弁護士との顧問契約

取扱分野


弁護士との顧問契約

(1)労働トラブルの性質

労働トラブルは将来の採用やIPOの成否にも影を落としかねない重大な問題です。

一方、労働トラブルは対応することによって、積極的な利益が出るわけではないため、経営者や人事担当者としては負担感の大きな種別のトラブルでもあります。

また、非定型的な性質もあり、通常業務と同時並行で対応するのは業務量の観点からも厳しい面があるのではないでしょうか。

(2)弁護士との顧問契約という選択肢

1つの解決策としては、弁護士とは継続的な契約(顧問契約)を締結して、労働トラブル発生リスクについて継続的な手当をしていくことが考えられます。

弁護士と顧問契約を締結すれば、問題社員への対応や、退職にまつわるトラブル、労働審判申立て等の労働問題への対応を通じ、弁護士自身が貴社の商流・製品や貴社の人事についての理解をより深め、より貴社にマッチした解決案を提案する中で、貴社における労働トラブル発生リスクを低減していくことができます。

弁護士との顧問契約のメリットはそれだけにはとどまらず、債権回収や契約書レビュー等、貴社の取引上発生するリスクについての法的フォローを通じ、経営や取引の安定を法的側面からはかり、思わぬ損害の発生を防止することも可能です。

弁護士との顧問契約について一度ご検討いただければと思います。


労働審判が申し立てられたら

「労働審判の申立書が届いたが、どのように対応すれば良いかがわからない」

「合意退職をした元従業員から不当解雇で訴えられてしまった」

「元従業員から過去に遡って残業代を請求されてしまった」

といったご相談を弊所ではよく伺います。

なかでもよく伺うのが労働審判の申立てを受けた場合のご相談です。

(1) 労働審判は進行が早い

労働審判は、労働問題を裁判所で迅速に解決するために存在する制度で、訴訟と比較すると主に迅速性という点で違いがあります。

訴訟になってしまった場合、解決まで1年近くかかってしまうことがあるのに対し、労働審判は原則として3回以内の期日で結論を出すことになるので、時間的・金銭的な負担が訴訟と比べて少ないのが特徴です。司法統計上は、全体の7割以上が申立てから3か月以内に終決しています。

逆に言えば、たったの3回の手続きで審判(結論)が裁判所によって下されてしまうので、第1回の期日までに入念な証拠の収集と主張の構築をしておく必要があります。

これらの準備を怠ってしまうと、相手側に主導権を握られてしまい、不利な審判が下される可能性が高まります。

弁護士が関与しない場合、第1回期日までにどのような準備をして良いのかがわからない、もしくは準備に時間が割けないといった状態になってしまい、ほぼ無策の状態で期日に臨んでしまうことになってしまいます。

(2) 弁護士に依頼するメリット

ア 労働審判では、企業側には時間がない

労働審判は、申立てがされてから概ね40日以内に第1回目の期日が指定されます。そして、企業側は、第1回期日の10日ないし1週間前に企業側の反論書面(「答弁書」といいます。)の提出期限が定められてしまいます。したがって、企業側は通常業務をこなしながら、ごく短い期間で、答弁書の作成をしなければなりません。

イ 弁護士への依頼

弁護士に依頼をすることで、答弁書(労働審判委員は、答弁書を中心にみて証拠は当初あまり見ないようです。そのため、主張(反論)が具体的な証拠に裏付けられていることも示す必要があります。)などの書類の作成や期日までの証拠の準備、労働者側との交渉を進めることが可能です。

弁護士は法的な防御に必要な事実確認を効率よく行い、最短ルートで反論を組み立てることができるため、労働審判の結果を大きく左右する第1回期日までのごく短い時間に、十分な準備を行うことが可能です。

問題が発生したらすぐに弁護士に相談し、適切な準備を迅速に進めていくことをお奨めいたします。


会社の経営者の方から労働問題の相談を受けるとき、「勤務態度の悪い従業員を解雇したところ、労働組合から団体交渉を申し入れられた」、「うつ病で満足に仕事ができない従業員に退職勧告を出したところ、不当解雇だと言われている」、「突然、社外の労働組合から団体交渉を申し込まれた」といった話を聞くことがあります。

近年、労働組合の組織率、組合員数は減少傾向にあり、労働紛争も減少傾向にあると言われています。もっとも、単純に組合対策を疎かにしてよいというわけではありません。最近は企業内の労働組合だけでなく、一定地域にある主に中小企業の労働者が個人で加入する労働組合である「合同労組」や、パートタイム労働者等が個人で加入する「コミュニティ・ユニオン」などとの団体交渉の必要が生じることは決して少なくありません。経営者としては、自社内の労働組合だけでなく、社外の労働組合にも留意する必要があります。特に、労働組合に無縁だった会社では、突然社外の労働組合等からの団体交渉の申入れを受け、右往左往することもしばしばです。

労働組合との団体交渉対策の重要性について

どのような交渉もそうですが、労働組合との団体交渉においても、予め対策を持っておかなければ、交渉のイニシアチブを取られてしまいます。

労働組合との団体交渉は、特に、以下に述べるよう団体交渉義務を有するため、備えておかなければなりません。

企業に求められる誠実交渉義務

使用者が団体交渉に応じる義務があるときには、交渉のテーブルに付けばよいというだけではなく、誠実に交渉しなければなりません(誠実交渉義務)。

もちろん、譲歩する義務まではありませんが、拒否する場合であっても、出来るだけ具体的な理由を示しながら回答しなければなりません。もし、誠実団体交渉義務に違反した場合、不当労働行為となってしまいます(労組法7条2号)。

団体交渉の拒否は可能か

団体交渉の拒否は、そもそも不当労働行為にあたります(労組法7条2号)。

仮に拒否すれば、労働委員会の救済命令を出されることになります。これは、労働審判などで争っている最中でも同様なので、原則として団体交渉には応じるようにすべきです。

労働組合と団体交渉を行う際の対応

申入れを受ける前の対応・準備

団体交渉は、通常、組合による交渉の申入れから始まります。

その際には、誰が交渉の当事者、担当者(交渉委員)となるか、交渉事項はないかが明確にされていることが最小限必要ですから、「団体交渉申入れ書」を提出するように求めます。

ただ、従来、そういった書類の提出を全く求めずに団交をしていた場合は、突如としてその不提出を理由として団交を拒否することは不当労働行為となりかねませんので注意しましょう(東京高判平27年1月29日等)。

労働組合法上の労働者性の判断基準

労組法上の労働者とは、「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。」とされています(労組法3条)。

労組法上の労働者概念は、労働契約(雇用)だけではなく、業務委託などで働く者の一部も、労組法上では労働者に該当することになります。 その際の判断方法としては、事業組織への組み込み、契約内容の一方的決定、報酬の労務対価性、業務依頼の諾否の自由、業務遂行への指揮監督・時間的場所的拘束の諸要素を総合考慮して労働者性を肯定できそうな場合に、さらに事業者性の実態の有無・程度を「特段の事情」として検討するという判断枠組みを取っているとされます。

団体交渉時の対応・注意点

団体交渉を行う場所や日時については、使用者が率先して定めるように心がけておく必要があります。

例えば、申入れ日の夜に交渉を行え、等と言われたとしても、不必要に受け入れることまでが、団体交渉義務として課されているわけではありません。

きちんと主張や提案に関する準備時間を確保しておく必要があります。

義務的・任意的団交事項の条項

団体交渉の対象事項は、企業が処理し得る事項であれば、使用者が任意に対応する限りは、どのような事項でも良いとされています(任意的団交事項)。

しかしながら、労組法によって、労働組合からの団体交渉の要求に対して、団体交渉に応じなければならない事項は、そこまで広くありません(義務的団交事項)。

概括的に述べれば「組合員である労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なもの」となります。例えば、労働条件や人事評価などは、義務的団交事項に該当します。

労働組合からの不当な要求への対応法

企業に課せられる団体交渉の誠実交渉義務の中には、要求に応じる義務は含まれていません。

そのため、労働組合から不当な要求がなされた場合には、毅然とした態度で拒否しましょう。

交渉後の和解・決裂時の対応

労働協約作成の注意点

労働協約は書面によって成立するものであることから、当然、その記載された文言が重要な意味を持ちます。

したがって、一読して、多数の意味がないような文言を用いる必要があります。

あとから、それはそういう意味じゃない、とか、もっと限定された合意であった、と主張したとしても、そのような反論は困難です。

文言の選定には十分に注意しましょう。

交渉決裂時の対応

団体交渉が決裂しそうな場合、労働組合は、ビラ巻き等の行為をして、会社に圧力をかけて団交を成立させようとすることが有ります。この場合は、名誉棄損に当たる内容でないかなどを検討し、対処することになります。

また団体交渉が決裂したことで、不当労働行為と労働委員会に審査申立てを行ってくる場合もありますし、個別労使紛争(労働審判)等がなされることもあります。それぞれの場合に、誠実交渉義務違反はないといった主張ができるように備えておく必要があります。

争議行為における正当性

争議行為とは、団体行動権の一つで、一定の要件の下、民事免責、刑事免責が認められています。

争議行為の正当性は、主体、目的、開始時期・手続き、態様の4つの側面から判断されます。

争議行為は、団体交渉のための手段ですから、団体交渉の主体となりうる者でなければならないとされています。また、その目的も、団体交渉の目的事項のためでなければならず、例えば政治目的でのストライキは正当性を持ちません。

団体交渉を経ない時期に行われる争議行為も、団体交渉のための手段としては、矛盾しますから、例えば団体交渉を申し入れた後、回答がないうちに争議行為を行うことは、正当性が認められません。態様としても、暴力の行使は全く認められません。

このような観点から、争議行為の正当性は判断されていくことになります。

民事免責

労組法上、「使用者は、同盟罷業その他の争議行為であつて正当なものによつて損害を受けたことの故をもつて、労働組合又はその組合員に対し賠償を請求することができない」(労組法8条)と民事免責が定めれています。

そのため、上記の要件を満たす場合には、損害賠償責任を負うことはありません。

刑事免責

「法令又は正当な業務による行為は、罰しない」(刑法35条)との規定によって、労働組合の正当な行為は、違法性が阻却されます。

そのため、上記の要件を満たす正当な争議行為であれば、仮に威力業務妨害や不退去に該当するものでも免責されます。

労働組合との団体交渉を弁護士へ依頼するメリット

これまでに述べたように、労働組合側は、団体交渉に手慣れた組合員が交渉に出る可能性が高く、十分な準備をしている場合も多いです。さらに、労働組合が団体交渉をする権利は、憲法上の権利として保障されていますから、安易に団体交渉を拒否することはできません。

そうすると、経営者側も、労働組合との団体交渉が生じることを想定しておくべきということになります。その方法としては、労働問題についての専門的知識・経験を有する弁護士にご依頼いただくのが最も確実な方法でしょう。弁護士に依頼をしていただくことで、労働組合との交渉や労働協約に関する書類の作成、労働者との条件調整などを適切に行うことができます。また、そもそも労働組合が、団体交渉を行おうと思わない労働環境を整えるということも必要かもしれません。労働組合から団体交渉をされないために、事前に就業規則の整備や労働環境の調整などを行うことも考えられます。

また、実際に団体交渉の申入れがなされた場合には、団体交渉の対応について、弁護士がアドバイスすることができるでしょう。組合側の要求が、正当な理由のあるものばかりとは限りませんから、争う必要のある要求については、安易に妥協するべきではありません。

さらに、実際の交渉の場に、労働問題に精通した弁護士が同席していれば、組合側との交渉もスムーズになる場合も多いです。

団体交渉に関する問題は、専門の弁護士にご相談いただくことが、適切な解決につながるといえます。

埼玉県内で、団体交渉でお悩みの企業様は、ぜひ、一度弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。


近年、企業にとって、ハラスメント問題は、ますます重要な問題となってきています。 社内でハラスメントが発生した場合、会社に損害賠償責任が認められるリスクがあるだけではなく、被害者の離職といった人材の流出や職場環境の悪化による業績低下など、法的責任にとどまらないデメリットがあります。 ハラスメントを未然に防ぐこと、また万一発生してしまった場合に適切な対処をしていくことは、会社経営にとって必要不可欠です。

ハラスメント問題による企業リスク

ハラスメント問題が発生した場合に、企業に生じるリスクは、法的責任だけではありません。

当然、ハラスメントによる損害賠償責任を負うことも、企業にとって重大なリスクです。

しかし、ハラスメントを行う者がいる職場では、職場環境が悪化し、業務効率が低下してしまうことも多く、経営上、業績が上がらなくなるという問題も発生します。

また、被害者は、ハラスメントされたことを理由に離職してしまうこともありますし、ハラスメントがある職場にはいられないと、周囲の労働者も、職場から離職してしまうことが多く、貴重な人材が流出する事態になることが多いです。

加えて、社会のハラスメントに対する評価は年々厳しいものになってきており、会社の事業や新規採用にも影響を及ぼしかねません。

このようにハラスメント問題による企業リスクは、法的責任にとどまらないものがあります。

企業で問題となりうる代表的なハラスメント

パワーハラスメント(パワハラ)

職場におけるパワーハラスメントとは、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること」であるとされます(改正労働施策総合推進法第30条の2第1項)。

したがって、①優越的な関係を背景とした言動、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、③労働者の就業環境が害されるものの三つの要件全てを満たすものが、事業主に防止措置を取ることが義務付けられた職場におけるパワーハラスメントです。

重要な点としては、①職務上の上下関係のみならず、経験豊富な部下や同僚の集団が行う行為もパワハラに該当し得るとされた点や、②業務上必要かつ相当な指示命令(遅刻などを普通の態様で注意すること等)はパワハラに該当しないとした点、③個人の感じ方ではなく、社会⼀般の労働者を基準に支障があるかが指標となる点などになります。

セクシャルハラスメント(セクハラ)

職場におけるセクシュアルハラスメントとは、「職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応によりその労働者が労働条件について不利益を受けたり、性的な言動により就業環境が害されること」をいいます(男女雇用機会均等法11条)。

この条文からもわかるように 「職場におけるセクシュアルハラスメント」には「対価型」と「環境型」があるとされています。

対価型セクシュアルハラスメントとは、例えば、社長が社員に対し、性的な関係を要求したところ拒否されたので、その社員を解雇することや、車で移動している最中に、課長が社員の胸や腰などを触ったところ、抵抗されたので、その社員を配置転換すること等は、この対価型セクシュアルハラスメントに該当します。

環境型セクシュアルハラスメントとは、例えば、労働者が抗議しているのに、同僚が業務に使用するパソコンでアダルトサイトを閲覧しているため、それを見た労働者が苦痛に感じて業務に専念できない場合などをいいます。

セクシュアルハラスメントについては、男女の認識の違いによって生じていることもありますから、労働者の意に反する性的な言動かどうかや、就業環境が害されるかどうかについては、各被害者の性別に応じ、平均的な女性労働者の感じ方や、平均的な男性労働者の感じ方を基準とすることがポイントになってきます。

マタニティハラスメント(マタハラ)

職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(以下、「職場におけるマタニティハラスメント」といいます。)とは、「職場」において⾏われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利⽤に関する言動)により、妊娠・出産した「⼥性労働者」や育児休業等を申出・取得した「男⼥労働者」の就業環境が害されることをいうとされています(男女雇用機会均等法第11条の3、育児・介護休業法第25条参照)。

職場におけるマタニティハラスメントには、制度等の利用への嫌がらせ型と状態への嫌がらせ型があるとされています。

制度等の利用への嫌がらせ型とは、例えば、男性が育児休業を取得しようと上司に相談したところ、「男が育児休業を取るなんてふざけているのか」と言われ、取得をあきらめざるを得なくなる場合など、制度の利用の請求などをしたい旨を相談したこと等に対し、解雇その他の不利益な取り扱いを示唆することなどが該当します。

状態への嫌がらせ型とは、例えば、女性が上司に妊娠を報告したら「他の⼈を雇うので早めに辞めてもらうしかない」と告げられるなど、妊娠等をしたことに対して、解雇その他の不利益な取り扱いを示唆することなどが該当します。

その他問題となるハラスメント

他にも、カスタマーハラスメントなど、顧客からハラスメントを受けた従業員への対応なども問題となります。

また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴ったコロナウイルスハラスメント(感染の疑いがあるものに対し、差別的取り扱いを行うなど)や、テレワークの普及に伴うテレワークハラスメント(プライベート空間への過干渉など)も問題となってきています。

問題となりうるハラスメントの行為

ハラスメントの種類 ハラスメント行為
パワーハラスメント(パワハラ) ・身体的攻撃
・精神的攻撃
・人間関係の切り離し
・過少、過大な要求
・個の侵害
セクシュアルハラスメント(セクハラ) ・対価型セクシュアルハラスメント
・環境型セクシュアルハラスメント
マタニティーハラスメント(マタハラ) ・制度等の利用に対する嫌がらせ
・妊婦に対するの嫌がらせ
SOGIハラスメント(SOGIハラ) ・望まない性別での生活の強要
・アウティング
カスタマーハラスメント(カスハラ) ・顧客からの暴言など迷惑行為

各種ハラスメント問題における企業の法的義務

労働契約の付随義務としての安全配慮義務として、ハラスメント被害を認識した事業主には、その被害を防ぐ義務があります。これを怠れば、安全配慮義務違反として損害賠償責任を負うことになります。

また、各種法律によって、事業主には、パワハラやセクハラ、マタハラの各種ハラスメント防止のために雇用管理上講ずべき措置が義務付けられています。

パワハラ防止法の成立と企業の取り組み

令和2年6月から、パワハラ防止法が施行されました。これによって、はじめて職場におけるパワーハラスメントが法律上定義され、企業には、この防止のために雇用管理上講ずべき措置が義務付けられました。

パワハラ防止法が施行される前から、職場におけるパワーハラスメントが許されていたわけではありません。

しかし、今後、雇用管理上講ずべき措置義務を懈怠している企業に対しては、より損害賠償責任が認められやすくなると考えられます。

そのため、パワハラ防止措置について、パワハラ防止法が施行される前と比べて、より積極的に導入している企業が増えてきた印象があります。

企業が行うべきハラスメント防止措置

各種法律によって求められる、企業が行うべきハラスメント防止措置は、主に以下の四つのポイントにまとめられます。

ハラスメントに対する方針の明確化・社内周知

各種ハラスメントについて、会社はこれを許さないことを、トップメッセージや社内研修などで周知し、また就業規則でハラスメント行為を禁止、懲戒事由とすること等が、ここでいうハラスメントに対する方針の明確化・社内周知の一例として挙げられます。

相談窓口の設置、適切に対応するための体制整備

ハラスメントが生じる前から、相談窓口を設置し、また、相談があった場合の対応を、相談担当者への研修やマニュアルの作成によって準備しておくことが、ここでいう相談窓口の設置、適切に対応するための体制整備の一例として挙げられます。

事後の迅速かつ適切な対応

ハラスメントの相談があった場合に、事実関係を迅速かつ正確に確認し、その後、ハラスメントがあった場合には適切な被害回復と行為者への対応をすること、その事案の解決だけでなく、社内での再発防止措置を講ずることが、ここでいう事後の迅速かつ適切な対応の一例として挙げられます。

関係者のプライバシー保護・不利益取り扱い禁止

当然ですが、関係者のプライバシーを保護する必要があります。相談対応は、出来る限り個室でプライバシーが確保された場で行うなどの配慮が求められます。

また、当然ですが、会社にハラスメントの相談をしたことで、解雇等の不利益な取り扱いを受けることがあってはなりませんので、そのような不利益取り扱いを禁止するように求められます。

企業内でハラスメントが発生した場合の対応

前記したとおりですが、まずは事実関係の迅速かつ正確な確認を行うことが第一になります。

事実関係の確認

ハラスメントにおいては、被害者(相談者)としては、ただ相談したかっただけで、行為者や第三者に対する事実確認を望んでいないケースもあります。まずは、被害者から、行為者に対して事実関係の確認をしてよいかの同意を取ることから始めましょう。

その後、行為者とされる者から話を聞き、事実関係に食い違いがあった場合には、守秘義務があることを明示して、周囲の同僚などの第三者から事実関係を確認することになります。

ハラスメントの判断基準

ハラスメントの判断基準は、基本的には、平均的な(セクハラにおいては男性又は女性)労働者の感じ方が基準となります。そのため、事実確認の結果、判明した事実を前提に、平均的な労働者であれば、どう受け止めるかを考えながら判断する必要があります。

加害者・被害者への対応

被害者へのフォローアップ

パワハラやセクハラがあった場合で、被害者が労働条件に置いて不利益を受けているとすれば、これを回復する必要があります(業務量に偏りがある等。)。

また、行為者(加害者)からの謝罪の場のセッティングや、そもそも距離を話すべきであるというのであれば配置転換を検討すること等、被害の回復に努める必要があります。

メンタルヘルス不調に陥っているケースもありますから、その相談対応も実施していく必要があります。

なお、仮に事実関係からはハラスメントがあったと認定できない場合でも、フォローを行うようにお勧めします。

継続的なフォローを行うことで、ハラスメントへの発展を防いだり、従業員のメンタルヘルス不調を防ぐことが期待できます。

加害者(行為者)への処分

パワハラやセクハラがあった場合には、就業規則などの規定に基づいて、懲戒などの処分を講ずることが必要となってきます。また、被害者との関係改善を図ったり、距離を離すための配置転換などの措置も検討が必要になります。

被害者へのフォローと同様に、事実関係からは、パワハラやセクハラがあったとは認定できない場合でも、行為者(とされたもの)に対しても、継続的なミーティングなどを設けて、事態の更なる発展を防ぐことが必要になります。

弁護士へハラスメント問題を依頼するメリット

以上に述べたように、企業にとって、ハラスメントの問題はますます無視できない問題となってきています。

また、企業に課される防止措置義務を果たすためには、専門家の関与が不可欠です。特に、ハラスメント研修などは、弁護士などの専門家による研修を行った方が効果は上がりやすいです。

実際にハラスメント問題が生じた際も、自社の窓口対応では困難が生じる場合などには、弁護士に依頼することで、事態の更なる悪化を防ぐこともできます。

弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所では、ハラスメント研修や、相談窓口研修などのサービスや、就業規則整備、ハラスメントが紛争化した際の代理業務などのサービスを提供しています。

埼玉県内で、ハラスメント問題にお悩みの企業の方は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所にご相談ください。

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規模の大小を問わず、従業員を雇っている場合、遅刻や欠勤しがちな社員、業務成績不良な社員、業務時間中に業務外のことばかりやっている社員などに頭を悩ませている会社経営者の方や上司の方は多いのではないでしょうか。

問題社員がいた場合には、上司が注意指導を行い、改善させなければなりませんが、それでも改善しない場合、最終的には解雇・雇止めを検討しなければなりません。

今回は、問題社員の解雇・雇止めに関する法的問題について解説します。

問題社員が企業に及ぼす影響

問題社員が企業に及ぼす影響としては、様々なものがあります。

当然、問題社員個人の成績が振るわないことによる売上等への影響もありますが、他の社員に対する悪影響が見逃せません。

問題のないまじめな社員に対し、パワハラやセクハラをする問題社員がいれば、その社員は辞めてしまいます。また、職務怠慢な社員が許されていれば、問題のないまじめな社員も悪影響を受け、職務怠慢な社員になってしまい、更なる成績不振へとつながってしまいます。


問題社員の類型

・能力不足

例えば、必要最低限のPCスキルや電話対応ができず、何度指導しても改善しない社員等、一般の労働者と比べて相当以上に能力が不足している社員です。

・セクハラ・パワハラ

セクハラやパワハラをする社員が問題社員と言われることに異論がある方はいないでしょう。 いかなるハラスメントであれ、ハラスメントされた社員が喜ぶことは考えられません。このタイプは特に周りの労働者に被害を与えますから、その影響は深刻です。

・職務怠慢

例えば、PC作業中に、何もしていないとか、業務に関係ないインターネットを見ている社員です。
また、依頼された仕事をすぐ横において、何日も放置するなど、やる気が見られない社員がこれに該当します。

・協調性が無い

繁忙期で、割増賃金の支払いも前提としているにもかかわらず、一人だけ協力してくれない社員や、チームでの作業で和を乱す社員などが典型です。会社や、同僚に歩み寄って来てくれない社員というのも、会社にとっては問題社員と言える場合があるでしょう。

問題社員への対応

問題社員への対応は、会社がその社員に対して何を問題と考えているかを、注意や指導によって伝えることです。

この注意指導は口頭のみならず、見える形でやることを原則にしてください。

問題社員の中には、自分のどこに問題があるのか、気づいていない方も大勢います。

上司も、ただ叱るだけではなく、何をしてほしかったのか、そして、どこができていなかったのか、次はどのようにしてほしいのかを、明確に伝えなければなりません。

また、上司が口頭できちんと伝えたとしても、言われた社員の方では、理解できていないことも多いです。後で見返すことができるように、口頭のみならず、メールや書面などで、注意指導されることをお勧めします。

最終的に、問題社員が改善しなかった場合にも、この注意や指導を繰り返し行ったことが、重要になってきます。見える形で注意指導しておけば、注意や指導をしたことを証明することもできますから、労働審判などに至った場合でも水掛け論を防ぐことができます。

問題社員の解雇について

問題社員に注意や指導を繰り返しても改善されない場合、最終的には労働契約の終了を目指すことになります。労働者が、退職に同意しないのであれば、会社としては、解雇を行うことになります。

しかしながら、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(労契法16条)とされているとおり、厳しい法規制があります。

問題社員が期間の定めのある労働者の場合には、契約期間内における解雇については、「やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」(労契法17条)とされており、労契法16条よりもさらに厳格な規制が課せられています。

問題社員を解雇するためには、このような高いハードルをクリアしなければなりません。

問題社員の雇い止め

また、問題社員が期間の定めのある労働者であれば、解雇ではなく雇止めという選択肢もあります。契約期間満了で契約を終了し、更新をしないという選択肢です。

形式的に考えれば、契約を締結するかどうかは自由なはずですが、期間の定めのある労働者であっても、期間の定めのない労働者と同様か、それに準ずる必須の役割を担っている労働者や、長期雇用化している労働者もいることから、この形式論には修正が加えられています。

保護される類型としては、第一に実質無期型と言われるもので、期間の定めのある労働契約によって雇用されていたとしても、業務の客観的内容や更新の手続きなどの諸事情から期間の定めのない労働契約と実質的に異ならない状態で存在していたという場合です。

第二には、期待保護型と言われるもので、長期にわたる反復更新もないが、当事者間の言動・認識などから、労働者が更新を期待することに合理性があると認められる場合です。

この二つの類型に該当する場合には、労契法19条によって、期間の定めのある労働者から、契約更新の申し込みがあった場合には、「使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。」として、雇止めにも解雇と同様の規制がかけられています。



雇い止めが認められやすい問題行動

著しい勤怠不良のケースでは、解雇もそうですが、雇止めが有効とされることが有ります。

ただ、雇止めのケースは、まず実質無期型や期待保護型など、労契法19条の保護に該当しないように、更新手続きを厳格にすること等から対応していくことをお勧めします。

能力不足を理由とした解雇・雇止め

能力不足を理由とする解雇や雇止めは、無効とされるリスクが高いです。

例えば、相対的な評価として労働能率や成績が劣る場合(3500人いる社員のうち、下位200名であったものなど)には、さらに体系的な教育、指導を実施することで、労働能率の向上を図る余地があるとして、解雇を無効とした裁判例もあります(セガ・エンター・プライゼス事件)。

企業に求められる解雇回避努力

職種や地位を限定せずに採用された労働者については、現在の担当業務に関して業績不振があるとしても、配置転換や業務内容に見合った職位への降格、解雇の可能性をより具体的に伝えたうえでの更なる業績改善の機会の付与といった手段を講ずる等、解雇の前段階の手当をしたかどうかが、解雇の有効性を判断するうえで重要視されています。

職種や地位を限定せずに採用した場合には、会社の規模にもよりますが、解雇が最終手段であることを前提に、解雇を回避するように努めることが重要です。

不当な解雇・雇い止めのリスク

解雇・雇止めが不当であるとして、無効とされてしまった場合には、会社と労働者の労働契約は終了していなかったことになります。

したがって、解雇後、支払っていなかった分の賃金(バックペイ)の支払わなければならなくなってしまいます。解雇無効との判断が下されるまでに時間がかかった場合には、当該労働者の賃金額にもよりますが、多額のバックペイを支払わなければならないリスクがあります。



不当解雇による罰則

労基法では、業務上災害や産前産後休業の後、30日間は解雇できないという制限(労基法19条)や解雇予告(又は解雇予告手当の支払い)が必要としている(労基法20条)など、解雇に関する手き規制を設けています。これに反する解雇については、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されています(労基法119条1号)。

解雇の理由についてだけでなく、手続規制を遵守することにも注意しましょう。

弁護士に依頼することのメリット

問題社員の解雇・雇止めについては、解雇する前の段階から弁護士に依頼することをお勧めします。

今まで述べてきたように、解雇・雇止めには厳しい法規制があり、ひとたび解雇無効となった場合には多額の金銭的負担を負うリスクまであります。

解雇前にご相談いただくことで、問題社員に対する注意や指導が足りているか否か、解雇無効を争われたときにどのように判断される恐れがあるかの検討等、事前に解雇無効のリスクを検討したうえで、対応をアドバイスすることができ、解雇無効とされるリスクを最小限に抑えることができます。

また、解雇後、紛争化してしまった後であれば、弁護士に依頼する必要があるでしょう。紛争化した以上、専門家である弁護士を選任し解決していかなければ、会社の主張を十分に述べていくことは出来ません。

弁護士に依頼することで、会社にとって有利ない解決を導くお手伝いすることができます。

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残業代や未払い賃金請求については、年々増加傾向にあります。

経営者や人事担当の方には、漠然とした不安を持たれている方が多いですが、実際に請求が来るまでは、どのようなリスクを抱えているのかについてわかっていない方も多いです。

そのため、個別労働紛争で件数の多い残業代請求対応について、解説していきたいと思います。

未払い賃金・残業代請求のリスク

未払い賃金・残業代のリスクとしては、さまざまのものがあります。

実際に残業代を支払っていなかったとすれば労働基準法違反ですから、労基署から行政指導を受けたり、労基法違反としての刑事罰を受ける恐れもあります。また、付加金や遅延損害金などの支払いもあるため、実際の未払い以上の支払いを要求される恐れもあります。

そして、その労働者にのみ残業代を支払っていない会社はありませんから、一件の請求の対応をおろそかにすることで、同種の支払い請求が頻発するリスクもあります。

賃金の支払いに関する法律上の定め

賃金の支払いについては、①通貨で、②直接労働者に、③全額を、④毎月1回以上、⑤一定の期日を定めて支払わなければならないとされています(労基法24条。賃金支払の五原則)。

また、時間外労働、休日労働、深夜労働については、使用者に対して割増賃金の支払いが命じられています(労基法37条)。

残業代支払いの事前防止策

残業代は、割増賃金にて支払わなければなりませんから、企業としては出来る限り、その支出を抑えたいと考えています。もちろん、残業自体が生じないようにするということが、もっとも直接直接的な事前防止策ですが、その他に以下のような制度の導入が考えられます。

・変形労働時間制の導入

変形労働時間制とは、一定の要件を満たすことを条件に、法定労働時間を、一定期間平均で守ればよいとする制度です。つまり、1日あたり、1週間あたりの労働時間が法定労働時間よりも増加させることが可能となる制度です。
繁忙期と閑散期があるような会社の場合、効率的な労働時間配分が可能となるため、全体の労働時間削減=残業時間削減につながります。

・定額残業制の導入

定額残業制とは、固定残業制とも言いますが、時間外労働、休日及び深夜労働に対する各割増賃金として支払われる、あらかじめ定められた一定の金額であり、このような残業代支払のシステムのことをいいます。
会社にとっては、一定額を定額で支払う制度は、残業代計算の手間を省き人件費の節減につながりますし、適切に運用がなされていれば、実際の残業時間が定められた固定の残業時間に満たなくても同一の賃金が支給されるという点で従業員にとってもメリットのある制度と言えます。
残業代を事前に一定額支払っていることにより、残業代未払のリスクを減らすことができます。

・事業場外みなし労働時間制の導入

事業場外みなし労働時間制とは、労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定時間労働したものとみなす。 これが「事業場外みなし労働時間制」です。
この場合、実際の労働時間に関わらず、就業規則等で定められた「所定労働時間」が労働時間とみなされます。そのため、残業代払いを抑制することができます。

・裁量労働制の導入

裁量労働制は、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。
厳密で複雑な要件を満たす必要がありますが、労使協定で定めた時間分労働したものとされますので、1日8時間というふうに労働時間を定めた場合には、実際の労働時間が何時間であろうと、1日8時間労働であったとみなされますので、残業代を支払う必要はなくなります。

未払い残業代の支払い義務と罰則

未払い残業代を支払わないことは出来ません。

法定時間外労働をさせた以上は、労基法37条に基づき、割増賃金を支払う義務があります。

もし、これを支払わない場合には、労基法違反となり、刑事罰が科されるリスクもあります。

残業時間の立証責任

残業時間=労働時間の立証責任は、労働者側にあります。

しかしながら、使用者には、労働者の労働時間を適正に把握する義務があるため、労働者がある程度の立証をした場合には、その時間が労働時間ではなかったことを、使用者が反証していかなければならないところがありますので注意が必要です。

未払い賃金請求の対応

未払い賃金や残業代を請求される場合の多くは、辞めた従業員から内容証明郵便が届くことから始まります。

ある日突然、会社に内容証明郵便が届くため、驚かれる方が非常に多いです。

初動対応の重要性

多くの事件に漏れず、初動対応は非常に重要です。

まずは、請求の内容を把握したうえで、事実関係を調査しなければなりません。また、この段階で弁護士に依頼することをお勧めします。

未払い賃金や残業代を請求されている以上、紛争となってしまっていますから、専門家である弁護士とともに会社にとって有利な解決を模索していくべきです。

また、会社だけで相手方に対応した結果、時効にかかっていた部分まで承認してしまうなどのリスクもあります。

請求を放置した場合のリスク

請求が来た場合は、誠実に対応するべきです。

事実関係を確認した場合には、会社が請求に対して支払う義務を負っていない場合もあり得ますが、その事実関係を確認するにも、相手方に対して、事実関係を精査するので、回答を待ってほしいと一言伝えておくべきです。

請求を放置した場合には、紛争が会社と相手方の二当事者間のみで終了せず労働審判などに発展する恐れが高く、付加金のリスクなどが増加していく恐れがあります。

会社側が主張すべき反論

会社が主張すべき反論として主だったものは、以下の5つです。

未払い賃金・残業代は発生していない

そもそも、未払賃金や残業代が発生していない=従業員が主張する労働時間が誤りであるという主張です。

実務上、従業員が主張する労働時間は、会社の指揮命令下にない時間であったとか、そもそも過大な請求であるという場合があります。

そのため、労働時間を精査したところ、未払賃金や残業代は発生していないという反論が考えられます。

会社の許可なく残業をしていた

また、就業規則上、「従業員が、時間外労働、深夜労働及び休日労働をする場合、あらかじめ所属長に申請してその許可を受けなければならない。」などとして残業の許可制を採用している会社であれば、当該従業員が残業の許可を得ていないという反論が考えられます。

会社の指揮命令に反した労働であるとして、労働時間制を否定するというものです。

注意が必要な点としては、残業の許可制を採用していたとしても、残業の許可を得ないことが恒常化しており、それを会社も把握しているため、黙示の指揮命令が認定されてしまうケース等では、残業許可制を採用し、許可を出していないからと言って労働時間制が否定されるわけではありません。

残業許可制を採用した場合、制度運用にも気を付けておく必要があります。

管理監督者からの請求である

労基法上、時間外労働などに関する割増賃金等を支払う必要がないものとして、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者…」(労基法41条2号)、いわゆる管理監督者がいます。

管理監督者からの請求であれば、残業代を支払う必要はありませんので、当該労働者が管理監督者であるということが、請求に対する反論(抗弁)となります。

もっとも、管理監督者とは「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体の立場にある者」を言うとされており、厳しい要件の下で認定されるものなので、当該労働者が管理監督者であるかどうかは精査しておく必要があります。

定額残業代として支払い済みである

定額残業代とは、固定残業代とも言いますが、時間外労働、休日及び深夜労働に対する各割増賃金として支払われる、あらかじめ定められた一定の金額であり、このような残業代支払のシステムを定額残業代制(固定残業代制)といいます。

そのため、その従業員の主張する労働時間に対応する残業代は、既に支払い済みであるという主張になります。

注意すべき点としては、定額残業代が有効であるためには、いわゆる対価性要件、明確区分性要件が必要とされています。仮に「基本給25万円に固定残業代を含む」という漠然とした定めでは、無効とされてしまい、定額残業代の支払いとしては認められず、基礎単価も高額になりかねません。

定額残業代制を採用する場合には、弁護士など専門家のアドバイスが必須です。

消滅時効が成立している

未払い賃金や残業代の時効は、令和2年3月までの支払い分については、2年です(令和2年4月1日以後に賃金支払期日到来のものは、当分の間「3年」です。)。

そのため、これよりも遡った期間の請求がなされている場合には、消滅時効の援用をしなければなりません。

未払い賃金請求の和解と注意点

和解する際には、他の労働者への波及を防ぐ観点から、金銭支払いの名目は「解決金」としておくことをお勧めします。また、出来ることならば、和解内容に関して口外禁止条項を入れておくことも重要です。

また、会社のみならず、役員や他の労働者に損害賠償請求を行わないという条項が盛り込めるようであれば、一挙解決のために盛り込むこともお勧めします。

付加金・遅延損害金の発生

残業代に関する割増賃金の支払いについては、訴訟において請求された場合には、「使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。」(労基法114条)とされています。そのため、倍額の支払いを命じられるリスクがあります。

また、賃金を支払っていないということは、債務不履行ですから遅延損害金の支払義務を負うことになります。従業員が退職した後は年14.6%での請求が可能(賃確法6条1項、同施行令1条)とされていますので、遅延損害金も、残業代などの支払いをしなかった場合のリスクとして、会社に重くのしかかってきます。

弁護士に依頼すべき理由

残業代請求事件は、近年増加傾向にある紛争事件です。

仮に弁護士に依頼せず、労働時間の反証が認められないとか、消滅時効の援用を失敗してしまった場合には金銭的に重い負担を負いかねませんし、他の労働者に波及しない解決を目指すには、紛争解決の専門家である弁護士の関与が必要不可欠です。

弁護士に依頼することで、最良の解決に導くことができますので、残業代を請求された会社の方は、ぜひ弁護士にご依頼ください。

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