数次相続とは?相続手続きと注意点

相続問題

数次相続とは?相続手続きと注意点

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕

監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士

どなたかが亡くなった後、遺産をどう分けるのか決めずに長期間経ってしまい、一つの不動産の持ち主が何十人もいる状態になってしまった……といった話を聞いたことはありませんか。

このような状況は、おそらく数次相続によって相続人の数が増えてしまったケースです。

数次相続がどのようなものかを解説します。

数次相続とは

数次相続とは、誰かが亡くなって相続が始まった後、遺産の分け方を決めないうちに、相続人が亡くなってしまい、また次の相続が始まってしまっていることをいいます。

数次相続の具体例

数次相続の具体例としては、以下のようなものがあります。

まず、おじいさんが亡くなりました。

その次に、おじいさんの娘さんが亡くなりました。

その次に、おじいさんの娘さんの夫が亡くなりました。

その次に、おじいさんの娘さんの夫の妹が亡くなりました。

このような例では、相続人になる可能性がある人がとてもたくさん増えてしまいます。

上記の例では、おばあさん、おじいさんの他の子ども、おじいさんの娘さんの兄弟、おじいさんの娘さんの夫の兄弟、おじいさんの娘さんの夫の妹の子どもなど、多くの人が相続人になる可能性があります。

数次相続はどこまで連鎖する?

数次相続は、相続人が亡くなればまた発生してしまいます。

そのため、数次相続には終わりがなく、無限に広がっていく可能性があります。

数次相続を解決するには、基本的には、相続人全員の合意が必要です。

しかし一度相続人の数が増えてしまうと、合意を行うのが更に難しくなってしまい、なかなか解消できないことがあります。

代襲相続と数次相続の違い

数次相続と混乱されやすいものに、代襲相続があります。

代襲相続は、亡くなった方の法定相続人となるはずの人が、今回の相続が始まる前に亡くなってしまっていた場合に発生するものです。

つまり、おじいさんが亡くなるよりも前に、おじいさんの娘さんが亡くなっていたような場合を言います。

相次相続と数次相続の違い

代襲相続によって相続が出来るのは、亡くなった方の直系卑属(孫やひ孫など)か、亡くなった方の兄弟の子ども(甥・姪)のみです。

このように、代襲相続の範囲は限られていますから、代襲相続が起こったとしても相続人が無尽蔵に増えていくことはあまりありません。

数次相続の場合の相続手続き

数次相続が発生し相続人が増えてしまった後は、どのように解決していくのか、ご説明します。

相続人を確定させる

まずは、誰が相続人なのか、はっきりさせる必要があります。

法定相続人は、亡くなった方と戸籍上のつながりがありますので、戸籍を辿ることによって、全ての相続人を見つける必要があります。

遺産分割協議を行う

全ての相続人の間で協議を行い、誰がどの財産を取得するのか、協議を行います。

亡くなった方からあまりにも遠い身分の方の場合、相続放棄、つまり財産を放棄してくれることがあります。

遺産分割協議書を作成する

協議の中で遺産の分け方が決まったら、どのように分けるのか記載した書面を作成します。

相続人全員が合意していることを証明するため、全員の署名と押印をもらうのが安全です。

署名や押印をした人は、書面の写しをもらっておくと、後から内容を確認できます。

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数次相続における登記手続き

所有権が移転した時には、原則、毎回個別に登記の申請を行って所有権が移転したことを登記する必要があります。

しかし、全ての数次相続について個別に登記を行うには、気が遠くなるような回数の登記申請手続きを行わなければならないことがあります。

たとえば、最終的に一人が不動産の持分全てを取得するような場合では、それまでの多数の登記手続きを行わなくても良いと判断されたケースがあります。

数次相続において相続放棄する場合

相続放棄に関しては、一般的な相続と同様に行うことができます。

管理していない財産については、相続放棄してしまえば、それ以上関わることなく過ごせることが多いので、少額しかもらえない相続人は、遺産がもらえることよりも手間を減らすことを選び、相続放棄を選ぶことがあります。

数次相続の注意点

数次相続に関して、勘違いしやすい点についてご説明します。

基礎控除額に変更なし

「相続人が多いと基礎控除額が増える」と認識している方もいますが、必ずしもそうとは言えません。

特に、数次相続の場合は、相続人の数が非常に多く見えるので、基礎控除額がたくさん増えると勘違いしやすいです。

しかし、数次相続は複数の相続が連続して起こったものであって、1つ1つの相続の規模自体が大きくなるわけではありません。

そのため、基礎控除額に変更はありません。

相続税の申告と納税義務が引き継がれる

相続人には、相続税の申告義務、及び納税義務が発生します。

このことは、亡くなった方から遠い身分の方が相続した場合でも、変わりありません。

相続税を申告しなかった場合にはペナルティーがありますので、気を付けましょう。

相続税の申告期限は延長になる

原則、相続税の申告は相続が開始した日の翌日から10ヶ月以内に行う義務があります。

しかし、数次相続が発生したことによって新しく相続人になった人の申告期限は、その人が直接相続する人の死亡日翌日から10ヶ月以内にまで、延長されます。

相次相続控除が受けられる

最初にどなかたが亡くなって相続が開始してから10年以内に数次相続が発生した場合には、相続税が一定程度減らされます。

相続を繰り返すと、財産はどんどん目減りしていまいます。

10年以内の相続の場合にも相続税を満額払わなければならないのは相続人にとって酷だということで、このような制度が存在します。

数次相続は複雑なので弁護士にご相談ください

数次相続が発生すると、相続人の数が増えてしまいます。

しかも、一度数次相続が発生すると、協議すべき相続人が増えたことにより、次の数次相続が発生しやすくなってしまいます。

数次相続の連鎖を止めるために、なるべく早く遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する必要があります。

弁護士であれば、お客様の戸籍を取得し、相続人を辿っていくことが可能です。

複雑な数次相続が起きてしまった場合には、ぜひ、弁護士へご相談ください。

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
監修:弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長
保有資格
弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
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