別居中の親権への影響

離婚問題

別居中の親権への影響

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕

監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士

離婚をする際には、子供の親権者を父母のいずれかに決めなければなりません。離婚を目指して、別居に踏み切る場合に注意すべき点を以下でご説明します。

子供を連れて別居した場合の親権への影響は?

子供を連れて別居をした場合としない場合で、離婚後に親権者となることに、どのような違いをもたらすのかご説明します。

子供を連れて別居した方が親権獲得に有利?

父母のいずれが親権者にふさわしいか判断するポイントの一つに、継続性があります。子供の安定した生活環境を守ることが、子供の利益になると考えられ、別居後の監護状況が重視されることによって、別居中に子供と同居していた親が有利となり得ます。

子供を勝手に連れて別居した場合

夫婦間で話し合うことができたにもかかわらず、一方に内緒で子供を連れ去った場合には、親権者争いで不利になることがあります。その場合、子供を取り戻される可能性もあります。

監護者指定について

子供の両親が婚姻している場合は、子供は共同親権に服します。しかしながら、現実に別居しているときは、いずれか一方に監護されることになり、監護者をいずれにするか、当事者の協議、調停又は審判によって決まることになります。
また、監護者の監護権とは、離婚後の親権から財産管理権を除いた子供を監護し育てる権利と義務を意味し、①子供が身分行為を行う際の同意権・代理権②子供の居所を指定する居所指定権③子供をしつける懲戒権④子供が職業を営む際の職業許可権のことです。

別居中の面会交流について

子供と別居中の監護していない親との面会交流に対する裁判所の立場は、子供の健全な成長に重要な意義があるため、面会交流を実施すること自体が子の福祉を害する特段の事情がない限り実施すべきという立場です。そこで、監護親が面会交流に対して寛容であることも親権を認める重要な要素として考えられています。

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子連れ別居は実家に行くことで親権獲得に有利になることも

子供を連れて別居する場合に、専業主婦や正社員でない母親が住居を借りることは現実的に困難です。しかし、実家に戻ることで、親族等の監護の協力が得られ、そのことが親権獲得に有利に働くことになります。

住民票の異動

別居をする際に、住民票を移動させた方が良いかどうか悩まれると思います。離婚の意思が固いのであれば、住民票を移すことで、別居状態になっていることを客観的に証明する証拠になりますし、転入先の自治体で児童手当を受給でき、小中学校・高校や保育園・幼稚園への編入が容易になります。
しかし、配偶者は役所に照会することで転居先を突き止めることができてしまうことから、別居の原因が配偶者のDVの方は、「DV等支援対象者」となることで、居場所を知られない措置を施すことが必要です。

親権者となるための条件

親権者をどちらにするか判断する場合の考慮要素として、監護能力(年齢・性格・教養・健康状態等)、精神的・経済的家庭環境(資産・収入・職業・住居・生活態度等)、居住環境、教育環境、子供に対する愛情の程度、これまでの監護状況、実家の資産、親族の援助の可能性等があります。別居先で、監護環境が安定して、子供達がその状況に適応している場合には、その環境を維持する方向で、判断されることにつながります。

よくある質問

母親が子供を置いて別居した場合、父親が親権を取れるのでしょうか?

夫婦のどちらが親権者になるのが子供の福祉に資するのかという観点から判断され、子供の年齢によりますが、子供が幼少期のころは、母性的な役割を持つ母親が親権者としてふさわしいと判断されやすいです。

高校生の子供と一緒に別居した場合は子供が親権者を選ぶことができますか?

子供の意思・意向も尊重されなければならず、15歳以上であれば、子供の意思の聴取が必ずなされます。ただ、15歳未満であっても、おおむね10歳前後以上であれば、意思を表明できるとして、その意思が確認されています。

母親が子供を連れて別居しても親権者争いで負けることはありますか?

従前の監護が父親によってなされていた家庭においては、その父親と子供を引き離すことは子供にとって、良いことではなく、子供の福祉のためになりません。そのような場合には、母親が親権者としてふさわしくないと判断され、親権者争いで負けることもあります。

別居後の親権についての不安は一人で悩まず弁護士へご相談ください。

別居した後、子供の親権者となるためにすべきことはそれぞれのご家庭ごとに異なります。それぞれのご家庭に合わせたアドバイスをお聞きになりたい場合には、是非、一度弁護士にご相談ください。

埼玉法律事務所 所長 弁護士 辻 正裕
監修:弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長
保有資格
弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
埼玉弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。