監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
別居を継続することによって離婚がしやすくなるといいますが、その期間について法律上の定めはありません。そもそも、別居の長短にかかわらず、夫婦間で離婚の合意ができれば協議離婚をすることはできます。しかしながら、合意できない場合は、裁判所で別居期間等を考慮して離婚させるか否かを判断してもらう必要があります。
このページでは、離婚をするための別居や別居期間について詳しく解説します。
目次
婚姻期間の破綻が認められる別居期間の目安は3~5年
離婚が認められる事由は、民法で規定されており、別居については「婚姻関係を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当するか否かが問題となります。その判断において、別居期間の長短が判断材料の一つとされます。離婚するにあたっては、一般的に、3年から5年程度の別居期間が必要とされています。この程度の期間が経過することによって、以後、婚姻関係の修復はできないと判断されるようです。もっとも、この期間は、一般的なものであり、有責行為の有無、婚姻期間等、その夫婦の事情によって異なります。
相手が有責配偶者であれば、より短い別居期間で離婚できる可能性も
相手方が不貞やDV等を行った有責配偶者であり、そのことが原因で他方配偶者が別居した場合は、この事実をもって婚姻関係の修復が困難であると判断されることが多いと考えられます。この場合は、一般的な別居期間より短い期間であっても、婚姻関係が破綻していると判断され、離婚が認められる可能性があるでしょう。ただし、その場合は、不貞やDV等を証明できるだけの証拠が必要となります。そのような証拠があれば、調停で相手方が離婚に応じてくれなくても、裁判で離婚が認められる場合もあるでしょう。
実態としては別居期間1年未満の離婚が多い
厚生労働省の「平成21年度「離婚に関する統計」の概況」によると、離婚した夫婦の82.5%は1年未満の別居期間で離婚に至っており、裁判所を介さない協議での離婚の場合は、85.1%となっています。すなわち、離婚するのに3年から5年の別居期間を要した夫婦は、話合いがまとまらず、スムーズに協議が進まなかった事例が多いものと考えられます。
離婚までの別居期間が長期に及ぶケース
ただの夫婦喧嘩の場合(性格の不一致)
性格の不一致で別居した場合は、「婚姻関係を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当するか否かの判断に、3年から5年の別居期間が必要であると判断する裁判例が多いと考えられます。裁判所は、3年から5年の別居期間をもって婚姻の修復可能性がなく、婚姻関係が破綻していると判断しているようです。
自身が有責配偶者の場合
この場合の別居期間の目安は10年です。
自ら離婚の原因を作った配偶者の離婚請求を認めてしまえば、自ら簡単に離婚事由を作り出して離婚できてしまうため、信義則に反し、原則として認められていません。
もっとも、①長期間の別居があり、②未成熟子が存在しないこと、③離婚によって配偶者が精神的・社会的・経済的に過酷な状態におかれないこと、という事情があれば、例外として有責配偶者からの離婚を認める可能性を示した判例があります。そして、この①で考慮される別居期間の目安として、10年程度が必要であるとされているのです。
そもそも相手が離婚に同意していない
相手方がそもそも離婚に応じていない場合は、話合いで離婚が成立しない可能性があります。この場合は、離婚調停を申立て、調停が成立しない場合は、裁判で離婚を認めてもらう必要があります。調停から裁判にいたるまでには長期間かかることもあり、その間、別居期間もおのずと長くなっていきます。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
別居は相手の同意を得てから
民法上の離婚事由として、「配偶者から悪意で遺棄されたとき」というものがあります(民法770条1項2号)。そもそも夫婦間には、同居義務があります(民法752条)。この同居義務に反して、DV等の理由もなく、相手方に無断で別居を開始すると、この悪意の遺棄に該当し、離婚原因を作った有責配偶者とみなされる可能性があります。そこで、離婚する場合には、相手方の同意を得るか、メール等で別居の意思を伝えたうえで、別居を開始するようにしましょう。
別居期間が長い場合、親権はどうなる?
父母のいずれでも、子どもと一緒に暮らしている親は、離婚後の親権者を決定するうえで、有利な判断要素となり得ます。なぜなら、別居期間が長くなることによって、子どもと接する時間が増え、監護実績を積むことができるからです。裁判所は、これまでの監護実績のある方を親権者とすることで、子どもの負担を考えて、子どもの生活環境を安定させることを重要視しているのです。
単身赴任は別居期間に含まれる?
単身赴任の場合は、あくまでも労働のために住居を分けているにすぎないため、通常は、別居期間には該当しません。もっとも、単身赴任先から自宅に帰らない意思をもって、帰らない状況が継続した場合には、最後に自宅に帰った日を別居開始日として、別居期間を計算することになるでしょう。
離婚に必要な別居期間を知りたい方は弁護士にご相談ください
離婚のための別居期間については、一般的な目安に過ぎず、夫婦によって考慮すべき事情は千差万別です。離婚を考えている場合は、別居している間に、婚姻費用を求める手続きをしたりなど、離婚に至るまでの手続や条件の取り決めを一つ一つ進めていかなければなりません。
離婚をするために別居を開始しようとしている方、別居を開始している方は、是非、弁護士にご相談ください。
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- 保有資格
- 弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)