監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
離婚の手段としては、一般的に、⑴協議離婚、⑵調停離婚、⑶審判離婚、⑷裁判離婚があります。このうち、⑴協議離婚とは、当事者の合意のみによって離婚することができる手段です。もっとも、当事者の合意で(自由に)離婚が成立するため、注意すべき点もあります。
以下では、協議すべき事項や注意すべき事項について、解説していきます。
目次
協議離婚とは
協議離婚とは、当事者の合意のみによって自由に離婚を成立させることができる手段です。他方、一度決めたことを覆すことは困難です。また、自由であるからこそ、注意すべき点もあります。
協議離婚のメリット、デメリット
メリットについて
協議離婚とは、当事者の合意のみによって離婚を成立させることができます。そのため、当事者の状況に合わせて、自由に決めることができます。また、裁判所などの他の機関を使わず、関係者が当事者のみに留まるため、協議の機会や日程等の調整も容易となり、スピーディーに解決することが可能です。
デメリットについて
協議離婚は、当事者の合意によって離婚を成立させる手段です。そのため、当事者で協議できない場合や互譲できない場合には、時間だけが経過するのみで、何も決まらないという可能性もあります。特に、お互い感情的になってしまい建設的な協議が出来ない場合や親権などの子に関する事項が争点になる場合には、協議離婚が成立しない可能性が高いです。
協議離婚の流れや進め方
離婚を切り出し合意を得る
協議離婚とは、当事者の協議を前提にするため、感情的になることは避けるべきです。そして、口頭で離婚を切り出す場合、往々にして感情的になってしまう可能性が高くなります。
そこで、感情を抑えることができる手紙(書面)を使い、離婚の意思を伝える方法がよいと考えます。
離婚条件についての話し合い
離婚する際に協議すべき事項は、大きく分けて2つあります。
1つは、子に関する事項です。もう1つは、金銭に関する事項です。子に関する事項とは、親権、監護権、養育費、面会交流等です。金銭に関する事項とは、財産分与、慰謝料等です。離婚する際に必ず決めなければならない事項は、子の親権です。そのため、他の事項については、離婚後に協議することも可能ではあります。しかし、離婚後、相手方が協議に応じるか不明です。そこで、離婚する際、親権以外も決めておく方がよいと考えます。
話合いをメールで済ませることは可能?
離婚協議を電子メールで行うことは可能です。
メールの場合には、感情を抑えることもできますし、内容も保存されることから、後々の紛争防止にもつながります。
離婚協議書の作成
協議結果を口頭のみで済ませておくと、「そのような約束はした覚えはない。」と言われるなど、後日の紛争の種になってしまいます。そのため、協議結果を書面として保存する必要があり、その手段として公正証書があります。特に、協議結果を「強制執行認諾文言付き」の公正証書でまとめていた場合には、裁判手続きを経ることなく、強制執行することができます。
離婚届の提出
離婚をするためには、その届出が必要となります。具体的には、離婚届に必要事項を記載し、市区町村に離婚届を提出します。提出先としては、本籍地または所在地のいずれかです。本籍地以外の場所に離婚届を提出する場合には、戸籍謄本が必要になります。なお、未成年者がいる場合、子の親権者を離婚届に記載しなければなりません。
協議離婚の証人になれる人
協議離婚をする場合、離婚届に証人2名の署名捺印が必要になります。
この証人は、成人であれば誰でもよいとされています。一般的には、当事者の両親や兄弟姉妹といった親族に依頼する場合が多いです。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
協議離婚で決めておいた方が良いこと
協議離婚とは、当事者の合意のみによって自由に離婚を成立させることができる手段です。
協議すべき事項は、大きく分けて2つあります。
1つは、子に関する事項です。もう1つは、金銭に関する事項です。子に関する事項とは、親権、監護権、養育費、面会交流等です。金銭に関する事項とは、財産分与、慰謝料等です。なお、離婚する際に必ず決めなければならない事項は、子の親権です。
財産分与
財産分与とは、婚姻期間中に形成した財産を分与する制度です。財産分与は、夫婦で築き上げた財産であれば、夫、妻名義の如何を問わず、財産分与の対象になるのが一般的です。
子供がいる場合
親権
親権とは、未成年の子を監護・養育したり、子の代理人となって法律行為をしたりする権利をいいます。未成年の子がいる場合、いずれが子の親権者になるかを決める必要があります。
養育費
養育費とは、未成熟の子が経済的に自立するまでの間、非親権者が親権者に対して、支払う費用をいいます。
養育費の金額は、家庭裁判所ウェブサイトで公開されている「養育費算定表」に、お互いの収入等をあてはめて決めることが通常です。もっとも、算定表にはある程度金額の幅が設定されているため、具体的な金額をどうするかについては、当事者で協議することになります。
面会交流
面会交流とは、非監護親(非親権者)と子とが交流することをいいます。
面会交流の方法は、直接対面での交流が一般的ではあります。また、例えば、テレビ電話や手紙のやり取りといった間接的な交流もあります。交流方法や頻度について、事前に取り決めておく方がよいと考えます。
離婚慰謝料は請求できるのか
慰謝料とは、精神的苦痛という損害に対する賠償金をいいます。 一般的には、「浮気をされた」、「暴力を振るわれた」といった場合に、被害者から加害者に対して、慰謝料を請求します。もっとも、協議離婚を前提にすると、相手方が任意の支払いに応じない限り、慰謝料を獲得することは困難です。協議離婚にかかる期間
検討すべき事項が多かったり、建設的な協議ができなかったりする場合、協議離婚にかかる期間は、長期に及びます。4~6ヶ月程度を目安に協議がまとまるのが一般的です。また、それ以上の期間を要する場合には、離婚調停等を検討する必要があります。
協議離婚で成立しない場合
そもそも相手方が離婚に応じない、お互いが親権を譲らないといった場合、協議離婚が成立しないケースが多いです。
そのため、協議離婚が成立しない場合には、離婚調停での解決を視野に入れる必要があります。
別居する
相手方が離婚に応じない場合、離婚調停も協議を前提とするため、離婚が成立しない可能性があります。その場合、離婚訴訟を提起します。離婚事由のうち「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として、相当長期の別居も考慮要素の1つとされます。そのため、別居していない場合に比べて、別居をしていた場合の方が、離婚が成立する可能性が高くなります。
離婚調停へ
離婚調停とは、家庭裁判所の調停手続きを利用して、離婚に関する協議を行う方法です。
離婚調停は、あくまでも協議を前提とします。しかし、当事者のみでの協議と異なり、調停委員会(裁判官や調停委員)を介して協議するため、お互い冷静に協議することができます。また、調停手続きは、調停委員会を軸に、当事者から別々に話を聞くため、相手方と直接会わないで、協議できます。
夫婦だけでのやりとりとなる協議離婚は難航する場合が多くあります。不安なことがあれば弁護士に依頼してみましょう
協議離婚は、当事者の合意のみによって自由に離婚を成立させることができる手段です。というのことは、相手方の一方的な主張であっても、離婚が認められてしまう可能性があります。離婚を急ぐあまり、十分な取決めも行わずに離婚してしまうと、離婚後の生活が立ち行かなくなることもあります。特に、養育費や面会交流などは離婚後も長期にわたって継続する必要があるため、事前にしっかりと協議しておく必要があります。また、相手方と直接離婚協議することが精神的負担になってしまう方もいます。
そのため、離婚交渉を弁護士に委任することによって、不利な条件での離婚を回避したり、精神的負担を軽減したりすることができます。
-
- 保有資格
- 弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)