から接近禁止命令が出ていること」を明確に伝えると、警察も事態の緊急性を把握しやすくなり、迅速な対応が期待できます。
身の安全を最優先に行動してください。
接近禁止命令に関するQ&A
接近禁止命令の期間を延長したい場合はどうしたらいいですか?
接近禁止命令の有効期間(1年間)が満了した後も、依然として加害者からの被害を受けるおそれが高い場合には、再度申立てを行うことで命令を得ることができます。
ただし、これは自動的な「延長」ではなく、あくまで「再度の申立て」という扱いになります。
そのため、前回の命令発令後にどのような事情変更があったか、現在もなお生命や身体等に重大な危害を受けるおそれが継続しているかについて、改めて主張・立証する必要があります。
接近禁止命令はどれくらいの距離が指定されるのでしょうか?
接近禁止命令では、「半径〇メートル以内」といった具体的な距離が数値で指定されることは一般的ではありません。
命令の内容は「住居、勤務先その他通常所在する場所の付近を徘徊してはならない」というものであり、この「付近」が具体的にどの範囲を指すかは、現場の状況や社会通念によって判断されます。
一般的には、相手を視認できる距離や、大声を出せば届く距離などが該当すると考えられています。
離婚後でも接近禁止命令を出してもらえますか?つきまとわれて困っています。
はい、離婚後であっても接近禁止命令を申し立てることは可能です。
DV防止法は、婚姻中の暴力だけでなく、離婚後に元配偶者から受ける暴力や脅迫についても保護の対象としています。
過去の婚姻期間中に暴力を受け、離婚後も引き続き生命や身体に危害を受けるおそれがある場合は、元配偶者を相手方として申立てを行うことができます。
DVで接近禁止命令を申し立てる際は弁護士にご相談ください
接近禁止命令は、DV被害者の命と生活を守るための非常に有効な法的手段です。
しかし、申立てには迅速な証拠収集や、裁判所を納得させるための法的な主張構成が求められます。
また、相手方に住所を知られないようにするための配慮も欠かせません。
弁護士に依頼することで、申立書の作成や証拠の整理、裁判所での面談への同行など、全面的にサポートを受けることができます。一人で抱え込まず、まずは弁護士にご相談ください。
遺言書を残すのであれば公正証書遺言がよい、という話を耳にされたことがあるかもしれません。
もっとも、公正証書遺言とはどのようなものなのか、どのようなメリット・デメリットがあるのか、完成までにどのような手順を踏むのかまでご存じの方は、それほど多くないように思われます。
この記事では、公正証書遺言の仕組みから、作成の流れ、費用、注意していただきたい点まで、弁護士が順を追って解説します。遺言書の作成をお考えの方は、ぜひご参考になさってください。
公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、遺言の内容を「公正証書」という公文書の形で残す遺言書です。
公証役場において、遺言者本人、2人以上の証人、公証人が立ち会い、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口頭で伝え(口授といいます)、これを受けて公証人が公正証書を作成します(民法969条1項1号・2号)。
ご自身で全文を書く自筆証書遺言とは異なり、文面を作るのは公証人であり、完成した原本は公証役場で保管されます。
なお、令和7年10月1日からは作成手続のデジタル化が図られています。
公正証書遺言のメリット
公正証書遺言のメリットは、大きく分けて3つあります。
いずれも、遺言書が形式の不備で無効になったり、死後に見つからなかったりする事態を避けるうえで、小さくない意味を持ちます。
紛失、偽造、変造のおそれがない
公正証書遺言は、公証人が公的な証明書等によって本人確認を行ったうえで文面を作成し、その原本を公証役場が保管します。
そのため、ご本人以外の方が勝手に作り上げる偽造や、作成後に第三者が書き換える変造のおそれは、まず考えにくいといえます。
お手元の正本や謄本を紛失してしまっても、原本が残っている以上、遺言の効力に影響はなく、再交付を受けることもできます。
これに対し、自筆証書遺言は、保管の方法によっては紛失や書換えのリスクを避けにくい面があります。
遺言書開封時の検認手続きが不要
自筆証書遺言や秘密証書遺言は、保管者や発見した相続人が家庭裁判所に提出して「検認」を受けなければなりません(民法1004条1項)。
検認とは、遺言書の形状や加除訂正の状態などを確認し、その後の偽造・変造を防ぐための手続です。
これに対して、公正証書遺言にはこの規定が適用されず(同条2項)、相続開始後すみやかに預貯金の解約や不動産の名義変更に進むことができます。
この差は、決して小さくありません。
自筆できない人でも作成できる
自筆証書遺言は、財産目録を除き、全文・日付・氏名を遺言者が自書しなければならず(民法968条1項)、本文の代筆は認められていません。
そのため、ご高齢や病気で手が思うように動かない方にとっては、そもそも作成が難しいことがあります。
公正証書遺言であれば、文面を作成するのは公証人ですので、自書が難しい方でも遺言を残すことが可能です。
署名についても代わりの措置が用意されていますので、署名ができないことだけを理由に諦める必要はありません。
公正証書遺言のデメリット
もっとも、公正証書遺言にも負担となる面はあります。ここでは、実際にご相談をお受けする中で、ご負担に感じられることの多い2点を取り上げます。
いずれも、あらかじめ見込んでおけば慌てずに済むものですので、作成をご検討の段階で確認しておきましょう。
作成に時間や費用がかかる
公正証書遺言は、思い立ってすぐに作れるものではありません。
財産と相続人に関する資料をそろえ、公証人と文案のやり取りを重ね、遺言者・証人・公証人の日程を合わせる必要があるため、完成までに数週間から数か月かかることも珍しくありません。
費用面でも、財産の価額に応じた公証人手数料がかかり、財産の合計額が1億円以下の場合には1万3000円の遺言加算も生じます(公証人手数料令9条、19条)。
金額は事前にご確認ください。
2名以上の証人が必要となる
公正証書遺言の作成には、2人以上の証人の立会いが必要です(民法969条1項1号)。
しかも、誰でも証人になれるわけではなく、①未成年者、②推定相続人および受遺者ならびにこれらの配偶者・直系血族、③公証人の配偶者、四親等内の親族、書記および使用人は、証人になることができません(民法974条)。
財産を受け取るご家族やそのご家族は②に当たってしまいますので、実際にはご友人や知人にお願いすることになりますが、遺言の内容を知られることになるため、頼みにくいと感じられる方も少なくありません。
心当たりがない場合には、公証役場に紹介を依頼することもできますが、その場合には別途費用がかかります。
公正証書遺言を作成する流れ
公正証書遺言は、①遺言に残したい内容をメモにまとめる、②必要書類を集める、③2人以上の証人を手配する、④公証人と文案のやり取りをして日程を調整する、⑤当日、証人立会いのもとで内容を確認し、公正証書を完成させる、という順序で作成します。
準備の大半は当日までのやり取りで済み、当日は内容の確認が中心になるとお考えいただくと分かりやすいでしょう。
以下、それぞれの段階で押さえておきたい点を解説します。
遺言書に書きたい内容のメモを作成する
まずは、どの財産を誰に引き継がせたいのかを整理し、メモの形にまとめましょう。
公証人はこのメモをもとに文案を作成しますので、書き漏らした財産があると、その部分には遺言の効力が及ばず、結局は相続人間の話合いが必要になってしまいます。
「自宅の土地建物は長男に相続させる」「預貯金は妻に相続させる」「遺言執行者は○○とする」といった形で、財産ごとに書き出していくのが分かりやすいでしょう。
このメモ自体は遺言書ではありませんので、書式に決まりはありません。
必要書類を集める
次に、遺言に残したい内容に応じた資料を集めます。
代表的なものは下表のとおりですが、必要書類は公証役場や事案によって異なりますので、事前に担当の公証人に確認し、漏れがないようにしてください。
特に戸籍謄本は、遺言者と相続人の続柄をたどるために複数の役所から取り寄せることになる場合があり、思いのほか時間がかかります。
不動産についても、登記事項証明書と固定資産評価証明書(または固定資産税納税通知書)の双方を求められるのが一般的です。
お仕事などの都合で平日の窓口に行きにくい方は、早めに着手されることをおすすめします。
| 内容 | 必要書類 |
|---|---|
| 遺言者本人を証明するもの | 印鑑登録証明書と実印、または運転免許証・マイナンバーカード・パスポート等の顔写真付きの公的証明書と認印 |
| 相続人との続柄が分かるもの | 遺言者と相続人の続柄が分かる戸籍謄本(相続人以外の方に遺贈する場合は、その方の住民票。法人の場合は登記事項証明書) |
| 不動産がある場合 | 登記事項証明書(登記簿謄本)と、固定資産評価証明書または固定資産税納税通知書 |
| 預貯金がある場合 | 通帳の写しなど、金融機関名・支店名・口座番号が分かる資料(有価証券がある場合は取引残高報告書の写し等) |
| 証人・遺言執行者に関するもの | 証人および遺言執行者の氏名・住所・生年月日・職業が分かる資料(住民票、運転免許証の写し等) |
2人以上の証人を探す
証人は、遺言者が自らの意思で遺言をしたことを見届け、必要があれば後日その状況を証言する立場にあります。
次項の欠格事由に当たらない方であれば、ご友人や知人でも差し支えありませんが、遺言の内容を知られることになりますので、口の堅い、信頼できる方を選ぶことが大切です。
ご自身で見つけられない場合には、公証役場に紹介を依頼することができます。ただし、必要な費用は公証役場によって異なりますので、事前に問い合わせておきましょう。
弁護士に作成をご依頼いただいた場合には、弁護士やその事務所の関係者が証人を務められることも多く、証人探しのご負担を軽くできる場合があります。
誰に頼むかは、遺言の内容を誰に知られてもよいかという観点からもご検討ください。
証人になれない人
民法974条は、①未成年者、②推定相続人および受遺者ならびにこれらの配偶者および直系血族、③公証人の配偶者、四親等内の親族、書記および使用人を、遺言の証人になることができない者と定めています。
①は遺言の内容を的確に理解することが期待しにくいため、②は遺言の結果について利害関係を持つため、③は公証の公正さを保つため、というのがその理由です。
財産を受け取る予定のお子様やその配偶者は②に当たりますので、証人にはなれません。
欠格事由のある方が証人として立ち会った場合には、遺言そのものが無効と判断されるおそれがありますので、人選にあたっては慎重にご検討ください。
判断に迷われる場合には、公証役場や弁護士にご確認いただくのが安全です。
証人と一緒に公証役場に行き、遺言書を作成する
準備が整えば、あとは遺言者と証人2人が公証役場に出向き、公証人の面前で作成するだけです。
当日は、公証人が本人確認を行ったうえで、遺言者が遺言の趣旨を口頭で伝え、公証人が作成した公正証書を読み聞かせるか閲覧させ、内容が正確であることの承認を得たうえで、列席者が署名をします(公証人法40条)。
事前のやり取りが済んでいれば、当日の所要時間は30分から1時間程度であることが一般的です。
遺言書を作成する公証役場はどこ?
公証役場はどこを選んでも構いません。
ただし、ご高齢の方が多いことを考えると、通いやすい場所を選ぶのが無難です。
公証人に出張を依頼する場合には、訪問先と同じ都道府県内の公証役場に依頼する必要があります。
公正証書遺言の作成が困難なケースと対処法
体調や障害の事情から、公正証書遺言を作ることは難しいのではないかとご心配される方がいらっしゃいます。もっとも、法律上は対応する仕組みが用意されています。
代表的な3つの場面をご説明します。
言語機能や聴覚に障害がある場合
口がきけない方であっても、公証人と証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳によって申述するか、自ら書いて示すことにより、口授に代えることができます(民法969条の2第1項)。
また、聴覚や言語機能などの障害のために音声で意思疎通を図ることが難しい場合には、公証人が通訳人に通訳をさせることとされています(公証人法29条)。
もっとも、身振りだけで作成された遺言が無効とされた裁判例もありますので、どのような方法によるかを事前に公証役場と詰めておくことが欠かせません。
署名できない場合
病気やけが、加齢などの理由で署名ができない場合であっても、そのことだけで公正証書遺言を諦める必要はありません。
公正証書の内容を承認した列席者は、署名またはこれに代わる措置を講じることとされており(公証人法40条5項)、従前から、署名ができない事情がある場合には、公証人がその事由を付記して署名に代える運用が行われてきました。
具体的な取扱いは事案によって異なりますので、当日になって慌てることのないよう、あらかじめ公証役場にご相談ください。
公証役場に行けない場合
入院中である、体調が優れないなどの理由で公証役場に行けない場合には、公証人にご自宅や病院、施設まで出張してもらうことができます。
この場合には、病床執務加算として手数料が1.5倍になるほか、日当(1日2万円、4時間までは1万円)と交通費の実費がかかります。また、公証人は他の都道府県には出張できませんので、訪問先と同じ都道府県内の公証役場に依頼する必要があります。
さらに、令和7年10月1日からは、嘱託人の申出があり公証人がこれを相当と認めるときは、映像と音声を送受信するウェブ会議の方法によって手続を行うことも可能となりました(公証人法37条2項、40条3項)。
もっとも、実際の運用は公証役場によって異なりますので、利用できるかどうかは事前にご確認ください。
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公正証書遺言の作成を弁護士に依頼するメリット
公正証書遺言の作成は、行政書士や司法書士にも依頼することができますが、弁護士にご依頼いただく場合には、次のような利点があります。
遺言の中身にまで踏み込んだ検討ができる点が、最も大きな違いといえるでしょう。
遺言内容の相談ができる
公証人は、方式の不備によって遺言が無効になることを防ぐという立場から関与しますので、「どう書けば争いを防げるか」「この分け方で遺留分は大丈夫か」といった中身の相談に応じてくれるわけではありません。
弁護士であれば、ご希望を伺ったうえで、遺留分への配慮や、後日争いの種になりやすい財産の扱いについて助言し、必要な条項を盛り込んだ文案をご提案できます。
もっとも、どのような遺言であっても争いを完全に防げるわけではない点は、あらかじめご理解ください。
書類準備などの手間が省ける
公正証書遺言の作成には、戸籍謄本や不動産の登記事項証明書など、複数の役所から取り寄せる書類が必要になります。
弁護士であれば、これらの取得をまとめて進めることができますので、ご本人のお手間を相当程度省くことができます。
もっとも、預貯金の通帳の写しのように、ご本人でなければご用意いただけない資料もありますので、その部分についてはご協力をお願いすることになります。
遺言執行者として選任できる
遺言者は、遺言によって遺言執行者を指定することができます(民法1006条1項)。
遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権利義務を有しますので(民法1012条1項)、相続人の協力が得られない場面でも、名義変更や預貯金の解約を進めることができます。
文案を検討した弁護士をそのまま遺言執行者に指定しておけば、遺言の趣旨を踏まえた手続が期待でき、ご家族のご負担も軽くなります。
指定がない場合には、家庭裁判所に選任を求めることになります。
任意後見契約を結ぶことができる
遺言は亡くなった後のことを定めるものですので、ご存命中に判断能力が低下した場合の備えにはなりません。そこで併せてご検討いただきたいのが任意後見契約です。
これは、判断能力が十分なうちに、将来の財産管理や生活・療養看護に関する事務を任せる方をあらかじめ決めておく契約であり、公正証書によらなければならないとされています(任意後見契約に関する法律3条)。
遺言書と同じ機会に作成しておけば、手続のご負担を抑えることができます。
公正証書遺言に関するQ&A
最後に、公正証書遺言について、ご相談の際によくいただくご質問にお答えします。
いずれも、作成前に押さえておいていただきたい点ですので、ご参考になさってください。
公正証書遺言にすれば確実に効力がありますか?
方式の不備を理由として無効となることは考えにくく、その意味では自筆証書遺言よりも確実といえます。もっとも、「絶対に有効」と言い切ることはできません。
公証人が確認するのはあくまで方式であり、遺言をした時に遺言者に遺言能力があったか(民法963条)、口授が実質的にあったといえるか、内容が公序良俗に反しないかといった点は、別途問題になり得るからです。
実際にも、認知症が疑われる状況で作成された遺言について、後日その効力が争われる例は少なくありません。
ご心配な事情がある場合には、作成時に医師の診断書を残しておくなど、あらかじめ備えておくことをおすすめします。
一度作成した公正証書遺言の内容を変更することはできますか?
変更できます。
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その全部または一部を撤回することができ(民法1022条)、新しい遺言が前の遺言と抵触する場合には、その部分は後の遺言によって撤回したものとみなされます(民法1023条1項)。
もっとも、公正証書の原本は公証役場にありますので、お手元の正本を破棄しても撤回にはなりません。作り直す際には、最初のときと同様に、書類・証人・手数料が必要になります。
公正証書遺言があることは死亡後通知されますか?
通知されません。
公証役場が遺言者の死亡を把握する仕組みはなく、公証役場から相続人に対して遺言の存在が知らされることはありません。
そのため、せっかく作成しても、気づかれないまま遺産分割の話合いが進んでしまうおそれがあります。
遺言書を作成したことと、正本や謄本の保管場所については、信頼できるご家族や遺言執行者に伝えておくことをおすすめします。
内容までお伝えするかどうかは、ご家族の状況を踏まえてご判断ください。
遺言書を見せてもらえません。公証役場で開示請求はできますか?
遺言者が亡くなった後であれば、相続人など法律上の利害関係のある方は、公証役場に遺言の有無を照会し、謄本の交付を請求することができます。
遺言検索システムは全国どの公証役場からでも利用できますので、どこで作成されたか分からない場合でも確認が可能です。
請求には、遺言者の死亡が分かる除籍謄本、ご自身が相続人であることが分かる戸籍謄本、顔写真付きの本人確認書類などが必要です。
なお、ご存命中は、原則としてご本人と代理人しか照会できません。
公正証書遺言に関する不安、不明点は弁護士にご相談ください
公正証書遺言は、方式の不備による無効を避けられる点で優れた方法ですが、作成すれば必ず争いを防げるというものではなく、内容の検討と事前の準備が欠かせません。
どのような遺言を残すべきかお迷いの段階でも構いませんので、お気軽にご相談ください。
「あなたのモラハラが原因だから離婚してほしい」
――ある日突然そう告げられ、戸惑っている方は少なくありません。
思い当たる節がないのに一方的に責められた、離婚を拒みたいがどうすればよいかわからない、慰謝料や親権はどうなるのか不安だ、というご相談も多く寄せられます。
本記事では、モラハラを理由に離婚を求められた側の立場から、離婚が認められる場合と認められない場合、慰謝料や親権、別居後の婚姻費用まで、対応の要点を解説します。
モラハラを理由に離婚請求されたらどうしたらいい?
配偶者が離婚を求めたというだけで、離婚が成立するわけではありません。
日本の離婚の多くは協議離婚(民法763条)であり、双方が合意して離婚届を提出して初めて成立します。
したがって、離婚を受け入れる場合も拒否する場合も、話し合いは避けて通れません。
感情的な応酬は状況を悪化させるだけです。
相手がいつのどのような言動を問題としているのかを具体的に確認し、事実関係を整理したうえで、離婚の可否・財産分与・親権・養育費といった条件を一つずつ検討していくことが出発点になります。
そもそもモラハラとはどのような行為?
モラハラ(モラルハラスメント)とは、身体的な暴力ではなく、言葉や態度によって相手の人格を否定し、精神的な苦痛を与える行為をいいます。
人格を否定する暴言、長時間の説教、無視、交友関係の制限、生活費を渡さない経済的な締めつけなどが典型例です。
もっとも「モラハラ」という法律上の用語はなく、裁判では、その言動が民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるか、不法行為(民法709条)に当たるかという形で問題になります。
モラハラを理由に離婚できる?離婚を拒否することは可能だけど、裁判になると…
話し合いの段階であれば、離婚を拒否すること自体は可能です。
相手が離婚調停を申し立てても、調停は話し合いの手続ですから、合意しなければ不成立となります。
しかし、その後に離婚訴訟を提起され、裁判所が法定離婚事由(民法770条1項各号)があると判断すれば、こちらが同意しなくても判決で離婚が成立します。
モラハラの事案で問題となるのは、主に同項5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」です。拒否し続ければ必ず婚姻を維持できるわけではない点に注意が必要です。
モラハラで離婚が認められるケースとは
裁判で離婚が認められやすいのは、①言動が社会通念上許される範囲を超えて相手の人格を傷つけるものであり、②長期間にわたり繰り返され、③その結果として夫婦関係が修復不可能な程度に破綻していると評価できる場合です。
録音データ、日記、メールやSNSのやり取り、医師の診断書、第三者への相談記録といった客観的な証拠がそろっているほど、5号該当性は認められやすくなります。
長期間の別居が続いている場合も、破綻を裏づける事情として重視されます。
離婚が認められないケース
逆に、相手の供述以外に裏づけとなる証拠がない場合や、問題とされる言動が一時的で夫婦げんかの範囲を出ないと評価される場合には、5号該当性は否定されやすくなります。
夫婦の間には多少の衝突が当然にあり得るため、口論があったという事実だけで直ちに離婚が認められるわけではありません。
別居期間が短く、関係を修復する余地が残っていると判断される場合も同様です。
なお、専ら自らの責任で婚姻を破綻させた配偶者(有責配偶者)からの離婚請求は、原則として認められにくいとされています(最高裁昭和62年9月2日大法廷判決)。
身に覚えのないモラハラ・冤罪をかけられたときの対処法
「具体例を挙げられても心当たりがない」「そんなことを言った記憶がない」というケースは少なくありません。
まず行うべきは、相手が問題としている言動について、時期や場面をできる限り特定してもらうことです。
そのうえで、当時のスケジュール、メールやSNSのやり取り、家計の記録などを突き合わせ、事実に反する部分を具体的に指摘できるよう準備します。
感情的に否認を繰り返すだけでは、かえって「反省がない」と評価されかねません。
「その日は出張で不在だった」「生活費は毎月この金額を渡していた」というように、資料に基づいて冷静に反論することが重要です。
また、やり取りを一方的に打ち切ることも不利に働きかねません。連絡は記録の残る形で行い、証拠を保全しておきましょう。
モラハラの事実が認められた場合、慰謝料は発生するのか?
モラハラが不法行為(民法709条)に当たると判断されれば、精神的損害に対する慰謝料(民法710条)を支払う義務が生じます。
金額は、行為の内容・頻度・期間、相手の心身に与えた影響、婚姻期間などを総合して判断され、一般的にはおおむね50万円から300万円程度が目安とされています。
もっとも、悪質性が高く長期間に及ぶ事案ではより高額になることもあれば、証拠が乏しい事案では大幅に減額され、請求自体が認められないこともあります。
相手の請求額をそのまま受け入れる必要はありません。
モラハラで離婚したら親権はどちらがとる?
令和8年4月1日に施行された改正民法により、離婚後の親権は、父母の双方を親権者と定めること(共同親権)も、一方のみと定めることもできるようになりました(民法819条1項)。
協議が調わない場合は、家庭裁判所が子の利益の観点から定めます(同条2項)。
ただし、「双方が親権を持つこと」と「どちらが子と暮らすか」は別の問題です。
共同親権となった場合でも、子と同居して世話をする監護者は別に定められ、日常の行為や急迫の事情があるときは親権を単独で行使できます(民法824条の2)。
誰が子と暮らすかは、これまでの監護の実績、子の年齢や意思、生活環境の安定性などから判断されます。
なお、子の心身に害悪を及ぼすおそれがあるときや、一方が他方から暴力等を受けるおそれがあり共同での行使が困難なときは、単独親権としなければなりません(民法819条7項)。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
相手が別居することを選んだら
離婚の話し合いが続く中で、相手が別居を選ぶことは珍しくありません。
別居後には、生活費や子どもをめぐる問題が新たに生じます。
婚姻費用を請求される可能性がある
夫婦は互いに扶助する義務を負い(民法752条)、婚姻から生ずる費用を分担しなければなりません(民法760条)。
別居しても婚姻関係が続く以上この義務は残るため、収入の多い側は、別居した配偶者から生活費(婚姻費用)を請求される可能性があります。
これは双方の収入差によって決まるものであり、どちらがモラハラをしたかで当然に決まるわけではありません。
したがって、妻のモラハラに耐えかねて夫が家を出た場合でも、妻の方が収入が多ければ、夫の側から請求することができます。金額は裁判所の算定表を基準に定められます。
子供を連れて別居された場合
突然子どもを連れて出て行かれても、実力で連れ戻す行為は避けてください。
かえって不利に評価されるうえ、事案によっては刑事上の問題となるおそれもあります。
とるべき手続は、家庭裁判所に対する子の監護者の指定および子の引渡しを求める調停・審判の申立てです(民法766条参照)。
緊急性が高い場合には、審判前の保全処分を申し立てることもできます。あわせて、これまで自分が子の世話をどのように担ってきたかを示す資料を整理しておきましょう。
現状が既成事実化しやすい分野ですので、早期のご相談をおすすめします。
モラハラによる離婚請求に関するQ&A
私の親族のモラハラが原因で、妻から離婚請求されました。親族のモラハラは、離婚理由になるのでしょうか?
親族の言動それ自体が、直ちにあなたの離婚原因になるわけではありません。
もっとも、配偶者が親族から継続的に人格を否定する言動を受け、その結果として夫婦関係が破綻したといえる場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に当たると判断されることがあります。
特に、事情を知りながら何ら対応せず、配偶者を守らなかったと評価される場合には、あなた自身の問題として不利に扱われかねません。
親族と距離を置く、同居を解消するなど、具体的な改善策を示すことが有効です。
私からのモラハラを訴え別居した夫が不倫したようです。離婚が回避できないならせめて慰謝料をもらいたいのですが可能ですか?
別居後の交際であっても、その時点で夫婦関係がまだ破綻していなかったと評価できる場合には、不貞行為として、配偶者および交際相手に慰謝料を請求できます(民法709条)。
他方、すでに破綻した後の交際と判断されれば、請求は認められにくくなります。実務では、別居に至った経緯、別居期間の長さ、別居中の交流状況などから破綻の有無が判断されます。証拠の確保が重要です。
なお、あなた自身のモラハラが認定される場合には、双方の慰謝料が併せて考慮されることもあります。
モラハラを理由に離婚を請求されていますが、嫌なら都度言ってくれればいいのにいきなり離婚なんて納得いきません。離婚を拒否できませんか?
話し合いの段階で離婚を拒否することは可能で、相手が調停を申し立てても、合意しなければ離婚は成立しません。
ただし、訴訟に進み、裁判所が法定離婚事由(民法770条1項5号)を認めれば、拒否していても判決で離婚となります。
「その都度指摘されなかったから改善できなかった」という事情は、破綻の程度を判断するうえで考慮され得ますが、それだけで相手の請求が退けられるとは限りません。
関係の修復を望むのであれば、具体的な改善の姿勢を行動で示していくことが重要です。
モラハラが原因で離婚請求をされたら、弁護士に相談することで解決に繋がる場合があります
モラハラを理由とする離婚請求では、「どの言動が」「どの程度」問題とされているのかを整理し、証拠に基づいて反論できるかどうかが結論を大きく左右します。
弁護士にご依頼いただければ、相手の主張の当否を法的に評価したうえで、離婚の可否、慰謝料、親権、婚姻費用といった条件について、見通しを踏まえた交渉を進めることができます。
相手との直接のやり取りから解放されること自体も、負担の軽減につながります。まずはお早めにご相談ください。
交通ルールを守って安全運転を心がけていても、相手の一方的な過失によって事故に巻き込まれてしまうことがあります。
こうした「もらい事故」では、被害者に過失がないために、自分が加入する保険会社が示談交渉を代行できず、被害者自身が相手方保険会社と直接交渉しなければなりません。
その結果、交渉に不慣れな被害者が本来受け取れるはずの賠償額を得られないまま、泣き寝入りしてしまうことも少なくありません。
本記事では、もらい事故で泣き寝入りしないためのポイントと、弁護士に相談するメリットを解説します。
もらい事故とはどんな事故?
もらい事故とは、被害者に一切の過失がない交通事故のことをいいます。
通常の交通事故では双方に過失が認められることが多く、「8対2」「7対3」といった過失割合が問題になります。
これに対し、もらい事故は、過失割合が被害者0対加害者10となる事故を指します。
具体的には次のようなケースが典型例です。
- 赤信号で停止中に、後方から追突された
- センターラインを越えてきた対向車に衝突された
- 駐車場に停めていた車にぶつけられた
いずれも、交通ルールを守っていた被害者が、加害者の一方的な過失によって巻き込まれた事故です。
落ち度がない一方で、次に述べるとおり、示談交渉を自分で行わなければならないという特有の難しさがあります。
もらい事故は自分で保険会社と示談交渉する必要がある
双方に過失がある通常の事故では、加害者側・被害者側それぞれの保険会社が、当事者に代わって示談交渉を行うことがあります。
しかし、もらい事故では、被害者側の保険会社は示談交渉を代行できません。
被害者に過失がない場合、その保険会社は賠償金を支払う立場にないため、示談交渉の代行は「他人の法律事務」に当たり、弁護士法第72条が禁止する非弁行為に該当する恐れがあるからです。
同条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を取り扱うことなどを業とすることを禁じています。そのため、もらい事故の被害者は、原則として自分で相手方保険会社と交渉しなければなりません。
もらい事故の被害者が泣き寝入りしやすい理由
もらい事故で被害者が泣き寝入りしやすいのは、被害者自身が交渉の矢面に立たざるを得ないからです。
相手方保険会社は日々多数の示談を行うプロであり、交通事故に関する知識量も被害者とは大きく異なります。
専門用語を交えて説明されると、提示額に疑問があっても「そういうものなのか」と受け入れてしまいがちです。
しかし、相手方保険会社も営利企業であり、支払う賠償金はできるだけ抑えようとするため、提示額が必ずしも適正とは限りません。
こうした構造的な不利さが、泣き寝入りに繋がります。
被害者が泣き寝入りしないためのポイント
もらい事故で泣き寝入りをしないためには、事故直後からの対応が重要です。
ここでは、被害者が押さえておきたい4つのポイントを解説します。
警察と保険会社に連絡する
事故が起きたら、まず警察に連絡します。
道路交通法第72条は、交通事故があった場合、運転者に対して負傷者の救護や道路上の危険防止の措置を義務づけるとともに、事故の日時・場所などを警察官に報告することを義務づけています。
警察へ届け出ることで交通事故証明書が発行され、これはのちの賠償請求に欠かせない書類となります。あわせて、自分が加入している保険会社にも必ず連絡しましょう。
もらい事故でも、弁護士費用特約や人身傷害保険など、自分の保険を利用できる場合があるためです。
ドライブレコーダーの映像を確保する
もらい事故であっても、事故状況について被害者と相手方保険会社の主張が食い違うことは少なくありません。
相手方保険会社が専門用語を用いて、本来0であるはずの被害者の過失割合を「1対9」などと主張してくる可能性も否定できません。
こうした場面で強力な証拠となるのが、ドライブレコーダーの映像です。
事故の瞬間が記録されていれば、事故の態様を客観的に示すことができ、不当な過失割合を正しく修正できる可能性が高まります。
映像は上書きで消えることがあるため、事故後はできるだけ早く保存しておきましょう。
事故後は早めに病院を受診する
事故と怪我との因果関係を明らかにするためにも、軽微に思える場合でも、事故後はできるだけ早く医療機関を受診しましょう。
あわせて、警察に人身事故として届け出ておくことも、適切な賠償を受ける上で重要です。
弁護士に相談する
もらい事故では被害者が一人で交渉しなければならないからこそ、早い段階で弁護士に相談することが有効です。
弁護士に相談すれば、請求できる損害の項目や賠償額の相場を踏まえて、相手方保険会社の提示額が適正かどうかを判断してもらえます。
また、適切な治療の受け方や、後遺障害が残った場合の等級認定手続についてもアドバイスを受けられます。
相談を無料で受け付けている法律事務所も多いため、まずは一度、専門家の意見を聞いてみることをおすすめします。
まずは交通事故事件専属のスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
もらい事故で弁護士に依頼するメリット
実際に弁護士へ依頼すると、主に次の2つの大きなメリットがあります。
賠償金が増額する可能性がある
交通事故の損害賠償額の算定には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準という3つの基準があり、金額はおおむね「自賠責基準≦任意保険基準<弁護士基準」の順に高くなります。
自賠責基準は被害者救済のための最低限の補償、任意保険基準は各保険会社が独自に定める非公開の基準です。
これに対し、過去の裁判例をもとにした弁護士基準は、被害者が本来受け取るべき水準といえ、最も高額になります。
もっとも、弁護士基準は弁護士が交渉に介入して初めて用いることができるため、依頼することで賠償金の増額が見込めます。
示談交渉などすべて任せることができる
弁護士に依頼すれば、相手方保険会社との示談交渉をすべて任せることができます。
被害者本人が交渉すると経験や知識の差から不利になりがちですが、弁護士は法的紛争のプロとして、相手方保険会社に臆することなく事実を主張・立証します。
「被害者なのだから、相手方保険会社も親身に助言してくれるはず」と考えられる方もいますが、相手方保険会社はあくまで加害者側の立場であり、親身に助言してくれることはほとんどございません。
交通事故に精通した弁護士に任せることで、精神的な負担から解放され、被害者にとって最適な賠償請求が可能になります。
弁護士費用特約に加入していれば費用の心配なく依頼できる
弁護士への依頼をためらう理由として多いのが費用の心配ですが、「弁護士費用特約」に加入していれば、その多くは解消できます。
自分が加入する保険会社が弁護士費用を負担してくれる特約です。一般的には、法律相談料は10万円まで、弁護士費用は1事故あたり300万円まで補償されます。
もらい事故の賠償額の多くはこの範囲に収まるため、実質的な自己負担なく依頼できるケースがほとんどです。しかも、この特約を利用しても、自動車保険の翌年度の等級(保険料)には影響しないことが一般的です。
仮に特約がない場合でも、もらい事故のように過失がない事案では、増額分が弁護士費用を上回り、費用倒れにならないことも多くあります。
まずは特約の有無を確認したうえで弁護士に相談してみましょう。
もらい事故で泣き寝入りしないためにも早めに弁護士にご相談ください
もらい事故に遭うと、突然のことでショックを受け、何も手につかなくなってしまうかもしれません。
しかし、被害者に過失がないもらい事故だからこそ、対応を誤ると本来受け取れるはずの賠償を得られず、泣き寝入りに終わるおそれがあります。
もらい事故で相手方保険会社と示談交渉できるのは、被害者本人か弁護士だけです。
早めに弁護士に相談すれば、適切な治療や後遺障害の手続についてのアドバイスを受けられるほか、弁護士が交渉に入ることで賠償額の増額も見込めます。
弁護士費用特約がなくても、もらい事故では受け取れる賠償額や増額分が弁護士費用を上回る可能性が高いといえます。
弁護士法人ALG&Associatesは交通事故の被害者救済に注力しております。
もらい事故でお悩みの際には、泣き寝入りをする前に、どうぞお早めにご相談ください。
盗撮事件は、被害者が存在する刑事事件であるため、被害者が非常に重要となります。
示談をしておかないと、検察官に起訴される可能性が高くなります。
このように、「事件の当事者である被害者との和解を意味する示談の成立は、後の刑事処分に大きな影響を与える」、ということは想像できるものの、具体的にどのような影響を与えるのかはわからないという方も多いでしょう。
そこで本記事では、盗撮で示談するメリットや盗撮で示談しないとどうなるのかという点について、詳しく解説していきます。盗撮で示談する場合の流れについても詳しく解説していきますので、ぜひご参考になさってください。
盗撮で示談する3つのメリット
刑事事件における示談とは、事件の当事者である被害者と加害者が話し合いによって和解することを指します。
話し合いだけでは当然和解できないため、被害相当額を金銭で弁償することや深い謝罪を伝えることに加え、再犯防止に向けた取り組みなどを具体的に示すことによって、被害者から赦しを得ることになります。
示談が成立することで、後に判断される刑事処分が軽くなる可能性が高まります。
具体的には、次の3つのメリットを得ることができます。
- 1 不起訴の可能性が高まる
- 2 釈放の可能性が高まる
- 3 民事事件も解決できる
それでは、それぞれのメリットについて、詳しく解説していきます。
①不起訴の可能性が高まる
被害者との示談成立の有無は、検察が被疑者の刑事処分を判断するうえでもっとも重要視するポイントといっても過言ではありません。
不起訴とは、検察が被疑者に対して「刑事裁判にかける必要はない」と判断することをいいます。
刑事裁判にかけられないということは、処罰されないことを意味するため、前科がつくことはありません。
被害者が加害者である被疑者に対して、処罰を求める感情がないことを示す示談の成立は、不起訴の可能性を大きく高めます。
不起訴となれば、直ちに身柄拘束が解かれ、日常の生活に戻ることができます。
そのため、不起訴を獲得したい場合には、できるだけ早く被害者との示談交渉を進めることが重要です。
②釈放の可能性が高まる
被害者との示談成立は、釈放の可能性も大きく高めます。
盗撮で逮捕された場合、逮捕から3日間(72時間)は捜査機関の取り調べを受けることになるため、身柄を拘束されます。
その後、引き続き身柄を拘束する必要があると検察から判断された場合には、裁判所に対して勾留請求がなされ、裁判官による勾留質問を経たうえで、勾留の可否が判断されます。
勾留請求が認められると、はじめに10日間勾留され、必要に応じてさらに10日間勾留されることになります。つまり、逮捕から最大23日間身柄拘束が続く可能性があるため、出来るだけ早く被害者と示談して釈放の可能性を高めることが重要です。
③民事事件も解決できる
被害者との示談成立時に、清算条項を入れた示談書を取り交わすことで、民事事件も解決することができます。
盗撮行為は、刑事上の責任だけでなく、「不法行為に該当する」として民事上の責任にも問われます。
民事上の責任とは、盗撮行為で被害者が被った精神的苦痛に対する損害を賠償する責任のことをいいます。
被害者が民事事件として損害賠償請求した場合には、これに応じ、慰謝料などを支払わなければなりません。しかし、示談書に「この他の請求権は存在しない」などの清算条項を明記することで、民事事件となるのを阻止することができます。
盗撮は撮影罪にあたる?盗撮で示談をしないとどうなる?
盗撮事件の被害者が誰なのか特定されている場合もあれば、特定されていない場合もあるでしょう。
被害者が盗撮されていることに気付かずその場を去ってしまえば、特定が困難となります。
いずれにしても、盗撮事件の被害者と示談しなければ、起訴される可能性は十分にあります。
しかし、被害者が特定されていない場合は、被害者が誰なのかわからないため、示談しようがありません。
そのような場合には、どのように対応して不起訴の獲得を目指せばよいのでしょうか。
次項では、盗撮事件で被害者が特定されている場合とそうでない場合にすべき対応について、解説いたします。
被害者が特定されている場合
被害者が特定されている場合は、早急に被害者との示談交渉を進めることが重要です。
初犯の場合は、示談しなければ略式起訴され、罰金刑を科せられる可能性があります。
罰金刑が科せられれば、前科がつくため、社会復帰に大きな影響を及ぼすことになります。
既に前科がある場合は、起訴されて懲役刑を科せられる可能性が高いです。
また、執行猶予期間中であるにもかかわらず盗撮事件を起こした場合には、実刑判決を下される可能性が非常に高いため、いずれにしても被害者との示談交渉を早急に進める必要があります。
被害者が特定されていない場合
被害者が特定されていない場合でも、起訴されて有罪判決が下される可能性は十分にあります。
例えば、盗撮で現行犯逮捕されたものの、被害者は盗撮に気づかずどこかへ行ってしまった場合などが考えられます。
盗撮行為は、被害者からの被害届がなくても刑事事件として捜査が開始されるおそれのある犯罪行為です。
そのため、被害者が特定されていなくても、贖罪寄付や反省文の作成などで深い反省を示すことや、身柄を釈放された後、再犯防止に向けた家族の監督体制がきちんと整っていることなどを証明することが重要です。
このような活動を行うことで、被害者と示談しなくても、不起訴獲得の可能性を高めることができます。
※贖罪寄付とは?
刑事事件を起こした被疑者・被告人が、贖罪のために弁護士会や被害者支援を行う団体などに寄付をすることをいいます。刑事事件では、贖罪寄付をすることによって刑事処分の判断が有利にはたらく傾向があります。
盗撮事件の示談を成功させるには弁護士に相談・依頼する
被害者との示談を成功させるためには、弁護士に相談・依頼することがもっとも有効的です。
盗撮事件で逮捕された場合は、逮捕から72時間は身柄を拘束され、外部と連絡を取ることも許されません。その間は、たとえ家族であっても面会することはできませんが、弁護士であれば逮捕直後から被疑者と面会することができます。
また、被害者の大半は加害者側である被疑者・被告人との接触を拒み、示談の余地がほとんどない心情であることが多いです。また、示談金額を提示するにしても、適切な示談金額が分からないことも多いでしょう。
この点、弁護士であれば、被害者の心情に応じた丁寧な交渉を進めることができますし、適正な示談金額を提示することもできます。
盗撮の被害者は、「加害者側に自身の個人情報を知られたくない」という思いから、警察や検察に加害者側へ連絡先を教えないように要望することがほとんどでしょう。
しかし、弁護士であれば、そのような場合でも連絡先を教えてもらいやすい傾向にあります。
示談交渉が進めやすく早期解決が期待できる
弁護士に被害者との示談交渉を依頼すると、自分で交渉するよりも格段に早く解決できる可能性があります。
特に、刑事事件を得意とする弁護士に被害者との示談交渉を進めてもらうことで、より早期解決が実現しやすいです。もちろん、弁護士でなくても被害者と示談交渉を行うことは可能です。
しかし、被害者の複雑な心情を考慮した話し合いを進められないことでトラブルが生じやすく、有効な手段とは言い難いです。
弁護士であれば、被害者だけでなく警察や検察とのやり取りについてもスムーズに行いやすいため、被害者との示談成立を目指す場合は、刑事事件に精通した弁護士にご相談されることをおすすめします。
適正な示談金で示談できる
弁護士に被害者との示談交渉を依頼すると、適切な示談金で示談することができます。
盗撮事件における示談金の相場は、約30万円程度であることが多いですが、被害の程度や犯行態様によって相場が変動します。
一般の方では適切な示談金額の判断ができないところ、弁護士であれば、過去の判例やこれまでの経験、豊富な法的知識を活かして適切な示談金額を被害者に提示することができます。
しかし、弁護士であれば誰でも適切な示談金で被害者と示談成立できるわけではありません。
弁護士の力量に左右される部分といえるため、刑事事件に精通した弁護士を選択した方が有益です。
不備のない示談書を作成できる
弁護士に被害者との示談交渉を依頼すると、不備のない示談書を作成することができます。
被害者との間で示談が成立したことを証明するものとして、示談時は必ず示談書の取り交わしを行います。
示談書は、法的な効力、すなわち、裁判で使用することができるものであるため、不備があると法的効力が損なわれてしまいます。
また、基本的に示談書は、一度取り交わしてしまうと不備があっても簡単に書き換えることができません。
そのため、不備のない示談書を作成することが、示談書の効力を最大限に引き出すことにつながります。
なお、示談書で重要となる主なポイントは、刑事処罰を求めないことを意味する宥恕文言と、示談書に記載されている内容以外の責任を負わないことを意味する清算条項を示談書の内容に盛り込むことです。
盗撮の示談の流れ
盗撮事件の被害者と示談交渉を試みる際は、まず被害者の連絡先を入手するところからはじめます。
盗撮された被害者の多くは、加害者側に自分の個人情報を知られたくないと思っているため、「被害者の連絡先を入手できない・入手できても応じてもらえない」といった状況になりやすいです。
そのため、盗撮の示談を試みる際は、ほとんどの方が弁護士を通じて行っています。
弁護士は、次のような流れで被害者との示談交渉を進めていきます。
- 1 被害者の連絡先を入手する
- 2 被害者への連絡・示談交渉の開始
- 3 示談内容の確定
- 4 示談書の作成
- 5 示談書のコピーを提出
では、それぞれのステップについて、詳しく解説していきます。
被害者の連絡先を入手する
被害者との示談交渉のために弁護士が最初に行うことは、被害者の連絡先を入手することです。
示談に向けた話し合いを行うためには、まず被害者とやり取りする必要があります。
そこで弁護士は、最初に担当の警察官または検察官に被害者と示談したい旨を伝え、連絡先を開示するように求めます。その後、警察官・検察官は被害者に連絡し、弁護士に連絡先を教えてもよいかどうかの意思確認を行います。
ここで被害者が連絡先の開示を承諾した場合は、後日警察官・検察官から連絡先を教えてもらえます。
ただし、必ずしも連絡先が入手できるわけではなく、被害者から拒絶され、連絡先が入手できない場合もあります。
被害者の連絡先が入手できない場合
被害者の連絡先が入手できない場合には、弁護士にて上申書を作成し、検察官に提出します。
被害者が担当の警察官や検察官に、「加害者側に連絡先を開示しないでほしい」とお願いしている場合は、被害者の意思が尊重されるため、たとえ弁護士であっても連絡先を教えてもらえない可能性があります。
このような場合には、被害者に伝えたいことを上申書に記載し、被害者へ連絡先の開示を求めます。
たとえば、被害者の多くは、弁護士であっても加害者側に自分の個人情報が知られることを恐れます。
そのため、被害者の個人情報を弁護士以外には知らせないことを記載するなどして、連絡先を開示してもらえるように交渉します。
被害者への連絡・示談交渉の開始
被害者の連絡先を入手した後は、被害者へ連絡し、示談交渉を開始します。
話し合いの方法について、被害者が電話やメールなどの希望がある場合には、被害者の希望に沿うように柔軟に対応していきます。
話し合いが開始されたら、まずは弁護士が加害者の謝罪と反省の意思を被害者に伝えます。
加害者が作成した謝罪文を用意している場合は、ここで渡すことが多いでしょう。
被害者と示談交渉を行う場合は、被害者にきちんと謝罪の意を伝えてから、示談に向けた話し合いを進めることが大切です。あくまで謝罪が先だということを、念頭に置いておきましょう。
示談内容の確定
被害者と示談に向けた話し合いを行い、合意に至った場合は、示談書で示談内容の確定を行います。
両者が話し合いで合意した内容を示談書に記載し、両者が署名・捺印することによって、示談内容を確定させることができます。
一般的な示談内容は、加害者が被害者に対して示談金を支払い、その代わりに被害者が示談書に署名・捺印するというものです。また、被害者が被害届を提出している場合には、被害届の取り下げ書にも署名・捺印してもらうことがあります。
示談書の作成
示談書の作成は弁護士が行い、主に次のような内容を記載します。
<示談書の記載内容>
- 事件内容の特定
- 謝罪の文言
- 示談金額と支払方法の明記
- 清算条項
- 接触禁止条項
- 宥恕条項
- 守秘義務条項 など
示談書に記載する内容として、特に重要となるのは清算条項と宥恕条項です。
清算条項(せいさんじょうこう)とは、「示談書に記載されている以上の支払いはしません」と約束するもので、示談成立後の追加請求や民事事件への発展を防止するための条項のことをいいます。
清算条項を示談書にきちんと明記することで、金銭的なトラブルを回避することができます。
次に、宥恕条項(ゆうじょじょうこう)とは、「被害者が加害者を許します」ということを意味する条項のことです。宥恕条項が明記されていることで、不起訴処分を獲得できる可能性を高めることができます。また、起訴されたとしても、刑が減軽される可能性があります。
示談書のコピーを提出
被害者との示談が成立したら、被害者と加害者の署名・捺印の入った示談書のコピーを警察官・検察官または裁判官に提出します。
示談書のコピーを提出することで、被害者が加害者である被疑者・被告人に対して、処罰を求めていないことを主張できます。これにより、被疑者・被告人にとって有利な刑事処分が下されやすくなります。
盗撮の示談金の相場
盗撮事件における示談金の相場は、約10~50万円程度といわれています。
示談金の額は、被害態様によって変動するため、場合によっては相場よりも高額となることもあります。
たとえば、次のような場合には、示談金が高額となる可能性があります。
- 盗撮したデータをネットで拡散した場合
- 被写体が18歳未満の未成年者である場合
- 数ヶ月にも及んで更衣室やトイレで繰り返し盗撮した場合
- 性行為中に隠し撮りした場合
- 盗撮したデータを販売した場合 など
このような盗撮行為は、犯行態様に悪質性・常習性が認められるとして、示談金が相場よりも高くなりやすいです。盗撮行為として撮影罪が該当するだけでなく、盗撮データの用途次第では、他の犯罪にも抵触するおそれがあります。
なお、自分が犯した盗撮行為の示談金の相場が知りたいという場合は、刑事事件に精通した弁護士に相談するとよいでしょう。これまでの豊富な経験から、具体的な示談金の相場を教えてもらえます。
示談金の分割払いはできるのか?
被害者に対する示談金の支払いは、基本的に一括払いとなります。
分割払いが認められていないわけではありませんが、支払いの度に被害者の中にある嫌な記憶を呼び起こしてしまうおそれがあります。
何より、被害回復の実現性が乏しいと判断されやすく、刑事処分に不利に働く可能性があります。
ただし、被害者が分割払いを認めており、支払いの見込みが持てる状況(定職に就いている・連帯保証人がついているなど)にあれば、刑事処分に不利に働く可能性を低くすることができるでしょう。
示談金を吊り上げられた場合の対処法
刑事事件の示談は、加害者である被疑者・被告人が被害者に対して許しを乞う行為であることから、被害者が優位となる交渉になってしまいます。
そのため、被害者から示談金を吊り上げられることも少なくありません。
被害者から示談金を吊り上げられた場合の対処法としては、次のようなことが挙げられます。
- 自分が支払える示談金の上限を明確に決めておくこと
- 被害者が希望する示談金を支払えず、示談不成立となっても「仕方ない」と覚悟を決めること
- これらの覚悟を弁護士にきちんと伝えておくこと
自分の中で、「被害者に対して支払える示談金がいくらまでなのか」覚悟をもって明確に決めておかなければ、被害者のペースに巻き込まれ、収拾がつかなくなっていまいます。
盗撮の示談交渉はなるべく早く弁護士法人ALGにご相談ください
被害者との示談交渉は、弁護士に依頼せずとも自分で行うことができます。
しかし、被害者が存在する盗撮事件では、逆に被害者側の感情を逆なでしてしまい、状況が悪化するおそれがあります。
この点、弁護士であれば、被害者側の感情に配慮した示談交渉を行うことができます。
「被害者から連絡先を教えてもらえない」、「示談金を吊り上げられてしまう」といった状況も、弁護士によって断ち切ることができるでしょう。
特に刑事事件を得意とする弁護士に依頼することで、弁護士によって得られるメリットを最大限に引き出すことができます。
また、刑事事件は想像以上に早く手続きが進んでいくため、被害者との示談交渉はなるべく早めに取り掛かるのが好ましいです。
そのため、盗撮の示談交渉を試みる場合は、できるだけ早く弁護士にご相談ください。
スマートフォンや小型カメラの普及に伴い、日常生活の中で盗撮事件が発生するケースが増加しています。
これまで盗撮は主に都道府県の迷惑防止条例で取り締まられていましたが、法改正によって「性的姿態撮影等処罰法(撮影罪)」が導入され、従来よりも厳しい処罰の対象となりました。
この記事では、盗撮がどのような場合に「撮影罪」にあたるのか、その構成要件や法定刑、迷惑防止条例との違い、逮捕された場合の手続きの流れや弁護士へ相談するメリットについて分かりやすく解説します。
盗撮は「撮影罪」にあたる可能性がある
相手の同意を得ずに性的な部位や下着などを撮影する行為は、「撮影罪」にあたる可能性があります。
従来の迷惑防止条例違反に比べ、撮影罪は全国一律で適用され、より重い罰則(拘禁刑や高額な罰金)が科せられるため、十分な注意と正しい法的知識が必要です。
撮影罪(性的姿態等撮影罪)とは?
撮影罪とは、「被写体となる人の性的姿態等を同意なく撮影することで成立する犯罪」であり、正式名称を性的姿態等撮影罪といいます。
撮影罪の対象となる「性的姿態等」とは、主に次のような部位や姿態を指します。
- 性器や肛門の周辺、臀部(お尻)、胸部などの性的な体の部位
- 性的な部位を隠すために着用している下着
- わいせつな行為や性交等が行われている間の人物の姿態
駅のエスカレーターや電車内での盗撮はもちろん、車内や私室、ホテルなどで相手の許可なく性的な姿を隠し撮りする行為も本罪の処罰対象となります。
撮影罪はいつから導入された?
撮影罪を規定する「性的姿態撮影等処罰法」は、2023年(令和5年)6月23日に公布され、同年7月13日から施行されました。
新設された背景には、盗撮行為の悪質化・常習化、そしてインターネット上の画像拡散被害に対する「盗撮行為の厳罰化」の必要性が高まったことがあります。
従来の迷惑防止条例では、都道府県ごとに処罰対象や要件が異なっていたため、公衆が出入りしない場所(会社の更衣室や私室など)での盗撮を十分に処罰できない事案が発生していました。
全国統一の基準を設け、処罰の抜け漏れを防ぐために撮影罪が制定されたのです。
撮影罪と迷惑防止条例の違い
迷惑防止条例とは、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止し、住民生活の平穏を保持するために都道府県ごとに制定されている条例です。
かつて盗撮は主にこの迷惑防止条例で処罰されていましたが、撮影罪の新設に伴い、適用範囲や罰則の重さに大きな違いが生じました。
両者の主な違いは以下の通りです。
| 撮影罪 | 迷惑防止条例 | |
|---|---|---|
| 適用のされ方 | 刑罰法規として全国一律で適用される | 犯行が行われた各都道府県の条例が適用される |
| 処罰される行為 | 盗撮行為に加え、盗撮データの提供・保管・送信・記録なども幅広く規制 | 公共の場所や乗物等における下着・裸体等の盗撮やのぞき行為(条例により異なる) |
| 法定刑 | 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(一部関連罪は最大5年) | 6ヶ月〜1年以下の拘禁刑又は50万〜100万円以下の罰金(地域や常習性による) |
| 時効 | 3年(提供罪の一部や送信罪は5年) | 3年 |
撮影罪が成立する4つの行為(構成要件)
撮影罪は、実際に画像や動画が記録された場合だけでなく、盗撮に着手した段階(未遂)であっても処罰の対象となります。
本罪が成立する構成要件は以下の4つです。
①正当な理由なくひそかに性的姿態等を撮影する
正当な理由がないにもかかわらず、相手に気づかれないよう隠れて性的姿態等を撮影すると撮影罪で処罰される可能性があります。
典型例としては、駅のエスカレーターや電車内で女性のスカート内にスマホを差し向けて下着を盗撮する行為や、公衆トイレや更衣室に隠しカメラを設置して撮影する行為などが挙げられます。
②同意できない状態の被害者を撮影する
相手が自らの意思で撮影に同意できない状態を利用・作出して性的姿態等を撮影した場合も、撮影罪で処罰される可能性があります。
自分の意思で同意できない状態とは、暴行や脅迫を用いたり、心身の障害を生じさせたりした場合が該当します。また、アルコールや薬物を摂取させて意識を混濁させたり、睡眠中や泥酔状態で意識が不鮮明な状態に乗じたりして撮影する行為も処罰の対象となります。
③被害者に誤信させて撮影する
被害者を誤解・誤信させて性的姿態等を撮影した場合も撮影罪が成立します。
例えば、「これから行う行為や服装はわいせつなものではない」「医療や施術の一環である」と嘘をついて信じ込ませて撮影するケースや、「自分以外の第三者には絶対に見せない」と騙して撮影を承諾させる行為がこれにあたります。
④16歳未満の性的姿態等を撮影する
被害者が16歳未満である場合、たとえ本人の同意があったとしても撮影罪で処罰される可能性があります。
具体的には、被害者が13歳以上15歳以下の場合は、加害者が相手より5歳以上年上(年齢差が5歳以上)であれば処罰対象となります。一方、被害者が13歳未満である場合は、加害者との年齢差や同意の有無に関係なく、撮影した時点で撮影罪が成立します。
撮影罪の刑罰
性的姿態等撮影罪(盗撮行為自体)の基本となる法定刑は「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」であり、旧来の迷惑防止条例違反に比べて大幅に厳罰化されました。
また、本法律では撮影行為そのものだけでなく、盗撮によって得られた二次的なデータの取り扱いについても個別の罪が設けられています。
なお、提供目的のない単なる自己視聴のための保存(単純所持)は本法上の処罰対象外ですが、被写体が18歳未満の場合は児童ポルノ禁止法違反に問われるおそれがあります。
| 罪名 | 処罰される行為 | 罰則 |
|---|---|---|
| 撮影罪 | 盗撮行為などの違法な撮影行為 | 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金 |
| 提供罪 | 盗撮などによって得られた画像や動画を第三者に提供する | 【特定・少数へ】 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金 【不特定・多数へ】 5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金 |
| 保管罪 | 盗撮などによって得られた画像や動画を他人に提供する目的で保管する | 2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金 |
| 送信罪 | 盗撮などによって得られた画像や動画を不特定多数の者に対して送信する | 5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金 |
| 記録罪 | 盗撮などによって得られた画像や動画を違法に撮影されたと知りながら記録する | 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金 |
撮影罪は初犯でも前科がつく?
撮影罪で起訴され、有罪判決(罰金刑を含む)が下されると、たとえ初犯であっても前科がつきます。
初犯であれば略式手続による罰金刑となる可能性も高いですが、前科がつくと社会的信用を失い、資格制限などの不利益を被ることになります。
前科を回避するためには、検察官から「不起訴処分」を獲得するための速やかな弁護活動が欠かせません。
なお、同種の盗撮前科がある再犯の場合は、初犯と異なり罰金刑ではなく実刑(拘禁刑)となる可能性が高くなります。
撮影罪で逮捕された後の流れ
警察による取調べ
逮捕されると、警察署の留置場に身柄が拘束され、取調べを受けます。
取調べでの発言内容は「供述調書」として書面にまとめられます。供述調書は後の裁判で極めて重要な法的証拠となるため、不利な内容を安易に認めないよう注意が必要です。
検察による取調べ
警察は、逮捕から48時間以内に事件の書類と容疑者の身柄を検察庁へ送致する手続きを行います。
身柄が送致されると、今度は検察官による取調べが行われます。
検察官は法的観点から再度確認を行い、警察官が作成したものとは別に独自の供述調書を作成します。
検察官は取調べの結果を踏まえ、身柄送致から24時間以内(逮捕から合計72時間以内)に、引き続き身柄拘束を続ける「勾留」を裁判官に請求するかどうかを判断します。
最長20日間の身柄拘束
検察官が勾留を請求し、裁判官がそれを認めると、まずは10日間の身柄拘束が決定します。
さらに捜査の必要性がある場合は、最長で10日間延長され、合計で最大20日間にわたり警察署の留置場等に拘束され続けることになります。
勾留決定後はご家族との面会も可能になりますが、長期の拘束は仕事や学校などの生活に重大な影響を及ぼします。
起訴・不起訴の判断
検察官は、勾留期間が満了するまでに集まった証拠をもとに、被疑者を裁判にかける(起訴する)か、裁判にしない(不起訴処分とする)かを判断します。
起訴された場合は刑事裁判に移行し、有罪判決が下されれば前科がつきます。一方、被害者との示談成立などで不起訴処分となった場合は、直ちに身柄が解放されるため前科はつきません。
刑事裁判での判決
検察官に起訴された場合、約1ヶ月から2ヶ月後に裁判所において最初の公判(法廷審理)が開かれます。
犯行事実を全面的に認め、被害者との示談交渉が進んでいるような比較的簡易な事件であっても、第一回公判から最終的な判決が言い渡されるまでに通常3ヶ月から4ヶ月程度の期間がかかるのが一般的です。
撮影罪に関する判例
【神戸地方裁判所 令和6年1月26日判決(令和5年(わ)第882号等)】
- 事件の概要:被告人は道路脇の側溝内に隠れ、隙間から通行人のスカート内や下着等の性的部位をスマートフォンで盗撮したとして撮影罪等で逮捕・起訴された事案です。
- 裁判所の判断:被告人に同種の罰金前科が複数回あったことから常習的な犯行であると認定されました。
しかし、被告人が罪を認めて反省していること、保釈後に専門機関で治療を進めていること等の情状が考慮され、懲役1年6月(執行猶予4年)の判決が言い渡されました。
撮影罪の時効について
刑事事件における時効(公訴時効:検察官が起訴できる期限)は、罪名や法定刑の重さによって定められています。
性的姿態撮影等処罰法における時効は以下の通りです。
| 時効が3年のもの |
|
|---|---|
| 時効が5年のもの |
|
撮影罪にあたる行為をしてしまった場合の対処法
撮影罪に問われる可能性のある盗撮行為を行ってしまった場合、放置すると逮捕や実名報道、重い刑事処分を受けるリスクが高まります。
前科を回避し、穏便な解決を目指すために取るべき適切な対処法について以下で解説します。
被害者と示談を成立させる
最も重要な対処法は、被害者の方に誠心誠意謝罪し、示談を成立させることです。
示談とは当事者同士の話し合いで金銭賠償や和解を行う手続きを指します。
【盗撮事件で示談するメリット】
- 警察の捜査段階で早期釈放される可能性が高まる
- 検察官から不起訴処分を獲得し前科を回避できる可能性が高まる
- 起訴された場合でも量刑が減軽されたり執行猶予がつきやすくなったりする
撮影罪の示談金相場は、事件の態様や被害者の心情によって異なりますが10万円から50万円程度が一般的です。被害者が未成年の場合や悪質性が高いケースでは100万円を超えることもあります。
盗撮事件で示談しないとどうなる?刑事事件に強い弁護士に依頼する
撮影罪にあたる盗撮をしてしまった場合は、一刻も早く刑事事件に強みを持つ弁護士に相談・依頼することが強く推奨されます。
被害者は加害者本人との接触を強く拒むため、第三者である弁護士でなければ示談交渉をスムーズに進めることは困難です。
弁護士に依頼することで、示談の成立はもちろん、警察や裁判所へ働きかけて逮捕や勾留といった身体拘束を阻止できる可能性が高まります。
さらに、検察官からの不起訴処分の獲得や裁判での執行猶予判決の目指せるほか、実名報道や勤務先からの解雇といった社会的リスクを最小限に抑えることが期待できます。
撮影罪に関するよくある質問
盗撮されたものだとわからずにダウンロードした場合は罪になりますか?
違法に撮影された盗撮画像や動画であっても、盗撮物であると知らずに(故意なく)インターネット上からダウンロード・保存した場合は、記録罪や保管罪などの犯罪は成立しません。
本罪が成立するには「違法に撮影された影像であると認識していること(故意)」が必要となるためです。ただし、ファイル名や入手先のサイト等から明らかに盗撮物と認識できたと判断される場合は、故意が認定される可能性があります。
撮影罪の起訴率はどれくらいですか?
性的姿態撮影等処罰法(撮影罪)違反の起訴率は、検察の統計等によると約4割前後(不起訴率が約6割)で推移しています。
初犯であり、被害者との示談が速やかに成立している場合などは起訴猶予による不起訴処分となるケースも多いです。
しかし、法改正により厳罰化傾向にあるため、弁護士による適切な対応を行わなければ、起訴されて前科がつくリスクが高まっています。
撮影罪にあたる可能性がある場合はできるだけ早く弁護士法人ALGにご相談ください
盗撮行為を行い、撮影罪で取調べを受けたり逮捕されたりするおそれがある場合は、一人で抱え込まず速やかに弁護士へご相談ください。
刑事手続きは時間との戦いであり、特に逮捕直後から勾留が決定するまでの初動対応が、最終的な処分(不起訴の獲得や早期釈放)を大きく決定づけます。
弁護士法人ALG&Associatesでは、刑事事件の経験が豊富な弁護士が迅速に示談交渉や身柄解放手続きを行い、ご相談者様の権利と今後の社会生活を守るために全力でサポートいたします。
お困りの方はお早めにご相談ください。
配偶者からの度重なる暴言や無視、人格否定などのモラルハラスメント(モラハラ)に悩み、離婚を決意される方は少なくありません。
しかし、「身体的な暴力がないモラハラでも慰謝料は請求できるのか」「慰謝料の相場はどのくらいなのか」「どのように相手と交渉を進めればよいのか」といった疑問や不安をお持ちの方も多いでしょう。
本記事では、弁護士法人ALG & Associates 埼玉法律事務所の弁護士が、モラハラによる離婚における慰謝料請求の条件や相場、証拠の集め方、請求の流れまで詳しく解説します。
モラハラを理由に離婚したら慰謝料を請求できる?
モラハラは被害者に精神的苦痛を与える不法行為に該当するところ、モラハラを理由に加害者に慰謝料を請求することは法的に可能です。
ただし、裁判上、単なる夫婦喧嘩の延長のような言動ではモラハラと認められず、加害者のモラハラ行為が社会通念上許容される範囲を超えていることを客観的な証拠で証明する必要があります。
慰謝料請求が認められるモラハラ行為とは
慰謝料請求の対象となるモラハラとは、倫理や道徳に反した言動によって相手の尊厳を傷つけ、精神的な苦痛を与える行為を指します。
具体的には以下のような行為が挙げられます。
- 人格を否定する暴言:「バカ」、「死ね」などと執拗に罵倒・侮辱する
- 長期間の無視や威嚇:継続的に無視を続ける、大声を出したり物に当たったりする
- 過度な束縛や監視:友人関係や実家との連絡などを不当に制限する、スマホの履歴や行動を常時チェックする
- 経済的ハラスメント:自由にお金を使わせない、必要な生活費を渡さない、支出の使途を細かく詰問する
- 不当なルールの強要:過度な服従を強いたり独自のルールを押し付ける など
これらの行為が社会通念上許容される範囲を超え、配偶者が精神的苦痛を受けたと評価される場合、モラハラによる慰謝料請求が認められる可能性があります。
モラハラの慰謝料請求が難しいとされる理由
モラハラを理由とする慰謝料請求が難しいと言われる最大の理由は、身体的な暴力のように目に見える被害が残らないため、モラハラ行為の存在を証明することが容易ではないことです。
加害者側は「注意のつもりだった」、「ただの夫婦喧嘩だ」などと主張して自身の非を認めないケースが多く、当事者同士では言い分が真っ向から対立して水掛け論に陥ってしまう可能性があります。
そのため、モラハラ行為の存在を証明すべく、以下のような客観的証拠を集めていく必要があります。
モラハラの証拠の集め方
モラハラによる慰謝料請求を成功させるには、相手の不当な言動を示す客観的な証拠を着実に収集することが不可欠です。
効果的な証拠としては、暴言や怒鳴り声をICレコーダーやスマホで録音・録画したデータや、人格否定の言葉が残されたLINE・メールのスクリーンショットなどがあります。
また、モラハラを受けた日時、場所、具体的発言、その時の心境を書き留めた日記なども有力な証拠となりえます。
さらに、精神的苦痛から心療内科に通院した際の医師の診断書や、警察・人権110番等への相談記録なども被害の深刻さを証明する重要な資料となります。
モラハラで離婚した場合の慰謝料相場
モラハラが原因で離婚に至った場合の慰謝料相場は、おおむね50万円から300万円程度とされています。
相場に幅があるのは、モラハラ行為の頻度や態様、継続期間、被害者が受けた精神的苦痛の度合い、婚姻期間の長さや子どもの有無など、個別の事情によって評価が異なるためです。
証拠が乏しい場合や軽微なケースでは数十万円にとどまることもありますが、悪質性が極めて高いと認められれば高額になる傾向があります。
モラハラ慰謝料が高額になる要素とは?
モラハラ離婚における慰謝料の額は、被害の大きさと不法行為の悪質性によって左右されます。
具体的には、長期間かつ日常的に激しい暴言や不当な束縛が繰り返されていたり、ハラスメントが原因でうつ病や適応障害などの精神疾患を発症していたりする場合は、精神的苦痛が大きいと判断されて慰謝料が高額化しやすい傾向があります。
また、婚姻期間が長かったり、未成熟の子どもがいたりすることも増額を後押しする要素となります。
これらの事情を客観的な証拠で証明できれば、慰謝料を増額できる可能性が高まります。
モラハラ離婚で慰謝料を請求する流れ
モラハラ離婚で慰謝料を請求する場合の具体的な手順を、以下で解説します。
①まずは別居を検討する
モラハラ被害を受けている場合、最初にとるべき対応は別居の検討です。
同居したままでは相手からの心理的圧迫によって対等な交渉ができず、また心身の健康を損なう恐れがあります。
距離を置くことで精神的な安全を確保し、冷静な判断が可能になります。
別居に際しては、事前にモラハラ行為の存在を証明するための証拠を集めておくようにしましょう。また、相手方から勝手に家を出ていったと主張されるのを避けるべく、メールなどで別居の意向を伝えておくとよいです。
なお、相手方より収入が少なく別居後の生活に不安がある場合でも、相手方に対し婚姻費用として生活費の支払いを請求することができますので、弁護士にご相談ください。
②話し合いで請求する
別居等で安全を確保した後は、当事者間での話し合いにより離婚と慰謝料を請求します。
直接対面すると更なるモラハラを受ける危険があるため、手紙やメール、LINE等で離婚意思と請求額を伝えるのが望ましいでしょう。
しかし、モラハラ加害者は自身の非を認めず激高することが多いため、当事者同士の話し合いは難航するのが一般的です。
切り出す勇気が出ない場合や交渉が進まない場合は、弁護士を間に挟むのが賢明です。
③内容証明郵便で請求する
相手が話し合いに応じない場合や直接の連絡を避けたい場合は、内容証明郵便で慰謝料請求書を送付します。内容証明郵便とは、どのような内容の文書をいつ誰に送ったかを証明するための郵送方法です。
この方法を用いることで、請求の意思表示をした確実な証拠が残り、相手に対してプレッシャーを与えられます。また、時効の完成を一時的に猶予させる効果もあるため、請求の手段として有効です。
④離婚調停で請求する
協議や内容証明郵便での請求で合意に至らない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
調停では、裁判所の調停委員が双方から個別に意見を聞き取り、話し合いによる合意を目指します。相手と直接顔を合わせずに手続きを進められる点、第三者を介することで冷静な話し合いを期待できる点がメリットです。
集めたモラハラの証拠を調停委員に提示し、過酷な被害の実態をしっかりと説明することで、調停委員が相手方に慰謝料を払うよう説得してくれる可能性が高まります。
⑤離婚裁判で請求する
調停でも相手が支払いを拒み、合意に達しなかった場合は、最終段階として離婚裁判を起こします。裁判では、双方が提出した主張と証拠に基づき、裁判官が判決を下します。
配偶者のモラハラ行為が民法770条1項4号の「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたると判断されれば、相手が拒否していても離婚が認められ、慰謝料の支払いが命じられます。
裁判では客観的な証拠による立証がすべてとなるため、訴訟を提起する前に、モラハラ行為を立証する有力な証拠を集めておくことが重要です。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
モラハラの慰謝料請求の時効はいつまで?
モラハラの離婚慰謝料には請求期限(消滅時効)が存在します。
民法724条では、不法行為による損害賠償請求権は、被害者が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときに時効によって消滅すると定められています。
そのため、モラハラによる慰謝料請求権の時効は、モラハラ行為が終わった時から3年となります。
ただし、モラハラを原因とする離婚により慰謝料請求を行う場合、時効のカウントは原則として「離婚が成立した日」からスタートします。
離婚成立から3年を過ぎると法的に慰謝料を請求できなくなるため、離婚交渉と並行するか、離婚後速やかに請求を行う必要があります。
モラハラの慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット
モラハラ被害に遭われた方が慰謝料請求を弁護士に依頼する最大のメリットは、相手方と直接やり取りせずに済む点です。
弁護士が代理人となることで連絡窓口が一本化され、精神的苦痛や恐怖から解放されます。
また、手元にある資料から法的に有効な証拠を厳選・収集するサポートを受けられるほか、プロの知識とノウハウに基づいた交渉により、適正かつ可能な限り高額な慰謝料を獲得できる可能性が高まるというメリットもあります。
よくある質問
姑からのモラハラを理由に、離婚や慰謝料を請求することは可能ですか?
姑からのモラハラを理由に離婚や慰謝料を請求することは、当事者間の話し合いや調停で合意できれば可能です。
しかし、配偶者が拒否して裁判になった場合、単に姑からモラハラを受けたという理由だけでは、配偶者に対する裁判上の離婚事由や慰謝料請求が直ちに認められるわけではありません。
離婚や配偶者への慰謝料請求が認められるには、「配偶者に相談しても無視され放置された」「配偶者が姑に同調して一緒に罵倒してきた」など、配偶者側に夫婦の協力・扶助義務違反やモラハラへの加担があったと評価できる必要があります。
なお、姑の言動自体が不法行為にあたる場合は、姑本人に対して直接慰謝料を請求することが可能です。
旦那が子供にもモラハラをしていた場合、慰謝料の増額は期待できますか?
配偶者が自分だけでなく子どもに対してもモラハラを行っていた場合、配偶者自身が請求する離婚慰謝料の増額要因となる可能性があります。
子どもへの不当なハラスメントは親として耐え難い精神的苦痛を与えるものであり、家庭環境を破壊して離婚を決意させた悪質な事情として考慮されるためです。
また、子どもに対するモラハラ行為自体が不法行為にあたる場合、子ども自身にも固有の慰謝料請求権が発生します。
この場合、親権者となる母親が子どもの法定代理人として、子ども固有の慰謝料を配偶者へ併せて請求していくことが可能です。
妻からモラハラを受けていたことを理由に、養育費の支払いを減額してもらえますか?
妻からのモラハラを理由に、夫が支払うべき養育費を減額したり、受け取るべき離婚慰謝料と養育費を勝手に相殺したりすることは原則として不可能です。
養育費は子どもが経済的・社会的に自立するまでに必要な子どもの権利であり、親同士のトラブルとは法的に全く別の問題として扱われるためです。
また、慰謝料と養育費を相殺することは子どもの生活を脅かすため法律上許されません。
妻との話し合いや減額調停で任意に合意しない限り、裁判所でモラハラを理由とした養育費の減額が認められることはありません。
モラハラで慰謝料請求するなら、離婚問題に強い弁護士に依頼することがおすすめです。
モラハラ被害を受けていると、相手への恐怖から正常な判断が難しくなり、不当な条件で離婚してしまうリスクがあります。
適正な慰謝料を獲得して新しい生活を踏み出すためには、離婚問題に強い弁護士への依頼をおすすめします。
弁護士法人ALG & Associatesでは、豊富な経験を持つ弁護士が証拠集めから相手との交渉、調停・裁判まで親身にサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。
交通事故の直後は特に痛みを感じていなかったにもかかわらず、数時間後や数日後になって腰の痛みが現れることは珍しくありません。
事故直後は緊張や興奮状態により痛みを自覚しにくい場合があるためです。
しかし、「そのうち治るだろう」と放置してしまうと、適切な治療や損害賠償を受けるうえで不利になる可能性があります。
この記事では、交通事故後に腰の痛みが後から出てきた場合の原因や適切な対応方法、請求できる慰謝料の種類、注意点などについて解説します。
交通事故で腰の痛みが後から出る原因
交通事故による腰の痛みは、事故の衝撃によって腰部の筋肉、靭帯、椎間板、関節などに負担がかかることで発生することが多いです。
もっとも、事故直後から症状を感じ取れるとは限りません。
事故直後はより重篤な外傷の症状を強く感じていたり、精神的な緊張やアドレナリンの分泌によって痛みを感じにくくなっていることがあり、その結果、時間の経過とともに初めて痛みとして自覚されるケースがあります。
交通事故で後から腰の痛みが出たときの対処法
①すぐに病院を受診する
腰の痛みや違和感に気付いたら、できるだけ早く整形外科を受診するべきです。
事故から長期間が経過した後に受診すると、保険会社から「本当に事故が原因なのか」と疑問を持たれ、事故と症状との因果関係が争われることがあります。
また、レントゲンだけでは異常が確認できない場合もあります。
そのため、必要に応じてMRIやCTによる精密検査を受けることも検討しましょう。
なお、整骨院や整体院は治療の補助として利用することはありますが、まずは医師による診察を受けることが重要です。
②病院で診断書をもらう
交通事故による怪我を証明するためには、医師が作成した診断書によることが一般的です。
交通事故で後から腰の痛みが出たときも、医師が交通事故による傷病であることを診断した診断書によって、交通事故に起因する怪我であることを証明していきます。
そのため、受診時には事故との関連性を医師へ正確に伝えるようにしましょう。
③双方の保険会社に連絡する
事故後に新たな症状が出た場合には、自身が加入している保険会社と相手方保険会社の双方へ連絡しましょう。
保険会社が症状の存在を把握していない場合、治療費の支払いや保険手続が円滑に進まないおそれがあります。
特に、事故直後は物損事故として処理されていたケースでは、後から発生した腰痛について速やかに報告することが重要です。
受診結果や診断内容についても適宜保険会社へ伝え、今後の治療方針について確認しておくとよいでしょう。
④警察で物損事故から人身事故へ切り替える
事故当初に怪我が確認されていなかった場合、警察では物損事故として処理されていることがあります。
しかし、後から腰の痛みが発覚し、その原因が事故によるものであると診断された場合には、人身事故への切り替えを検討しましょう。
一般的には、診断書を取得したうえで事故を担当した警察署へ連絡し、必要な手続を行います。人身事故へ切り替えることで、交通事故によって受傷した事実を裏付ける資料の一つとなり、治療費や慰謝料の請求において有利な事情となる場合があります。
もっとも、事故から相当期間が経過してしまうと切り替えが難しくなる場合もあるため、症状が出た場合には早めに対応することが大切です。
交通事故で腰痛になった場合に請求できる慰謝料相場
入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、交通事故による怪我の治療のために入院や通院を余儀なくされた精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
金額は、怪我の内容、治療期間、実際の通院日数などによって変動するため、明確な相場は断言できるものではありません。
もっとも、慰謝料の算定基準には自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準などがあり、どの基準によるかで金額が大きく異なることがありますので、遅くとも示談前には弁護士に相談されることをお勧めします。
後遺障害慰謝料
治療を続けても腰の痛みやしびれなどが残ってしまい、後遺障害等級の認定を受けた場合には、後遺障害慰謝料を請求できる可能性があります。
後遺障害慰謝料は、後遺症によって将来にわたり生活や仕事へ支障が生じる精神的苦痛を補償するものです。
腰痛による後遺障害は、神経症状として後遺障害等級14級9号又は12級13号に認定されることがあります。
後遺障害慰謝料の金額は認定された等級や採用される算定基準によって異なりますが、弁護士基準では14級で110万円、12級で290万円が一つの目安とされています。
まずは交通事故事件専属のスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
後から腰の痛みが出た場合の注意点
交通事故後の腰痛で特に注意すべきなのは、受診が遅れることです。
骨折等、画像による他覚的所見が認められる場合はともかく、打撲、捻挫などの場合、事故から何週間も経過してから初めて診断された場合、保険会社から、他の原因によるものではないかと、交通事故との因果関係を争われる可能性があります。
事故から期間を開けずに、整形外科を受診されることを強くお勧めします。
交通事故による腰の痛みなどでお困りの場合は弁護士法人ALGにご相談ください
交通事故による腰の痛みは、事故直後には自覚していないことも多く、自宅で落ち着いた後から症状に気づくこともあります。
しかし、早期に整形外科を受診する等、適切な対応を行わないと、交通事故との因果関係を否定され、治療費や慰謝料などの損害賠償を十分に受けられなくなる可能性があります。
もっとも、事故直後に症状がなかったとしても、後日発症した症状と交通事故との因果関係が認められれば、治療費や慰謝料等を請求できる可能性があります。
弁護士法人ALGでは、治療中の対応から損害賠償請求、示談交渉まで幅広くサポートしております。
交通事故の被害に遭い、後から腰の痛みが出てきた場合には、お早めに弁護士へご相談ください。
遺言書は、遺産を巡る親族間の争いを防ぐために有効な手段です。
しかしながら、その作成方法や内容によっては、遺言書の存在がかえって紛争の原因となることもあります。
本記事では、遺言書があった場合に生じやすいトラブルの事例、遺言書が無かった場合のトラブル、遺言執行者に関するトラブル、並びに遺言書でトラブルにならないための対策について、詳しく解説します。
遺言書があった場合のトラブル事例
遺言書を勝手に開封した
封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ開封することができず(民法第1004条第3項)、家庭裁判所外で開封した者は、5万円以下の過料に処せられます(民法第1005条)。
また、勝手に開封すると、他の相続人から偽造又は変造を疑われ、紛争に発展するおそれもあります。
もっとも、誤って開封してしまった場合でも、遺言書が無効になったり、相続人の権利が失われたりするわけではありませんので、開封した状態のまま速やかに家庭裁判所に検認を請求しましょう。
開封の事実を隠そうとして遺言書を破棄又は隠匿すると、相続欠格として相続権を失うおそれがあるため、決して行ってはなりません。
遺言書の字が汚くて読めない
自筆証書遺言の字が判読できない場合、遺言の内容を巡って相続人間で争いが生じるおそれがあるほか、作成者の遺言能力や偽造・変造が疑われ、遺言書の有効性自体が争われることもあります。
文字が判読できない場合には、まず筆跡鑑定等を専門家に依頼して判読を試みることになります。
それでも判読できない部分については無効となるため、遺言者の意思を推察し、又は遺言書が無いものとして相続人全員の話し合いにより遺産の分け方を取り決めることになります。
日付が特定できない・誤った日付が記載されている
自筆証書遺言を有効なものとするためには、作成した日付を自書する必要があり、日付の記載が無い遺言書は無効です。
また、「令和○年○月吉日」のように作成日を特定できない文言を用いた場合も、遺言書は無効となります。
他方、誤った日付が記載されている場合には、それが明らかな誤記であり、真実の作成日が特定できるのであれば、有効となる可能性が高いと考えられます。
もっとも、遺言書の有効性を巡る紛争を招くおそれがあるため、日付は正確に記載することが重要です。
遺言内容が曖昧
遺言の記載が曖昧であると、その解釈を巡って紛争が生じるおそれがあります。
例えば、「不動産を息子に、銀行預金を娘に相続させる」という記載では、対象となる遺産の特定が不十分であり、息子又は娘が複数いる場合には、解釈は一層複雑になります。
また、「遺産のすべてを長男に任せる」という記載では、相続させる趣旨か、遺産分割の方法を委ねる趣旨かが不明確です。
このような場合、当事者全員の話し合い又は裁判により解決を図ることになり、裁判では、曖昧な部分のみを無効とするか、遺言書自体を無効とするかが、遺言者の真意を探求したうえで慎重に判断されます。
遺言書の内容に納得いかない
遺言書の内容が特定の相続人に偏っている等の理由で納得できない相続人がいると、相続人間の紛争に発展するおそれがあります。
この場合、まず、遺言書が無効となる原因が無いかを確認し、無効事由があると考えられるときは、遺言無効確認の訴えを提起して遺言の有効性を争うことが考えられます。
また、他の相続人や受遺者等に対し、遺言と異なる内容の遺産分割協議を持ちかける方法もあります。
さらに、遺留分権利者である場合には、遺留分を侵害した者に対し、遺留分侵害額請求権を行使することが考えられます(民法第1046条第1項)。
ただし、この請求権は、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないとき、又は相続開始の時から10年を経過したときは、時効等により消滅するため(民法第1048条)、期間制限に注意が必要です。
遺言書を無理やり書かされた可能性がある
被相続人が生前に述べていたことと相反する内容の遺言書が作成されている等、強迫や詐欺により無理やり書かされた疑いがある場合、遺言書の有効性が争われることがあります。
強迫されて作成された遺言書は無効ですが、そのことを客観的な証拠によって証明する必要があり、立証は通常容易ではありません。
具体的には、作成当時の遺言者の精神状態、第三者が作成に関与した程度、並びに生前の状況に照らした遺言内容の不自然さ等を、証拠をもって具体的に立証することになります。
なお、強迫によって遺言書を作成させた者は、相続欠格となり、当然に相続権を失います。
想定してない相続人が現れた
遺言書に「隠し子を認知し、その子にも遺産を相続させる」「前妻との子にも相続させる」等と記載されており、他の相続人が存在を把握していなかった相続人が明らかになるケースがあります。
思わぬ相続人の出現により、その相続人に遺産が渡ることを受け入れられず、紛争に発展することがあります。
もっとも、遺言書に関わる当事者(相続人・受遺者・遺言執行者)全員の合意が無い限り、遺言書を無視することはできません。
想定外の相続人が現れた場合であっても、感情的にならず冷静な対応を心がけ、直接の話し合いが難しいときは、弁護士等の専門家に代理を依頼することも検討しましょう。
家族以外に財産を渡すと書かれていた
遺言書に、生前世話になった人や介護施設等の家族以外の者に財産を遺贈すると記載されていた場合、財産を渡したくないと考える相続人との間で紛争になるおそれがあります。
このような場合には、遺贈の相手方と話し合い、遺贈を放棄してもらう方法が考えられます。遺贈の相手方の同意が無ければ、遺言書と異なる内容で遺産分割をすることはできない点に注意が必要です。
なお、遺言書を破棄又は隠匿すると相続欠格となるため、決して行ってはなりません。
寄与分を主張された
遺言により財産を譲り受ける方が、他の相続人から寄与分を主張されることがあります。
しかしながら、寄与分は、被相続人が相続開始の時に有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができないとされており(民法第904条の2第3項)、原則として、遺言の内容が寄与分の主張に優先します。
もっとも、遺贈の対象が相続財産の一部にとどまる場合には、残りの遺産について寄与分が認められる可能性はあります。
遺産分割協議後に遺言書が見つかった
遺産分割協議の成立後に遺言書が発見された場合、基本的には遺言書の内容が優先されるため、遺言書の内容に従って遺産分割をやり直すことになります。
もっとも、遺言書に関わる当事者(相続人・受遺者・遺言執行者)全員の合意があり、かつ遺言書で遺産分割協議が禁止されていなければ、既に成立した遺産分割協議の内容のまま遺産を分配することも可能です。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
遺言書が無かった場合のトラブル事例
遺言書が無かった場合、相続人間で遺産分割協議を行う必要があります。
話し合いができない場合や、話し合いをしてもまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになり、調停でも合意に至らなければ、遺産分割審判により裁判官が判断を行います。
なお、遺産分割調停において遺産の全てについて判断がなされるわけではなく、遺産の範囲の確定や、被相続人の財産の不正な流用が疑われる場合には、調停に先立ってこれらの争点を解決しておく必要があります。
遺言執行者に関するトラブル事例
遺言執行者が指定されていない
遺言書に相続人の廃除やその取消し等が記載されていなければ、遺言執行者を必ず指定又は選任しなければならないわけではありません。
もっとも、遺言執行者がいないと、手続のたびに相続人全員の署名押印が必要となり、非協力的な相続人がいる場合には手続が滞るリスクがあります。
遺言執行者が必要な場合には、相続人等の利害関係人が、家庭裁判所に対して遺言執行者の選任を申し立てることができます(民法第1010条)。
遺言執行者が任務を怠る
遺言執行者が、正当な理由なく任務を進めない、遺言書の内容どおりに手続を行わない等、その任務を怠ったときは、利害関係人は、家庭裁判所に対して遺言執行者の解任を請求することができます(民法第1019条第1項)。
解任後は、新たな遺言執行者の選任を申し立てることも可能です。
また、相続人が、遺言執行者に対し、債務不履行に基づく損害賠償請求を行うことも考えられます(民法第1012条第3項、第644条、第415条)。
遺言書でトラブルにならないための対策
遺言書によるトラブルを防ぐためには、まず、遺言能力がしっかりしている元気なうちに遺言書を作成し、定期的に内容を見直すことが重要です。
作成にあたっては、法律上定められた様式を守り、解釈に迷いが生じないよう曖昧な表現を避けるとともに、遺留分を巡る争いにならないよう、遺留分に配慮した内容としましょう。
また、変造や隠匿を防ぐために公正証書遺言を利用すること、手続を巡る争いを防ぐためにあらかじめ信頼できる遺言執行者を指定しておくこと、並びに作成した遺言書を専門家に預けておくことも有効です。
相続紛争を見据えたサポートが必要な場合には、弁護士等の専門家に遺言書作成の支援を依頼することをおすすめします。
遺言書に関するトラブルは弁護士にお任せください
遺言書が作成されていれば、相続人全員で遺産の分配を話し合う必要が無くなり、紛争を防止できる可能性が高まります。
しかしながら、内容に不備があると、遺言書がかえってトラブルの原因となることもあるため、慎重な作成が求められます。
弁護士は、相続に関する様々な紛争を経験しており、遺言の作成段階から、遺言書に関するトラブルを具体的に想定した対応が可能です。
また、相続トラブルは、当事者だけで話し合うと感情的になりやすく、解決が遠のいてしまうことがあるため、なるべく早期にご相談いただくことが重要です。
これから遺言書を作成しようとお考えの方や、遺言書を巡るトラブルでお困りの方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
教師が盗撮やのぞきで逮捕された場合、刑事罰を受けるだけでなく、懲戒免職や教員免許の失効といった重大な処分につながるおそれがあります。
こうした事態に至ると、教育現場への復帰は極めて困難になります。もっとも、逮捕直後の早い段階から適切に対応することで、こうしたリスクを軽減できる可能性もあります。
本記事では、教師の盗撮・のぞき行為に科される刑罰、懲戒処分や教員免許への影響、逮捕後の流れ、そして取るべき対処法について、詳しく解説します。
教師が盗撮・のぞきで逮捕された場合の刑罰
教師の盗撮・のぞき行為は、その態様や撮影対象、行為をした場所によって、適用される法律や条例が異なります。一つの行為が複数の罪に該当することも少なくありません。
ここでは、盗撮・のぞき事件で問題となりやすい以下の罪について、それぞれ解説します。
- 撮影罪(性的姿態等撮影罪)
- 迷惑防止条例違反
- 児童ポルノ禁止法違反
- 住居侵入罪・建造物侵入罪
撮影罪(性的姿勢等撮影罪)
撮影罪(性的姿態等撮影罪)は、令和5年7月13日に施行された「性的姿態撮影等処罰法」により新設された犯罪です。
かつて盗撮行為は各都道府県の迷惑防止条例で取り締まられていましたが、条例による処罰には地域差があり、規制の及ばない場面も存在したことから、全国一律で処罰するための法律として制定されました。
対象となるのは、正当な理由なく、相手の同意を得ずにひそかに人の性的な姿態(下着や身体の性的な部位など)を撮影する行為です。
教室や更衣室・トイレなどでの盗撮のほか、スカート内へのカメラの差し向けなども該当します。
刑罰は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金と定められています。
迷惑防止条例違反
迷惑防止条例は、各都道府県が公共の場所や乗り物などにおける迷惑行為を防止する目的で定めている条例です。
盗撮・のぞきに関しては、通常は衣服で隠されている下着や身体を撮影する行為、撮影目的でカメラを差し向けたり設置したりする行為などが規制の対象となります。
迷惑防止条例は都道府県ごとに定められているため、規制される行為の範囲や罰則の内容には地域差があります。
たとえば埼玉県の場合、罰則は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金と定められており、常習性が認められる場合にはさらに重い罰則が科されることもあります。
撮影罪が新設された現在も、性的姿態の撮影に至らないのぞき行為などについては、引き続き迷惑防止条例違反が問題となり得ます。
のぞき行為は迷惑防止条例違反になる?児童ポルノ禁止法違反
児童ポルノ禁止法(児童買春・児童ポルノ禁止法)は、18歳未満の児童の性的な画像や動画を製造・所持・提供・販売するなどの行為を処罰する法律です。
教師が児童・生徒を対象に盗撮を行った場合、撮影罪や迷惑防止条例違反に加えて、本法違反も成立する可能性があります。
自己の性的好奇心を満たす目的で盗撮した児童ポルノを所持・保管する行為には、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科される可能性があります。
さらに、盗撮によって児童ポルノを製造したと評価される場合には、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金と、より重い刑罰が定められています。
児童が被害者となる事件では社会的非難も大きく、厳しい処分が予想されます。
児童ポルノとは?所持でも罪になる?住居侵入罪・建造物侵入罪
住居侵入罪・建造物侵入罪は、正当な理由なく他人の住居や、管理者が看守する建物などに立ち入る行為を処罰する犯罪です。
盗撮・のぞきの場面では、撮影目的で更衣室・トイレや住宅などに無断で立ち入る行為がこれらの罪に該当し得ます。
注意が必要なのは、自分が勤務する学校であっても、盗撮という不正な目的で立入りを許されていない場所に入った場合には、管理者が許諾していない目的での侵入と評価されるために、建造物侵入罪が成立する可能性がある点です。
両罪の罰則は、3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金と定められており、盗撮そのものの罪と併せて起訴されることも少なくありません。
盗撮は住居侵入罪・建造物侵入罪に問われる?教師が盗撮・のぞきで逮捕されたら懲戒免職になる?
教師が盗撮・のぞき行為で逮捕された場合、教育者としての信頼が大きく損なわれるため、懲戒解雇(懲戒免職)や降格、出勤停止といった重い懲戒処分を受ける可能性があります。
一般的な懲戒処分の種類は、次の表のとおりです。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 懲戒解雇 | 雇用契約を一方的に終了させる処分で、懲戒処分の中で最も重いものです。退職金が支給されない場合もあります。 |
| 諭旨解雇 | 自主退職を促す形で行われる解雇で、懲戒解雇よりも一段軽いものの、事実上の退職処分になります。 |
| 降格 | 職位や役職を引き下げる処分です。管理職から一般職への変更等が該当します。 |
| 出勤停止 | 一定期間、就労を禁止する処分です。停止期間中の給与は支給されないのが一般的です。 |
| 減給 | 一定期間、給与の一部を差し引く処分です。 |
| 譴責(けんせき) | 始末書を提出させ、将来を戒める処分です。 |
| 戒告 | 口頭または書面で注意する比較的軽い処分ですが、再発時にはより重い処分に発展する可能性があります。 |
なお、公立学校の教師は地方公務員であるため、その懲戒処分は地方公務員法に基づき、重い順に免職・停職・減給・戒告の4種類とされています。
一方、私立学校の教師の懲戒処分は、学校法人の就業規則に基づいて行われます。
呼び方や区分に違いはあるものの、非違行為に対する制裁として不利益な処分を科すという基本的な考え方は共通しています。
懲戒処分は誰が決めるのか
懲戒処分を誰が判断・決定するかは、公立か私立かによって異なります。
公立学校の教師の場合は、任命権者である都道府県・市町村の教育委員会が決定します(処分に不服がある場合には、人事委員会に審査請求を行うことができます。)。
私立学校の場合は、雇用主である学校法人が、就業規則に定められた手続に従って判断します。
いずれの場合も、教師は児童・生徒の模範となるべき教育者として高い倫理性を求められることから、同種の非違行為であっても、他の職業に比べて厳重に処分される傾向があります。
懲戒処分を避けられるケース
懲戒処分は、勤務先が事件の事実を把握して初めて検討されるものです。
そのため、勤務先に事件が知られなければ、結果として懲戒処分を回避できる可能性があります。
逮捕された事実や刑事事件になった事実を、自ら勤務先に申告しなければならない一般的な法的義務は、通常はないと考えられています。
もっとも、起訴されて実名報道がなされた場合や、学校内での事件で被害者が児童・生徒であった場合などには、勤務先に事実が伝わることを避けるのは困難です。
だからこそ、報道や起訴に至る前の早い段階で弁護士に相談し、適切に対応することが重要になります。
教師が盗撮・のぞきで逮捕されたら教員免許は剥奪される?
教師が盗撮・のぞき行為で懲戒免職相当の処分を受けた場合、公立・私立を問わず、教員免許は失効(取り上げ)となります。また、拘禁刑以上の刑罰が確定した場合にも、免許はその効力を失います。
一度失効・取り上げとなった教員免許は、その処分の日から3年を経過すれば再取得(再授与)が可能になります。
もっとも、免許を再取得できたとしても、懲戒免職や盗撮事件の前歴がある状態で採用に至ることは容易ではなく、教師として教育現場に復帰することは現実には非常に困難です。
だからこそ、免許の失効という結果を避けるためにも、早期の対応が重要となります。
国公立の場合
国公立学校の教師が懲戒免職処分を受けた場合、教育職員免許法第10条に基づき、その時点で教員免許状は当然に失効します。
失効に本人の申請や特別な手続は必要なく、処分を受けたことによって法律上当然に効力を失う点が特徴です。また、免許状が失効した情報は官報に公告され、全国の教育委員会が把握できる仕組みになっています。
そのため、失効の事実を隠して別の地域で採用されることは想定されていません。失効の日から3年間は、新たに免許を取得することもできません。
私立の場合
私立学校の教師が懲戒免職に相当する処分を受けた場合には、教育職員免許法第11条に基づき、都道府県の教育委員会によって教員免許状の取り上げ処分が行われます。
国公立における当然失効とは異なり、教育委員会が取り上げ処分を行い、本人に通知することによって免許が効力を失う点に違いがあります。
取り上げ処分がなされた場合も、その情報は官報に公告されます。また、取り上げの日から3年を経過するまでは、新たな免許を取得することはできません。
結果として、公立・私立を問わず、教育現場への復帰は困難になります。
教員が盗撮・のぞきで逮捕された後の流れ
教師が盗撮・のぞきで逮捕された後は、一般的に次のような流れで手続が進みます。
- ① 逮捕:警察に身柄を拘束され、取り調べが行われます。逮捕による身柄拘束は最大72時間です。
- ② 勾留:引き続き身柄拘束の必要があると判断されると、原則10日間、延長を含めて最大20日間の勾留が行われます。
- ③ 起訴・不起訴:検察官が証拠や示談の状況などを踏まえ、起訴するか不起訴とするかを判断します。
- ④ 裁判:起訴された場合は刑事裁判が開かれ、裁判官によって有罪・無罪や量刑が判断されます。
早い段階で適切な弁護活動を行えれば、勾留や起訴を回避できる可能性があります。
教師が盗撮・のぞき行為をしてしまった場合の対処法
盗撮・のぞき事件では、逮捕後できるだけ早く行動することで、身柄拘束の長期化や起訴、ひいては懲戒処分や教員免許の失効といった不利益を軽減できる可能性があります。
具体的には、次の2つの対応が重要です。
- 弁護士に依頼する
- 被害者と示談交渉する
弁護士に依頼する
盗撮・のぞき事件では、迅速かつ的確な刑事弁護活動が結果を大きく左右します。
まだ逮捕されていない段階であれば、弁護士が自首に同行し、少しでも有利な形で捜査に臨めるようサポートすることができます。
逮捕後は、家族などと異なり弁護士は逮捕直後から本人と接見(面会)できるため、早期に事情を聴き取り、取り調べへの対応を含む弁護方針を構築することが可能です。
さらに、被害者との示談交渉、本人に有利な事情を示すための証拠収集、勾留に対する異議申立てや保釈請求の手続などを進めることができます。
これらの活動により、身柄の早期解放や不起訴処分を目指すことができます。
盗撮事件は初動が重要であり、できるだけ早く弁護士に相談することが望まれます。
被害者と示談交渉する
盗撮・のぞき事件では、被害者との示談が成立しているかどうかが、その後の処分に大きく影響します。
示談が成立すると、被害者が処罰を望まない意思を示すことで、勾留を回避できたり、不起訴となる可能性が高まったりします。
また、起訴された場合でも、量刑上有利に考慮され、減刑につながることがあります。
事件が早期に解決すれば、結果として勤務先に事件を知られずに済む場合もあります。
もっとも、盗撮事件の被害者は加害者と直接やり取りすることを望まないことが多く、当事者同士の交渉は感情的な対立を招きやすいものです。
そのため、示談交渉は弁護士を通じて、冷静かつ法的に適切な形で進めることをおすすめします。
教師の盗撮・のぞき事件に関しては、早急に弁護士法人ALGにご相談ください
教師が盗撮・のぞきで逮捕されると、撮影罪や迷惑防止条例違反などの刑事責任に加え、懲戒免職や教員免許の失効といった重大な処分を受けるおそれがあり、その後のキャリアや生活に長く影響を及ぼします。
しかし、逮捕直後から適切な弁護活動を行い、被害者との示談を早期に成立させることができれば、身柄の早期解放や不起訴、そして重い処分の回避につながる可能性があります。
教師の盗撮・のぞき事件でお困りの際は、できるだけ早い段階で弁護士法人ALGにご相談ください。

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- 保有資格
- 弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
