監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
被相続人が亡くなり、その遺産の分割方法について話し合いがつかない場合には家庭裁判所の遺産分割調停手続きを利用することができます。以下では、遺産分割調停手続きをご説明します。
目次
遺産分割調停とは
遺産分割調停は、家庭裁判所の調停手続きを利用して、遺産を相続人間で具体的に分けることを目的とする調停です。
遺産分割調停の流れ
遺産分割調停の流れを解説します。
必要書類を集める
被相続人の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本及び相続人全員の住民票等を役所で取得します。
相続人全員の住所が必要なことに注意が必要
遺産分割調停は、相続人のうちの1人もしくは何人かが他の相続人全員を相手方として申し立てるものであり、相続人全員が確定している必要があり、住所不明の人がいる場合は、家庭裁判所では受理されません。
未成年・認知症の相続人がいる場合は代理人が必要
相続人の中に未成年者や認知症の方がいる場合には、その人の代わりに調停に出席する代理人を立てる必要があります。
管轄の家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる
相手方として調停を申し立てられた人のうちの一人の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者間で合意した家庭裁判所が管轄権を有します。申立書一式は郵送でも、家庭裁判所の受付窓口に直接提出しても受け付けてもらえることができます。
申し立てにかかる費用
被相続人1人につき収入印紙1200円分が必要です。その他連絡用の郵便切手代がかかります。
2週間程度で家庭裁判所から呼出状が届く
申立人が作成した遺産分割調停の申立書に問題がなければ、申立書と期日呼び出し状が相手方とされた相続人(ら)に届きます。
調停での話し合い
当事者は原則として1人ずつ交互に調停室に入り、調停委員に自分の言い分を伝えます。調停では、1人でも反対する人がいると調停は成立しないので、第2回、第3回…と期日が指定され、調停が進められます。
調停成立
調停で当事者間で話し合いがまとまれば調停は成立し、裁判所で調停調書が作成されます。調停調書は債務名義の一種とされ、調書の内容に従わない当事者に対し、強制的に執行することが可能になります。
成立しなければ審判に移行する
調停で話し合いがまとまらずに不成立となった場合には、自動的に審判手続きに移行します。
調停不成立と判断されるタイミング
調停では、回数制限はありません。しかしながら、調停期日を何回も重ね、合意ができる目処が立たなくなると、調停委員会が不成立の判断をすることがあります。
遺産分割調停にかかる期間
調停は1~2ヶ月に1回のペースで開かれ、半年から1年程度かかります。双方約30分ずつ交代で2回ほど調停室内に入るので、1回の調停手続期日にかかる時間は、おおむね2時間程度です。
遺産分割調停のメリット
遺産分割調停手続きのメリットを説明します。
冷静に話合いを行うことができる
当事者間で対立があっても、調停手続きの最中は相手方と顔を合わせることがなく、調停委員から相手方の主張や返答を伝えられるので、冷静に話し合いを行うことができます。
遺産分割を進めることができる
仮に調停手続きが不成立となった場合でも、審判手続きに自動的に移行し、裁判官が判断してくれるので、最終的に解決することができます。
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遺産分割調停のデメリット
遺産分割調停のデメリットを説明します。
希望通りの結果になるとは限らない
あくまでも調停手続きは話し合いで決着するための手続きですので、必ずしも当事者の希望通りの結果になるとは限りません。
長期化する恐れがある
話し合いという性質上、決着がつくまでに長い時間を要します。
基本的に法定相続分の主張しかできない
被相続人の遺産について、基本的に法定相続分に従って分割されることになるので、当事者は法定相続分の主張しかできません。
遺産分割調停で取り扱えないもの
使途不明金、葬儀費用、祭祀承継、扶養や介護の問題及び遺言書の効力といった問題は、本来の遺産分割の問題ではないため、話し合いの目処がつかないのであれば、遺産分割調停とは別に申し立てる必要があります。
遺産分割調停を欠席したい場合
調停は平日行われ、土日祝日は開催されません。都合がつかない方は、弁護士に依頼して、代わりに調停手続きに行ってもらう必要があります。
遺産分割調停の呼び出しを無視する相続人がいる場合
遺産分割調停の呼び出しに応じない相続人がいた場合、調停手続きは不成立になりますが、審判手続きでは裁判官によって当事者の出席の有無を問わず、判断がなされることになります。
遺産分割調停は弁護士にお任せください
遺産分割調停は、内容や手続きが専門的で、ご自身での対応が難しいため、弁護士にご依頼することをお勧めします。
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- 保有資格
- 弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)