物損事故とは | 物損で請求できる損害賠償

物損事故とは | 物損で請求できる損害賠償

交通事故に遭った場合でも、けがなどはせずに物損事故として扱われることがあります。
物損事故にあった場合、被害者としてはどのように対応すればいいのでしょうか。ここでは、物損事故の意味や物損事故と人身事故の違いなど、物損事故の基礎知識をご紹介いたします。

物損事故とは

物損事故とは、交通事故のうち、物の所有権などの財産上の権利に被害がとどまる場合をいいます。被害者の生命や身体に被害が及んだ場合は、人身事故となります。

物損事故の場合、自賠責保険の適用対象となりません。また、人身事故の場合は損害賠償請求権の消滅時効期間が5年間であるのに対し、物損事故の場合は3年間です。さらに、物損事故の損害賠償請求権については相殺が許容されていますが、人身事故の損害賠償請求権についての相殺が禁止されているなど、人身事故と物損事故では様々な点で扱いが異なります。

物損事故で請求できる損害賠償

修理費

自動車を修理し、事故前の状態に戻すための費用は、損害賠償の対象になります。ただし、修理費用よりも同種の自動車に買い替えるための費用が低くなる場合(経済的全損)は、修理することが合理的ではないため、修理費用ではなく買替費用が損害賠償の対象となります。そのため、経済的全損の場合には修理費用が請求できないことに注意が必要です。

格落ち損(評価損)

自動車を修理した場合でも、事故当時より車両価格が下がることがあります。その差額を格落ち損や評価損と言います。
評価損となる原因は、自動車の構造に技術上の問題が生じたり、事故車として取引上の価値が下がったりすることなどです。このうち、性能の低下による評価損は認められやすいですが、取引上の評価損は認められにくい傾向にあります。

代車料

代車料は、代車が必要な場合に限って請求が認められます。バスや電車などの公共交通機関で代替可能な場合には、代車料の請求は認められないので注意が必要です。また、あくまで代車が必要な期間に限られるので、被害車両の修理や新車の準備に必要な1~2週間程度しか認められないことが多いです。
代車として高級車を使用することは一般的には認められませんが、高級車を利用する必要がある場合には認められることもあります。

買替差額

買替差額とは、事故当時の被害車両の時価相当額から、被害車両の売却額を引いたものです。自動車を修理することが物理的に不可能である場合(物理的全損)や、経済的全損の場合には、修理費ではなく買替差額が損害賠償の対象となります。全損した自動車は通常は売却できないので、多くの場合で事故当時の時価相当額がそのまま損害額となります。

登録手続関係費

交通事故によって自動車が全損となった場合、自動車を買い替えざるをえません。そのため、登録手数料、車庫証明手数料、納車手数料、自動車取得税などの自動車の登録手続きに必要な費用は損害賠償の対象となります。ただし、被害車両と同様の自動車が用意できれば損害は回復できると考えられているため、被害車両と同様の車両を購入した場合にかかる登録手続きに必要な費用の限度にとどまります。また、自賠責保険料、新車の自動車税、自動車重量税などは損害にあたりません。

休車損害

被害にあった自動車が営業用車両である場合には、その自動車が使用できれば得られたはずの利益が損害として認められることがあります(休車損害)。休車損害が認められる場合、得られたはずの利益から、その自動車を使用しなかったことで支払わずに済んだ燃料費や有料道路代金を除いた額が賠償額となります。
なお、代車使用料が認められる場合、代車の使用で営業利益が得られているはずですから、休車損害は認められません。

その他

このほかにも、被害にあった自動車の積み荷や被害者の持ち物の修理費や時価額、事故に遭った自動車のレッカー代や保管料、被害額を計算するための査定や見積もりの費用、交通事故証明の交付手数料などが損害賠償の対象になることがあります。

物損の場合は慰謝料が請求できない?

慰謝料は、被害者が受けた精神的苦痛を慰謝するための費用です。物損の場合、被害を受けた物の修理費用や買替費用などが支払われれば、被害を受けた物は被害者の手元に返ってくるか、改めて入手できる状態になるわけですから、精神的苦痛も慰謝されたと考えられています。そのため、物損事故の場合、一般に慰謝料の請求は認められません。

例外的に物損でも慰謝料が認められる場合

一方で、修理費用や買替費用などが支払われても精神的苦痛が慰謝されたとはいえない場合には、例外的に慰謝料の請求が認められることもあります。例えば、事故によって可愛がっていたペットが死んでしまった場合や、住んでいた家が壊れてしまった場合には、裁判で慰謝料の請求が認められたケースがあります。

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物損事故の事故処理の流れ

事故が発生した場合、人身事故ではなくて物損事故の場合でも、警察に連絡しましょう。また、その後の損害賠償請求の際に必要となるので、事故の相手方の氏名や連絡先を確認しておく必要があります。物損事故では実況見分調書が作成されないので、事故現場の状況や、被害を受けた物の状態について確認し、写真などで記録を残しておくとよいでしょう。

少しでも人的損害があった場合は物損事故ではなく人身事故に切り替える

事故が発生した場合、被害者に明らかな外傷がないと物損事故として処理されることがあります。
しかし、物損事故のままにしておくと思いがけない不利益を被ることがあります。けががあったり、体に違和感があったりして病院で診断を受けた場合には、必ず人身事故に切り替えましょう。

人身事故を物損事故にしておくリスク

事故の被害が比較的小規模である場合、加害者側としては、罰金や交通違反による減点、保険料の上昇を避けるために、人身事故ではなく物損事故にしておきたいと考えることがあります。

一方で、交通事故にあった場合、当初は軽いと思っていたけががなかなか治らなかったり、後から痛みが出たり、痛みがひどくなったりすることは珍しくありません。そのような場合、人身事故に切り替えていないことで保険会社に物損事故だと判断されると、十分な賠償が得られない可能性があります。

また、過失相殺が問題となる事件では事故状況が重要となりますが、事故状況についての貴重な資料となる実況見分調書は、人身事故に切り替えないと作成されません。

物損事故から人身事故に切り替える方法

交通事故によってけがを負った場合、まずはすぐに病院の整形外科で受診しましょう。担当医に診断書を作成してもらいます。
物損事故から人身事故に切り替えるかの判断するのは警察なので、作成してもらった診断書は、警察に提供し、人身事故への切り替えを求める必要があります。警察によっては、他に書類の提出を求められることがあるので、警察の指示に従い書類を提出しましょう。

物損事故の弁護士依頼は損?費用倒れにならないケースとは

物損事故は、人身事故に比べて損害賠償の額が少額となりやすいです。そのため、弁護士に依頼しても費用倒れとなる可能性があります。
物損事故でも、弁護士特約が利用できる場合には、弁護士費用の負担を気にせず弁護士を入れることができます。また、弁護士特約が利用できない場合でも、以下のようなケースでは費用倒れにならない可能性があります。

過失割合が少ない

交通事故で、被害者にも過失がある場合、賠償額は被害者の過失割合を考慮して減額されます(過失相殺)。保険会社から賠償額が提示される場合、被害者の過失割合が実際よりも大きく見積もられて過失相殺されることがあります。

このような場合には、弁護士が介入し、妥当な過失割合を前提とした賠償額の交渉をすることが考えられます。大幅に過失割合が変化した場合には、賠償額が大きく上がり、弁護士への依頼が費用倒れにならない可能性があります。

評価損が認められた

評価損の項目にもあるとおり、評価損のうち取引上の評価損については認められにくい傾向があります。保険会社にこのような取引上の評価損を認めてもらうには、専門的な知識を有する弁護士に依頼することが考えられます。

物損でも場合によっては弁護士の介入がプラスになることがあります。まずはご相談ください

物損の場合には、賠償額が妥当かどうかの判断に困ることもあるでしょう。そのような場合には、多数の物損事故を扱っている弁護士への相談が有効です。
また、物損事故の場合に、弁護士特約がなくとも、弁護士の介入がプラスとなるかどうかは、個別の事案によります。その判断のためにも、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

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この記事の監修

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長弁護士 辻 正裕
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。