監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
保険会社から1日8600円の慰謝料を提示されたら、示談をする前に、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
1日8600円の提示は、最低限の基準で計算されている可能性があり、このまま示談に応じると適正な慰謝料を受け取れない可能性があります。
そこで、今回は、慰謝料1日8600円と提示される理由、増額の可能性について解説します。
慰謝料が1日8600円(旧8400円)になるのはなぜ?
慰謝料が1日8600円と提示される理由は何でしょうか。
自賠責保険の基準によれば、傷害慰謝料は、慰謝料の対象となる日数×4300円で算定されます。この慰謝料の対象となる日数は、治療期間又は実治療日数×2のいずれか少ない方で計算されることが基本であるため、自賠責保険の治療費は、実際には実治療日数1日につき8600円というわけではありません。
実際の治療期間よりも、実治療日数×2が少ない場合に、実治療日数1日につき、8600円として算定されているだけなのです。
通院回数を増やした分だけ慰謝料がもらえるわけではない
通院回数を多くすれば、その分多くの慰謝料を受け取れるというわけではありません。
相手方保険会社が、過剰通院とみなして、治療費の支払いに応じない場合もあります。
そのため、通院先の医師の指示に従い、適切な頻度で通院することが大切です。
適切な通院頻度はどれくらい?
被害者の怪我の状況、適切な通院頻度などは、医師が医学的観点から判断する事柄です。
そのため、まずは医師の指示に従い、適切な頻度で通院することが大切です。
その上で、慰謝料の増額という観点からは、1週間に2~3回程度の通院頻度を守っていれば問題はないと思われます。
また、骨折などで自宅安静が必要な場合は、通院ができなくても気にしなくて大丈夫です。
自賠責には120万円の限度額がある
自賠責保険から支払われる傷害部分の慰謝料は、120万円が上限となります。
また、傷害部分の慰謝料には、入通院による慰謝料のほか、治療費や休業損害も含まれます。
そのため、例えば休業損害が増える場合は、その分慰謝料の支払いが減ることとなります。
弁護士基準なら自賠責基準の入通院慰謝料を上回る可能性大
弁護士が介入した場合は、弁護士基準と言う高い基準で賠償金を請求することとなるため、自賠責基準の慰謝料の上限である120万円を大きく超える賠償金を請求できるケースも多くなります。
他方で、被害者の過失割合が大きい場合は、自賠責基準の方が裁判所で認められる額よりも高くなる可能性もあります。
まずは交通事故事件専属のスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
1日8600円の慰謝料が貰えるのは治癒・症状固定までの「治療期間」のみ
自賠責基準の慰謝料1日8600円が受け取れるのは、事故により怪我をした時から治癒または症状固定までの治療期間のみとなります。
そのため、治療が完了して通院の必要がなくなった場合はもちろん、これ以上治療しても良くならないと判断された場合(症状固定)には、それ以上の治療期間に対応する慰謝料は認められません。
ただし、治療継続の必要性については、医師が医学的観点から判断することであり、相手方保険会社が判断することではありません。
したがって、相手方保険会社から治療費の一括対応(治療費の支払い)を終了すると言われた場合は、医師や弁護士に相談することが大切です。
後遺障害が残った場合は後遺障害慰謝料が請求できる
後遺障害が認定された場合には、1日8600円の慰謝料のほか、認定された等級に対応する慰謝料や逸失利益が認められます。
したがって、後遺障害が残った場合には、損害賠償額は大幅に増額されることとなります。
慰謝料が1日8600円から増額した事例
被害者の方は、信号待ちで停車中、後ろから自動車に追突され、むち打ちになりました。その後、被害者の方は、半年間通院し(実通院日数60日)、治療費が約80万円かかりました。
自賠責基準の入通院慰謝料だと51万6000円(4300円×2×60日)となりますが、治療費が約80万円かかっているため、損害の合計が131万6000円となります。この場合、自賠責保険の傷害部分の保険金限度額を超えてしまうため、相手方保険会社からは、入通院慰謝料としては約40万円の提示がありました。
これに対して弊所から入通院慰謝料の増額交渉を行ったところ、弁護士基準(赤い本別表2)に従い、入通院慰謝料を80万円超(当初の相手方保険会社の提示金額の2倍)まで増額することができました。
保険会社から「1日8600円」と提示されたら、弁護士へご相談ください
保険会社から「1日8600円」と提示されたとしても、弁護士が介入することにより、慰謝料を大幅に増額できる可能性があります。
まずは、弁護士に相談することにより、あなたのケースではいくらの慰謝料が見込めるかおおよその額が算出することができます。
そのため、保険会社から「1日8600円」と提示されたとしても、すぐに示談を行うのではなく、一度弁護士にご相談されることをおすすめします。
離婚協議を行う上で重要な項目が「財産分与」です。
財産分与とは、婚姻継続中に夫婦で形成した財産を清算する手続きです。そして、財産分与の対象となるのが、預貯金(通帳)です。預貯金は、通常財産分与の対象となりますが、婚姻前の預貯金や子ども名義の預貯金も財産分与の対象となるか等多くの問題を含んでいます。
以下では、離婚問題、財産分与問題に精通した弁護士が、本件に関して解説します。
通帳の預貯金は財産分与の対象になる?
財産分与とは、婚姻継続中に夫婦で協力して形成した財産を対象に行います。そのため、通常、婚姻時から別居または離婚時までに形成した財産が対象となります。つまり、それ以外の時期や要因で形成した預貯金は、原則、財産分与の対象とはなりません。 以下、解説します。
財産分与の対象になる預貯金
財産分与とは、婚姻継続中に夫婦で協力して形成した財産を対象とします。
そのため、婚姻継続中に形成した預貯金であれば、通常、それぞれの収入から個人で貯蓄した預貯金や互いの収入から出し合って貯蓄した預貯金も財産分与の対象となります。
財産分与の対象にはならない預貯金
上記のとおり、財産分与の対象となる財産は、婚姻継続中に夫婦で協力して形成した財産をいいます。
そのため、婚姻前(独身時代)に形成した預貯金や相続で得た財産(預貯金)は、財産分与の対象とはなりません。
婚姻前の口座を婚姻後も使い続けている場合は要注意
上記のとおり、通常、婚姻前(独身時代)に形成した財産は財産分与の対象とはなりません。もっとも、お金に色はありません。そのため、離婚協議する際、その預貯金が婚姻前に形成した財産なのか婚姻後に形成した財産なのかを判別することは困難です。その結果、実際には婚姻前に形成した財産であっても、その判別ができず、財産分与の対象に含まれてします可能性があります。
財産分与の対象にしないためにできることはある?
財産分与の対象財産には含まれないと主張するためには、婚姻前の残高を明確にしておくことが重要です。より確実を期すのであれば、婚姻後の貯蓄は別の預金口座にするべきです。または、明らかに結婚前の財産と分かるように日付と残高を証明できる資料や相続で得た財産であると証する資料などを残しておく必要があります。
なお、古い通帳を処分してしまった場合、金融機関に問合せすれば一定期間の取引履歴が開示されることもあります。
へそくり用の隠し口座は財産分与の対象になる?
婚姻継続中に夫婦で協力して形成した財産は、財産分与の対象となります。そのため、隠し口座の原資が、婚姻期間中の収入であれば財産分与の対象となります。
子供名義の預貯金は財産分与の対象になる?
子ども名義の預貯金であっても、財産分与の対象となる場合があります。
具体的には、その原資が夫婦の収入であれば、夫婦で協力して形成した財産であるため、財産分与の対象となります。他方で、子どもが個人的にもらったお年玉や入学祝金等であった場合には、夫婦で協力して形成した財産ではないため、財産分与の対象とはなりません。
なお、学資保険については、保険料の支払いが夫婦の共有の財産から支払われている場合には、別居時や離婚時における解約返戻金が財産分与の対象となります。
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財産分与するには通帳の開示が必要
財産分与を行うためには、当事者双方の財産を正確に把握する必要があります。預金通帳においては、基準時(原則として別居時)の口座内の残高をお互いに知る必要があります。
そのためには、相手方に預金残高を開示してもらうだけでなく、自己の預金残高も相手方に開示する必要があります。
通帳のコピーを用意しましょう
財産分与の対象財産を正確に把握するためには、婚姻開示時点の預金残高と別居(または離婚)時までの預金残高を把握する必要があります。そのため、婚姻時点と別居(または離婚)時点の預金通帳(取引履歴)を準備する必要があります。
また、不正な出入金があるなどと主張する場合には、相手方に当該出入金記録が記載されている取引履歴を準備してもらう必要があります。
通帳開示をしたくない場合
預金通帳を開示したくない場合、相手方が配偶者であっても強要することはできません。
もっとも、財産分与を行う前提として、お互いの財産を正確に把握する必要があります。そのため、預金通帳を開示しない限り、お互いの財産を正確に把握することができず、財産分与の協議ができなくなってしまいます。また、下記記載のとおり、裁判所の手続きを介して、預金通帳を開示されてしまう可能性もあります。
通帳開示を拒否された場合
相手方から預金通帳の開示を拒否されてしまう可能性がある場合、同居期間中に相手方の預金通帳も当方で管理している際には、事前にコピーしておくのがよいでしょう。
もっとも、仮に相手方から預金通帳の開示を拒否されてしまった場合でも、以下の2つの方法をとることができます。
弁護士会照会制度
弁護士照会制度とは、弁護士会が官公庁などの団体に対し、必要な情報についての回答を求めることができる制度です。
弁護士会を介して、金融機関に対し、相手方の預貯金情報(口座の有無、取引履歴など)に関する回答を求めることができます。もっとも、不回答に対する罰則規定はなく、金融機関も相手方(名義人)との関係性を壊したくないがために、相手方(名義人)の同意がないという理由で回答を拒否する可能性があります。
調査嘱託制度
調査嘱託制度とは、裁判所が各団体に対して必要な情報の回答を求める制度です。当該制度を利用するためには、調査嘱託の必要があること(例えば、嘱託先に口座が存在するが、相手方が口座の開示を拒否している事情等)を説明しなければならず、その判断には種々の事情が考慮されることになります。調査嘱託に対しては、正当な理由がない限り、その団体が回答を拒否することはできません。もっとも、金融機関のなかには、相手方(名義人)の同意がないとして、回答を留保する場合もあります。
財産分与時の通帳に関するQ&A
別居時に通帳を持ち出され、預貯金を使い込まれてしまいました。財産分与は請求できないのでしょうか?
財産分与請求はできます。
財産分与は、通常、婚姻時から別居時までに協力して形成した財産が対象となります。そのため、別居以降、相手方が預貯金を使い込んでしまったとしても、使い込み後の残高ではなく、別居時の残高を前提に財産分与対象財産の計算をします。
口座があるのは確実なのに、通帳を隠されてしまい残高が分かりません。どうすればよいでしょうか?
口座が確実に存在するのであれば、上記記載の通り弁護士会照会制度や調査嘱託制度を利用するなどして、相手方の預貯金情報を把握することが可能です。
銀行口座を解約されてしまったら、通帳開示できませんよね。諦めるしかないのでしょうか。
銀行口座を解約されてしまった場合でも、上記記載の通り弁護士会照会制度や調査嘱託制度を利用するなどして、相手方の預金残高を把握することは可能です。
宝くじの当選金が口座に入っています。財産分与の対象になりますか?
宝くじの購入原資が、夫婦共有財産から捻出されたものであれば、宝くじの当選金も財産分与の対象となります。もっとも、宝くじの当選は、当選者の運に左右したものであり、その寄与は当選者の方が大きいです。そのため、当選金については、折半ではなく、6:4や7:3で分与するのが通常です。
財産分与で預貯金等を確認することは大切です。弁護士に相談することをお勧めします。
財産分与対象財産のなかで預貯金(通帳)は、大きな比重を占めています。そのため、適正な財産分与を行うためには、預貯金(通帳)を正確に把握する必要があります。
もっとも、対象となる預貯金口座がどの金融機関にあるのか、支店はどこか等を事前に把握しておく必要があります。仮に、把握できなかったとしても、弁護士や裁判所を介した特殊な開示方法を用いることもできます。また、預貯金(通帳)には、お子様の名義預金が財産分与対象財産になるのか、婚姻前に形成した預貯金が財産分与対象財産になるのか等多くの論点があります。
適正な財産分与を行うためにも、まずは別居前後を問わず弁護士にご相談ください。
配偶者の収入で家計を回している方の中には、離婚後の生活への不安から、離婚を迷われている方も多いのではないでしょうか。そのような場合に確認しておきたいのが、財産分与や年金分割という制度です。
年金分割とはいったいどのような制度なのでしょうか? また、年金分割を利用すると年金はどうなるのでしょうか?
本コラムでは、そのような年金分割をめぐるご質問にお答えしています。年金分割について疑問をお持ちの方は、ぜひ本コラムをご覧ください。
離婚時の財産分与と年金分割制度について
年金分割とは、婚姻期間中の支払実績に対応する厚生年金を、夫婦間で分割する制度です。
離婚の時には、財産分与によって、婚姻期間中に築き上げた財産を分割することができます。従来は、年金の問題もこの財産分与の中で扱われてきました。しかし、厚生年金等は、受け取る方の生活を支える社会保障としての性質が強いことから、平成19年に年金改正法が施行されて、年金分割制度が設けられました。そのため、現在は、厚生年金等については年金分割を利用することとなっています。
年金分割の按分割合の決まり
年金分割を行う際には、分割を受ける側がどの程度の持分を持つようするかを決める必要があります。この分割を受ける側の持分のことを、「按分割合」といいます。
年金分割は、当事者間が公平に年金を受領するための制度であるため、より多くの保険料を支払ってきた側の受領する年金額が、もう一方の受領する年金額を下回るような按分割合を定めることはできません。そのため、按分割合は最大でも0.5となります。
他方で、年金分割によって受領できる年金額が減少するような按分割合で定めることもできません。
年金分割のできる年金、できない年金
年金分割の対象となる年金とは、厚生年金と旧共済年金のことを指します。自営業などで加入しているのが国民年金のみの場合、年金分割は利用できません。
確定給付企業年金、確定拠出年金、退職等年金給付についても同様に年金分割はできませんが、財産分与の対象となる可能性があります。
また、年金分割の対象にできる厚生年金等は、婚姻期間に保険料の納付がなされた部分に限られます。相手方が結婚以前や離婚後に保険料を支払った部分については、年金分割の対象とすることはできません。
年金分割の種類
年金分割には、合意分割と3号分割という2つの種類があります。それぞれの特徴は、次の表のとおりです。
| 合意分割 | 3号分割 | |
|---|---|---|
| 離婚日 | 平成19年4月1日以降 | 平成20年5月1日以降 |
| 夫婦間の合意 | 必要 | 不要 |
| 分割対象期間 | 婚姻期間全体 | 婚姻期間のうち、平成20年4月1日以降で、国民年金の第3号被保険者であった期間 |
| 分割割合 | 合意した割合 | 0.5 |
| 請求期限 | 離婚をした日の翌日から2年以内 | 離婚をした日の翌日から2年以内 |
| 対象者 | 夫婦の一方 | 国民年金の第3号被保険者であった方 |
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年金分割の方法
次は、年金分割の具体的な方法について見ていきましょう。合意分割と3号分割とでは手順が異なるため、それぞれ確認していきます。
合意分割の場合
合意分割は、夫婦間の合意や裁判所の判断で年金分割を行う方法です。
請求側が国民年金の第3号被保険者でない場合や、平成20年4月1日よりも前の期間についても年金分割を行う場合、合意分割を選択することになります
夫婦間の合意による場合
そのうえで、夫婦間で按分割合について協議します。離婚にあたって離婚条件を協議している場合は、その中で話し合うことになるでしょう。
協議で合意ができた場合には、合意書を作成することになります。日本年金機構は合意書の書式を提供しているため、それを利用するとスムーズに進みます。
また、裁判所外の協議で年金分割を行うと、夫婦が揃って年金事務所に行き、書類の提出をする必要があります。相手方と年金事務所に行くのが難しい場合は、合意書を公正証書にしておくことで、1人でも手続が可能になります。
調停による場合
相手方が協議に応じなかったり、按分割合が合意できなかったりした場合は、調停を利用することが考えられます。
調停は家庭裁判所に申立てをすることで開始し、裁判所という場で調停委員を通じて話し合いを重ねることになります。合意が成立した場合には調停調書という書面が作成されるので、調停調書を持って年金事務所を訪れ、手続を進めます。
一方で、調停もあくまで話し合いであるため、按分割合が合意できない可能性があります。そのような場合には、次の審判という制度を利用することになります。
審判による場合
審判とは、年金分割について、裁判所に判断をしてもらう方法です。裁判所外の協議や調停とは異なり、相手方との間で話し合いはせず、基本的には書面で主張します。
裁判所が審判をする場合、特段の事情がない限り、按分割合は0.5となることが一般的です。裁判所に按分割合を0.5未満とする判断をしてもらいたい場合には、例えば、別居期間が婚姻期間の2分の1以上を占めているなどの事情を主張する必要があります。
離婚訴訟における附帯処分の手続き
離婚をするかどうかについての離婚訴訟をしている場合には、附帯処分として年金分割の申立てをすることが可能です。附帯処分の申立てをすれば、年金分割についても、離婚条件の1つとして離婚訴訟の中で扱われます。
また、離婚調停の段階でも、年金分割を希望していることを申立書や答弁書に記入したり、調停上で伝えたりすることで、同様に年金分割についても扱ってもらえます。
3号分割の場合
3号分割は、国民年金の第3号被保険者にあたる方の請求のみによって、年金分割を行う方法です。結婚したのが平成20年4月1日以降であり、婚姻期間中は一貫して第3号被保険者であった場合には、3号分割を利用することになるでしょう。
3号分割の場合、合意分割と異なり、相手方の同意や手続への協力を得たり、裁判所を通じた手続を利用したりする必要がありません。そのため、合意分割よりも容易かつ早期に分割が実現します。
年金分割の手続きの流れ
以上のように、合意分割と3号分割では按分割合を決定する方法が異なりますが、按分割合を決定するまでに必要となる手続や、按分割合の決定後にすべき手続は共通しています。
①年金分割のための情報通知書の取得
まず、年金事務所で年金分割のための情報通知書を取得します。年金分割のための情報通知書は、年金の加入期間や分割対象期間、年金分割の下限などの情報が記載されており、公正証書の作成や調停を行う時にも必ず要求されます。
申請時は、年金分割のための情報提供請求書に加え、マイナンバーカードまたは年金手帳等の基礎年金番号が分かる資料、戸籍謄本等が必要となります。また、3号分割を行う場合は、さらに第3号被保険者加入期間証明書が必要です。
②年金分割の請求
按分割合の決定後、年金事務所に年金分割の請求をします。請求時には、標準報酬改定請求書、年金手帳等、離婚後の戸籍謄本等各1通、按分割合が記載された書類(公正証書、調停調書、審判書等)を提出します。
③標準報酬改定通知書の受領
日本年金機構から標準報酬改定通知書が送付されてきますので、受領することで手続は完了です。通知書を受領した際は、按分割合が間違っていないか確認しておきましょう。
離婚時の財産分与で専業主婦の年金について
年金分割は、あくまで婚姻期間中の支払実績に対応する年金を平等に分配するための制度です。そのため、専業主婦(専業主夫)で、離婚後に生活費に困る可能性がある場合でも、婚姻期間以外の部分について、年金分割を行うことはできません。
また、年金分割の対象はあくまで厚生年金等に限られるため、配偶者が自営業や非正規雇用で厚生年金に加入していないような場合には、年金分割が利用できません。
そして、年金分割を行った場合でも、年金の受給開始年齢までは年金を受給することはできません。そのため、年金分割から受給開始までに時間を要する場合には、年金以外の方法で生活費を確保する必要があります。扶養的財産分与の請求ができないかなど、他の手段を検討してみましょう。
熟年離婚した場合の年金分割
相場
年金分割後の年金受給額は、従前の支払実績や婚姻期間によって左右されるため厳密な相場はありませんが、月数万円程度となるケースが比較的多いです。
分割を受ける方が50歳以上の場合などには、年金事務所で分割後の年金見込額を確認することも可能です。
年金分割が成立後に配偶者が亡くなってしまった場合
夫が亡くなってしまった場合
年金分割を行った時点で保険料の支払実績が妻(年金分割を受けた側)に分割されるため、年金分割後に夫(年金分割をした側)が亡くなった場合でも、妻の年金受給額は増加も減少もしません。
夫が死亡前に再婚していると、再婚相手は遺族厚生年金を受給できますが、遺族厚生年金も年金分割がなされたことを前提とした金額になります。
妻が亡くなってしまった場合
年金分割後に妻(年金分割を受けた側)が亡くなった場合、既に妻に分割されている保険料の支払実績を夫(年金分割をした側)に戻すことはできません。そのため、妻が亡くなったことを理由に、夫の年金受給額が増加することはありません。
他方で、妻が死亡前に再婚していると、再婚相手は妻の保険料の支払実績を基礎とした遺族厚生年金を受給できることになります。
離婚時の財産分与の年金についてQ&A
財産分与のときに夫婦共働きの場合、年金分割はどうなりますか?
収入の少ない側が国民保険の第3号被保険者にあたる場合は3号分割、そうでない場合は合意分割をすることになります。専業主婦(専業主夫)等で、第3号被保険者にあたる時期がある場合には、その期間に対応する部分は3号分割を利用することが可能です。
共働きで妻の方がより収入が多い場合には、妻から夫に対して年金分割がなされます。また、夫が自営業で厚生年金に加入しておらず、妻だけが厚生年金に加入しているような場合も、妻から夫に対して年金分割がなされることになります。
離婚時の年金分割を拒否することは可能ですか?
裁判所外の協議や調停で年金分割を拒否すること自体は可能ですが、最終的には年金分割の審判がなされるため、年金分割をしないことは基本的に困難です。
同居期間に比べて別居が極めて長期間に及んでいる場合などには、年金分割が認められなかったり、按分割合が0.5とならなかったりする可能性もあります。0.5未満の按分割合となるように協議を進めることも考えられます。
また、年金分割には2年間の請求期限があるため、離婚から長期間が経過している場合には、請求期限を過ぎていないかを確認してみましょう。
障害年金を受給していた場合、離婚後に年金分割の対象になりますか?
障害基礎年金については、年金分割の対象となりません。
障害厚生年金は年金分割の対象にはなりますが、分割する側が障害厚生年金の受給権者であって、対象期間の全部または一部が障害厚生年金額の算定の基礎となっている場合には、3号分割を行うことができません。障害厚生年金が3号分割によって強制的に減額されると、病気にかかったりケガを負ったりした方への保障に欠けるためです。
もっとも、障害認定日が平成20年3月31日以前であれば、3号分割が年金額に影響を及ぼすことはないため、3号分割が可能です。
離婚後に夫婦のどちらかが再婚した場合、年金分割に影響はありますか?
離婚後に夫婦のどちらかが再婚したとしても、年金分割に影響はありません。年金分割によって保険料の支払実績は分割されれば、再婚によって元に戻ることもありません。再婚によって、氏名や住所が変更した場合には、年金事務所へ変更の届出が必要となります。
なお、妻が、亡くなった夫の遺族厚生年金を受給していた状況で再婚をしたような場合は、妻自身の年金には影響はありませんが、遺族厚生年金は受給できなくなります。
離婚時に年金分割をしなかった場合はどうなりますか?
離婚時に年金分割をしなかった場合でも、2年以内であれば年金分割が行えます。
また、年金分割をしていないケースでも、夫婦間で収入に差がない場合や婚姻期間が短い場合は、分割の対象となる保険料の支払実績が限られているため、年金分割をした場合と年金受給額は大きく異なりません。
反対に、専業主婦(専業主夫)で相手方との収入の差が大きかったり、婚姻期間が長期に及んだりする場合は、年金分割による年金受給額の増加が大きくなるため、年金分割を行っておきましょう。その際は、年金の受給時期や分割後の年金受給額等を考慮して、離婚後の生活を組み立てられるかを検討しておくことが望ましいです。
あらかじめ離婚後の年金分割の見込み額を知ることはできますか?
50歳以上の方または障害厚生年金の受給権者の方であれば、年金事務所で見込額を確認することができます。
年金分割の情報提供請求書内の「請求者の年金見込額照会」欄に必要な記載をすれば、見込額の照会が可能です。照会をすると、按分割合の上限(0.5)、下限(年金分割を行わない場合)、任意の按分割合で年金分割を行った場合の年金見込額の開示が受けられます。
離婚したいと思った時、年金の財産分与について詳しくしりたいと思ったら弁護士に聞いてみましょう
年金分割の場合、合意分割が必要か、それとも3号分割で足りるのか、協議・調停・審判のいずれの方法で按分割合を決定していくべきか、按分割合としてどの程度が適当かなど、検討が必要となるポイントが複数あります。
インターネットで検索を行えば年金分割についての情報は得られますが、「自分がいまどうするのが良いのか」を判断するのは一朝一夕にはいきません。ご自身で手続を進められる場合でも、まずは一度弁護士にご相談いただくことが、よりよい結果を早期に実現するための近道です。
皆様のご相談をお待ちしております。
認知症、知的障害、精神障害、発達障害などによって物事を判断する能力が十分ではない方の権利を守るための法的な制度にどのようなものがあるのか、以下で解説していきます。
成年後見制度とは
成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などによって判断能力が十分でない方を法律的に支援する制度をいい、任意後見制度と法定後見制度があります。
相続の場で成年後見人が必要なケース
遺産分割協議をするためには、相続人全員に判断能力が必要です。判断能力の不十分な方は、遺産分割の協議に参加して合意することができません。このような場面では、成年後見人を選任することが必要となります。
相続人が未成年の場合は未成年後見制度を使う
未成年者は、親権者の同意がないと法律行為はできませんし、法律行為をした後に、取り消すことが可能です。そのため、相続人の中に未成年者がいる場合に遺産分割協議を進めるためには、未成年後見人を選任する必要がございます。
成年後見人ができること
身上監護と財産管理ができます。
身上監護とは、成年後見人が、成年被後見人の心身の状態や生活の状況に配慮して、成年被後見人の生活や健康、療養等に関する法律行為を行うことをいいます。たとえば、必要な福祉サービスや医療が受けられるよう、介護契約の締結や医療費の支払いを行います。
財産管理とは、本人の不動産や預貯金などの財産を管理することです。
成年後見人になれるのは誰?
誰でもなれるわけではございません。家庭裁判所では、選任するにあたって、ご本人にとって最も適任だと思われる方を選任しますが、弁護士、司法書士、社会福祉士など、専門的な知識を持っている専門職を選任することもあります。ご本人と利害関係のある方は、成年後見人となることはできません。
誰が申し立てすればいい?
申立てをすることができる方は、ご本人、配偶者、四親等内の親族などです。その他に市区町村長などが申し立てることもできます。
成年後見制度申し立ての手続き
申立てをする家庭裁判所を確認します
↓
申立てをするために必要な書類を集めます
↓
申立書を作成します
↓
申立てをします
↓
裁判官によって審理が開始されます・様々な調査も行われます
↓
後見人が選任されます
成年後見人の候補者を決める
成年後見開始の審判を申立てた人が特定の人を成年後見人に選ばれることを希望していた場合であっても、家庭裁判所が希望通りの人を選任するとは限りません。また、希望に沿わない人が成年後見人に選任された場合であっても、不服を申立てることもできません。なお、申立ては、成年後見人の候補者がいなくても可能です。
必要書類を集める
成年後見の開始の申立てをするためには、申立書、本人情報シート、診断書、申立手数料、登記手数料、郵便切手、本人の戸籍謄本などの必要書類を集める必要がございます。詳しくは、家庭裁判所に用意されている一覧表などでご確認ください。
後見・補佐・補助について
ご本人の判断能力の程度に応じて、「後見」、「保佐」、「補助」の3つの制度が用意されています。大まかにいえば、判断能力が欠けているのが通常の状態の方は、「後見」を、判断能力が著しく不十分な方は「保佐」を、判断能力が不十分な方は「補助」を申立てるようにしてください。
家庭裁判所に申し立てを行う
後見開始の審判の申立ては、ご本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立ててください。
家庭裁判所による調査の開始
ご本人の判断能力の程度を慎重に判断するため、医師による鑑定が行われることがあります。この場合には、別途、鑑定費用をお支払いいただくかたちになります。
成年後見人が選任される
選任する必要があると判断された場合には、成年後見人の選任がなされます。
そして、裁判所から登記番号通知書が送られてきます。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
成年後見人の役割は本人の死亡まで続く
成年後見人の仕事は、ご本人が病気などから回復し判断能力を取り戻すか、ご本人が亡くなられるまで続きます。申立てのきっかけとなった当初の目的(たとえば、遺産分割)を果たしたから終わりというわけではございません。
ご本人が亡くなった場合には、まず、家庭裁判所に連絡し、法務局に終了の登記の申請をしてください。
成年後見制度にかかる費用
1件の申立てをするためには800円分の収入印紙が必要です。保佐や補助を申立てる場合に、代理権や同意権を付与する審判を同時に申立てる場合は、これらの申立てそれぞれにつき収入印紙800円が必要になります。また、登記嘱託手数料として2600円分の収入印紙が必要です。
成年後見人に支払う報酬の目安
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みなし相続財産という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。 みなし相続財産がどのような意味をもつのか、遺産分割の対象となる相続財産とは異なるものなのかなど、正しくみなし相続財産を把握されている方は少ないのではないかと思います。 このページでは、みなし相続財産について、その意味や具体的な内容について解説していきます。
みなし相続財産とは
みなし相続財産とは、被相続人が亡くなった際に受け取ることのできる財産をいいます。遺産分割の対象となる相続財産とは異なりますので、相続放棄をしても受け取ることができる財産もあります。また、みなし相続財産は、相続税の課税対象として扱われます。被相続人の死亡によって受け取ることができる財産ですから、税法上、実質的に相続財産として扱い、課税をすることで公平性を確保するものです。
みなし相続財産になるのはどんなものか
みなし相続財産とされる典型的なものとしては、生命保険金や死亡退職金です。その他にもみなし相続財産とされるものがありますので、どのようなものがみなし相続財産にあたるかについて、以下で解説してきます。
生命保険金
生命保険金は、みなし相続財産の典型例といえます。
生命保険金は、生命保険会社と被相続人が契約をし、被相続人が死亡した際に、受取人として指定されたものが保険金を受け取れるものです。受取人は、保険契約に基づいて保険金を受け取れることになりますので、その財産は遺産分割の対象となる相続財産ではなく、受取人の財産となります。
しかしながら、被相続人の死亡によって受け取れる財産であるため、税法上、実質的に相続財産としてみなして、課税の対象とされています。ただし、生命保険金の全てがみなし相続財産になるわけではなく、保険料を被相続人以外の人が負担していた場合は、みなし相続財産とはならない場合がありますので、注意が必要です。
死亡退職金
みなし相続財産の典型例のもう一つは、死亡退職金です。つまり、被相続人が、会社から受け取れるはずであった退職金のことです。
死亡退職金のうち、みなし相続財産として相続税の課税対象になるのは、被相続人が亡くなってから3年以内の支給が確実な死亡退職金です。
死亡退職金は、現金に限られず、会社の保有する不動産などを退職金として支給する場合も含みます。
借金の返済が免除、または減額された場合(債務免除益)
たとえば、相続人が被相続人からお金を借りていた場合に、遺言によって被相続人がその借金の全部又は一部を免除するとします。
その免除又は減額されたという債務免除益が、みなし相続財産とされ、相続税の課税対象となるのです。
特別縁故者への分与財産
特別縁故者とは、相続人がいない場合に、相続人以外で被相続人の内縁の配偶者であったものや被相続人の療養看護をしていた者などをいいます。家庭裁判所が特別縁故者に対する財産分与を認めた場合に、特別縁故者に支払われる相続財産をみなし相続財産として、相続税の課税対象とされるのです。
定期金に関する権利
定期金に関する権利についてもみなし相続財産の対象となります。
定期金とは、個人年金など、一括の支払ではなく、定期的に支払われるお金のことです。
個人年金であれば、被相続人が掛け金を負担したうえで、配偶者や子を受取人としていた場合、受け取る年金について、みなし相続財産とされるのです。
一方、国民年金や厚生年金は定期的に支払われるお金ではありますが、みなし相続財産の対象とはなりません。
定期金の一つで、保証期間付き定期金というものがあります。保証期間付き定期金の権利は、定期金の支払中に受取人である被相続人が死亡し、残りの期間に支給されるはずであった定期金又は一時金を相続人が受け取れるものですが、このお金がみなし相続財産とされるのです。
信託受益権
信託受益権とは、財産の運用や管理を第三者に任せ、一定の手数料を支払う代わりにその利益を受け取ることができる権利をいいます。この信託受益権について、その管理や運用を任された相続人を除くその他の相続人が、特別な対価を得ずに信託受益権を受け取る場合、みなし相続財産を取得したとして、相続税の課税対象とされます。
公益法人等から受ける利益
被相続人が、学校法人やNPO法人などの公益法人に対して寄付などを行い、それによって法人から被相続人に対して特別の利益を与える場合、その利益がみなし相続財産として扱われ、遺贈によって取得したものとして扱われます。
遺言による経済的利益
たとえば、遺言によって、著しく低額で不動産を譲り受けた場合、その財産の時価と実際に譲り受けた価額との差額がみなし相続財産として扱われます。これを遺言による経済的利益といい、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。
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相続放棄してもみなし相続財産は受取可能
相続放棄をすると、相続財産を受け取ることはできなくなります。
しかし、みなし相続財産は相続財産ではないため、みなし相続財産は相続放棄をしても受け取ることができます。
契約内容次第で受け取れなくなるもの
生命保険金
相続放棄をした場合に、生命保険の契約内容によっては生命保険金を受け取ることができなくなることがあります。たとえば、生命保険金の受取人が被相続人となっている場合がこれにあたります。この場合、生命保険金は被相続人の財産となることから、相続財産にあたり、相続放棄によって受け取れなくなるのです。
死亡退職金
死亡退職金についても、相続放棄によって受け取ることができなくなる場合があります。具体的には、退職金規程の中で、被相続人が死亡退職金の受取人となっている場合には、死亡退職金が相続財産となりますので、相続放棄によって受け取ることができなくなるのです。
一方で、相続人が死亡退職金の受取人となっていれば、みなし相続財産となりますので、相続放棄をしていても死亡退職金を受け取ることができます。
みなし相続財産は課税対象になる
みなし相続財産は相続税の課税対象となります。本来は相続財産が相続税の対象となるのですが、これ以外にも、相続や遺贈と同様の経済的効果が生じたときも、課税の公平性をはかるため、みなし相続財産として課税されるのです。
非課税枠について
みなし相続財産には非課税枠があり、課税されない部分があります。
たとえば、生命保険金や死亡退職金は、「500万円×法定相続人の人数」で計算された額の部分には課税がされません。
ただし、相続放棄をした場合は、相続人とはみなされなくなり、この非課税枠の適用を受けることができなくなります。
申告し忘れてしまった場合のリスク
相続税の申告を忘れてしまった場合、無申告課税、過少申告加算税、重加算税、延滞税などが課される可能性があります。したがって、相続税の申告をし忘れたことに気付いたら、すみやかに申告を済ませましょう。
みなし相続財産についての不安は弁護士にご相談ください
みなし相続財産としてどのようなものがあたるのかは、その財産の具体的な内容を理解したうえで判断しなければなりません。その際、非課税枠がどのくらいあるのかなど、判断に困ることが多いかと思います。また、相続税の申告忘れにはペナルティーがあるなど、慎重に進めていく必要もあります。
みなし相続財産については専門的な判断が必要なこともありますので、ご不安な点があれば、是非、弁護士にご相談ください。
夫婦が離婚をする場合、大きく分けて協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つのパターンが考えられます。その中でも、近年、離婚調停の申立て件数は増加傾向にあります。
もっとも、離婚調停を申し立てた場合であっても、すべての離婚調停が成立するわけではなく、不成立となってしまう場合も多くあります。
そこで、今回は、離婚調停が不成立になる場合、不成立後の対応、不成立にならないための対処法などについて解説をします。
離婚調停が不成立になる時とは?
離婚調停が不成立になる時には、大きく分けて以下の3つの場合が挙げられます。
それぞれの場合について解説をします。
調停委員によって不成立と判断される
離婚調停は、裁判官1名と調停委員2名(通常は男女1名ずつ)の3人で調停委員会という組織を構成し、調停委員会が夫婦の主張を交互に確認して、夫婦間の合意を目指す手続きです。
このとき、夫婦の主張があまりにも食い違っていたり、お互いに全く条件を譲らないというような場合には、夫婦間の合意が見込めないため、調停委員会により調停不成立と判断される場合があります。
また、夫婦間の合意が全く見込めないような場合には、1回目の調停で不成立と判断されることもあります。
離婚調停を途中で取り下げる
離婚調停の申立人は、いつでもその申立てを取り下げることができます。
現行法上、離婚裁判を起こすためには、原則として離婚調停が不成立となる必要があります。これを調停前置主義といいます。
調停を取り下げた場合は、調停不成立ではないため、すぐに離婚裁判を起こすことができないという点に注意が必要です。
なお、例外的に、長期間にわたって離婚調停を行ったにもかかわわらず合意に至らないような場合や、相手方が離婚調停に欠席し続けたような場合には、調停を行ったものとみなして離婚裁判を起こすことができる場合もあります。
当然終了
離婚調停中に、夫婦の一方が死亡した場合には、当然終了といって、離婚調停は終了することになります。
離婚調停が不成立と判断されるケース
離婚調停が不成立と判断されるケースとしては、以下のようなものが挙げられます。
離婚調停を相手が欠席
離婚調停は、家庭裁判所で行われるため、裁判所が開いている平日に行われます。
そのため、仕事の都合等により、どうしても出席できないような場合には、裁判所に対して期日の調整や欠席の連絡をすることになります。
他方で、何ら裁判所に連絡をすることなく、2回ほど連続して欠席をすると、離婚調停が不成立と判断される可能性が高くなります。
無断で欠席をすれば、調停委員会の心証は悪くなるため、離婚の判断の際にこちら側が有利になる可能性があります。
相手が離婚を拒否
相手方が離婚を頑なに拒むような場合は、夫婦の離婚に関する合意ができないとして、離婚調停は不成立となります。
この場合は、調停委員を通じて、相手方に対しなぜ離婚を頑なに拒むのか聞いてもらうことも有用です。
親権で争っている
夫婦の間に未成年の子どもがいる場合、離婚に際して必ず親権者を定めなければなりません。
離婚自体や、財産分与などの条件面については争いがなく、親権についてのみ争いがあるような場合は、調停を成立させて、別途親権者指定の審判や裁判に移行することも可能です。しかし、審判や裁判は不服申立てができるため、離婚と親権者の定めについて時間的な差ができてしまう可能性が高く、実務上、審判や裁判に移行するケースは少ないです。
そのため、親権について争いが生じた場合には、離婚調停は不成立となり、ほとんどは離婚裁判で争うことになります。
財産分与の対象や額に納得できない
離婚自体に争いがなく、財産分与の対象や額について争いがある場合も、離婚調停が不成立となるケースが少なくありません。
財産分与についても、上記と同様に、調停を成立させて、財産分与についての審判に移行することは可能です。しかし、離婚が一旦成立してしまうと、財産分与についての希望が通らなくなる可能性が高くなります。
そのため、財産分与について争いがある場合も、離婚調停は不成立とし、離婚裁判を起こして財産分与について争うことが多いといえます。
離婚調停が不成立と判断された場合のその後
離婚調停が不成立と判断された場合、その後どのように対処していけばよいかについて解説をします。
当事者間で再び協議する
離婚調停が不成立となった場合でも、その後に当事者間で再び協議をして、離婚を成立させることは可能です。
しかし、離婚調停が不成立になるほどに夫婦の主張が対立している場合などが多いため、再び協議をしても離婚を成立させることは難しいことがほとんどであるといえます。
再調停はできるのか
離婚調停の申立てに回数の制限はないため、再度離婚調停を申立てることは可能です。
しかし、離婚調停が不成立となった直後に再度離婚調停を申立てたとしても、夫婦の状況には変化がないことがほとんどであるため、実務上は一定期間を経過した後でなければ、再度離婚調停を行うことができないといえます。
審判離婚
離婚調停において、細かい条件面について合意が得られず、子どものために争いを長引かせることが良くないと判断されたような場合には、裁判官の判断により離婚調停を不成立にして、審判に移行するケースがあります。
もっとも、審判は、不服申立てを行うことにより無効とすることができるため、実務上審判離婚が行われるケースは少ないといえます。
離婚裁判
夫婦の婚姻関係破綻の主たる原因を作ったのが自分でない場合(相手方が不貞をして婚姻関係が破綻した場合など)は、離婚調停が不成立となると、離婚裁判を起こすことができます。
離婚裁判で離婚が認められるためには、民法に定められた離婚事由が必要となります。
また、裁判官から離婚の条件面などについて和解を促される可能性もあります。
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離婚調停不成立にならないためにできることとは?
離婚調停を行い、不成立になり、離婚裁判を起こすとなると、多くの時間、費用がかかり精神的にも大きな負担となります。
そこで、離婚調停が不成立にならないためにできることについて解説をします。
希望の条件に優先順位をつけておく
親権、財産分与、慰謝料など希望の条件をすべて得ようとしても、相手方が納得するケースは少ないといえます。
そのため、あらかじめ希望の条件に優先順位をつけておき、優先順位の高い条件を呑んでもらう代わりに優先順位の低い条件であれば相手方の主張を呑むという交渉をすることが重要です。
感情的にならない
感情的になり、相手方を非難ばかりをしていると、調停委員会が合意の見込みがないと判断し、離婚調停を不成立とする可能性が高くなります。
鎮まらない気持ちもあるかと思いますが、あくまでも、冷静に、離婚に向けた交渉をすることが重要です。
弁護士に頼る
離婚調停を1人で行う場合、どのような主張や資料が自らにとって有利になるか分からない場合も多くあると思います。
このような場合には、離婚案件を多く取り扱う弁護士に依頼することにより、依頼者にとって有利となる主張や資料を提出することが可能となります。また、仕事などで忙しい場合でも、弁護士であれば依頼者の代わりに調停に出席することができます。
そのため、弁護士に依頼することで、離婚調停が不成立になる可能性は低くなるといえます。
よくある質問
離婚調停不成立後、別居する際に気を付けることはありますか?
別居をする際に、最も気をつけなくてはならないことは、夫婦の間に幼い子どもがいる場合です。
子どもの親権について争いがある場合、裁判所は監護実績をみて監護権者や親権者の判断をします。
そのため、親権を取得したい場合は、必ず子どもと共に別居をするようにしましょう。
また、私物の搬出等についても、別居後に揉めるケースもありますので、別居をする際は計画的に進めていくことが重要です。
離婚調停が不成立で終わった場合でも養育費や婚姻費用は受け取ることはできますか?
離婚調停が不成立に終わった場合であっても、別居をしていれば、婚姻費用を受け取ることができます。
婚姻費用は、夫婦の一方の収入が高いような場合に、収入の高い方から低い方に対し支払われる金銭のことをいいます。
婚姻費用は、実務上、婚姻費用の請求時または婚姻費用分担請求調停を申立て時が始期であると考えられています。
そのため、相手方の婚姻費用の支払いに不安があるような場合は、婚姻費用分担請求調停を申立てておくことが重要です。
なお、婚姻費用には子どもの養育費も含まれていますので、相手方は、養育費も含めた上で婚姻費用を支払うことになります。
調停不成立から裁判を起こすまでに決められた期間はありますか?
離婚調停不成立から離婚裁判を起こすまでの期間については、法律上特に定めがありません。
実務上は、調停不成立から1年以内程度であれば、離婚裁判を起こすことが可能です。
他方で、1年半以上経過してしまうと、裁判所によっては、再度離婚調停を起こすことを勧められる可能性が高くなり、2年以上経過すると、付調停といって裁判所が職権で離婚調停に付する可能性が高くなります。
離婚調停が不成立になった場合、別の裁判所で再度離婚調停や離婚裁判などを行うことはできますか?
離婚調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所または夫婦の合意によってその他の地域の家庭裁判所に申立てることができます。
また、離婚調停の申立てに回数の制限がないことは上記のとおりです。
これに対して、離婚裁判は、原告または被告の住所地を管轄する家庭裁判所に提起する必要があります。離婚調停と異なり、夫婦の合意によってその他の地域の家庭裁判所に提起することができないことに注意が必要です。
離婚調停の不成立を回避したい場合、経験豊富な弁護士への依頼がお勧めです。
離婚調停を申立てたものの、どのような主張をしたら良いか分からないまま、交渉が平行線となってしまい、離婚調停が不成立となってしまうケースは少なくありません。
また、夫婦の間に調停委員が入るため、離婚調停がスムーズに進まないケースはあまりないのではないかと思われる方も多くいますが、調停委員は、あくまでも公平中立な第三者の立場であるため、夫婦の一方にとって有利となるアドバイスなどは行ってくれません。
自らの主張を整理し、適切な資料を提出して、少しでも良い条件で離婚調停を成立させるためにも、経験豊富な弁護士に依頼されることをお勧めします。
離婚調停が成立すると、家庭裁判所が、離婚の際の合意内容をまとめた調停調書を作成します。
一度、調停調書が作成されると、当事者は、原則として、調停調書の内容を変更したり、調停調書に対する不服申立
てを行うことができません。
また、調停調書は、確定判決と同じ効力を有する非常に効力の強い文書となります。
そこで、今回は、調停調書とは何か、調停調書の効力とは、調停調書にはどのようなことを記載できるのか、調停成立後に離婚届を提出する流れなどについて解説をします。
調停調書とは
離婚調停における調停調書とは、離婚の際の夫婦の合意内容が記載された文書のことをいいます。
具体的には、裁判官が、夫婦の前で合意内容を読み上げ、内容に誤りがないかの確認をし、夫婦から異論が出ない場合に、調停証書が作成されます。
調停調書の効力
調停調書は、確定判決と同じ効力を有する書面であり、確定判決と同様に債務名義となります。
債務名義とは、債務者の給付義務などを強制的に履行させる手続き(これを「強制執行」といいます。)を行う際に、その前提として必要となる公的機関が作成した文書のことをいいます。
そのため、調停調書の内容が守られない場合には、強制執行をすることができるという特徴があります。
公正証書との違い
調停調書と混同されやすい文書の一つに公正証書が挙げられます。
調停調書は、家庭裁判所において裁判所書記官が作成する文書であるのに対し、公正証書は、公証役場において公証人が作成する文書であるという違いがあります。
また、調停調書は、合意内容のすべてを強制執行することが可能であるのに対し、公正証書は、金銭の支払い(財産分与、慰謝料、養育費など)に関する部分のみが強制執行の対象となるという違いがあります。
和解調書との違い
また、調停調書と混同されやすい文章の一つとして和解調書も挙げられます。
和解調書は、裁判所において裁判所書記官が作成する文書という点で調停調書と共通します。
しかし、調停調書は、離婚調停という手続きの中で作成される文書であるのに対し、和解調書は、離婚裁判という手続きの中で作成される文書であるという違いがあります。
調停調書の内容を確認する際のポイント
調停調書が作成されると、当事者は、原則として、調停調書の内容を変更したり、調停調書に対する不服申立てを行うことができません。
そのため、調停調書の内容確認は、慎重に行う必要があります。
そこで、調停調書の内容確認において、重要なポイントを以下に紹介します。
離婚成立の形態
離婚調停で離婚が成立する形態としては、大きく分けて2つのパターンがあります。
1つめは、離婚調停が成立する場合です。
離婚調停が成立する場合は、夫婦は調停の場で離婚をしたことになります。ただし、調停成立後10日以内に離婚届を役所に提出する必要があります。これを報告的届出といいます。正当な理由がなく報告的届出を怠った場合には、5万円以下の過料に処される可能性もありますので注意が必要です。
2つめは、離婚調停の場で離婚届を作成する場合です。
離婚届を作成する場合は、夫婦は調停の場で離婚をしたことにはなりません。離婚届が役所において受理されて初めて、夫婦の離婚が成立します。
離婚届出義務者
上記の2つの形態のうち、離婚調停の場で離婚届を作成する場合は、夫婦のどちらが離婚届出義務者となるかを、調停調書に記載する必要があります。
一般的には、結婚によって性が変わった方が離婚届出義務者となることが多いです。
いずれにせよ、離婚届が役所に受理されない限り離婚は成立しないため、注意が必要です。
財産分与
財産分与について夫婦の合意ができた場合、財産分与が適正に行われるように、財産分与の金額や支払方法などを調停調書に記載することが重要です。
不動産や自動車などを財産分与の対象とする場合には、名義変更をする必要があります。
通常は、調停調書があれば単独で名義変更をすることが可能ですが、調停調書の内容によっては、相手方の協力が必要となる場合もあるため、注意が必要です。
慰謝料
慰謝料について夫婦の合意ができた場合、財産分与と同様に、慰謝料の支払いが適正に行われるように、慰謝料の金額や支払方法などを調停調書に記載することが重要です。
また、慰謝料の支払いが遅れた場合のペナルティを調停調書に記載することにより、未払いを防ぐという方法も有用です。
養育費
夫婦に未成熟(法律上の未成年者とは異なります。)の子どもがいる場合には、養育費について夫婦の合意をする場合があります。
この場合も、上記と同様に、養育費の金額、支払方法、支払いが遅れた場合のペナルティを調停調書に記載することが重要です。
親権、面会交流
財産分与、慰謝料、養育費などとは異なり、夫婦に未成年(現行法上は18歳未満)の子どもがいる場合、離婚をするには親権者を必ず定めなければなりません。
そのため、夫婦のどちらが親権者となるかについて、調停調書に記載をする必要があります。
また、親権者とならない非監護親が子どもと定期的に交流するために、面会交流について合意する場合もあります。
この場合は、面会交流の日時、頻度、面会時間などを詳細に決めておくことが重要です。
調停調書に面会交流についての記載があるにもかかわらず、親権者が正当な理由なく面会交流を実施しない場合には、間接強制といって親権者に対し罰金を科す制度もあります。
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調停によって離婚が成立した場合の離婚届提出までの流れ
上記のとおり、離婚調停が成立すると、その場で夫婦の離婚は成立しますが、調停成立後10日以内に、役所に対して離婚届を提出する必要があります。
そこで、調停成立後、離婚届を役所に提出するまでの流れについて解説します。
調停調書の謄本を交付してもらう
離婚調停が成立した場合には、調停調書の謄本を家庭裁判所に対して申請し、交付してもらいましょう。離婚届を役所に提出する際には、調停調書の謄本も併せて提出する必要があるからです。申請には、郵送申請と来庁申請(直接申請にいくこと)の2つの方法があります。
どちらの申請も手数料がかかりますが、急いでいる場合には来庁申請を行う方が確実といえます。
離婚届を役所に提出する
調停調書の謄本が交付されたら、離婚届と併せて役所に提出する必要があります。
提出先の役所としては、夫婦の本籍地の市区町村役場か、夫婦の一方の所在地の市町村役場が挙げられますが、後者の場合には、夫婦の戸籍謄本も併せて提出する必要があるため、注意が必要です。
調停調書の謄本が届かない場合は
郵送申請をした場合は、通常、数日から1週間程度で調停調書の謄本が届きます。
郵送申請をしたにもかかわらず、調停調書の謄本が届かない場合には、申請先の家庭裁判所に問い合わせるようにしましょう。
調停調書の記載内容を相手が守らないときは
調停調書の記載内容を相手方が守らないときは、権利者は、裁判所への申出または申立てにより、相手方に履行をさせることができます。
具体的には、履行勧告の届出、履行命令、間接強制、直接強制の申立てという方法をとることができます。
履行勧告とは、裁判所が相手方に書面で義務の履行を勧告する制度です。履行勧告に従わない場合であっても、強制することはできませんが、裁判所から書面が届くことにより、任意の履行を期待できるという効果があります。
履行命令とは、調停調書の記載内容が金銭などの債権である場合に、裁判所が相手方対して履行するよう命ずる制度です。この履行命令に正当な理由がなく従わない場合には、10万円以下の過料に処される可能性があるという意味で、履行勧告よりも効力が強いといえます。
間接強制とは、相手方が調停調書に記載された義務を履行しない場合に、間接強制金という金銭を課すことによって、相手方の義務の履行を促す制度です。間接強制は、原則として金銭債権に対しては適用できませんが、親族関係の義務(婚姻費用分担義務など)に関する債権については、適用することができます。
直接強制とは、相手方に対し調停調書の記載内容を強制的に履行させる制度です。相手方の給料や財産を差し押さえて、強制的に回収するという方法が代表的な例といえます。
調停調書に関するQ&A
手元に届いた調停調書を確認しましたが、内容の変更や追加は可能ですか?
調停調書は、計算間違いや誤記について明白な誤りがあるとき以外には、原則として内容の変更や追加を行うことができません。
したがって、離婚調停を成立させる場合には、調停調書の記載内容と夫婦の合意内容に齟齬がないか慎重に確認する必要があります。
相手からのDVが心配で調停調書に現在の住所を載せたくない場合、何か方法はありますか?
調停調書は、相手方が自由に(家庭裁判所の許可などは不要)交付請求することができます。
そのため、調停の申立て時に、家庭裁判所に対して住所等の秘匿申出を行い、現在の住所を載せないようにしておくことが重要です。
裁判所での調停調書の保管期間はどれくらいですか?
調停調書の保管期間は30年間となっていますが、事件の議事録等の全体の記録の保管期間は5年間となっていますので、注意が必要です。
調停調書を役所に提出しなければいけないのはなぜですか?
離婚調停によって離婚が成立したことを戸籍上の記録として残すために、離婚届と併せて調停調書の謄本を役所に提出する必要があります。
調停調書は再発行してもらえますか?
上記のとおり、離婚調停が成立した場合、調停調書の謄本の交付を申請することができます。
そのため、再発行が必要な場合には、再度、郵送申請または来庁申請を行えば、再発行をしてもらうことが可能です。
調停調書に、子の親権は私と書かれています。私の扶養に入ったことになりますか?
親権者となっただけでは、扶養に入ったことにはなりません。
子を自らの扶養に入れる場合には、別途役所において手続きをする必要があります。
調停調書に関する疑問や不安は、弁護士に相談しましょう
調停調書は、確定判決と同一の効力を有する文書であり、非常に重要なものとなります。
夫婦の合意内容と調停調書の記載内容に齟齬がないかなど、一般的には判断がつかない場合も少なくありません。
そのため、調停調書に関する疑問や不安がある場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士に相談・依頼をすれば、調停調書の内容の確認はもちろんのこと、調停全体の代理も任せることができるため、ぜひ一度弁護士に相談することをおすすめします。
相続は人の死亡により開始します。相続が開始した場合、誰が相続人となるか、遺産の範囲の問題など、難しい問題が多く生じます。特に誰が相続人となるかという問題については、代襲相続という難しい問題が生じることもあります。 そこで、今回は、代襲相続について解説をします。
代襲相続とは
代襲相続とは、被相続人が死亡する前に、相続人になるはずだった人が死亡するなどの理由で相続できなくなった場合に、その相続人の子どもが代わりに相続することをいいます。この相続人の子どものことを代襲相続人といいます。
代襲相続が起きるのはどんな時?
相続人が先に亡くなった場合
代襲相続が起きる代表的な例として、被相続人が死亡する前に、相続人が死亡し、その相続人の子どもが代わりに相続する場合が挙げられます。
具体的には、親よりも先に子どもが亡くなった場合、親の財産は孫に相続されるということになります。
相続人の資格を失った場合
その他、代襲相続が起きる代表的な例として、相続人が廃除された場合と相続人に相続欠格事由が生じた場合が挙げられます。
相続人排除
相続人の廃除とは、被相続人が生前に特定の相続人を相続から排除することを家庭裁判所に申し立てることで、その相続人の相続権をはく奪する手続きです。
また、遺言書によっても、相続人の廃除を指定することができます。
相続欠格
相続欠格とは、遺産を得るなどの目的で、被相続人を死亡させようとしたり、被相続人を脅迫して遺言書を作成させた場合に、その相続人の相続権が喪失することをいいます。相続人の廃除と異なり、家庭裁判所への申立ては不要となります。
また、被相続人をしぼうさせようとしたことを知って、告発または告訴しないような場合も相続欠格事由に該当します。
代襲相続人になるのは誰?
代襲相続人には、被相続人から見て、直系卑属であればどこまででもなることができます。例えば、被相続人よりも先に、被相続人の子が死亡した場合は、孫が代襲相続人となり、孫が先に死亡した場合は、ひ孫が代襲相続人となります。
他方で、被相続人の兄弟姉妹が相続人の場合は、その兄弟姉妹の子どもは代襲相続人となれますが、被相続人の甥または姪の子どもは代襲相続人となることはできません。
代襲相続するために必要な手続きはあるの?
代襲相続をするためには、法律上特別な手続きは必要ありません。
ただし、実際上、代襲相続人が被相続人の預金を相続する場合や、被相続人の土地を相続する場合などは、金融機関や登記所に対して、自身が被相続人の代襲相続人であることを戸籍などで証明する必要があります。
代襲相続人の相続割合(法定相続分)
代襲相続では、相続人の相続割合を、代襲相続人が引き継ぐことになります。
代襲相続人が複数いる場合には、相続人の相続割合を各代襲相続人に均等に割り当てることになります。
孫が代襲相続する場合
上記の例の場合、相続人は、配偶者、子A、孫B1、孫B2になります。 それぞれの相続分は、配偶者が2分の1、子Aが4分の1(子A及び子Bが残りの2分の1を均等に割るため)となります。 そして、子Bの4分の1の相続分を、孫B1と孫B2が均等に割るため、孫B1と孫B2の相続分は、それぞれ8分の1となります。 なお、その他の人は、代襲相続人になりません。
甥姪が代襲相続する場合
上記の例の場合、相続人は、兄、甥、姪となります。 それぞれの相続分は、兄が2分の1、姉の2分の1の相続分を甥と姪が均等に割ることになります。 そのため、甥と姪の相続分は、それぞれ4分の1となります。 なお、姉夫は、代襲相続人になりません。
養子の子の場合
被相続人が養子縁組をした場合、その養子は、被相続人の子としての身分を取得するため、相続人となります。
もっとも養子の子が、被相続人の代襲相続人となるかは、2つの場合に分けることができます。
一つ目は、被相続人が養子縁組をした後に、養子に子が生まれた場合です。この場合は、その子は被相続人の孫になるため、代襲相続人になります。
二つ目は、被相続人が養子縁組をする前に、養子に子が生まれていた場合です。この場合は、その子は被相続人の孫にあたらないため、代襲相続人にはなれません。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
代襲相続の代襲相続もある(再代襲)
孫が代襲相続人となる場合で、その孫が被相続人の死亡以前に相続権を失ったときは(孫が被相続人の死亡前に死亡した場合、孫が相続人廃除された場合、孫に相続欠格事由が生じた場合など)、孫の子であるひ孫が再代襲相続人となります。
このような代襲相続の代襲相続を、再代襲相続といいます。
甥・姪の子は再代襲しない
被相続人のひ孫が再代襲相続人になれるのに対し、被相続人の甥や姪の子は再代襲相続人にはなれません。
甥や姪の子や甥や姪の孫に、再代襲相続や再々代襲相続を認めてしまうと、被相続人から縁遠くなってしまい、相続人の人数が無限に増える可能性があるため、相続財産が散逸してしまうおそれがあるためです。
代襲相続で税金が安くなることも
相続税には、基礎控除額というものがあります。
基礎控除額は、まず3000万円まで認められており、その3000万円に相続人1人あたり600万円が加算されます。
具体的には、相続人が1人であれば、基礎控除額は、3600万円ということになります。
そして、その相続人が被相続人よりも先に死亡し、相続人に子が3人いた場合は、子らが代襲相続人となります。
そうすると、相続人が1人から3人に増えるため、3000万円に1800万円(600万円×3)を加算した4800万円が基礎控除額となります。
相続財産から基礎控除額を引いた額に対して、相続税が生じるため、代襲相続により税金が安くなることもあるということになります。
税金の2割加算について
被相続人の配偶者、両親、子、孫(代襲相続人)以外の人が、相続または遺贈などにより相続財産を取得した場合には、その人の相続税が2割加算されます。
したがって、兄弟姉妹や姪・甥(代襲相続人)が、相続により相続財産を取得した場合には、その人の相続税が2割加算されることになります。
相続放棄後の代襲相続に注意
例えば、一人っ子のあなたの父親が多額の借金を残したまま死亡したケースを想像してみてください(すでに母親は死亡)。あなたが、相続放棄をすれば、借金を背負わなくて済みます。しかし、あなたが相続放棄をしたことで、相続人となったあなたの祖父母が相続放棄をしなかったとします。そうすると、あなたの祖父母は、あなたの父親の借金を背負うことになります。そして、あなたの祖父母が死亡した場合、あなたの父親は既に死亡しているため、あなたが父親の代襲相続人として、祖父母の背負った借金を代襲相続することになります。
このように、父親の借金を相続放棄したにもかかわらず、最終的に父親の借金を背負うことがあるため、相続放棄後の代襲相続には注意が必要です。
代襲相続人に遺留分は認められているか
遺留分とは、一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分のことをいいます。
一定の相続人とは、被相続人の配偶者、子、両親を指します。子に遺留分が認められる以上、被相続人の孫が代襲相続人となった場合でも、孫に遺留分が認められることになります。
他方で、兄弟姉妹には遺留分が認められないため、甥や姪が代襲相続人となった場合でも、甥や姪には遺留分は認められないことになります。
代襲相続と数次相続の違い
数次相続とは、被相続人の死亡後、相続人らが遺産分割をする前に、相続人のうちの一人が死亡するような場合をいいます。
被相続人が死亡する前に相続人が死亡する場合が代襲相続で、被相続人が死亡した後に相続人が死亡する場合が数次相続という点で、代襲相続と数次相続は異なります。
また、代襲相続は、相続人の子が代襲相続人として遺産分割に参加しますが、数次相続だと、相続人の子だけでなく配偶者も(相続人の法定相続人であるため)、被相続人の遺産分割に参加することになります。
代襲相続でお困りでしたらご相談ください
現代の日本では、高齢化社会が進んでいるため、親より先に子が亡くなることは少なくありません。その意味において、代襲相続は起こりやすいものであるといえます。
他方で、代襲相続については、正確な理解はあまりされておらず、手続きも煩雑なものとなります。
そのため、代襲相続が発生した場合には、手続きを正確に進めていくためにも、一度弁護士に相談されることをおすすめします。
交通事故の被害者になった場合、弁護士に相談・依頼することで、慰謝料が高額になったケースを耳にしたことがあると思います。
そこで悩ましいのが、交通事故に遭った後、どのタイミングで弁護士に相談・依頼すれば良いのか分からないという点です。
そこで、今回は、交通事故の被害者になった場合、どのタイミングで弁護士に相談・依頼するべきかということについて解説します。
交通事故で弁護士に相談・依頼するタイミングは?
結論から言いますと、交通事故の被害者になった場合、弁護士への相談・依頼は早ければ早いほど良いと言えます。
早いタイミングで相談・依頼することにより、幅広いサポート受けることができるからです。
また、早いタイミングで相談・依頼したからといって、弁護士費用に大きな差はありません。
弁護士に相談するタイミングと受けられるメリット
交通事故発生から解決までは、以下の図のような流れとなっています。
基本的にどのタイミングからでも、弁護士に相談・依頼することは可能です。
しかしながら、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼することが、最終的には被害者にとってメリットにつながるといえるでしょう。
そこで、以下では、タイミング別に受けられるメリットを解説します。
事故直後に相談するメリット
交通事故直後に弁護士に相談・依頼するメリットの第一は、弁護士から今後の見通しについてアドバイスを受けることができ、被害者のストレスが大幅に緩和されるという点にあります。
交通事故直後は、ご自身の怪我の治療などに専念しなければならないため、警察からの聞き取り捜査や実況見分捜査への対応に大きなストレスを抱えます。
そのようなとき、弁護士が面倒な手続きを代理し、適切なアドバイスをすることで、ストレスを緩和することができます。
また、怪我をしているにもかかわらず、物損事故として警察に届出をしていると、治療費や慰謝料などの賠償請求ができない可能性があります。
そのようなときは、弁護士に代理をしてもらい、警察に診断書などを提出することによって、物損事故から人身事故への切り替えがスムーズに進むというメリットもあります。
治療中・入院中に相談するメリット
例えば、通院頻度が低い、医師の指示なく整骨院に通ったなどの場合には、慰謝料が減額するおそれがあります。
そのような治療中・入院中に、弁護士に相談・依頼することによって、慰謝料の減額を防ぐためのアドバイスを受けることができます。
逆に、治療中・入院中に、慰謝料が減額される原因を作ると、後の示談交渉での増額が厳しい場合があるので、注意が必要です。
また、相手方保険会社から治療費の打ち切りを打診された場合でも、弁護士から治療費対応の延長を相手方保険会社に対し交渉してもらえるなどのメリットもあります。
後遺障害等級認定の際に相談するメリット
治療・入院後、医師から症状固定と診断されて後遺症が残った場合、後遺障害等級認定の申請をすることができます。
症状固定とは、治療を継続しても、怪我の大幅な改善が見込めないと判断されることをいいます。
また、後遺障害等級認定とは、症状固定後に残った後遺症に応じて認定される1級から14級までの等級のことをいい、認定されれば、等級に応じて後遺障害慰謝料や逸失利益の請求をすることができます。
後遺障害等級に応じて賠償額に大きな差が出るため、後遺障害認定審査時に適切な等級が認定されるよう、弁護士に相談・依頼することが大切です。
示談交渉時に相談するメリット
示談交渉は、基本的には相手方の保険会社と行うことになります。
しかし、保険会社は交通事故の交渉に関してプロであり、被害者自らが賠償額の増額交渉をするには、交渉力に差があるため、非常に厳しい側面があります。
そこで、交通事故に関する法律の知識、判例に詳しい弁護士に依頼することで、下記の弁護士基準を用いた交渉をすることが可能となります。
その結果、相手方保険会社が主張する過失割合を修正できる可能性も高くなります。
| 自賠責基準 | 自賠責保険法で定められた最低限の補償を行うことを目的とした基準 |
|---|---|
| 任意保険基準 | 任意保険会社が用いる基準で、自賠責基準と同程度の基準 |
| 弁護士基準 | 裁判所や弁護士が用いる基準で、判例に基づいた最も妥当かつ高い基準 |
調停・裁判になったときに相談するメリット
加害者側との示談交渉が決裂すると、調停や裁判に発展することになります。
調停や裁判が始まってから弁護士に相談・依頼したとしても決して手遅れではありません。
もっとも、調停や裁判では、証拠に基づいて自らの主張を展開していかなければ、被害者にとって不利な判決が下される可能性があります。
そのため、調停や裁判のための面倒な手続きや準備を弁護士に行ってもらうことにより、被害者にとって有利な判決が下される可能性が高くなるようにすることが大切です。
死亡事故の場合はいつ相談・依頼すべきか?
交通事故被害者が死亡した場合、加害者側に対し、葬儀関係費、死亡慰謝料、死亡による逸失利益などの賠償請求を行うことになります。 交渉は、葬儀後から49日の法要以降に開始されるケースが多いですが、遺族の方の心情はたった49日では整理がつきません。 そのようなとき、弁護士に相談・依頼することで、加害者側との交渉を一任することができ、精神的な負担を大幅に軽減することができます。まずは交通事故事件専属のスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
弁護士への相談・依頼が手遅れになってしまうタイミング
交通事故後に弁護士に相談・依頼をしても、手遅れになるケースがあります。
代表的な例としては、加害者側と示談が成立している場合や、損害賠償請求の時効が成立している場合が挙げられます。
既に示談が成立している
示談書は、当事者(被害者と加害者)双方が示談内容に納得した上で、サインをするものです。
そのため、一度、示談が成立してしまうと、弁護士に相談・依頼したとしても、示談内容の変更を求めることはできません。
ただし、示談後に思わぬ後遺症が発覚したというような場合では、示談内容に含まれていない事柄であるため、例外的に変更を求めることができる場合もあります。
損害賠償請求の時効が成立している
交通事故の損害賠償請求は、原則として3年(令和2年4月1日以降は、人身傷害に関しては5年)という時効が存在します。
時効のカウントが開始されるタイミングは、事故状況によって異なるため注意が必要です。
以下に、代表的な例を紹介します。
| 事故状況 | 時効期間 |
|---|---|
| 事故発生時から加害者が分かる場合 | 損害及び加害者を知った日の翌日から3年または5年 |
| 後から加害者が分かった場合 | 損害及び加害者を知った日の翌日から3年または5年 |
| 加害者が分からない場合 | 交通事故発生の翌日から20年 |
| 交通事故で後遺症が残った場合 | 症状固定日の翌日から3年または5年 |
相談・依頼する前に知っておきたい!弁護士の選び方
交通事故の弁護士選びに失敗すると、示談金が変わらない、弁護士の対応が遅い、弁護士との相性が悪いなどのリスクがあります。
そこで、以下に、弁護士選びのポイントを紹介します。
【弁護士選びのポイント】
- 交通事故の示談交渉の経験が豊富
- 後遺障害認定に詳しい
- 医学的知識を兼ね備えている
- 説明がわかりやすく理解しやすい
いずれにせよ、インターネットでよく調べた上で、無料相談などを活用し弁護士の雰囲気を知ることで、弁護士選びを失敗するリスクを下げることができます。
弁護士法人ALGが解決した交通事故事例
弁護士に依頼した結果、ご相談日からわずか2週間で約150万円増額できた事例
【事例の概要】
ご依頼者様(40代女性)は、自転車に乗り側道を直進していたところ、左側脇道から一時停止を無視し交差点へ進入してきた車両に衝突されました。
ご依頼者様は、事故により、後遺障害等級14級9号と認定され、相手方保険会社より約200万円の賠償額の提示をされ、この金額が妥当であるか確認し可能であれば賠償額を増額との希望で弊所に来所されました。
【弊所の活動及び解決結果】
ご依頼者様は、主婦業の傍ら、お仕事にも従事されている兼業主婦でした。相手方保険会社からは、休業損害分(お仕事に従事されている分の休業損害)についてのみの賠償額の提示でしたが、弊所介入後、主婦休損(主婦としての休業損害)も認められ、結果的に約90万円の休業損害が認められました。
また、後遺障害等級14級9号の認定に対し、相手方保険会社は、後遺障害慰謝料として40万円を提示していましたが、弊所から裁判所基準110万円が認められるべきと主張したところ、満額が認められる結果となりました。
その結果、当初の200万円の提示に対し、ご相談日からわずか2週間で約350万円まで増額し、示談することができました。
保険会社に何度もアプローチを図った結果、約1ヶ月で賠償金を約350万円増額した事例
【事案の概要】
ご依頼者様(高齢の男性)は、自転車に乗り横断歩道を走行していたところ、相手方が運転する車両に衝突され、大腿骨頸部を骨折し、人工骨頭置換術を受けました。
ご依頼者様は、事故により、後遺障害等級10級11号と認定され、相手方保険会社より約200万円の賠償額の提示をされ、この金額が妥当であるか確認し可能であれば賠償額を増額との希望で弊所に来所されました。
【弊所の活動及び解決結果】
ご依頼者様は、事故当時、高齢で仕事をされていなかったため、休業損害や逸失利益は争点とはならず、相手方保険会社とは、主に慰謝料額についての交渉となりました。
弊所から相手方保険会社に対し、早期解決希望である旨を伝え、何度もアプローチをした結果、ご相談日からわずか1か月で約550万円まで増額し、示談することができました。
よくある質問
早めに弁護士に依頼することで、解決までの期間を短縮することはできますか?
弁護士への相談・依頼が早いと、解決までの期間を短縮することができます。
早めに相談・依頼することで、幅広いサポートを受けることができるからです。
示談交渉の途中からでも弁護士に依頼することは可能ですか?
示談交渉の途中からでも弁護士に相談・依頼することは可能です。
示談交渉の途中から弁護士が介入した場合、弁護士基準を用いて、示談金の大幅な増額を期待することができます。
弁護士に相談・依頼するデメリットはありますか?
弁護士に相談・依頼した場合、弁護士費用がかかります。
しかし、交通事故の場合、弁護士費用特約が利用できます。
弁護士費用特約とは、交通事故の被害に遭った際に、加害者側へ損害賠償請求を行うために必要な弁護士への相談・依頼の費用を補償する自動車保険特約のことをいいます。
この弁護士費用特約を利用することにより、被害者が持ち出しで費用を支払うということは、ほとんどありません。
なお、交通事故における弁護士費用の相場は以下のとおりとなります。
| 相談料 | 5000円/30分~(税別) |
|---|---|
| 着手金 | 10万円~(税別) |
| 成功報酬 | 経済的利益の10~30%+数万円(税別) |
| 日当・実費 | 3万円~5万円程度(税別) |
交通事故で後悔しないためにも、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
交通事故で後悔しないためにも、交通事故の被害に遭ったら、早い段階で弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
弁護士に相談・依頼することにより、交通事故全般についてサポートを受けることができます。
また、弁護士基準により、示談金が増額できる可能性もあります。
他方で、弁護士の人柄や相性については、実際に弁護士と話をしてみないと分からない部分も多くあると思います。
そのため、無料相談などを活用し、弁護士の雰囲気を知った上で、早めの依頼をされることをおすすめします。
交通事故に遭った時、示談金を受け取るために示談交渉をすることになります。示談交渉がスムーズに進めばいいのですが、実際にはなかなか進展がないということも珍しくありません。
このコラムでは、示談交渉が進まない場合の原因や対策法について解説しています。示談交渉が進まずお困りの方や、これから示談交渉を進めようとお考えの方は、ぜひこのコラムをご覧ください。
示談交渉が進まない原因
本来的には、示談の交渉は加害者との間で行うものです。しかし、交通事故の場合、加害者が任意保険に加入していれば保険会社との間で交渉を行うことになります。
示談交渉が進まない主な原因は、交渉の対象が加害者本人であるか、保険会社であるかによって異なります。それぞれのケースについて、どのような原因で示談交渉が進まないのかを見ていきましょう。
加害者に資力がない場合
加害者と示談交渉をしている場合、示談交渉が停滞する原因になりやすいのが加害者の資力(示談金を支払う能力)の不足です。
加害者が自賠責保険に加入していれば、被害者は最低限度の補償を受けることができます。しかし、交通事故の賠償額は高額となりやすく、自賠責保険の支払のみでは不足することも多いです。加害者が任意保険に加入していれば、任意保険会社から支払を受けられます。しかし、そうでなければ加害者本人に負担してもらうことになるため、加害者の資力が問題となるわけです。
資力不足が問題になる場合、例えば、分割払いを提案して、少額ずつでも示談金を受領するということが考えられます。
なお、加害者が自賠責保険にも加入していない場合でも、政府保証事業を利用することが可能です。政府保証事業を利用すると、自賠責保険の限度額まで、国から補償を受けることができます。
加害者としての意識に乏しい場合
加害者と示談交渉をしている場合、加害者の側で加害者としての自覚に乏しいと、示談交渉が停滞しやすくなります。
このようなケースだと、加害者の方で賠償の必要性を感じなかったり、賠償額を不当に低く見積もったりすることが多く、示談交渉がなかなか進みません。特に、被害者側に過失があるような事故であったり、小規模な事故であったりすると、その傾向が表れやすいです。
小規模な事故のときには、被害状況を撮影する等記録しておくと、示談交渉で揉めにくくなる場合もあります。また、ドライブレコーダーを設置している場合は、必ず録画データを残しておきましょう。
加害者との示談が進まない場合にできること
加害者本人との示談交渉が進まない場合の対処法として、どのようなものが考えられるのでしょうか。具体的な対応策としては、内容証明郵便の送付、ADRの利用、裁判の提起等が挙げられます。
連絡を無視される場合は内容証明郵便を送る
加害者が連絡を無視するようであれば、内容証明郵便で損害賠償請求をすることが考えられます。内容証明郵便で送付すると、どのような内容の書面をしたか、加害者が書面を受け取ったかを記録に残すことができます。
通常のハガキや手紙での連絡は無視しても、内容証明郵便で連絡があれば内容を確認したり、回答をしたりする人もいるため、内容証明郵便で連絡をすることで、加害者を交渉のテーブルにつかせられる場合もあります。
もっとも、自分にとって不利な内容も記録に残ることになるので、連絡の文面は慎重に考える必要があります。可能な限り、交通事故を多く扱う弁護士等に相談しておくことが望ましいです。
ADRを利用する
ADRとは、Alternative Dispute Resolution(裁判外紛争解決手続)の略であり、裁判所以外の機関を利用して紛争の解決を図る方法です。具体的な種類としては示談あっ旋、調停、仲裁等があります。裁判ほどの厳格さが求められないため、手軽に利用できて早期に決着することが多い点がメリットです。
交通事故の場合のADR機関としては、交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センター等が存在します。
事案によって利用すべき機関や主張すべき内容は異なってくるので、実際にADR機関を利用する前に弁護士等に相談しておくと、効果的にADRを利用しやすくなります。
裁判(訴訟)を起こす
最終手段として考えられるのが、裁判(訴訟)の提起です。裁判は、時間も費用もかかることが多いため、内容証明郵便の送付やADRの利用でも賠償を受けられなかったときに、選択することになります。
裁判は、示談交渉と異なり、裁判所の判断によって金額が決定します。そのため、加害者が資力はあるのに示談を拒んでいるような場合には、裁判の利用が有効です。
また、請求する金額60万円以下の場合、少額訴訟という手続が利用できます。少額訴訟は通常の訴訟よりも手軽に利用でき、基本的に1回の審理で判決が出るので迅速な解決が望めます。
裁判の場合、書面ベースでのやり取りとなり、一度自身に不利な判決がなされると覆すことも難しいため、一度は弁護士の利用を検討しておいた方が望ましいです。
まずは交通事故事件専属のスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
相手方保険会社と連絡が取れない・担当者の態度が悪い場合
保険会社が交渉を担当している場合でも、交渉が進まない場合もあります。
考えられる原因の一つは、担当者との間で連絡が取れないことです。担当者が多忙でこちらから連絡をしても連絡がとれなかったり、仕事の関係で保険会社からの電話に出られなかったりすると、どうしても担当者と連絡がつかなくなりやすいです。
また、担当者によっては、治療中なのに治療費の立替を終了しようとしてきたり、事故状況に関してこちらの主張を聞いてくれなかったりすることもあります。このような場合には、どうしても保険会社との間での信頼関係が築けず、示談交渉が上手くいかないことが少なくありません。
過失割合や示談金額で揉めて進まない場合
交通事故をめぐる認識についての争いも、示談交渉が停滞する原因になります。
特に争いになりやすいのが、過失割合です。交通事故は、加害者に落ち度(過失)があって発生しますが、被害者にも落ち度がある場合があります。過失割合とは、加害者と被害者の過失が、どの程度交通事故の発生の原因になっているかという割合のことです。特に双方車両が進行中の事故では、基本的に一方の過失が0となることはないため、争いが起きやすいです。
また、示談金額で争いとなることも良くあります。保険会社としては示談金額を抑えたいため、慰謝料や逸失利益等を低く提案することがあるためです。
弁護士への依頼で態度が変わる場合も
加害者本人と保険会社のいずれとの交渉でも、弁護士が介入すると、態度が変わる場合が少なくありません。
加害者本人との交渉の場合、弁護士が介入することで、被害者が真剣に示談を望んでいることが伝わること等が理由です。
また、保険会社も、弁護士が介入すると、示談が成立しなければ紛争処理センターを利用されたり、裁判を提起されたりするとの予想がつくようになります。そのため、いわゆる弁護士基準で算定した慰謝料をベースとして交渉が行えるようになり、示談交渉自体もスムーズに進むようになることがほとんどです。
示談が進まずお困りの方は弁護士にご相談ください
示談交渉が進まない場合、原因がどこにあるのかを見極め、適切な対策を取っていく必要があります。しかし、交通事故を初めて体験した方が、示談交渉の進行について適切な判断をすることは極めて困難です。多数の交通事故を扱っている弁護士であれば、より円滑に示談交渉が行えます。
また、弁護士が介入すれば、相手方との交渉を代わって行い、弁護士基準の利用により慰謝料も増額する可能性が高いです。ご自身で示談交渉を進めようと考えられる場合でも、法律相談を通じて弁護士の知見を得ておくと、示談交渉を円滑に進めやすくなります。
示談交渉が進まずお困りの方は、まずは一度弁護士にご相談ください。

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- 保有資格
- 弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)
