監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
交通事故によって、後遺障害が残ってしまった場合は、後遺障害等級の申請をしましょう。もっとも、後遺障害等級の認定がされない場合や認定された等級に納得できない場合もありますので、以下では申請結果に納得がいかない場合の対処法についても解説します。
目次
後遺障害等級認定とは
後遺障害は、症状の程度によって、等級が定められています。具体的には、要介護の1級と2級、介護を要しない等級として1級から14級までがあり、合計16種類の等級があります。
後遺障害に対する自賠責保険金を受け取るためには、損害保険料算出機構が行う等級認定を受ける必要があります。
後遺障害等級認定の申請方法
後遺障害等級認定の申請方法には、事前認定(加害者請求)と被害者請求の2種類があります。事前認定(加害者請求)は、被害者が、加害者側の保険会社に対して、後遺障害診断書を提出し、保険会社から申請をしてもらう方法です。被害者請求は、自ら全ての書類を揃えて直接申請する方法です。
事前認定(加害者請求)による申請方法
交通事故後、治療を開始し、治療を継続しても症状が改善する見込みがない状態(症状固定)になった場合、一般的にはこの時点において、後遺障害の認定の申請を行うこととなります。申請にあたっては、事前申請の場合、被害者が、加害者側の保険会社に対して、後遺障害診断書を提出し、保険会社から申請をしてもらいます。その後、後遺障害等級認定がされます。
被害者請求による申請方法
まずは必要書類を集めましょう
後遺障害等級認定の申請に必要な書類は、①保険金・損害賠償額支払請求書、②請求者の印鑑証明書(代理人による請求の場合は実印を押した委任状と印鑑証明書)、③交通事故証明書、④事故発生状況報告書、⑤診断書、⑥診療明細書、⑦後遺障害診断書です。③の交通事故証明書は、事故を管轄する警察署に申請用紙があり、自動車安全運転センターに申請をします。⑤や⑦は、診断を受けた医療機関に作成を依頼します。
後遺障害等級認定までの流れ
必要書類が集まったら、被害者自身で、加害者が契約している自賠責保険の保険会社に必要書類を提出しなければなりません。被害者請求の場合は、後遺障害等級認定がなされると、それが保険会社に通知され、等級に応じた保険金が支払われます。
事前認定と被害者請求のメリット・デメリット
事前認定(加害者請求)
事前認定のメリットは、被害者の手間が省ける点にあります。すなわち、加害者の保険会社が後遺障害等級認定の申請を行うため、被害者側はその間何もしなくてよいのです。
事前認定のデメリットは、被害者の希望する認定がされない可能性がある点です。すなわち、加害者の保険会社が後遺障害等級認定の申請を行うため、被害者が希望する十分な認定がされない可能性があるのです。
被害者請求
被害者請求のメリットは、被害者の希望する認定が受けられる可能性がある点です。すなわち、被害者が弁護士などに依頼して申請を行うため、被害者の希望する認定が受けられる可能性があるのです。
被害者請求のデメリットは、被害者の手間がかかる点にあります。すなわち、後遺障害等級認定の申請には、上述のような多くの書類が必要となり、被害者がそれを集めるための諸手続をするという手間がかかるのです。
後遺障害認定までにかかる期間
後遺障害等級認定の申請から認定までの期間は、事案によって様々ですが、早ければ1か月、遅い場合は2ヶ月から3ヶ月かかる場合もあります。事前認定の場合は、加害者が契約している保険会社が申請を行うため、その手続きのスピードは保険会社によって様々です。
認定されなかった場合・認定された等級に納得いかなかった場合にできること
認定されなかった場合や認定された等級に納得がいかない場合には、異議申立てを行うことができます。この異議申立てによって、認定された等級を修正してもらうことができます。認定された等級の結果には、結論に至った理由(理由書が添付されている)が書かれていますので、認定を覆すためには、内容を分析したうえでさらなる資料を提出するなどが必要になります。異議申立てを行っても、認定された等級よりも下がることはありません。
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異議申し立てをする方法
後遺障害等級認定に対する異議申立ての方法には、①自賠責保険に対する異議申立て、②自賠責保険・共済紛争処理機構への申請、③訴訟提起の3種類があります。通常、①の異議申立てが行われます。
以下では、①の自賠責保険に対する異議申立ての方法について解説します。
必要書類と入手方法
後遺障害等級認定に対する異議申立てに必要な書類は、①異議申立書、②弁護士に依頼した場合は委任状です。
必ずしも提出を要しないが、認定を覆すために必要な資料として、新たな診断書や後遺障害診断書、画像等の検査結果資料、医師の
意見書、カルテなどを必要な範囲で添付するとよいでしょう。
異議申立書の書き方
異議申立書には、異議申立の理由を記載する欄があり、この異議申立ての理由の内容が審査の際に重要視されます。したがって、異議申立て理由の内容を充実させる必要があるのです。具体的には、前回の認定結果が不合理であること、被害者が求める認定要件に足りていること等を主張し、資料を添付しつつ立証していくのです。
このように、異議申立書は、獲得しようとする等級に照らして、どのような主張をし、どのような資料を添付するかを想定して作成する必要があります。
書類に不足や不備があるとやり直しになる
異議申立書の書類に不備があったり、獲得しようとする等級に照らして添付すべき資料が証明するのに足りない場合は、後遺障害等級認定がされない結果となります。異議申立てを行う回数に制限はありませんが、自賠法上、症状固定から3年で時効にかかりますので注意すべきです(もちろん時効中断できますが。)。
また民法上、交通事故の後遺障害に係る損害賠償請求権は症状固定から5年で時効が完成するため、民法上の時効には留意すべきです。
「異議申立て」成功のポイント
後遺障害等級認定に対する異議申立てを成功させるポイントについて説明します。
まず、どのような理由で前回の認定結果になったのかを検討する必要があります。なぜなら、前回と同じ申請(異議申立)理由や同じ資料を添付しても、認定結果を覆すことはできないからです。したがって、書類に不備・不足があったことが原因であるのか、求めた等級が適切でなかったことが原因であるのかなど、前回の認定結果の理由を検討する必要があるのです。
認定結果の原因の獲得すべき等級が適切であるかの検討を終えたら、その等級を獲得するための要件を確認する必要があります。そして、確認した要件に該当するためには、前回は何が不足していたのか、今回は何を追加しなければならないのかを検討します。
最後に、前回不足していた情報について補足をし、その資料を集めます。例えば、前回の後遺障害診断書の記載内容が不適切であったのであれば、改めて担当医に後遺障害診断書を作成することを依頼するなどです。
適切な等級認定を得るために、このような検討を加えることで、求める等級認定の可能性を上げることができるのです。
後遺障害等級認定・異議申し立ては弁護士にお任せください
後遺障害等級認定の申請や異議申立てには、その認定に向けて、効果的な資料の準備が必要となるなど、専門的な知識が必要となります。後遺障害等級認定に詳しい弁護士に依頼すれば、専門的な知識を武器に、後遺障害等級認定の申請から異議申立てまで、被害者に代わって行ってくれることでしょう。
後遺障害等級認定の申請や異議申立てをする際に、少しでも悩んだら弁護士に相談することをお勧めします。
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- 保有資格
- 弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)