遺留分侵害額請求に期限はある?時効を止める方法も詳しく解説

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遺留分侵害額請求に期限はある?時効を止める方法も詳しく解説

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕

監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士

被相続人が遺言書に「遺産はすべて甲に相続させる」などといった記載をしていると、相続人は何も遺産を相続することができないのでしょうか。このような場合、相続人は遺留分侵害額請求という手段により、被相続人の遺産をすべて遺贈された甲に対して遺留分を請求することができます。
ただし、遺留分の行使には「時効」があります。以下、遺留分の期限について詳しくみていきましょう。

遺留分はいつまで請求できる?期限はあるのか?

遺留分とは、一定の相続人に法律上確保されている最低限の経済的利益のことです。
遺留分を請求できる相続人は「兄弟姉妹以外の相続人」で、具体的には配偶者や子、親が想定されています。
遺留分侵害額請求は、遺留分を有する相続人が相続の開始と遺留分があることを知った時から1年、または相続開始の時から10年が経過すると遺留分を請求することができなくなってしまいます。

①遺留分があることを知った時から1年(時効)

遺留分侵害額請求権は、「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時」で時効により消滅します。
生前贈与は相続開始前の1年間にしたものが遺留分の対象になりますが、相続に対する生前贈与の場合には相続開始の10年間は遺留分の対象になります。他方、遺贈の場合には、遺留分を侵害するものは遺留分の対象になります。

時効はいつからカウントされる?起算点について

「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時」とは、相続の開始と贈与又は遺贈があったことを知ったことに加えて、その贈与や遺贈が自らの遺留分を侵害することを具体的に認識したこととされています。
しかし、その認識の程度にはある程度抽象的なものでもよいと考えられることもあるので、基本的には相続が開始された後1年以内に遺留分侵害額請求権を行使することが安全と言えます。

②相続開始から10年(除斥期間)

「相続開始の時から十年を経過したとき」に遺留分侵害額請求はできなくなります。
すなわち、遺留分が遺贈や贈与により侵害されていることを知らなくても、相続が開始してから10年が経過すると、遺留分侵害額請求が時効にかかり行使することができなくなるということです。

遺留分侵害額請求権の時効を止める方法

遺留分侵害額請求が時効により行使できなくなる前に、遺留分侵害額の請求をするという意思表示をしましょう。意思表示とはいっても、具体的にどのように行うかについてその方法を解説します。

相手方に内容証明郵便を送る

相手方に遺留分請求の意思表示をするにあたっては、「配達証明付きの内容証明郵便」で行うのが安全です。
遺留分侵害額請求を口頭で伝えるのみで書面で残さずにいると、「言った、言わない」といった紛争が生じることがあり、内容証明であれば郵便局がどのような内容かについて証明してくれます。また、配達証明であれば郵便局が相手に届いたことを証明してくれます。

内容証明郵便に記載する事項

内容証明郵便を利用する場合には以下の事項を記載するのが一般的です。

  • 遺留分を請求する人の氏名
  • 請求相手の氏名
  • 被相続人についての情報
  • 遺留分を侵害している贈与や遺贈についての情報
  • どの遺産について遺留分侵害額請求を行うか
  • 請求の日時

以上の事項等を記載するのが一般的ですが、具体的にどのように記載すべきか、自分で作成したもので本当に遺留分侵害額請求の意思表示として妥当なのかといったご不安があれば、一度弁護士に相談してみるとよいと思います。

遺留分を請求した後の時効にも要注意!

内容証明郵便で遺留分侵害額請求権を行使する旨の意思表示をしたことで安心してはいけません。
遺留分侵害額請求の意思表示をすると、遺留分侵害額に相当する金銭債権が生じることになります。
この金銭債権は遺留分侵害額請求権とは別に消滅時効にかかります。具体的には、意思表示をした時から5年です。
なお、民法改正の影響により、意思表示をしたのが2020年4月1日より前か後かによって、消滅時効期間が異なるので注意が必要です。

金銭債権の時効を止める方法はある?

遺留分侵害額請求の意思表示をしたのちに相手が金銭を支払わないような場合には、調停や裁判と言った法的手続を行うことが望ましいといえます。相手が金銭債権を支払うことを認めたような場合には、時効が更新されることもありますが、金銭を回収するためにも法的手続に進む方が得策といえます。

遺言や遺贈の無効についても争う場合の注意点

遺留分が問題となるような場合には、そもそも遺言の効力自体を争いたいと考えている相続人の方も多くいらっしゃいます。このような場合には、遺言について無効であると主張するのに加えて、予備的に遺留分侵害額請求も行使することが安全です。というのも、遺言の効力を争っているうちに、遺留分侵害額請求権についての時効が進行してしまうことになるためです。そのため、遺言の効力を無効とすることができればいいですが、そうでない場合に遺留分侵害額請求までもできなくなる可能性をつぶしておく必要があるのです。

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遺留分の期限に関するQ&A

遺留分は放棄できますか?また、放棄するのに期限はありますか?

遺留分の放棄は、特に制限がなく、相続開始の前後を問わずに放棄することができます。 ただ、相続が開始する前に遺留分を放棄する際には、家庭裁判所の許可が必要となります。相続が開始した後は家庭裁判所の許可は不要です。

遺留分の時効が迫っているのですが、相手が請求に応じない場合はどうしたらいいですか?

早急に遺留分侵害額請求権を行使することの意思表示を行い、遺留分侵害額請求権の行使によって発生した金銭債権について訴訟や調停等でその支払いを求めるべきといえます。

調停や裁判を起こすことで、遺留分の期間制限を止めることはできますか?

遺留分侵害額請求の調停や裁判を起こすと、その手続が終了するまでは時効が完成しなくなります。訴訟の場合には確定判決がでるまでの間は時効期間が満了しなくなるわけです。

遺留分の請求には時効があります。なるべく早めに弁護士にご相談下さい。

ここまでみてきたように、遺留分侵害額請求には時効期間があり、その期間は必ずしも長いものではありません。また、遺留分侵害額請求権の行使やその金銭の回収には適切な知識と経験が必要になる部分が多くあります。
遺留分を請求したい、遺留分の期間について不安があると考えられている方はぜひ弁護士に相談することをお勧めします。

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
監修:弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長
保有資格
弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。