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交通事故

後遺障害等級の申請手続きについて

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕

監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士

後遺障害等級申請手続きの流れ

後遺障害等級申請は下記の流れで行います。

1.申請

〔主な必要書類〕

  • ・支払請求書兼支払指図書
  • ・印鑑登録証明書
  • ・事故発生状況報告書
  • ・交通事故証明書(もしくは人身事故証明書入手不能理由書)
  • ・後遺障害診断書
  • ・診断書
  • ・診療報酬明細書
  • ・画像記録

〔申請手続きの主体と書類提出先〕

事前認定の場合…任意保険会社→損害保険料率算出機構へ書類を提出
被害者請求の場合…被害者→相手方自賠責保険会社へ書類を提出→損害保険料率算出機構へ提出

2.損害保険料率算出機構(実際には各地に設置している損害調査事務所)による調査

※損害保険料率算出機構とは、「損害保険料算出団体に関する法律」に基づいて設立された団体で、自動車保険や自賠責保険の公正な保険料率の算定や、それに関連する調査研究その他付随業務を行っています。

3.後遺障害等級認定結果の通知

事前認定の場合…任意保険会社へ通知→被害者へ通知
被害者請求の場合…自賠責保険会社へ通知→被害者へ通知

4.異議申立て

等級認定結果に不服があれば、異議申立てをすることができます。

後遺障害等級の異議申立てについては下記ページで詳しく解説しています。

後遺障害等級の異議申立て

後遺障害等級申請の方法

事前認定と被害者請求

後遺障害等級申請の方法には、大きくわけて、「事前認定」と「被害者請求」があります。

事前認定:相手方の任意保険会社が申請手続きを行うものです。
被害者請求:被害者自ら、相手方の自賠責保険会社を通して申請手続きを行うものです。

事前認定のメリット・デメリット

事前認定は、事故の相手方が加入している任意保険会社が手続きを全て行ってくれます。そのため、被害者自身の労力がほとんどかからずない点はメリットであるかもしれません。

しかし、あくまで任意保険会社が行うものであるため、被害者の方が見てもらいたいと思う資料を添付してくれることはありません。

また、被害者には任意保険会社がどのような資料を提出したのかを確認する機会はなく、中には保険会社の調査会社が用意した意見書等が添付されることもあるため、損害保険料率算出機構が何を見て検討したのか想像がつかないというデメリットがあります。

被害者請求のメリット・デメリット

こちらの方法では提出資料を自ら用意することになります。

それゆえ、定型の資料だけではなく、例えば、被害者が伝えたい事情等をまとめた書面や医師の意見書等を添付することもできるので、後遺障害等級の審査を行う損害保険料率算出機構に対して伝えたい内容を伝えやすいメリットがあります。

確かに、用意の手間暇がかかる点はデメリットといえるかもしれませんが、この点は弁護士が代理人としてお手伝いすることが可能です。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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後遺障害診断書作成にあたって注意すること

自覚症状をはっきり伝える

後遺障害診断書には、自覚症状を記載する欄があります。医師が患者である被害者から話をききとって記入します。

自覚症状をきちんと医師に伝えることが後遺障害等級判断の一助となることがあります。後遺障害診断書は、自覚症状と検査結果が対応しているかという観点からも見られることがあるからです。

後遺障害診断書作成の段階になって初めて新たな自覚症状を言っても、交通事故との因果関係が疑われてしまうことがあるため、普段の診察時から自覚症状を医師にきちんと伝えておくことが大切です。自分では事故とは関係がない症状だと思っていても、意外と関連性があることもあります。気になった症状等は医師に伝えておく方がよいでしょう。

検査結果はきちんと記載されているか

検査を受けて、症状に合致する検査結果が出ているのにそれが後遺障害診断書に記載されていないというのはもったいないことです。

後遺障害診断書の他にも、日頃の入通院での治療状況については、随時、診断書が作成されているはずですが、その診断書にも検査結果が書かれていないということもあり得ます。有益な検査結果は後遺障害診断書に記載してもらいましょう。

今後の見通しは必ず記入してもらう

後遺障害診断書の末尾には、障害内容の増悪、緩解の見通しを記載する欄があります。たまに、この欄の記入が漏れていることがあります。

しかし、交通事故における「後遺障害」は「将来においても回復の見込みが困難である」障害について認められるものです。それゆえ「回復が困難(見込みが薄い)」という趣旨の記載がないと、後遺障害診断書に書かれた症状等が後遺障害にあたり得るのかはっきりせず、消極的は方向に評価される恐れがあります。

医師によっては、例えば、「むち打ち症は絶対に治らないものではないんだから」等と考えから、この欄を記入なさらないことがあります。

しかし、このむち打ち症の例でいえば、頚部の痛みや痺れが直ぐには引かない(治らない)のであれば、その旨を書いていただく方がより正確な診断を示すことにもなるので。ここは医師の方々に説明し、ご理解していただく他ないのですが、お困りの時にはご相談ください。

補足説明も記載してもらう

交通事故で受けた痛みや症状は被害者によって千差万別です。例えば、症状の部位、症状が生じる頻度、強度なども、できるだけ明確に記載してもらうことに越したことはありません。

しかしもちろん、詳細であればよいというわけでもありません。詳細であっても交通事故による傷害と因果関係のある症状でなければ、無関係な記載によって焦点がぼやけてしまったり、かえって症状の存在が疑われてしまったりすることもあります。

そのようなことにならないよう、どうしてそのような症状が生じるのか、原因としてかんがえられるのはどのようなことかなども、医師にしっかりききましょう。医師の説明を理解したうえで、必要な事実を補足してもらいましょう。

後遺障害等級認定に必要な検査を受ける

後遺障害等級認定を受けるためには、障害の内容に応じて受けておくべき検査があります。

交通事故における「後遺障害」には、目で見てもわかるような身体的な症状のみならず、被害者にしか感じられない神経症状や精神的な症状もあります。そのため、客観的な検査結果を得ることで、神経症状や精神的な症状を裏付けるようにする必要があるのです。

以下は、簡単な例として、神経症状や関節の可動域制限を主たる症状とする場合に用いられる検査の一部をご紹介します。

画像検査

レントゲン、CT、MRI撮影の検査があります。

徒手検査(理学検査)

症状の発生原因として疑われる部位に手動でストレスを与えて、痛みが生じるかどうかをみる検査です。検査の結果、痛みが生じれば、その部位に障害があるということの一つの裏付けになります。

これは、ストレスを与える体の部位毎に検査方法がいくつかあります。

例えば、頸椎ならジャクソンテストやスパーリングテスト、腰椎ならばSLRテスト、ラセーグテストなどが挙げられます。

どの検査方法をなすべきかについて、医師の判断を仰ぎましょう。

可動域検査

関節の動く範囲(可動域)が制限されている場合の検査です。

対象となる関節の典型例ですが、上肢であれば肩関節、肘関節、手関節、下肢であれば股関節、膝関節、足関節などの三大関節の他、手足の指の関節なども対象になることがあります。

後遺障害等級に該当するかどうかは、患側(障害のある体側)と健側(障害のない体側)の可動域を比較して判断されます。患側の可動域(=角度)が健側の可動域の1/2以下とか3/4以下といった基準で等級の有無が評価されます。

まれに患側の可動域しか書かれていない後遺障害診断書を見ますが、それでは後遺障害の等級に該当するのか判断がつきませんので、注意しましょう。

神経生理学検査

神経生理学検査は、専用の機械を使って痛みの原因を探る検査です。

神経や筋肉に人為的に電気刺激を与え、その刺激に対する反応を測定したりするものです。針筋電図、神経伝導検査、誘発電位検査などの検査があります。

これにより、画像検査では見えないような細かな神経の障害が判ることがあります。

本来、検査は、症状の原因を探り治療に役立てるためのものです。後遺障害等級認定のために検査するというのは、医師からしてみると検査の本来の目的からは外れるのかもしれません。そのため、「痛みの原因は推測できるのだから、検査する必要はない」等という考え方の医師もいらっしゃいます。

しかし、検査結果により症状が医学的に裏付けられている否かは、後遺障害等級認定の結論に影響することがありますので、検査をして欲しいと医師に相談してみてください。医師にどう相談すればよいかお悩みの場合には、弁護士にご相談ください。

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
監修:弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長
保有資格
弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。