監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
サンキュー事故とは、渋滞中などに直進車から道を譲られた右折車が、好意に甘えて進行した結果、直進車の陰から来たバイクなどと衝突する事故をいいます。
道を譲られたことで焦りや気のゆるみが生じ、安全確認がおろそかになることが主な原因です。譲られても他の車両すべてに優先するわけではなく、かえって事故が起きやすい場面といえます。
本記事では、サンキュー事故の過失割合や請求できる慰謝料、過失割合に納得できないときの対処法について分かりやすく解説します。
目次
サンキュー事故とは
サンキュー事故とは、優先車両である直進車が、非優先車両である右折車に道を譲ったことをきっかけに発生する事故です。
直進車から合図を受けて右折したところ、その陰や別方向から進行してきた車・バイクと衝突するという形で起こります。
譲った側と譲られた側では意思疎通ができていても、その状況を知らない第三者の車両が関わるため、確認不足から事故につながりやすいのが特徴です。
焦りや気のゆるみが生じやすく、過失割合の判断も複雑になりやすい類型といえます。
サンキュー事故の過失割合
車と車の事故
信号機のある交差点での事故
信号機のある交差点での自動車同士の事故では、信号の色が過失割合を決める最大の要素です。
道路交通法37条は、右折車について「当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない」と定めており、双方が青信号なら右折車側の過失が大きく評価され、基本の過失割合は直進車20対右折車80です。
直進車が黄信号や赤信号で進入していた場合には、直進車側の過失も加算される方向に修正されます。
| 信号の状況 | 直進車(A) | 右折車(B) |
|---|---|---|
| 直進車・右折車ともに青信号 | 20 | 80 |
| 直進車:黄信号で進入 | 70 | 30 |
| 直進車・右折車ともに黄信号 | 40 | 60 |
| 直進車・右折車ともに赤信号 | 50 | 50 |
| 直進車:赤信号で進入 右折車:青信号で進入→右折時に赤信号 |
90 | 10 |
| 直進車:赤信号で進入 右折車:黄信号で進入→右折時に赤信号 |
70 | 30 |
| 直進車:赤信号 右折車:右折青矢印信号 |
100 | 0 |
信号機のない交差点での事故
| 事故時の状況 | 直進車(A) | 右折車(B) |
|---|---|---|
| 右折車両と対向する直進車両が衝突したケース | 20 | 80 |
| 右折車両と左方からきた直進車両が衝突したケース | 30 | 70 |
| 右折車両と右方からきた直進車両が衝突したケース | 40 | 60 |
片方に一時停止義務がある場合の交差点での事故
| 事故時の状況 | 直進車(A) | 右折車(B) |
|---|---|---|
| 右方から自動車が右折 | 60 | 40 |
| 左方から自動車が右折 | 70 | 30 |
駐車場などからの進入時の事故
| 事故時の状況 | 直進車(A) | 右折車(B) |
|---|---|---|
| 右折車が路外から進入 | 20 | 80 |
車とバイクとの事故
信号機のある交差点での事故
信号機のある交差点で、直進するバイクと右折する自動車が衝突したサンキュー事故では、右折車側の過失が大きく評価されるのが一般的です。
バイクは車体が小さく身体的なダメージも大きくなりやすいため、交通弱者保護の観点から、四輪車に比べてバイク側の過失は相対的に低く定められています。
双方が青信号でも、右折車は直進バイクの進行を妨げない注意義務を負うため、基本の過失割合はバイク15対右折車85です。
ただし信号の色や進入のタイミングによって割合は細かく変動します。
| 事故状況 | 直進バイク(A) | 右折車(B) |
|---|---|---|
| A・Bともに青信号 | 15 | 85 |
| A:黄信号 B:青信号で進入→黄信号で右折 |
60 | 40 |
| A・Bともに黄信号 | 30 | 70 |
| A・Bともに赤信号 | 40 | 60 |
| A:赤信号 B:青信号で進入→赤信号で右折 |
80 | 20 |
| A:赤信号 B:黄信号で進入→赤信号で右折 |
60 | 40 |
| A:赤信号 B:右折の青矢印信号 |
100 | 0 |
信号機のない交差点での事故
信号機のない交差点で直進バイクと右折車が衝突したサンキュー事故では、車とバイクが交錯するタイミングや、バイクの進入方向によって過失割合が変わります。
ここでも右折車には直進バイクの進行を妨げない注意義務が重く課されるため、右折車側の過失が大きくなる傾向にあります。
対向から直進してきた場合の基本の過失割合は、バイク15対右折車85です。
なお道路幅が広い側が優先されるため、バイクが広い道路を走行していた場合には、バイク側の過失はさらに小さくなります。
| 事故状況 | 直進バイク(A) | 右折車(B) |
|---|---|---|
| 対向から自動車が右折 | 15 | 85 |
| 左から自動車が右折 | 30 | 70 |
| 右から自動車が右折 | 20 | 80 |
片方に一時停止義務がある場合の交差点での事故
| 事故状況 | 直進バイク(A) | 右折車(B) |
|---|---|---|
| 対向から自動車が右折 | 15 | 85 |
| 左から自動車が右折 | 30 | 70 |
| 右から自動車が右折 | 20 | 80 |
| 事故状況 | 直進バイク(A) | 右折車(B) |
|---|---|---|
| 左から自動車が右折 | 15 | 85 |
| 右から自動車が右折 | 15 | 85 |
渋滞中の道路上での事故(バイクのすり抜け)
渋滞中、停止した車列の脇をすり抜けるバイクが、道を譲られて右折した自動車と接触する事故です。
基本的には右折車側の過失が大きく評価されますが、バイクのすり抜け方が危険だった場合には、バイク側の過失が加算されることもあります。
| 事故状況 | 直進バイク(A) | 右折車(B) |
|---|---|---|
| 交差点内で衝突 | 30 | 70 |
| 交差点以外の場所で衝突 | 20~25 | 75~80 |
まずは交通事故事件専属のスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
過失割合の修正要素
サンキュー事故に特有の修正要素はありませんが、一般的な交差点事故と同様に、右折車の合図がないことや徐行不足、直進車の速度超過といった事情に応じて、基本の過失割合が加算・減算されます。
下記が代表的な修正要素です。
| 右折車の徐行なし | 右折車に+10% |
|---|---|
| 右折車の直近右折 | 右折車に+10% |
| 右折車の早回り・大回り右折 | 右折車に+5% |
| 右折車の合図なし | 右折車に+5~15% |
| 右折車の右折禁止違反 | 右折車に+10% |
| 右折車の著しい過失・重過失 | 右折車に+10~20% |
| 右折車の既右折 | 直進車に+10~20% |
| 直進車の著しい過失・重過失 | 直進車に+10~20% |
| 直進車の速度違反(15㎞以上/30㎞以上) | 直進車に+5~20% |
| 路外車が頭を出して待機 | 直進車に+10% |
|---|---|
| 直進車の著しい過失 | 直進車に+10% |
| 直進車の重過失 | 直進車に+20% |
| 路外車・右折車の徐行なし | 路外車・右折車に+10% |
| 幹線道路 | 路外車・右折車に+5% |
| 直進車の速度違反(15㎞以上/30㎞以上) | 直進車に+10~20% |
| バイクの著しい前方不注意 | バイクに+10~20% |
|---|---|
| バイクの著しい過失・重過失 | バイクに+20% |
サンキュー事故で請求できる慰謝料
サンキュー事故で請求できる慰謝料は、通常の交通事故と変わりません。
怪我の治療期間に応じた入通院慰謝料、後遺障害が残った場合の後遺障害慰謝料、被害者が亡くなった場合の死亡慰謝料を請求できます。
慰謝料の算定には自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つがあり、どの基準によるかで金額は大きく変わります。
最も高額になりやすいのは過去の裁判例に基づく弁護士基準ですが、弁護士が交渉に介入しなければ、その水準が認められることはほとんどありません。
過失割合に納得いかない場合の対処法
保険会社から提示された過失割合に納得できない場合は、修正要素や過去の裁判例をもとに交渉していくことが大切です。
過失割合は保険会社から示されるのが通常ですが、支払額を抑えるために被害者の過失を多めに見積もっていることもあり、そのまま受け入れると本来受け取れるはずの賠償金が減ってしまうおそれがあります。
過失割合は事故状況の評価によって大きく変わるため、交通事故に詳しい弁護士へ相談することが、適正な割合に修正するための最も確実な対処法といえます。
交通事故の過失割合に納得がいかない場合の対処法についてサンキュー事故の被害に遭った際は、弁護士にご相談ください
サンキュー事故は、過失割合の判断で争いが生じやすく、保険会社との交渉が長期化する傾向があります。
相手方の保険会社は被害者の味方ではなく、自社の支払いを抑えるために被害者へ多めの過失割合を付けてくることもあります。適正な補償を受けるためには、交渉のポイントを理解した弁護士の介入が大きな力になります。
弁護士法人ALGには、過失割合などをめぐり保険会社と交渉した経験豊富な弁護士が多数在籍しております。少しでも不安を感じられた際は、どうぞお早めにご相談ください。

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- 保有資格
- 弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
