
監修弁護士 辻 正裕弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所 所長 弁護士
交通事故で、過失割合という言葉を聞いたことがある方がおられるかもしれません。過失割合とは、交通事故を発生させた責任が事故当事者でどの程度あるのかを割合化したものです。被害者にとって、過失割合がどのくらいになるのかは、とても重要になります。
なぜならば、被害者が相手方保険会社に請求できる金額が大きく変わり得るからです。本記事では、過失割合でよく見られる9対0という場合について解説していきます。
交通事故の過失割合9対0ってどういうこと?
過失割合は、9対1や8対2のように、割合の合計が足すと10になることが通常です。しかし、事案によっては9対0となる場合があります。これは、いわゆる片側賠償と呼ばれるもので、過失割合について、10対0か9対1かで揉めているケースで取り得る解決策の一つと言えます。
9対0(片側賠償)になる仕組み
過失割合が9対1の場合には、被害者側が請求できる金額が9割となる一方で、被害者も加害者に対して1割の賠償金を支払う必要があります。他方、9対0の場合には、被害者側が請求できる金額が9割となるうえ、被害者が加害者に1割の賠償金を支払う必要がありません。
交通事故の過失割合9対0の計算例
具体例で考えてみましょう。例えば、後方からの追い越しが禁じられている交差点において、後方を走行する車両が、前方を走行する車両を追い越そうとして、前方走行車両に衝突したという交通事故が生じたとします。
加害者 | 被害者 | |
---|---|---|
過失割合 | 9 | 0 |
損害金 | 200万円 | 50万円 |
支払う金額 | 45万円 | 0円 |
このケースにおける原則の過失割合は、前方車両にも一定程度の過失割合が認められるため、前方車両と後方車両でそれぞれ9対1になるとされています。しかし、この場合でも、9対0の片側賠償で解決した場合、前方車両は1割の過失を認めることにはなるものの、前方車両は後方車両に対して賠償金を支払わずに済みます。
その結果、前方車両は、加害者に対して過失1割分の損害金20万円を支払わずに済み、45万円を受け取れることになるのです。
過失割合9対0のメリットデメリット
メリット
過失割合を9対0とすることのメリットは、前述したとおり、10対0や9対1などで揉めている交通事故事案において、お互いの主張の折り合いをつける形で解決できる点にあります。実際、紛争が長期化することを避けるため、任意保険会社の側から、片側賠償を提案してくることすらあります。
デメリット
過失割合を9対0とすることのデメリットは、当然のことながら、被害者が加害者側から受け取れる損害賠償の金額が9割に限定されてしまうことです。過失割合が10対0の場合と比べると、賠償額としては減額されてしまいます。
交通事故の過失割合を9対0に修正できた解決事例
以下では、交通事故の過失割合を9対0に修正して解決できた事例を紹介いたします。
粘り強い交渉によって8対2から9対0に修正することができた事例
粘り強い交渉によって、過失割合を20対80から0対90に修正させた事案があります。事案の内容は、ご依頼者様である30代の女性が、交差点の優先道路側を通行中に、一時停止を無視し直進してきた相手方車両に衝突したというものでした。
相手方保険会社は、当初20対80の過失割合を主張していましたが、ご依頼者様は、慰謝料の金額も含め納得できないとしてご相談にこられました。弊所は、類似の裁判例を提示したうえで、事故態様などに鑑み、上記過失割合は不当である旨の主張を行いました。
粘り強い交渉の結果、0対90とすることに成功しました。
過失割合5対5の駐車場内の事故を9対0へ修正することができた事例
過失割合を50対50から、90対0に修正させた事案もあります。この事案は、スーパーの駐車場内で、前方を進んでいた車両が突如後方にバックし始め、クラクションを鳴らし注意を促したにもかかわらず停止しなかったためにご依頼者様の車両に衝突されたというものです。
相手方保険会社は、当初、過失割合を50対50と主張しておりましたが、弊所は、ドライブレコーダーを確認したり、加入先の保険会社から資料を収集し調査するなどして、5対95が妥当である旨主張し、交渉を行いました。交渉は難航しましたが、合意書を作成しないとの条件で0対90で解決することができました。
交通事故の過失割合を9対0にするためには弁護士にご相談ください
過失割合について、相手方保険会社と適切な交渉をおこなうためにも、ご自身だけで悩まれず、まずは専門的な知見を有する弁護士にご相談されることをおすすめいたします。
扶養型の寄与分の概要等についてご説明します。
扶養型の寄与分とはどんなもの?
扶養型の寄与分とは、相続人の中に、被相続人(亡くなった方)に対して、法律上の扶養義務の範囲を超えて財産的な援助(生活費の負担、借金の返済など)を行い、それによって被相続人の財産の維持または増加に特別な貢献をした場合に認められる寄与分の一類型です。
扶養型の具体例
扶養型の寄与分が認められ得る具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
①親が高齢や病気で働けず、年金だけでは生活が困難。子が自身の生活費とは別に、毎月まとまった金額を数年間仕送りし続けた。この仕送りがなければ、親は貯蓄を取り崩すか、資産を売却する必要があった。
②兄弟姉妹(被相続人)が重い病気で長期療養が必要となり、収入が途絶えた。他の兄弟姉妹が、医療費や生活費を継続的に負担した。
③被相続人が多額の借金を抱えていたが、相続人がその借金を代わりに返済したことで、被相続人の資産(不動産など)が差し押さえられるのを防いだ。
扶養型の寄与分が認められるために必要な要件
扶養型の寄与分が認められるためには、以下の要件を充足することが必要です。
- 相続人による寄与であること
- 扶養内容が通常期待される扶養義務の範囲を超えるものであること
- 寄与と被相続人の財産の維持・増加があること
- 寄与と被相続人の財産の増加に因果関係があること
通常期待される扶養義務の範囲とは
民法は、直系血族および兄弟姉妹間に相互扶養の義務を定めています(特別な事情下では三親等内の親族も扶養義務を負うことがあります)。そのため、相続人が被相続人に対して行った経済的援助などが、この法律上の義務や社会通念からみて通常期待される程度に留まる場合は、寄与分とは評価されません。
これが『特別の寄与』として認められるか否かは、主に①被相続人が援助を必要とする状況にあったか(要扶養状態)、②援助が見返りを求めずに行われたか(無償性)、③援助が一定期間継続されたか(継続性)といった点を総合的に見て判断されることになります。
扶養型の寄与分を主張するポイント
扶養による寄与分が認められるためには、通常期待される扶養義務の範囲を超えた扶養を行った事実を立証することが必要です。しかしながら、被相続人の存命中にどのような支援がなされていたかの詳細は、ごく限られた関係者しか把握していないケースが少なくありません。
被相続人が亡くなった状況では、寄与分を主張する相続人自身が、その特別な貢献内容を具体的に示す証拠を提出することが求められます。
有効な証拠を集める
相続人が被相続人に行った扶養の内容等を証明する証拠として、定期的な送金であれば、銀行の利用明細や関係者の預金通帳が挙げられます。これらは援助の具体的な内容や金額を示します。同居による扶養の場合、被相続人分の生活費だけを切り分けるのは難しいものの、家計簿や預金の流れを追跡することで、扶養に相当する金額を立証することが可能な場合もあります。
また、『なぜ扶養が必要だったのか』という点を明らかにするために、被相続人の健康状態を示す診断書や、扶養開始時の状況説明に関する資料なども用意しておくと良いでしょう。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
扶養型の寄与分が認められなくても請求できる可能性あり!過去の扶養料求償とは?
被相続人の扶養に費用を要した場合、寄与分とは異なる解決策として、共に扶養義務を負うべき他の親族に、求償権を行使する方法も存在します。
一方で、過去には、扶養による寄与分の請求が裁判で退けられた後に、同じ扶養費用について求償訴訟を起こしたケースで、紛争の蒸し返しにあたるとして請求が認められなかったという裁判例があります。この点については注意が必要です。
扶養型の寄与分を評価する方法
扶養型寄与分の金額算定にあたっては、第一に、相続人が現実に負担した扶養費用の価値を確定させます。仕送りなら送金額の合計、同居なら被相続人分の生活費(食費、光熱費、税金など)がこれにあたります。具体的な数字が不明な場合でも、生活保護基準などを目安に妥当な金額が認定されることもあります。
ただし、重要な点として、この負担額がそのまま寄与分とはなりません。なぜなら、相続人に扶養義務があった場合には、その義務の履行と見なされる部分は寄与分から除かれるためです。この義務相当分の具体的な割合は、寄与の態様や扶養に至る事情、相続人の資力など、あらゆる要素を考慮に入れた上で判断がなされます。
扶養型の寄与分に関するQ&A
実家の両親に仕送りをしていました。扶養型の寄与分は認められるでしょうか?
民法上、子は親(直系尊属)に対して扶養する義務を負っています。そのため、親子間の一般的な援助とみなされるような、例えば、一時的に少額の金銭を送った程度では、通常、この義務の範囲内とされ、寄与分とは認められにくいです。
しかしながら、ご両親が経済的に困窮しており、あなたが本来負うべき扶養の程度を大きく超えるような、多額の金銭援助を継続的に行った結果、ご両親の財産減少を防いだといった特別な事情が認められれば、扶養型の寄与分が成立する余地はあります。
父の介護施設の月額費用を支払っていました。寄与分は認められますか?
認められる可能性はあります。
寄与分が認められるには、①身分関係に応じた通常の期待を超える貢献(特別の寄与)であり、②その貢献がお父様の財産維持・増加につながった、という二つの要素が必要です。
お父様は直系血族ですから、あなたは扶養義務を負っています。この義務の範囲を大幅に超えるレベルで施設費用を援助していたと評価されれば、寄与分が認められる可能性があります。その評価は、施設の月額費用、支払いの継続期間、なぜあなたが負担したのかといった事情を考慮して行われます。
母がやりたがっていた習い事の月額費用を払っていたのですが、これは寄与分になるでしょうか?
繰り返しにはなりますが、寄与分が認められるには、①身分関係に応じた通常の期待を超える貢献(特別の寄与)であり、②その貢献がお母様の財産維持・増加につながった、という二つの要素が必要です。
あなたはお母様(直系血族)の扶養義務者ですが、習い事の費用を負担したことが、この義務の範囲を大幅に超える特別な貢献といえるか、さらに重要な点として、その支出がお母様の「財産の維持・増加」に直接結びつくかは、大きな疑問符がつきます。
生活に必須とは言えない趣味の費用が、財産維持に貢献したと法的に評価されることは稀です。したがって、月謝額や支払期間、開始の経緯などを考慮したとしても、介護費用のような必要不可欠な支出とは異なり、習い事の費用負担が寄与分として認められることは非常に困難というべきです。
扶養型の寄与分についてお困りなら弁護士にご相談ください
扶養方の寄与分についてお困りのことがあれば弁護士に相談されることをお勧めします。
あなたが、配偶者との離婚を考え、別居することを考えた場合、別居後の生活費はどのように支払うのでしょうか。あなたが、専業主婦、パートやアルバイトの場合は、今までの生活が維持できなくなる可能性があります。あなたは、配偶者に対し、生活費(これを婚姻費用といいます。)を請求していくことになります。
法律上は、たとえ別居したとしても婚姻関係が続いている限り、配偶者は、婚姻費用を支払う義務を負っています。しかし、配偶者がそのことを理解せず、または、理解していても婚姻費用を支払わないケースがあります。そこで、別居後に配偶者から婚姻費用の支払を拒否された場合の対処法について以下で詳しく解説していきます。
婚姻費用の支払いを拒否された場合の対処法
配偶者から、婚姻費用の支払いを拒否された場合、相手方から婚姻費用を支払ってもらうためには、以下の3つの対処法があります。以下で、詳しくご説明します。
内容証明郵便の送付
単に、婚姻費用を口頭で配偶者に婚姻費用を請求するのみでは、支払いを拒否されてしまった場合、あなたが婚姻費用を請求したことを証明することができません。そこで、配偶者に口頭で婚姻費用を請求して拒否された場合には、内容証明郵便を送付するようにしましょう。
内容証明郵便は、いつ、いかなる内容の文書を誰から誰宛てに送ったかを郵便局が証明してくれる制度です。内容証明郵便を使ってあなたが配偶者に対して婚姻費用を請求すれば、あなたが配偶者に対し、婚姻費用を請求したこと及び請求した金額まで証明されます。
内容証明郵便を送付すると、婚姻費用を支払ってくれる場合もあります。また、婚姻費用は、あなたが配偶者に対して支払いを請求した時点で具体的な支払義務が生じると考えられています。そのため、内容証明郵便を送付しておくことであなたが配偶者に対して婚姻費用を請求した時点が明確になります。
後に婚姻費用分担請求調停の申立てを行う場合、婚姻費用の支払開始時期を内容証明郵便を送付した時点に遡って主張することが可能になります。
婚姻費用分担請求調停・審判
内容証明郵便送付しても、婚姻費用の支払に応じない配偶者もいます。その場合には、家庭裁判所に対し、婚姻費用分担請求調停または婚姻費用分担請求審判の申立てを行います。
婚姻費用分担請求調停は、家庭裁判所の調停委員会が当事者の間に入り、婚姻費用について協議する手続きです。調停委員会の構成員である、調停委員に対し、互いの意見を主張し合い、合意できる点を探っていきます。
婚姻費用の金額や支払方法について合意ができれば、調停が成立し、配偶者が婚姻費用を支払うことになります。あくまで、調停は協議の場ですので、まとまらない場合もあります。その場合には、調停は不成立になり、審判に移行します。
婚姻費用分担請求審判は、当事者の主張や証拠から、裁判所が客観的に婚姻費用の支払義務について判断する手続きです。
当事者の協議がまとまらない場合であっても、裁判所が資料に基づいて判断することにあるため、一定の結論が出ることになります。裁判所が判断をする日(これを審判日といいます。)に婚姻費用の支払義務があるか否か、その金額がいくらかについて判断が下されます。この判断に不服がある場合には、不服申し立ての手続きが用意されています(これを即時抗告といいます)。
調停前の仮処分・審判前の保全処分
婚姻費用は、あなたが別居してからの生活を支えるものになります。そのため、急を要する費用であるといえます。他方で、婚姻費用分担請求調停や婚姻費用分担請求審判は、結論が出るまでに時間がかかる場合があります。
そのような場合に備えて、調停や審判で結論が出る前に、婚姻費用の支払いを求める手続きがあります。婚姻費用分担請求調停の場合には、「調停前の仮処分」、婚姻費用分担請求審判の場合には、「審判前の保全処分」といいます。
調停や審判の結論が出るのを待っていては、あなたの生活が困窮する事情があり、婚姻費用を支払うべき緊急性が高いと判断された場合には、調停や審判が成立する前に婚姻費用の支払いを受けることができます。
婚姻費用の支払いの強制執行
婚姻費用に関する調停または審判が確定すると、配偶者があなたに対して支払うべき婚姻費用の金額が確定することになります。それにもかかわらず、配偶者が婚姻費用を支払わない場合には、調停または審判の内容に基づいて強制執行の申立てを行いましょう。
調停または審判が確定すると、新たに訴訟提起をせずに強制執行を行うことができます。強制執行の方法は、直接強制と間接強制があります。
直接強制は、配偶者の給与などの財産を直接差し押さえる手続きです。あなたの把握している配偶者の財産から優先的に婚姻費用を回収することになります。
間接強制は、一定の期間内に配偶者が婚姻費用を支払わない場合に、追加の金銭の支払いを課すことで、心理的なプレッシャーを与え、婚姻費用の支払を促す手続きです。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
婚姻費用の支払いに対する遅延損害金の請求
調停や審判で婚姻費用を支払う義務が認められると、支払期限が定められます。この支払期限までに支払いをしない場合には、「遅延損害金」を別途請求することができます。この「遅延損害金」とは、支払期限までに支払いをしなかったことによるペナルティのようなものです。
支払がされるまでの期間に応じて金額が決まります。具体的にいくら請求できるかは、協議により利率を定めている場合には、その利率に応じて金額が決まります。何ら協議していない場合には、民法で規定されている年3分の割合で遅延損害金を請求することができます。
婚姻費用の支払い拒否が認められるケース
婚姻費用は、夫婦が同居協力扶助義務を根拠としています。これは、夫婦が同居して生活するのと同程度の水準の生活を他方の配偶者にさせる義務があることを意味します。そこで、別居に至る経緯が以下のような場合には、婚姻費用の支払拒否が認められる可能性があります。
具体的には、あなたが正当な理由なく別居し、同居しなくなった場合やあなたが第三者と不貞行為を行い、その第三者と同居するために別居するに至った場合などです。これらの場合には、別居の原因があなたにあり、配偶者が婚姻費用を支払う理由がないと判断されてしまうのです。
婚姻費用を拒否された場合のQ&A
時効を理由に婚姻費用の支払いを拒否されました。諦めるしかないのでしょうか?
時効という制度は、判りにくい制度です。単に時効が成立していると主張したとしても、本当に時効により婚姻費用を請求する権利が消滅しているかはわかりません。
婚姻費用の時効は、支払い期限から5年(調停や審判などにより婚姻費用が定められた場合には10年)を経過することにより成立します。
仮に、5年または10年経過していたとしても、あなたが配偶者に支払いを請求し、配偶者が支払う旨の返答をするなど「債務の承認」をしていた場合には、時効が成立していない可能性があります。
別居中です。夫が家を出ていき、私は夫名義の家に住んでいます。この家の住宅ローンを支払っているからと婚姻費用の支払いを拒否されましたが、払ってもらえないのでしょうか?
あなたが夫名義の家に住んでいたとしても婚姻費用を請求することができます。婚姻費用は、既に説明したとおり、あなたの別居期間中の生活費の請求です。一方で、住宅ローンはあなたの住んでいる自宅であるという側面からは生活費ともいえますが、不動産としての資産形成の側面が主なものとなります。したがいまして、婚姻費用の請求と住宅ローンの支払は別のものですので、婚姻費用の請求をすることができます。
もっとも、住宅ローンの支払はあなたの住居を維持している側面もありますので、その点を考慮して、婚姻費用から住居関係費が控除される可能性があります。
具体的な金額については、弁護士に相談するようにしましょう。
相手の浮気が原因で別居していますが、「勝手に出て行った」として婚姻費用の支払いを拒否されています。請求はできないのでしょうか。
既にご説明したとおり、あなたに別居の原因がないのであれば、婚姻費用を請求することができます。
別居した原因はあなたではなく、配偶者の浮気にあるのですから、あなたに別居の正当な理由があり、同居協力扶助義務に反しているということはございません。配偶者が「勝手に出て行った」といったとしても、婚姻費用を請求するには何ら支障はございませんので、ご安心ください。
婚姻費用の支払いを拒否されてしまったら、一度弁護士へご相談ください。
これまで見てきたように、婚姻費用の支払いを拒否された場合に取るべき方法は多岐に渡ります。相手方は、様々な理由をつけて婚姻費用の支払を拒否しようとします。
当事者同士の話し合いでは、感情面で対立し、本来支払いを求められるのにそのままになってしまう場合もあります。当事者同士の話し合いでは、婚姻費用の請求が困難な場合には、弁護士にご相談ください。
まずは、生活費の確保をするためにもお力になれることがあると思います。お気軽にお問い合わせください。
相続の際には、相続人となる人を確定させる必要があります。しかし、相続人が問題のある行動をとった場合などに、相続人として権利が失われてしまうことがあります。本記事では、相続欠格について、わかりやすく説明していきます。
相続欠格とは
相続欠格とは、法律上定められた欠格事由に該当する相続人に、相続権を喪失させるものです(民法891条)。相続権だけではなく、遺贈や遺留分をも喪失させる効果があります。
どんな場合に相続欠格になるの?
相続欠格になる場合は、民法891条に定められています。
欠格事由は、相続人としての権利を喪失させるなど、非常に強い効果を持ちますので、相続人を殺害した場合など、いずれも重大なものに限定されています。
遺産を手に入れるために、被相続人や他の相続人を殺害した、または殺害しようとした
欠格事由としては、第1に、意図的に被相続人や他の相続人を殺害した者や、殺害しようとした者が挙げられます。ただし、あくまでも故意的なものに限られますので、過失によって死亡させてしまった場合には該当しません。また、他の相続人の対象は、あくまでも先順位や同順位の相続人に限定されます。
被相続人が殺害されたことを知りながら黙っていた
第2に、相続人が殺害されたにもかかわらず、このことを告発したり、告訴したりしなかった者が挙げられます。ただし、「是非の弁別がない者、殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族のとき」は、該当しません(民法891条2号)。
詐欺や強迫によって、被相続人が遺言を残すことや取り消すこと、変更することを妨害した
第3に、詐欺や強迫などにより、被相続人の相続に関する遺言の作成、撤回、取消、変更などを妨害した者が挙げられます(民法891条3号)。
詐欺や強迫によって、被相続人に遺言を残させたり、撤回や取消し、変更させたりした
第4に、詐欺や強迫などにより、被相続人に遺言を強いたり、撤回、取消、変更を強いたりした者が挙げられます(民法891条4号)。上記のような妨害だけではなく、作為をさせることも対象となるのです。
遺言書を偽造、書き換え、隠ぺい、破棄した
第5に、被相続人の遺言を偽造、変造、破棄、隠匿した者が挙げられます(民法891条5号)。3号から5号までの事由については、詐欺、脅迫、偽造等の故意だけではなく、相続に際して不当な利益を得る目的が必要となります。
相続欠格者がいる場合、相続順位はどうなる?
相続欠格に該当する者がいる場合には、代襲相続の規定によって処理されます(民法887条2項)。このため、相続欠格に該当する者に子供がいる場合には、子供が代襲相続することになります。
代襲相続とは|代襲相続人になれる人と相続割合相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
相続欠格であることは戸籍に表記されない
相続欠格に該当することは、戸籍等の公的記録に表記されません。このため、こうした資料から相続欠格の有無を直接伺い知ることはできません。
相続欠格者がいる場合の相続手続き
相続欠格に該当する場合には、法律上当然に相続する権利を喪失します。
ただし、相続欠格について争いがある場合には、その該当性を判断するために、不存在確認訴訟といった法的手続を利用する必要があります。
相続欠格と相続廃除の違い
相続欠格と似た制度に、相続廃除というものがあります。
相続廃除は、「被相続人に対する虐待、侮辱、著しい非行」という廃除事由に該当する場合に、家庭裁判所の審判手続を経てはじめて相続権喪失の効果が生じます。
この点で、相続欠格とは異なります。
相続欠格に関するQ&A
相続欠格者が、遺言書に書いてあるのだから遺産をもらえるはずだと言っています。従わなければならないのでしょうか?
結論として、相続欠格者であれば、遺言書に書いてあったとしても、遺産をもらえない場合があります。例外的に、相続人が欠格者であることを認識しながらそのような遺言をしたなど、宥恕の事情がある場合には、遺贈が有効となる場合があります。
相続欠格者から遺留分を請求されました。無視していいですか?
結論として、仮に相続欠格者から遺留分を請求された場合でも、無視することは好ましくありません。 実際に相続欠格に該当するとしても、調停や審判等の法的手続を無視してしまうと、不利な判断が下されてしまう危険性があるからです。
遺産分割後に遺言書の偽造が判明しました。やり直しはできますか?
結論として、やり直すことができます。相続欠格事由があれば、相続発生時まで遡って、相続権が失われるからです。
相続人の一人が嘘を吹き込み、遺言書を書き直させたようなのですが、証拠がないと言われてしまいました。諦めるしかないのでしょうか?
結論として、諦めずに証拠を探すことが大事になります。書面などの客観的な証拠だけではなく、立会人の証言や間接的な事情も証拠になる場合があるからです。
相続欠格者がいます。相続税の基礎控除額に影響しますか?
結論として、相続欠格者は、基礎控除の人数に換算されませんが、代襲相続人がいる場合には、換算されることになります。
相続欠格証明書を書いてもらえない場合は、諦めて遺産分割するしかないのでしょうか?
結論として、諦める必要はなく、相続権無効確認訴訟などの法的手続をとることになります。こうした法的手続により、相続権がないことを確定させることができるからです。
相続欠格に関する問題は弁護士にご相談下さい
相続欠格に該当するか否かは、専門的な知見が必要になります。
また、相続欠格の該当性を踏まえて、どのような手続をとるべきかを適切に判断する必要があります。このため、まずは、専門家である弁護士に相談することを強くお勧めします。
交通事故にはじめて遭った際、どのように対応すればよいかといった不安や疑問を感じることが多いと思います。いざ弁護士に相談してみようと思っても、どの弁護士が良いのかわからないということも多くあると思います。納得のいく結果を得るためには、交通事故事案の取扱いに慣れた交通事故に強い弁護士を選ぶ必要があります。
以下では、交通事故にあった際にどの弁護士に依頼すべきかといった弁護士の選び方について解説をしていきます。
交通事故を得意とする弁護士の探し方
一言に弁護士といっても、企業案件のみ対応している弁護士や逆に離婚などの一般民事事件のみを対応している弁護士など様々な弁護士がいます。交通事故を得意とする弁護士の探し方は主に3つあります。
具体的には、知人や弁護士会などから紹介してもらう、インターネットを利用する、保険会社から弁護士を紹介してもらうなどいったものです。それぞれの方法について見ていきましょう。
知人からの紹介
知り合いから弁護士を紹介してもらうという方法があります。
メリット
- 自ら弁護士を探す時間を短縮することができます
- 知り合いからの紹介なので安心感があり、弁護士との信頼関係も作りやすいといえます など
デメリット
- 必ずしも交通事故を多数取り扱っている弁護士とは限らないといえます
- 面談等をして弁護士との相性がいまいちでも他の弁護士に頼むのをためらってしまうといえます など
弁護士会からの紹介
また、お近くの弁護士会(弁護士が加入している団体です)から弁護士を紹介してもらうという方法があります。
メリット
- 無料相談といったサービスを利用することが可能な場合もあります
- 弁護士を選ぶ時間がかかりません など
デメリット
- サービスの内容は各弁護士会によって異なります
- 必ずしも交通事故を多数取り扱っている弁護士とは限らないといえます など
インターネットを利用して探す
インターネットで交通事故を取り扱っている弁護士を探すという方法もあります。スマートフォンやパソコンがあれば検索が可能で、様々な法律事務所がインターネットを利用して弁護士を紹介しています。
メリット
- インターネットを使える環境であれば、比較的手間なく弁護士を探すことができます
- 実際に会うよりも多数の弁護士から選ぶことができます など
デメリット
- 膨大な数の弁護士の中から選ぶ必要があり、どの弁護士が良いのか迷ってしまうこともあります
- 必ずしも口コミ等はあてにならないという点があります など
保険会社から弁護士を紹介してもらう
保険会社から交通事故の解決実績が豊富な弁護士として弁護士を紹介されることもあります。
メリット
- 交通事故の解決実績が豊富で交通事故に詳しい弁護士も多いといえます
- 弁護士を探す手間を省くことが出来ます
デメリット
- 被害者側の弁護士業務をあまり取り扱っていないこともよくあり、対応を必ずしも把握していないことがあります。
- 弁護士業務と報酬の多寡が結びついておらず熱意をもって対応しないこともあります。
まずは交通事故事件専属のスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
交通事故に強い弁護士・法律事務所の選び方
弁護士を探す方法を解説したところで、実際に交通事故に強い弁護士の選び方を解説していきます。
具体的には、交通事故の解決実績が豊富、医学的知識を兼ね備えている、交通事故に特化しているなどの観点から選んでいくのが望ましいといえます。
交通事故の示談交渉の経験が豊富
交通事故を取り扱っているだけではなく、具体的にどのような解決をしているかについても見ていく必要があります。保険会社との交渉、実際に獲得した示談金などの解決実績が豊富であることも重要な観点といえます。法律事務所のウェブサイトには、具体的な解決実績を記載しているものが多く存在します。ご自身の交通事故や怪我、お車の損傷等と類似した事案を解決に導いている弁護士がいれば非常に参考になると思います。
ALGの解決事例
【解決事例】むちうちなどの軽傷で後遺障害14級を獲得したケース
当法人の弁護士がご依頼者様に通院方法や後遺障害診断書の記載方法等について詳しく解説し、後遺障害の申請をした結果、むちうちで後遺障害14級の認定がされた解決事例をご紹介します。
事案の概要
ご依頼者様は、バイクで走行し、右折をしようとしたところ、正面から走行してきた自動車に衝突され、頚椎捻挫等の傷害を負いました。
相手方の保険会社との交渉や後遺障害の等級獲得のために当法人にご依頼いただきました。
弁護士の活動および解決結果
ご依頼者様には、定期的に整形外科に通ってもらい、症状固定時には後遺障害診断書の記載について漏れのないように記載をしてもらうことに加え、医師が作成した後遺障害診断書のチェックまで行い、後遺障害等級認定の申請をしました。
整形外科の通院日数や後遺障害診断書の記載等が重視されて後遺障害14級の等級を獲得することができました。
その後の相手方の保険会社との交渉においても、後遺障害慰謝料や後遺症逸失利益について大幅な減額を求められましたが、後遺障害がご依頼者様の就業に及ぼす影響等の説明を尽くした結果、約350万円程度の損害額を相手方保険会社に認めさせて、ご依頼者様にご納得いただける結果を獲得することができました。
医学的知識を兼ね備えている
交通事故で怪我をされた場合、当該交通事故の解決にあたっては医学的な知識が必要不可欠となります。そのため、弁護士が医学的な知識も併せ有しているかは重要な観点となります。特に、後遺障害が残ってしまうような事案の場合には、医学的な知識を有しているか否かで獲得できる後遺障害の等級に大きな差異が生じることがあります。より高い後遺障害の等級を獲得するために必要な検査は何か、後遺障害診断書に記載すべき内容はなにか等を医学的な観点からも説明を行ってくれる弁護士が交通事故に強い弁護士といえるでしょう。
専門の部署があり、交通事故に特化した弁護士がいる
交通事故は、上記したとおり医学的な観点も要するなど複雑な事案類型の一つといえます。
そのため、交通事故に特化した交通事故を中心的にチームで取り扱っている法律事務所もあります。弊所でも交通事故を専門的に取り扱っているチームがあります。
また、被害者側のみの依頼を受けるなどして、保険会社との利害関係を排して被害者救済に力を入れている弁護士もいます。
後悔しない弁護士・法律事務所の選び方
ここまで、弁護士を探す方法、交通事故に強い弁護士の選び方を解説してきました。最後に、実際に弁護士を選んだ後に後悔しないようにするための観点を解説していきます。
説明がわかりやすく理解しやすい
弁護士を選ぶ際には、分かりやすい説明をしてくれるかやご自身との相性がよいかといった点も考慮すると良いと思います。
どれだけ交通事故の解決実績が豊富でも、説明が分かりにくいような場合には不安が尽きないですし、相性が悪ければ相談や質問をすることもはばかられることがあるでしょう。
弁護士と依頼者の方は、委任契約、すなわち、当事者間の信頼関係をもとにした契約関係にあります。依頼した弁護士と信頼関係を築くことができるかという観点を考慮するとよいと思います。
弁護士以外の受付・事務局の対応が優れている
実際に弁護士に依頼した場合、保険会社との交渉や書面の作成、実際のアドバイスなどは弁護士が行うことになります。ただ、法律事務所において、弁護士一人では事件を解決することができず、弁護士業務をサポートする事務局の存在が必須です。事務局が交通事故の取扱いに慣れていないと、弁護士の事件の解決以前に、手続等にストレスを感じることになってしまいます。そのため、交通事故の取扱いに慣れている事務局が対応してくれるのかは重要な要素であると思います。
費用倒れについて説明してくれるかどうかもポイント
弁護士に依頼する場合には弁護士費用がかかるのが通常です。その場合、弁護士費用の方が実際に獲得した示談金よりも高いという場合もあります。
交通事故に詳しい弁護士であれば、相談の時点で今後必要となる費用等をある程度予測可能ですので、費用倒れになってしまう可能性等も案内してくれると思います。
一旦、弁護士費用の見積もりを出してもらうなどしてみても良いと思います。
報酬金等の料金体系が明確
弁護士費用には、大きく分けて着手金と呼ばれる事件を依頼するにあたって必要となる費用、成功報酬と呼ばれる事件を解決した際に必要となる費用があります。
着手金については、比較的説明を尽くす弁護士が多いように思います。着手金が支払わなければ弁護士業務が開始されないためです。他方、成功報酬については相手方保険会社から支払われた示談金から差し引く等といった説明にとどまり報酬体系を明らかにしていない弁護士もいると思います。
ただ、成功報酬により大幅に示談金が減ってしまうようであれば依頼した意義が失われてしまいます。成功報酬についても詳しく解説してくれる弁護士を選ぶべきといえるでしょう。
弁護士の変更はできる?
一度、弁護士を選んだ後で、弁護士を変更することもできます。
ただ、依頼している弁護士との委任契約を解除した上で、改めて別の弁護士と委任契約を締結し直すことになりますので、新たに着手金が発生してしまったり、事件の引継ぎ業務が発生したりします。
もちろん、いわゆるセカンドオピニオンとして別の弁護士に相談することもあり得ますが、できれば最初に依頼した弁護士に最後まで解決してもらえるように弁護士選びを慎重に行うと良いと思います。
後悔しないためにも、交通事故に強い弁護士を選びましょう
交通事故は依頼した弁護士の力量によって大きく示談金が変わることがあり得ます。
解決実績は豊富か、医学的な知識も有しているか、分かりやすい説明をしてくれるか等様々な観点を考慮して、慎重に弁護士を探すことをおすすめします。
弊所では、医療過誤などを取り扱う医療専門チームと連携した交通事故チームがあります。交通事故の解決実績もたくさんございますので、交通事故に遭われて弁護士をお探しの場合には是非ご相談ください。
不貞行為などによって夫婦関係を破綻させた責任がある者を有責配偶者といいます。有責配偶者からの離婚請求は有責配偶者ではないものからの離婚請求に比べてハードルが高いです。
離婚の原因を生じさせた者からの離婚請求は、否定されることが多いです。しかし、一定の条件のもとでは、有責配偶者からの離婚請求が認められる場合があります。
以下では、有責配偶者からの離婚請求が認められる場合や条件について詳しく解説します。
有責配偶者からの離婚請求は認められるのか
離婚請求は、婚姻関係が破綻していた否かによって判断する、破綻主義が取られています。離婚原因として、典型的なものとして、不貞行為、DV、相当期間別居していること等があります。これらの婚姻関係を破綻させる原因作ったものが離婚請求をするのは、信義則に反し、一般的に認められません。
しかし、婚姻関係を破綻させた原因が作った者の責任を考慮しても離婚請求が認められる場合があります。もっとも、有責配偶者ではないものに比べると、認められる条件が厳しくなります。
有責配偶者からの離婚請求が認められる3つの要件
長期間別居していること
有責配偶者からの離婚請求の場合には、通常の離婚原因の場合に比べて、長期間別居をしていることが必要となります。
有責配偶者以外からの離婚請求の場合であっても、DVや不貞行為などがなければ、相当期間の別居が必要となります。別居期間としては、3年ほどが必要となることが多いです。
有責配偶者からの離婚請求の場合、上記のとおり離婚の原因を作った者からの請求であり、離婚請求を認めることは信義則に反し許されません。
そのため、通常の場合と同様の別居期間では、離婚請求が認められることはありません。もっとも、別居期間が長期間に及ぶ場合には、有責配偶者の責任を考慮しても婚姻関係が破綻し、離婚請求が認められる場合があります。
別居期間としては、10年を超える場合に長期の別居と判断されています。当該夫婦の事情によっては、10年より短い期間であっても長期間の別居であると判断される場合もあります。
未成熟子がいないこと
有責配偶者からの離婚請求の場合には、当該夫婦の間に未成熟子がいないことが要件となります。
未成熟子は、経済的、社会的に自立して生活することができない状態にある子どもを指します。離婚すると、当該夫婦の生活だけではなく、夫婦の間の未成熟子に大きな影響が及びます。そのため、未成熟子がいる場合には、有責配偶者からの離婚請求は認められません。
当該夫婦の子が概ね高校生以上になっている場合には、当該家族の事情や経済状況、有責性の程度等にもよりますが、離婚請求が信義誠実の原則に反しないとされ、離婚請求が認められることが多いようです。
離婚しても過酷な状況に陥らないこと
上記の2つに加えて、離婚することによって離婚請求を受ける相手方が精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれるなどといった事情がなく、離婚を認めても著しく社会正義に反するとはいえない場合であることが必要となります。
有責配偶者からの離婚請求が認められないのは、離婚原因を作ったものからの離婚を認めることは信義に反するからです。
離婚請求を受ける者の不利益がないのであれば、有責配偶者からの離婚請求を認められる場合があります。
離婚請求を受ける者の不利益の程度は、別居期間や財産分与、慰謝料等の在り方、過去の婚姻費用等の支払い状況等の事情を含めて判断されることになります。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
有責配偶者の離婚請求を拒否したい場合の対応
有責配偶者からの離婚請求を拒否したい場合の対応をご説明します。有責配偶者は、離婚請求をする場合、交渉や調停によることが通常です。
交渉や調停の場合、当事者が合意しなければ離婚が成立することはありません。そのため、離婚請求を拒否するには、離婚しないとの意思を明確にして、拒否すれば足りることになります。
それでも、有責配偶者から離婚訴訟を提起された場合には、まず、別居期間が足りていないと主張することが考えられます。前述のとおり、有責配偶者からの離婚請求の場合には、一般的に10年の別居期間が必要となります。
次に、子どもの年齢や生活状況を踏まえて、未成熟子がいることを主張することが考えられます。
さらに、精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれる具体的な事情を主張して、有責配偶者からの離婚請求が著しく社会正義に反することを主張することが考えられます。
有責配偶者からの離婚請求を認めなかった裁判例
最後に、有責配偶者からの離婚請求が認められなかった裁判例を紹介します。
仙台高等裁判所平成25年12月26日(平成25年(ネ)第95号)
別居期間が既に9年4か月程度に及んでいたにもかかわらず、離婚請求は、信義則によって認められないとした事案です。
まず、別居期間が相当長期に及んでいると判断されるかどうかは、同居期間や夫婦の年齢を踏まえて判断されます。この事案では、同居期間が約18年6ヶ月であったこと、夫婦の年齢が51歳と52歳であることを踏まえ、別居期間が9年程度に及んでいても相当長期間の別居があったとは判断されませんでした。
次に、離婚によって離婚請求を受ける者が極めて過酷な状況に置かれるかどうかについては、諸般の事情を考慮して判断されます。
この事案では、有責配偶者から相手方配偶者に対し、将来的な金銭給付を行う約束がありました。しかし、有責配偶者は、審判に基づく婚姻費用の支払を怠った事実があり、この支払いを得るのに相手方配偶者が差押えをするまでの必要がありました。裁判所は、有責配偶者から将来的な金銭給付がされるか不安があると判断しました。
さらに、有責配偶者の負債の状況、うつ病で働けていない状況などからすれば、離婚によって相手方配偶者が精神的、社会的、経済的に極めて過酷な状態におかれると推察しました。
以上の事情から、仙台高等裁判所は、離婚請求を信義則に反すると判断しました。
有責配偶者から離婚請求されたら弁護士にご相談ください
これまで、有責配偶者からの離婚請求についてご説明してきましたが、これが認められるのか否かについては、これまでご説明したような様々な事情を総合的に考慮し、判断する必要があります。
そのため、もしも、有責配偶者から離婚請求された場合には、そのような様々な事情を踏まえて、そのような離婚請求に対してどのような対応をとることができるのか、そしてどのように対応していくべきなのかを考えていく必要があります。
弁護士は、有責配偶者からの離婚請求の場合に限らず様々な離婚事件を扱っています。離婚事件に迷っている場合にはぜひ弁護士にご相談いただければと思います。
子供の「認知」とは、主に、婚姻関係にない男女の間で子供が生まれた際に問題になります。このような子供は、婚姻関係にある夫婦の間で生まれた子(いわゆる「嫡出子」)のように、当然に夫婦の子として扱われるわけではないからです。
本記事では、「認知」とはそもそも何なのか、どのような場合に「認知」が必要なのかについて解説していきます。
子供の認知とは
子供の認知とは、一言でいうと、婚姻関係にない男女の間に生まれた子供について、父親が自分の子供であると認めることを言います。
認知が必要になるケース
認知が必要になるのは、婚姻関係にない男女の間で生まれた子供の場合です。よくあるのが、未だ婚姻しておらず交際中の間の男女間の子や、不貞関係にある男女間の子です。
この場合、父親との関係では、必ずしも実子であるとの推定が働きません。
子供を認知しないとどうなる?
婚姻関係のない男女間で生まれた子を認知しないと、様々な支障が生じ得ます。
具体的には、子の戸籍に父親の氏名が記載されなかったり、父親に養育費の支払義務が生じなかったり、親権者として定めることができなかったり、相続人としての要件を満たさなかったりするなどの支障が生じ得ます。
嫡出推定制度について
民法には、嫡出推定制度と呼ばれる制度が存在します。これは、婚姻成立日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定される規程です(民法772条2項)。
子供が認知されたときの効果
子供が認知された場合には、様々な法律上の効果が生じます。
戸籍に記載される
1つ目は、戸籍に認知日や認知親などの記載がされるという効果です。子供を認知すると、その子供の戸籍には、認知した親側の名前が記載されます。
養育費を請求できる/支払い義務が生じる
2つ目は、認知した親が子供に対して扶養義務を負うという効果です。認知することで、法律上の親子関係が生じることになりますので、認知された子供の養育費を請求できることになります。
認知後の養育費はいつから請求できる?過去の分は請求可能?
認知すると、その後、認知した親は扶養義務を負いますので、養育費を請求することができます。ただし、認知する以前については、そもそも法律上の親子関係にはなく、扶養義務が生じていませんので、この分の養育費を請求することはできません。
子供に相続権が発生する
3つ目は、子供に相続権が生じるという効果です。法律上の親子関係が生じると、当然、その子供には相続人となる権利が生じます。
父親を親権者に定めることができる
4つ目は、認知した親を親権者として定めることができるという効果です。法律上の親子関係が生じると、認知された子供の親は親権者となることができます。
認知後に、夫婦の間で親権に関する協議がまとまらない場合には、親権者の指定や変更に関する調停や審判を申し立てることができます。
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子供の認知の種類
子供の認知には、いくつかの種類があります。具体的には、「任意認知」、「強制認知」、「遺言による認知」が存在します。以下、個別に説明していきます。
任意認知(話し合い)
任意認知とは、夫婦の話し合いによって、子供を認知することをいいます。これは、法定の要件を備えた認知届を、認知する親の本籍地、認知する子供の本籍地、認知する親の住所地の役場に提出する方式で行うことができます。
強制認知(話し合いで拒否された場合)
強制認知とは、夫婦間での話し合いがまとまらなかった場合に、家庭裁判所に認知調停や認知の訴えを提起する形で認知するものです。なお、この手続は、調停前置主義を採用しているため、認知の訴えを提起する前に、認知調停を申し立てる必要があります。
①家庭裁判所に認知調停を申し立てる
認知調停では、家庭裁判所の調停委員を通じて、話し合いを行います。あくまでも話し合いですので、協議が不成立となれば、認知は認められないことになります。
②家庭裁判所に認知の訴え(裁判)を提起する
認知調停が整わず、協議が成立しなかった場合には、家庭裁判所に対して認知の訴えを提起する必要があります。この訴訟のなかで、認知を求める親と子供との間の血縁関係を主張・立証していくことになります。
遺言による認知
遺言による認知という方法もあります。これは、遺言書に、認知すると記載する方式で行われます。ただし、認知される子供が胎児の場合には、その親の承諾が必要になるなど、一定の制限がありますので、注意が必要です。
子供の認知はいつまでできるのか?
子供の認知それ自体に期間的な制限はありません。ただし、認知の訴えは、やむを得ない事情が無い限り、認知を求められている親(父親)が死亡してから3年以内に提起しなければならないとされています。
子供の認知を取り消すことは可能か?
一度、認知をすると、それを取り消すことはできないのが原則です(民法786条)。認知を取り消すことができるのは、血縁関係がなかったり、勝手に届出が出された場合などの例外的な場合に限られます。
このような限定的な仕組みが採られているのは、認知の容易な取消を認めると、認知される側の子供の法的地位が不安定化してしまうためです。
血縁関係のない子を認知してしまった場合は?
血縁関係のない子を認知した場合には、その認知が無効であると主張したり、あるいは取り消すべきであると主張したりすることが可能です。これらの手続は、いずれも家庭裁判所への調停・訴訟といった形式を採る必要があります。
弁護士が立証したことにより、相手方への認知請求が認められた事例
認知の訴えによる認知が認められるためには、血縁関係を主張立証する必要があります。
海外に在住する外国人の夫と婚姻関係にあった人のケースで、別の者と婚姻し出生した子供であったにもかかわらず、その外国人の夫との婚姻期間中に懐胎したために、その外国人の夫の嫡出推定が働いてしまったということがありました。
このケースにおいて、弁護士が、家庭裁判所に認知の訴えを提起し、血液型との無矛盾性、外国人の夫との接触機会の有無、容姿の類似性などを立証し、実際の後婚相手との父子関係の証明に成功しました。
子供の認知に関するQ&A
不倫相手との子供を認知したら妻にバレますか?
結論から言うと、不貞の事実がバレる可能性が高いと言えます。なぜならば、認知によって、父親の戸籍に不倫相手との子供を認知した旨の記載がなされるからです。
認知された子供はどこで確認ができますか?
子供の戸籍に記載されるため、そこで確認することができます。
認知された子供は父親の姓を名乗れますか?
認知された子供は、それだけで父親の姓を名乗ることはできません。父親の姓を名乗るためには、子供の氏の変更に関する手続を経る必要があります。
認知した子供のDNA鑑定を行った結果、親子の可能性0%でした。支払った養育費を取り返すことは可能でしょうか?
この場合、認知の無効事由になり得ますので、法律上の父子関係を否定することができます。法律上の父子関係が否定された場合には、そもそも、扶養義務自体が存在しなかったということになりますので、支払った養育費について、不当利得返還請求を行い得る可能性があります。
子供の認知で不安なことがあれば、お気軽に弁護士にご相談下さい。
子供の認知をめぐる問題を適切に解決するためには、専門的な知見が必要になります。ご自身で悩まれるのではなく、まずは、専門家である弁護士にご相談されることをお勧めします。
空出張(カラシュッチョウ)という言葉をご存知でしょうか。軽い気持ちで空出張を行い、犯罪の加害者になってしまうことがあります。本記事では、空出張について成立する犯罪等を含めて詳しく解説していきます。
出張したかのように見せかけて出張費を不正に受領する空出張
空出張とは、実際には発生していない交通費や宿泊費等を出張経費として会社に請求して不正に金銭を受領することをいいます。空出張は、社員の立場でも簡単に行いやすく、経理等の会社側が見逃しやすいことから比較的横行しやすい不正行為かと思われます。
しかし、空出張を行った場合には、具体的な事案にはよりますが、業務上横領罪や私文書偽造同行使罪、詐欺罪に該当する可能性があります。
業務上横領が成立する可能性
例えば、会社から事前に預かっていた出張経費等を別の用途に利用したような場合には、使途を限定されて、業務上、管理を任されている金銭を自らのために費消したとして、業務上横領罪が成立する可能性があります。
業務上横領罪とは
業務上横領罪は、刑法253条で以下のように規定されています。「業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。」
すなわち、仕事として(「業務上」)、会社等から管理を委ねられていて、自らが所持している物で他人が所有している物(「自己の占有する他人の物」)を、自らの所有物であるかのように使用した(「横領」)場合に、業務上横領罪が成立します。
業務上横領罪については、以下の記事で詳しく解説します。
業務上横領は必ず逮捕される?横領額と刑の重さは関係あるのかこのようなケースで業務上横領罪が成立する可能性があります
事前に預かっている経費を、出張に行く予定がないにもかかわらず、私用の旅行のために費消した場合や交通費や宿泊費用を着服するような場合には、業務上横領罪が成立する可能性があります。
また、会社の出張用に作られているカードにたまっているマイルを私用の旅行のために使った場合には業務上横領罪が成立する可能性があります。マイルを使って業務上横領罪が成立することを明らかにした判例はないのでその成否は慎重に裁判所で判断されると思いますが、控えた方が無難といえるでしょう。
業務上横領罪の刑の重さ
業務上横領罪の法定刑は10年以下の懲役です(刑法253条)。
軽い気持ちで行ったとしても、その罪は非常に重いため、重大な犯罪行為であることを十分に認識された方がよいと思います。
詐欺罪が成立する可能性
会社の業務として出張等がないにもかかわらず、私用の旅行の際に発生した費用を、会社の業務として発生したとして、その領収書を会社に提出して金銭を請求するような行為は詐欺罪に該当する可能性があります。会社を欺いて、会社から金銭を交付させるような行為ですので、会社に対する詐欺罪が成立するケースといえます。
詐欺罪とは
詐欺罪は、刑法246条で以下のように規定されています。
1項「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。」
2項「前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。」
すなわち、他人に虚偽の事実を伝えるなどして(「人を欺いて」)、これにより他人が騙されて、財物を交付させた場合には詐欺罪が成立することになります。なお、財物以外の財産的利益(「財産上不法の利益」)、例えば、サービスなどを受けた場合には、246条2項で246条1項と同様に詐欺罪が成立することになります。
このようなケースで詐欺罪が成立する可能性があります
出張がないにもかかわらず、出張があると会社に偽って、会社から交通費や宿泊費等の出張経費を取得するような場合は詐欺罪が成立する可能性があります。
他にも、特に発生していなかったにもかかわらず、出張により生じそうな経費の領収書を偽造して、会社に金銭を請求するような行為も詐欺罪が成立する可能性があります。なお、領収書を偽造して、これを会社を欺くのに使用している点で、私文書偽造同行使罪が成立する可能性もあります。
詐欺罪の刑の重さ
詐欺罪の法定刑は、10年以下の懲役と定められています(刑法246条1項)。会社を欺いているため、十分に悪質性は高いですが、業務上横領罪と同様に非常に重大な犯罪の一つといえます。
出張費を水増し請求するのも業務上横領罪や詐欺罪が成立する可能性がある
空出張のケースだけではなく、実際に出張に行く予定はあったため、会社から事前に経費等を預けられていた場合で、実際に発生した交通費や宿泊費よりも高額な費用が発生したかのように会社に偽り、会社から事前に預けられていた経費をすべて着服したようなときは、会社を欺いていることから詐欺罪が成立する可能性があり、経費等を着服している点で業務上横領罪も成立する可能性があります。
これも業務上横領?その他のケース
空出張の場合だけではなく、空出張と類似する以下のケースでも業務上横領罪が成立する可能性があります。
交通費を不正受給したケース
会社から事前に預かっている交通費を、実際の最寄り駅はA駅であるにもかかわらず、実家に居住しているなどとして実家の最寄り駅であるB駅からの交通費相当額を着服したような場合、すなわち、交通費を不正受給したケースは以下の記事で詳しく解説しています。
不正な接待交際費を計上したケース
会社から事前に預かっている交際費を、自らの私的な飲食代などにより費消してその金額を会社の経費として計上した場合、すなわち、交際費を不正に計上したケースは以下の記事で詳しく解説しています。
業務上横領が発覚したらどうなるのか
会社の経理等がチェックをしていたら、実際には出張に行っておらず、不正に金銭を取得していることが会社に発覚した場合、どうなってしまうのでしょうか。以下で詳しく解説していきます。
懲戒解雇などの処分がくだる可能性
空出張が会社に発覚した場合、会社としては、空出張を行った社員に対して、懲戒処分を検討することが予想されます。懲戒処分には、会社の就業規則上の定めにもよりますが、注意である戒告や給料の減額である減給、地位を下げる減給等があります。しかし、空出張は犯罪ですので、懲戒処分の中でも最も重い懲戒解雇、すなわち会社をクビにされる可能性も非常に高いといえます。
業務上横領罪や詐欺罪が成立したら刑事罰が
空出張は犯罪行為ですので、空出張が発覚して、会社が警察に届け出るなどして警察に逮捕される可能性があります。警察に逮捕された後、検察により起訴され、裁判所にて業務上横領罪や詐欺罪が成立すると、上で述べたように10年以下の懲役という重い刑罰が予定されています。
不法行為による損害賠償請求の可能性も
空出張が発覚すると刑事上の責任を問われる可能性があることは説明しましたが、民事上の責任を負うこともあります。会社は、空出張により、実際には生じていない費用等の支出を強いられていますので、不法行為が成立するとして、空出張を行った会社員に対して、損害賠償請求をすることが考えられます。
業務上横領は相手からの被害申告がないと逮捕されないケースが多い
業務上横領罪は被害者がいる犯罪ですので、被害者からの被害届や刑事告訴等の被害申告がないと事件化しないことが多いといえます。もちろん、被害者ではない第三者からの通報等により事件化することもありますが、基本的には被害者以外の方が通報するようなことはあまり多くありません。
事件化させないためにも弁護士のサポートが必要です
空出張をしないことが重要なことですが、実際に空出張をしてしまい、会社に発覚したような場合には、事件化させないためにも早期に会社側と交渉する必要があります。
特に、会社には実際に被害が生じているわけですから、示談交渉が必要になりますが、これは法的な観点から気を付けるべきことも多くありますので、弁護士によるサポートを受けた方が良いでしょう。
事件化した場合も弁護士が減刑にむけてサポートします
実際に、空出張により事件化してしまった場合でも、検察による起訴を回避したり、裁判での実刑を免れ、減刑させるためには、弁護士のサポートがより必要となります。上で述べたような示談交渉が成立することで検察の起訴自体を回避することができることもあります。
業務上横領の量刑に影響を与える要素
務上横領罪が成立する場合には、10年以下の懲役という重大な刑罰が予定されていますが、横領した金額や横領の動機など様々な要素を総合的に考慮して実際の刑罰が定められます。
ただ、空出張をしてしまった後の行動、例えば、深く反省していることや会社との示談が成立していることといった事情も十分に考慮されますので、空出張をした後の適切な対応も重要であり、これらの要素も考慮されて執行猶予が認められる可能性もあります。
まずは弁護士にご相談ください
空出張をしてしまいそのことが会社に発覚して会社から警察に通報すると言われている、既に会社から警察に通報されて取調べをされることになったといった場合には、今後の生活がどうなってしまうのだろう、懲役刑が先刻されてしまうんだろうかなどと様々な不安がよぎると思います。
弁護士と相談して、早期の適切な対応により、事件化することなく解決することができるかもしれません。お困りの際には、是非弁護士にご相談ください。
遺産分割協議が成立してしまった場合、原則として、事後的に、遺産分割協議のやり直しを行うことはできません。しかし、例外的に遺産分割協議のやり直しが認められる場合があります。
そのため、本記事では、どのような場合にやり直しができるのか、またその際の注意点はどのようなものが考えられるのかについて解説します。
遺産分割はやり直しができるのか
遺産分割協議が成立してしまえば、原則としてやり直しを行うことはできません。
しかしながら、例外として、①相続人全員の同意がある場合、②遺産分割協議に無効、取消事由があった場合、③遺産分割協議後に他の遺産が見つかったときに、従前の遺産分割協議前にその財産があることを知っていれば、従前の遺産分割は行わなかったといえる場合には、遺産分割の再協議が可能となります。
遺産分割後に他の財産が見つかった場合
遺産分割後に他の遺産が見つかった場合、原則として遺産分割協議をやり直す必要はないものとされ、新たに見つかった遺産についてのみ遺産分割協議を行うことになります。
従前の遺産分割協議前にその遺産があることが分かっていれば、従前の遺産分割協議をしなかった場合や他の相続人が相続財産を隠していた等の事情があれば、従前の遺産分割協議を錯誤等を理由に取り消して遺産分割協議のやり直しを求めることができます
遺産分割のやり直しを行う場合に期限や時効はある?
相続人全員の合意で遺産分割をやり直す場合には期限や時効はありません。
そのため、従前の遺産分割協議から期間が経っていることをもって、遺産分割協議のやり直しができないということはありません。
取消権には時効があるので注意が必要
前述のとおり、相続人全員の合意で遺産分割協議をやり直す場合には期限や時効はありませんが、錯誤や詐欺によって遺産分割を取り消すというような場合には、いつまでも取り消しができるということはありません。取消権の行使には消滅時効が定められていますので注意が必要です。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
遺産分割をやり直した場合の注意点
遺産分割をやり直す場合でも、消滅時効の他にもいくつか注意が必要な点があります。遺産分割のやり直しを考えるときには、以下の点について確認しておくことが必要です。
やり直し前に第三者へ譲渡していた場合
遺産分割のやり直し前に第三者へ譲渡された遺産について、原則としてこれを取り戻すことができません。
しかしながら、例外的に、再協議により遺産分割協議をやり直す場合、遺産である不動産については、第三者が登記を具備していなければこれを取り戻せる可能性があります。また、遺産分割協議を錯誤や詐欺により取り消す場合、第三者が、錯誤や詐欺の事実について知っている等の事情がある場合には、これを取り消すことが可能です。
不動産の名義が変わった場合
遺産分割協議をやり直し、不動産の取得者が変わった場合には、不動産登記の名義変更を行う必要があります。従前の遺産分割協議で不動産登記がなされていた場合、いったん所有権抹消登記をしてから、所有権移転登記をすることとなります。
課税対象となる場合がある
遺産分割協議のやり直しが行われた場合、相続人間の新たな贈与や譲渡等とされて、取得者に贈与税、所得税が課されることがあります。また、不動産の取得者を変更する場合には、新たに不動産を取得した者に対し不動産取得税が課されることがあります。
遺産分割をやり直す際の期限について弁護士にご相談ください
遺産分割協議が一旦成立した後に、遺産分割協議のやり直しを行うことは簡単なことではありません。そのため、遺産分割協議のやり直しを行いたいと考えられた場合には、まずは弁護士にご相談されることをおすすめします。
交通事故に遭った時、気になるのは「賠償額はいくらになるのだろう」ということです。
損害賠償として払われる金銭には、治療費、休業損害、慰謝料などがあります。その中でも慰謝料は、治療費のように実際に病院に支払ったわけでもなく、休業損害のようにこれまでの収入を参考にして決めるものでもありません。
そのため、慰謝料の金額が少ないと思っても、それが本当に妥当な金額なのか、金額が低い原因が何なのかは、分からないことも多いのではないでしょうか。
本記事では、慰謝料に関して解説しています。「慰謝料が少なく感じる」「慰謝料が低くならないようにするには、どうしたらいいのだろう」という方は、ぜひこの記事をご覧ください。
交通事故の慰謝料が少なくなる原因は?
交通事故の慰謝料には、交通事故のケガで、入院や通院をやむなくされたことに対する「傷害慰謝料(入通院慰謝料)」と、交通事故のケガが残ってしまったことに対する「後遺障害慰謝料」とがあります。
慰謝料が、本来もらえるべき金額よりも少なくなっている場合、傷害慰謝料か後遺障害慰謝料の少なくともどちらかが低額になっています。その原因としては、次のようなものがありえます。
低い算定基準で計算されている
慰謝料の計算方法(算定基準)には、大きく分けて、①自賠責基準、②任意保険基準、③弁護士基準の3つがあります。
- ①自賠責基準は、自賠責保険が被害者の救済を目的として定めた基準です。最低限度の補償にとどまります。
- ②任意保険基準は、各保険会社の設定している基準です。具体的な内容は公開されていませんが、自賠責基準に若干の上乗せをした金額となることが多いです。
- ③弁護士基準は、これまでの裁判の結果をもとにした基準です。
基本的には、自賠責基準より任意保険基準、任意保険基準より弁護士基準で計算した方が、慰謝料は高くなります。反対に、慰謝料が少なくなるのであれば、算定基準に原因がある可能性があります。
慰謝料の比較
実際に、自賠責基準と弁護士基準とで、慰謝料にどれくらいの差が出るのかを比較してみましょう。
自賠責基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|
通院慰謝料 | 38万7000円 | 53万円 |
後遺障害慰謝料(14級9号) | 75万円 | 110万円 |
計 | 113万7000円 | 163万円 |
上記の場合には、自賠責基準と弁護士基準のどちらを用いるかによって、慰謝料に約50万円も差があります。このように、計算方法は慰謝料の金額に対して大きな影響を与えますが、弁護士が入っていない場合、通常は自賠責基準か任意保険基準で計算されることになるので、慰謝料が少なくなります。
通院日数が少ない、または過度に多い
傷害慰謝料(入通院慰謝料)が少ない場合、通院日数が極端に少なかったり、多かったりすることが原因の可能性があります。
任意保険基準や弁護士基準で慰謝料を計算する場合、基本的には通院期間に応じて慰謝料が計算されます。しかし、通院期間が長期に及んでいて、通院日数が著しく少ない場合、実通院日数をベースとして慰謝料が計算されてしまい、慰謝料が少なくなることがあります。
反対に、事故から長期間経っても頻繁に通院をしている場合、通院の必要がないのに通院していると考えられ、その期間の治療費や慰謝料が払われないこともあります。
適正な慰謝料を支払ってもらうためには、適切な頻度で通院することが重要になります。
後遺障害の認定がない、または等級が低い
後遺障害慰謝料の金額は、認定を受けた後遺障害等級によって異なります。後遺障害等級が認定されていない場合は、慰謝料を受け取ることができません。また、後遺障害等級が低い場合は、受け取れる慰謝料も少なくなります。
適正な後遺障害慰謝料を支払ってもらうためには、後遺障害の申請の手続きを行い、等級認定を得ることが重要です。
被害者側の過失割合が高い
被害者側に過失がある場合、過失割合に応じて受け取れる慰謝料は減ります。例えば、被害者と加害者の過失が2:8の場合、慰謝料の2割は受け取ることができません。
交通事故を防ぐために、被害者側でも取れる行動があった場合は、過失が認められます。そのため、お互いに走行中の事故では、ある程度の過失が認められることが多いです。他方で、被害者側の取れる行動が限られている場合、過失割合は小さくなるはずです。しかし、加害者側が、自身に有利になるよう、被害者側の過失が大きいと主張することは少なくありません。
適正な慰謝料を受け取るためには、過失割合が事故状況を反映したものになるように交渉することが必要となります。
自分の慰謝料が少ないかわからない場合はどうしたらいい?
相手方の保険会社から提示された慰謝料が少ないか分からない場合、弁護士に相談することをおすすめします。
現在、この記事のように、交通事故の賠償金に関して説明しているインターネットの記事は数多くあります。しかし、通院状況、過失割合など、慰謝料を計算するための要素は事故によって千差万別です。ご自身が遭った事故にふさわしい慰謝料がいくらなのか、正確に把握することは難しいことが多いです。
弁護士に相談すれば、ご自身の状況を伝えた上でアドバイスを受けられるため、適正な慰謝料額をより確実に知ることができます。
まずは交通事故事件専属のスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
適正な交通事故慰謝料をもらう方法
適正な慰謝料をもらうためには、治療中と治療後のそれぞれで気をつけるべき点があります。現在のご自身の状況にあわせて、次のポイントを意識してみてください。
まだ治療中の方は
適正な傷害慰謝料を受け取り、後遺障害の認定で不利に扱われることがないように、適切な通院を続けることが重要です。
具体的には、週に2~3回、1か月に10日ほどの頻度で通院するようにします。ただし、症状によって、通院頻度がもっと多くなることも少なくなることもあるため、あくまで医師と相談しながら通院を続けることが重要です。
また、症状に関しては、医師にきちんと伝えるようにしましょう。担当医の先生を心配させないように、実際はあまり良くなっていないのに痛みが軽くなったと伝えたりすると、不利に扱われることがあります。
後遺障害等級認定治療がお済みの方は
治療終了後、痛みが残った場合などは、後遺障害の申請をしましょう。また、一度、後遺障害が認められなかったとしても、異議申立てをすると認められるケースもあります。
また、保険会社は、被害者ご自身で交渉している場合は、あくまで任意保険基準でしか支払わないのが通常です。弁護士基準をベースとした慰謝料を獲得するためには、弁護士に依頼をしましょう。
交通事故で慰謝料以外にも獲得できる損害賠償金
交通事故の賠償金の中には、傷害・後遺障害の慰謝料のほかにも、治療費、休業損害、後遺障害による逸失利益などが含まれます。
治療が終了する前に、お仕事や家事に支障が出た場合は、休業損害として賠償の対象となります。また、後遺障害が認定された場合は、治療の終了後にも同様に支障が出ます。これを逸失利益といい、後遺障害の重さや、事故以前の収入によって金額が決まります。
交通事故の慰謝料が増額した事例
実際に、弁護士にご依頼いただいたことで、慰謝料を増額した事例をご紹介します。
事件の概要として、ご依頼者様がバイクを運転していたところ、相手方車両が進路変更を行って、ご依頼者様と事故となった事案でした。
ご依頼者様は、併合14級の後遺障害等級認定を受けられており、ご自身で相手方の保険会社と交渉をされていました。しかし、相手方保険会社から提示された賠償額が少ないのではないかと考え、幣所にご相談されました。
当初、保険会社の提示する慰謝料は、通院慰謝料110万円、後遺障害慰謝料88万円でした。しかし、弁護士が交渉を重ねたことで、通院慰謝料は160万円、後遺障害慰謝料も105万円を相手方の保険会社に認められました。その結果、2割の過失相殺を考慮しても、50万円以上の増額が実現しています。
慰謝料が少ないと感じたら弁護士にご相談ください
交通事故は、千差万別です。同じように見える事故でも、事故現場の状況、加害者の過失、車両の性質、衝突の程度、治療の経過など、事情はそれぞれに異なります。弁護士であれば、交通事故に関する専門的知識を持って、ご依頼者様の事情を踏まえて慰謝料を計算することができます。
相手方の保険会社から提示された慰謝料が少ないと感じたり、妥当な金額なのか迷ったりした場合は、まずは一度弁護士にご相談ください。
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- 保有資格
- 弁護士(埼玉弁護士会所属・登録番号:51059)