監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
交通事故の示談交渉では、相手方の保険会社から「過失割合は80対20です」といった提示を受けることがよくあります。
過失割合は受け取る賠償金の額に直結するため、提示された数字をそのまま受け入れてよいかは慎重に判断する必要があります。
本記事では、過失割合を誰が決めるのか、どのような基準で決まるのか、納得できない場合にどうすればよいのかを解説します。
交通事故の過失割合を決めるのは誰?
過失割合を最終的に決めるのは裁判所です。
民法722条2項は「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」と定めています。
過失相殺をするかどうか、どの程度の割合とするかは、裁判所の判断に委ねられています。
もっとも、多くの事故は訴訟に至らず示談で解決します。
示談の段階では、当事者(実際には保険会社であることが多い)が話し合い、合意によって過失割合が決まります。
なお、警察は実況見分調書などで事故状況を記録しますが、過失割合を決めてくれるわけではありません。
過失割合はどのように決まる?
過失割合は事故ごとの具体的な状況に応じて判断されます。
実務では、過去の裁判例をもとに事故の類型ごとの目安を整理した基準が用いられています。代表的なものが、『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準〔全訂6版〕』(別冊判例タイムズ39号)です。
保険会社との示談交渉でも裁判でも、この基準をもとに、①基本過失割合を確認し、②修正要素を加味する、という2段階で検討するのが一般的です。
まずは基本過失割合を確認する
基本過失割合とは、事故の類型ごとに定められた、出発点となる過失割合です。
認定基準は、歩行者と車両の事故、四輪車同士の事故、自転車が関係する事故などに大きく分かれています。
さらに、交差点かどうか、信号機の有無と信号の色、道路の幅や優先関係、一時停止の規制の有無などの事情ごとに、図とともに基本過失割合が示されています。
例えば、信号待ちで停車中の車に後続車が追突した事故では、追突された側に落ち度がないのが通常です。そのため、基本過失割合は追突車100:被追突車0とされます。
認定基準に載っていない態様の事故は、道路交通法などの交通ルールに立ち返り、個別の事情に即して判断されます。どの類型に当てはまるかの判断を誤ると、その後の検討がすべてずれてしまうため、最初の確認が重要です。
過失割合の修正要素を考慮する
基本過失割合を確認したら、次に、その事故に特有の事情(修正要素)を考慮して割合を加算・減算します。主な修正要素は次のとおりです。
- 場所・時間帯:夜間、幹線道路、住宅街・商店街など
- 被害者の属性:歩行者が児童、高齢者である場合など
- その他:合図(ウインカー)を出さなかった、理由なく急ブレーキをかけた、など
修正の幅も類型ごとに示されています。
ただし、修正要素に当たる事実があったかどうかは、相手方と主張が食い違いやすい点です。
ドライブレコーダーの映像や実況見分調書など、客観的な資料で事実を裏付けることが重要になります。
まずは交通事故事件専属のスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
過失割合に納得できない!決まった過失割合は修正できないの?
保険会社が提示する過失割合は、その保険会社の見解であり、確定したものではありません。示談書に署名する前であれば、事故状況を裏付ける資料を示して修正を求めることができます。
有力な資料としては、ドライブレコーダーや防犯カメラの映像、目撃者の証言、実況見分調書などの刑事記録があります。
話合いで折り合いがつかない場合は、訴訟で判断を求めることも可能です。
一方、いったん示談が成立すると、後から過失割合だけを争うことは原則としてできません。署名前に十分に検討する必要があります。
過失割合を修正した事例
【事例】信号の色に争いがあった交差点事故で、過失割合0:100が認められた事例
ご依頼者様と相手方のどちらも、自分の側の信号が青だったと主張していた事故です。
言い分が食い違っていたため、相手方保険会社は過失割合を判断できないとして、治療費の支払にも応じていませんでした。
弁護士は、実況見分の際に相手方が信号の見落としを認めていたことをご依頼者様から聞き取りました。
これを相手方保険会社に伝え、相手方本人への確認を繰り返し求めた結果、ご依頼者様0:相手方100の過失割合が認められました。
まずは弁護士にご相談ください
過失割合が1割違うだけでも、受け取る賠償金の額は大きく変わります。
例えば損害額が1000万円の場合、過失割合が1割変われば、賠償額も100万円変わります。保険会社は示談交渉に慣れていますが、その提示が被害者にとって適切なものとは限りません。
弁護士に依頼すれば、事故状況に関する資料を集めて分析し、認定基準や裁判例に照らして適切な過失割合を主張することができます。
保険会社とのやり取りを弁護士に任せられるため、精神的な負担の軽減にもつながります。
ご加入の自動車保険に弁護士費用特約が付いていれば、費用の負担を抑えて依頼できる場合があります。
過失割合に疑問を感じたら、示談書に署名する前に、まずは弁護士にご相談ください。

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- 保有資格
- 弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
