監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
交通事故に遭い、示談交渉などを依頼した弁護士に対して「本当にこのままで大丈夫だろうか」と不安を感じる方もいるかもしれません。
弁護士との相性の問題や対応への不満などから、弁護士の変更を検討することは決して珍しいことではありません。
交通事故の弁護士はいつでも変更することが可能です。
この記事では、弁護士を変更する方法から、変更を検討すべきケース、さらには弁護士を変更することのデメリットや注意点まで、知っておくべき情報を弁護士の視点から詳しく解説します。
目次
交通事故の弁護士は変更できる!セカンドオピニオンの重要性
依頼した弁護士と委任契約を結んだ後でもその弁護士を解任し、別の弁護士に依頼し直すことが可能です。
弁護士を新しく変更する際に重要なのが「セカンドオピニオン」の活用です。
セカンドオピニオンとは、現在依頼している弁護士以外の別の弁護士に相談し、意見を聞くことを指します。
特に、現在の弁護士の提示する示談金額や解決方針に納得がいかない場合、別の専門家の意見を行くことで、より有利な解決方法が見つかる可能性があります。
変更を迷っている場合にはまず、別の弁護士に相談してみることが大切です。
法テラスや交通事故紛争処理センターを利用している場合は注意が必要
法テラスの民事法律扶助制度を利用している場合、原則として弁護士の変更はできません。
但し、弁護士側に著しい不適切な行為は職務懈怠などのやむを得ない事由がある場合には、変更が認められるケースがあります。
また、交通事故紛争処理センターを利用している場合も、一度手続を開始すると弁護士を変更することが難しい場合があるため、事前にセンターに確認が必要です。
弁護士の変更を検討したほうが良いケース
弁護士を変更すべきか検討した方がよいのは、以下のようなケースです。
相性が良くない
弁護士との相性が良くないと感じることは、弁護士変更を検討する大きな理由の一つです。
例えば、「高圧的な態度で話を聞いてもらえない。」、「専門用語ばかりで説明が理解できない」、「なんとなく威圧感があって相談しにくい」といった場合です。
弁護士と依頼者の関係は、二人三脚でトラブル解決を目指す信頼関係が非常に重要です。
弁護士に聞きたいことを聞けず、不満や疑問を抱えたまま手続を進めてしまうと、公開の残る結果につながりかねません。
安心してすべてを任せられる弁護士に依頼しなおすことが双方にとって良いこととなります。
解決の方向性が合わない
弁護士から提示された解決の方向性や見通しが、依頼者の希望と大きく食い違う場合も変更を検討するべきケースです。
例えば、依頼者が徹底的な裁判での争いを望んでいるのに、弁護士が安易に和解を勧めてくるようなケースです。また、弁護士が提案した賠償金の金額が低いと感じる場合や、過失割合などの重要な争点について、弁護士の主張に納得がいかない場合も同様です。
別の弁護士にセカンドオピニオンを求め、より良い解決策がないか検討してみましょう。
対応が遅い、連絡が取りにくい
弁護士の対応が遅い、又は、連絡が取りにくいと言ったケースも、依頼者の方にとっては大きなストレスになります。
特に交通事故の案件では、後遺障害の申請など、迅速な対応が求められる場面が多々あります。依頼者から問い合わせをしているのに何日も返事がない、資料の提出が毎回遅れる、といった状況が続くと、手続が滞り、依頼者の不利益につながる可能性もあります。
連絡が滞ることで、現状はどうなっているのか、対応が後回しにされているのではないかとのファンが増し、ストレスがかかってくることとなります。
しかしながら、相手側の返答が全く来ないなど弁護士の対応によってではなく、進行が遅れている可能性がありますので、一度現状を確認することも大切です。
弁護士に業務停止処分が下った
もし、依頼している弁護士が業務停止などの懲戒処分を受けた場合、その間は弁護士活動自体ができなくなるため、直ちに新しい弁護士を探す必要があります。
業務停止になった際には、一時弁護士との委任契約を解除することになりますが、業務停止期間が終了すると、再度契約することはできます。
しかしながら、その間は手続の進行が遅れることとなりますので、迅速な手続き進行を求める場合には、自分で新たに弁護士を探したうえで、依頼しなおすことが望ましいと言えます。
まずは交通事故事件専属のスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
弁護士を変更する方法
上記のような状況が起こり、弁護士の変更を考えた際には以下の手順で弁護士の変更を行うことが望ましいと言えます。
新しい弁護士を探して相談する
まずは、交通事故の案件に強い新しい弁護士を複数探し、無料相談などを活用してセカンドオピニオンを受けましょう。
相談をするときには、現在依頼している弁護士の対応への不満点や、これまでの経緯、現在の事件の状況などを詳細に説明します。そのうえで、「新たな弁護士に依頼した場合の見通し」や「弁護士費用」について、明確な説明を受けましょう。
新しい弁護士が過去の経緯をしっかり理解し、今後の見通しを具体的に示してくれるか、また、相性が良いかを慎重に見極めてから正式に依頼を決めましょう。
ここで、注意するべきなのは、弁護士を探している間に損害賠償請求の時効が成立してしまう恐れもあるので、弁護士が不在の状況ができないようにしていきましょう。
今依頼している弁護士に変更したい旨を伝える
新しい弁護士に依頼することを決めたら、現在依頼している弁護士に対して、委任契約を解除する旨を伝えましょう。伝え方は、書面などで通知することで正式な意思を残すことができますが、電話やメールなどでも問題ないです。
伝える際には、単に「変更したい」と伝えるだけでなく、委任契約の解除と預けている書類の返却、預かり金の清算などを同時に申し出るとよいです。
そうすることで、新しい弁護士への引きつきも円滑に進むこととなります。
(弁護士費用特約を利用している場合)保険会社にも弁護士を変更する旨を伝える
弁護士費用特約を利用して弁護士費用を支払っている場合には、契約している保険会社にも弁護士を変更する旨必ず伝えるようにしましょう。
弁護士費用特約を利用する場合、新しい弁護士に切り替える際にも、保険会社の承認が必要になることがあります。保険会社に事前に連絡をしないと、新しい弁護士の費用が特約で支払われないなどトラブルの原因になり得ます。
また、保険会社によっては、着手金などを1事故につき1回限り支払うとしているところもあるので事前に確認しておくことが必要となります。
新たな弁護士に着手金を支払う
新しい弁護士との間で委任契約を締結し、着手金を支払います。
着手金は、弁護士が事件に取り掛かる際に支払う費用になるので、事件の結果や途中で解約した場合にも返金されないのが原則です。
そのため、以前の弁護士に払った着手金は返金されずに新しい弁護士に着手金を支払う必要がありますので、契約前に新しい弁護士の料金体系や着手金の金額をしっかり確認することも大切です。
引継ぎをしてもらう
事件の新着状況や保険関連書類、証拠資料などについては、以前依頼していた弁護士と新しい弁護士との間で、引継ぎがなされることがほとんどです。
しかしながら、当然に引継ぎがなされているかは不明確なところもありますので、手続の進行をスムーズにすることや新たな弁護士において誤解が生じないようにすることから引き継ぎが確実に行われるように確認しておくとよいです。
新たな弁護士が対応を開始する
引継ぎが完了すると、新しい弁護士がすべての資料を確認し、事件の状況を把握することができるようになりますので、新しい弁護士によって、新たな交渉などが進行することになります。
新しい弁護士が依頼者の方の意向などを把握するために打合せを調して、より自身の意向や利益になる進行を新しい弁護士にお願いしていくこととなります。
弁護士を変更した場合のデメリット
上述のように弁護士を変更することはできますが、弁護士を変更することによって発生するデメリットもありますので、事前にそのデメリットを確認することが大切です。
着手金は返ってこない
上述のように、着手金は弁護士が事件に着手するための費用であり、契約解除や結果の如何に関わらず、返還されないことが一般的です。
そのため、新しい弁護士にも着手金を支払う必要があるので、費用負担が二重になってしまうことが最大のデメリットです。
また、着手金を以前の弁護士に支払っていない場合でも、文書送付費などかかった費用を請求されるおそれがあります。
そのため、弁護士を変更する際には費用がかさむ可能性があることを意識しておくことが必要になります。
完全成功報酬型でも解任までの費用は請求される
また、「完全報酬型」の契約である場合にも弁護士を解任するまでの間に発生した費用やタイムチャージ(時間制報酬)などの費用を請求される可能性があります。
具体的には、契約を解除する時点までに弁護士が費やした労力や手続費用(実費)について、契約内容に基づいて清算されることとなります。
なので、契約内容を確認しておくとよいです。
解約金が発生する可能性がある
委任契約書の内容によっては、解約金または違約金が発生する可能性があります。
特に、弁護士側には非がなく、依頼者の都合で一方的に解約する場合、弁護士側が被る損害を補填するために、一定の解約金を請求されるケースがあります。
新しい弁護士に依頼する前に、現在の弁護士との委任契約書を隅々まで確認し、解約に関する条項をチェックしておくとよいです。
弁護士変更にあたっての注意点
以下では、弁護士変更にあたって注意するべき点を挙げて行きます。
書類は全て返してもらう
弁護士との契約を解除する際は、自身の交通事故に関する全ての書類(診断書、事故証明書、保険会社の提示書類など)を、返却してもらうようにすることが望ましいです。
新しい弁護士が事件をスムーズに引き継ぎ、適切な主張を行うためには、これまでの経緯がわかる全ての資料が必要です。書類の返却を申し出ても、前の弁護士が応じない場合は、内容証明郵便などで正式に請求することも検討します。
弁護士費用特約を利用している場合は要確認
弁護士費用特約を利用していても、特約には利用上限額が設定されていることがほとんどです。
弁護士を変更した場合、以前の弁護士に支払った費用と新しい弁護士に支払う費用の合計額が、特約の上限額を超えてしまう可能性があります。
上限を超えた費用は自己負担となりますので、特約の上限額と、これまでに利用した金額、新しい弁護士の費用を事前に確認し、自己負担額を把握しておくことが非常に重要です。
特に、弁護士費用特約の場合には着手金の支払いの回数制限などが設定されていることもありますので、注意しておくことが大切です。
変更しても結果が変わらない場合もある
弁護士を変更しても、必ずしも結果(賠償額など)が大きく変わるわけではありません。
弁護士が交渉などをする際には実務上の相場や理論的な考え方を基に話をしていくこととなります。
特に、すでに示談が成立している場合や、症状固定の診断が下っている場合など、法的に事態が確定してしまっている状況では、弁護士の力量だけで結果を覆すことが難しいケースがあります。
その2つのケースについて、以下で詳しく見て行きます。
示談を締結してしまった場合
一度、保険会社と示談書を締結してしまうと、原則としてその示談の内容を覆すことは非常に困難になります。
示談は、当事者間の合意によって紛争を解決する契約であり、法的な拘束力を持ちます。
新しい弁護士に依頼しても、示談のやり直しは原則としてできません。
示談書に署名をする前に、必ず内容に納得しているかを再確認しましょう。
また、ご心配や疑問がある場合には依頼している弁護士に相談するか、又は、法律相談などで新たな弁護士に相談されるとよいです。
症状固定してしまった場合
症状固定とは、これ以上治療を続けても症状の改善が見込めないと医師が判断した状態を指します。
症状固定の診断が下されると、それ以降の治療費は原則として加害者側(保険会社)に請求できなくなります。また、症状固定時に残っている後遺症について、後遺障害の等級認定を受けることになります。
後遺障害の等級が低い、又は非該当となった場合、その認定結果を覆すのは容易ではありません。弁護士を変更しても、等級認定のやり直しや、既に切られた治療費の請求を覆すのは非常に難しいため、変更を検討する前に状況を確認しましょう。
まずは交通事故事件専属のスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
交通事故に強い弁護士の選び方
新しい弁護士を選ぶ際は、以下の3つのポイントを重視することで、有利な解決に導いてくれる可能性が高まります。
解決事例が豊富にある
交通事故の案件を数多く扱い、豊富な解決事例を持っている弁護士を選びましょう。
過去の解決事例は、その弁護士の実力と経験を示す最も明確な指標です。
特に、自身の事故状況と似たようなケースで高額な賠償金を獲得している事例があれば、あなたの事故でも成功に導いてくれる可能性が高いです。
弁護士事務所のウェブサイトなどで、実績をしっかり確認しましょう。
交通事故専門にやっている・専門の部署があるか
できる限り、交通事故の案件を専門に扱っている弁護士、または交通事故専門の部署を設けている法律事務所を選ぶとよいです。
交通事故案件は、損害賠償額の算定基準(自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準)や後遺障害の認定など、他の法律分野にはない専門的な知識とノウハウが必要です。
専門性の高い弁護士ほど、保険会社との交渉に強く、適正な賠償額(弁護士基準)での解決を目指すことができます。
医学知識があるか
交通事故案件においては、医学的な知識を持っているかどうかも、弁護士を選ぶ重要な基準になります。交通事故で怪我が発生した場合には、弁護士が怪我の内容等に詳しいことで治療期間の相当性等についても判断ができることとなります。
特に、後遺障害の等級認定を申請する際、診断書や医学的な資料を正確に理解し、法的な観点から説得力のある主張を展開するには、一定の医学知識が不可欠です。
医師との連携がある、または医学的な知見を活かして手続きを進められる弁護士は、等級認定を有利に進め、結果的に賠償額をアップさせる可能性を高めます。
交通事故は弁護士法人ALGにお任せください
弁護士法人ALGは、交通事故問題に特化した専門チームを設けており、これまで数多くの解決実績を積み重ねてきました。
依頼者様一人ひとりの状況を丁寧にヒアリングし、交通事故の専門的な知識と豊富な経験に基づき、最も有利な解決へと導きます。
現在の弁護士に不安がある方、提示された示談金額に納得がいかない方は、ぜひ一度、当法人にご相談ください。セカンドオピニオンとしての相談も積極的に受け付けております。
弁護士を変更すべきかどうかも含めて、最適なアドバイスをさせていただきます。

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- 保有資格
- 弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
