妊娠を理由に内定取消はできるのか

コラム

企業にとって、人材の採用は避けては通れない課題です。より良い人材を採用し、自社で気持ちよく働いてもらいたいというのは、どの企業も共通した気持ちだと思います。
では、面接の結果、そのような人材に内定を出したところ、内定者から妊娠したという連絡があった場合、企業としてはどう対応すべきでしょうか。

妊娠を理由に内定取消はできるのか?

妊娠自体は、非常に喜ばしいことで、これを咎める企業はないでしょう。
しかしながら、予定していた勤務開始日に勤務を行うことができなくなったり、使用期間中に産休に入ってしまうなど、企業が予定していなかった事態にもなります。
人手が欲しいから採用するわけですから、内定取り消しして、別の人を採用したいという思いもわかります。
しかしながら、妊娠を理由に内定取り消しはできません。

内定取消は法律上「解雇」と同じ扱い

内定の法的性質は、始期付解約権留保付労働契約の成立であるとされています。
つまり、内定を取り消すということは労働契約を取り消す=解雇することになります。

妊娠による内定取消は「男女雇用機会均等法」に反する

妊娠を理由とする内定取消(=解雇)は、男女雇用機会均等法第9条3項によって禁止されています。
「事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」 したがって、内定者が妊娠をしたことを理由とする内定取消は、男女雇用機会均等法に反する以上、出来ません。

採用面接の段階で妊娠の有無を質問して良いか?

では、内定を取り消すことができないのであれば、内定を出す前の段階、採用面接の段階で妊娠の有無を質問して良いのでしょうか。
一般論として、労働者には採用の自由があり、その一環として調査の自由が認められています。
しかしながら、「採用面接に際して、結婚の予定の有無、子供が生まれた場合の継続就労の希望の有無等一定の事項について女性に対してのみ質問すること。」は男女雇用機会均等法第5条に反する恐れがあります(労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針参照)。
仮に、このような質問を行うとしても、男女問わず、質問するようにする方が無難です。

入社直後の妊娠でも産休・育休を与える必要はあるか?

産休とは、出産予定日の6週間前から与えられる産前休業と、出産の翌日から8週間経過するまでの間に与えられる産後休業の二つを併せたものをいいます。
産休は、全女性労働者に与えられるものですから、入社直後の妊娠でも産休は与えなければなりません(労基法第65条)。

育休とは、育児休業のことをいいます。これは、1歳に満たない子供を養育する男女労働者が、会社に申し出ることにより、子供が1歳になるまでの間で希望する期間、育児のために休業することができる制度です。
①同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること、②子どもの1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれること、③子どもの2歳の誕生日の前々日までに、労働契約の期間が満了しており、かつ、契約が更新されないことが明らかでないことの要件を満たした労働者に与えられます。
また、以下に述べる労使協定を結ぶことで、入社直後の社員について育休制度の対象から除外することができます。

入社1年未満の育児休業の適用除外について

労使協定を結ぶ必要がありますが、雇用された期間が1年に満たない労働者について、育休制度を適用除外とすることができます(育児介護6条1項1号)。

産休・育休の取得を理由とする不利益取扱いも違法

産休や育休の取得を理由とする不利益取り扱いは、男女雇用機会均等法や育児介護休業法によって禁止されています(男女雇用機会均等法第9条3項、育児介護休業法第10条)。

内定後の妊娠について企業が講じておくべき対策

妊娠自体は喜ばしいことですが、入社直後に産休に入る場合には、人が足りなくなることは事実であり、企業としては、事前に対策を講じておくべきです。
まず、過度な人手不足を防ぐために、余裕を持った人員を採用しておくことが考えられます。
また、採用時の認識の違いをなくすために、男女問わずに質問する前提ですが、結婚や出産等、今後のライフプランをどのように考えているのか、面接を受けに来る者にきちんと確認しておくこと等が考えられます。

企業に義務付けられるマタハラ防止措置とは?

企業は、いわゆるマタハラ防止指針において、①職場のマタハラの内容、マタハラがあってはならない旨の方針の明確化及び周知・啓発、②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、③職場における育児休業等に関するはアスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応、④職場における育児休業等に関するハラスメント原因や背景となる要因を解消するための措置、⑤①~④までの措置と併せて講ずべき措置(プライバシー保護等)を講ずることが要求されています。

男女雇用機会均等法違反に対する罰則

男女雇用機会均等法違反に関しては、第33条に、第29条による報告をしなかった、又は虚偽の報告をしたものについては、20万円以下の過料に処すとされています。
なお、同法第29条は、「厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。」という条文です。

妊娠を理由とした内定取消に関する判例

妊娠を理由とした内定取消に関する判例で、有名なものはありません。
ただ、有名な大日本印刷事件の判旨に照らせば、妊娠を理由とする内定取消は、違法無効なものと判断されるでしょう。

事件の概要

Xは大学にあったYの求人に応募、内定を得たところ、Yは、昭和44年2月に、突然、Xに対する採用内定を取り消した。
これについてXがYに対して、解約権の濫用に該当するとして争った事案です。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

最大判昭和54年7月20日(民集33-5-582)
最高裁は、本件について、XとYの間で労働契約が成立していると解するのが相当であると判断したうえで、内定取消について、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られると述べました。
そのうえで、Yは、Xの陰気な印象を内定取消事由としたが、Xの印象は当初から分かっていたものであって、これを社会通念上相当とは是認できないとして、解約権の濫用にあたり、内定取消は違法無効であると判断しました。

ポイント・解説

ポイントとしては、内定取消といえど、労働契約の解消=解雇と同様に、客観的に合理的と認められ、社会通念上相当であることを有効性の要件とした点です。
男女雇用機会均等法の趣旨からも明らかですが、妊娠したことのみを理由として内定取消することは、客観的に合理的ではなく、社会通念上相当とも言えません。
したがって、同判例の趣旨からすれば、妊娠を理由とする内定取消は、違法無効と判断sれることになります。

内定後の妊娠への対応でお困りの際は、早めに弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

以上に述べたように、内定後の妊娠については、それを理由に内定取り消しを行うことが困難であることや、産休等の対応についても、専門的な知識を要します。
出来れば、内定を出す前に、対応できる部分は対応しておく必要がありますので、内定後の妊娠で悩む前に、可能な限り早めに、弁護士等の専門家にご相談されることをお勧めいたします。
埼玉県内で内定後の妊娠への対応でお困りの企業の方は、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にぜひご相談ください。

派遣社員が業務上のけがや病気で休むときや、派遣社員を自社の都合で休ませなければならないとき、
休業補償や休業手当の支払いは、自社の社員と同様に必要なのでしょうか。

派遣社員にも休業補償・休業手当の支払いは必要か?

派遣社員であろうと、労働者である以上、休業補償・休業手当の支払いは必要です。

休業補償と休業手当の違いとは

休業補償とは、労働者が業務上負傷し又は疾病にかかった場合に、労働することができないために賃金を受けない場合において、労働者の平均賃金の60%が使用者から支給されるものをいいます(労基法76条)。
他方で、休業手当とは、使用者の責に帰すべき事由(使用者都合)で労働者を休業させる場合に、平均賃金の60%以上の賃金が使用者から支給されるものをいいます(労基法26条)。
前者は、いわゆる労災の件で、後者は会社都合での休業命令などの際に支払われるものです。

休業補償・休業手当の対象について

休業補償も休業手当も、労基法上の労働者であれば、支払対象となります。
そのため、派遣社員であっても、休業補償や休業手当の対象となります。

支払い義務は派遣元・派遣先のどちらにあるのか

しかしながら派遣労働者の場合、派遣元企業と派遣先企業のどちらが休業補償や休業手当を支払うべきなのでしょうか。
結論からいうと、派遣元企業が支払うべきです。
派遣社員と直接の労働契約を締結しているのは、派遣元ですから、休業補償や休業手当の支払い義務は派遣元企業にあります。

派遣先は休業補償や休業手当を一切負担しなくても良いか

負担する必要はありません。派遣元と派遣社員との問題となります。
但し、以下の点に注意が必要です。

休業補償で不足する部分の支払いを求められるケースも

派遣元企業から、派遣先企業に対して金銭補償を求められるケースはありますが、結論としては労働者派遣契約の契約の内容によります。
労働者派遣契約上の規定でどうなっているかに応じて、負担すべきかどうかが決まってくることになります。

派遣先の都合で休ませた場合の休業手当は?

派遣先の都合で休ませた場合も、派遣元が休業手当を支払うことになります。
ただし、労働者派遣契約上の規定で派遣元に対する派遣料金は支払う必要があります。

派遣契約を中途解約した場合はどうなる?

労働者派遣契約を中途解約した場合、派遣料金として休業手当に相当する額以上の額について支払い義務があるとの説があります(派遣先指針)。
そのため、この場合には、派遣元に対する派遣料金として、休業手当に相当する額以上の支払いを行う必要があります。

緊急事態宣言下における派遣社員の休業手当

労働者派遣契約の期間中に派遣先の事業所が休業したこと等に伴って派遣会社が派遣労働者を休業させる場合には、派遣元は休業手当を支払う必要があります。
ただ、緊急事態宣言によって休業することが派遣先の責めに帰すべき事由とは言えないと解釈する余地もあります。派遣元と派遣先でよく話し合い、対応していく必要があります。

派遣先企業の損害賠償責任について

休業補償の原因となる災害の原因が派遣先にある場合、休業補償とは別に、派遣先の安全配慮義務違反等を原因として損害賠償請求をされる可能性があります。
この場合は、休業補償とは別の話になりますので、派遣先企業が損害賠償責任を負う可能性がございます。

休業補償・休業手当の不払いに対する罰則

休業補償の不払いの場合、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金を受ける可能性があります(労基法119条)。
休業手当の不払いに対しても、三十万円以下の罰金を受ける可能性があります(労基法120条)。
また、休業手当の不払いについては、不払い分と同額の付加金の支払いが命じられる場合があります(労基法114条)。

派遣の休業補償・休業手当に関する判例

派遣労働者の休業手当等の支払いについて、三都企画建設事件があります。

事件の概要

派遣労働者としてYに登録されていたXが、とある会社Aに派遣されていたところ、AからXを交代するようにYへ要請されました。
その結果、YはXに対して交代を命じ、同時にXを解雇したという事案です。
主位的には派遣の残期間に受け取ることができたであろう賃金請求を行い、予備的に休業手当などを請求しました。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

大阪地判平成18年1月6日
同裁判では、派遣先からXの就労を拒絶され、YがXを交代するようにとの要請に応じたことによって、Xの就労が履行不能となった場合、特段の事情がない限り、XのYに対する賃金請求権は消滅するとして、賃金請求は棄却しました。
他方で、この交代は労働基準法第 26 条にいう使用者の責に帰すべき事由による休業に該当し、原告は被告に対し休業手当の支給を求めることができるとしました。

ポイント・解説

派遣元が派遣先から労働者派遣契約を解除されたために派遣を打ち切った場合や、派遣先の陽性に応じて派遣期間の途中で派遣労働者を交代させた場合には、派遣元と派遣労働者との間の派遣労働契約は、契約期間が残っていれば、その間は存続することになります。この場合の処理としては賃金又は休業手当の支払いが必要になるのではないか、という問題があります。先の裁判例は、休業手当を支払うようにと判断しました。

休業補償・休業手当に関して派遣社員とトラブルにならないためにも、弁護士に相談したうえで正しい対応をとることが重要です。

以上に述べてきたように、派遣社員の問題は、正社員と異なり、派遣先と派遣元という二つの企業がかかわることから、そのどちらが費用を負担すべきか問題となります。自社で対応すべきなのかどうか、判断するには専門知識が不可欠です。
埼玉県内で、派遣社員に関する休業補償・休業手当に関してお悩みの企業様は、ぜひ一度弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

企業にとって、採用活動は非常に重要な業務の一つです。その企業で働く人が企業を支えていくわけですから、企業にマッチした良い人材を採用することで、更なる企業の発展を図ることができます。
他方で、採用内定を出した後に、内定を取り消したい事情が発覚することもあります。企業にマッチしない人材を採用することは、企業にとっても労働者にとっても良いことではありません。この場合、双方の合意があれば問題ありませんが、企業の一方的な意思表示で内定を取り消すことができるのでしょうか。本日は、採用内定の法律問題についてご説明させていただきます。

採用内定はどのような法的性質を持つのか?

採用内定という言葉が広く使われていますが、採用決定した場合の採用内定については、始期付解約権留保付労働契約が成立したものと扱われます。
そのため、労働契約上の地位を主張することができる(解雇権濫用法理の適用を受けるなどする。)ことになります。

採用内定は労働契約の成立と解されるのか?

企業としては、採用内定というものについては、未だ労働契約の成立に至っていない(労働条件なども明示していない)という主張をしたいところですが、「採用通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定」されていない場合には、労働契約が成立したものと解されてしまいます(最判昭和54年7月20日・大日本印刷事件判決参照)。
一般的には、採用内定を行った場合には、労働契約が成立しているものと解されるでしょう。

内々定の場合は?

他方で、内々定の場合はどうでしょうか。
内々定という言葉が労働法令に記載されているわけではありませんが、これを採用決定の前段階、採用予定の通知と解するのであれば、労働契約は未だ成立していないと解されます。
採用内々定は、正式な内定までの間の囲い込みという事実上の活動にすぎないと解されます。
もっとも、採用内々定の取消の過程について信義則違反があるとして、使用者側に損害賠償を命じた裁判例もありますので(福岡高判平成23年3月10日)、内々定だからといって、何をしても良いわけではありませんので、注意が必要です。

「始期付解約権留保付の労働契約」の考え方とは

始期付解約権留保付の労働契約とは、労働契約が開始される時期は決まっているものの、それまでの期間に内定を取消すべき事情等が発生した場合には、企業が労働契約を解約する権利を留保している労働契約です。
未だ労働契約が開始されていない点と会社が解約権を有している点が、始期付解約権留保付きの労働契約の特徴です。

取消事由に該当する事実があれば内定取消は認められるか?

解約権を留保している以上、取消事由に該当する事実があれば、無制限に内定取消が可能かといえば、そうではありません。

労働契約法における「解雇権濫用法理」の適用

採用決定としての採用内定は、労働契約が成立している以上、労働契約上の地位を主張することができます。
そのため、解雇権濫用法理(労契法16条)と同様の規制に服することになります。
採用内定決定当時知ることができず、また知ることが期待できない事実が判明し、しかも、それにより採用内定を取り消すことが客観的に合理的と認められ社会通念上相当として全することができる場合に限って、採用内定を取り消されるとされます。

内定取消が認められる合理的理由とは?

例えば、重大な経歴詐称や、就労開始日までに犯罪行為を行った場合には、合理的理由があるとされます。
他方で、健康診断で何らかの異常が発見されたとしても、それが業務遂行と関係がなく、あるいは業務遂行に支障を来さないものである場合には、内定取消の合理的な理由がないものと判断出れます。

不当な内定取消は損害賠償事由になり得る

内定取消が不当であり、無効である場合には、通常の解雇同様、就労開始予定日以降の地位確認やバックペイの支払いが認められます。
また、損害賠償としての慰謝料請求などの損害賠償請求を受ける可能性もあります。

内定取消時の解雇予告・解雇予告手当の必要性

行政解釈では、解雇予告を行う必要があるとされていますが、労基法上、14日を超えて使用されるに至った場合に初めて解雇予告の保護を受けるとされています(労基法21条)。
これとの均衡上、採用内定には解雇予告の適用はないと考えられています。

新卒者の内定取消に関する職業安定法上の規制

新規学校卒業者の採用に関する指針により、事業主は、採用内定取消しを防止するため、最大限の経営努力を行う等あらゆる手段を講じることが求められます。
また、やむを得ない事情により、新規学校卒業者の採用内定取消しを行おうとする事業主は、所定の様式により、あらかじめハローワーク及び施設の長に通知することが必要です(職業安定法施行規則第35条第2項)。

内定期間中の内定者の義務について

内定の法的性質は、始期付解約権留保付労働契約です。ただ、この始期というものが、就労の始期なのか、労働契約の効力発生の始期なのかは事案によって異なります。
前者であれば、就労以外の労働契約上の義務を課すことは可能となります。

入社前研修の実施は法律上問題ないか?

では、入社前研修はどうでしょうか。就労始期付の契約となれば、研修を命じることは出来ますが、内定者が新卒学生である場合には、学業が優先されるため、効力始期付と解される場合が多いため、研修を命じるのは難しいでしょう。
また、仮に労働契約の遂行と認められる場合には、賃金の支払いも必要となってきますので、留意が必要です。

内定者に就業規則を適用できるか?

これも、契約の解釈に応じます。就労始期の契約と解されれば、労働契約の適用があります。

内定者からの内定辞退は法的に認められる?

これは特段の事情のない限り、内定者から一方的に辞退することが認められます。
企業が内定者を強制的に就労させることは出来ませんし(労基法5条)、期間の定めのない現実に就労している労働者であっても2週間以上の予告期間を置けば自由に辞職できる(民法627条1項)ことからすれば、内定者は自由に内定を辞退することができると考えられます。

内定辞退に対して損害賠償を請求できるか?

内定者が自由に内定を辞退することができる反面、企業は、内定者に対し、内定辞退に関して、原則として損害賠償請求は出来ません。
ただ、理論上、内定者からの一方的な内定辞退について、時期や理由によっては、濫用であるとして賠償請求できる可能性はあります。そうであったとしても、企業に対して、そこまでの損害賠償をしなけらばならないとの判決が出るとは考えられませんので、損害賠償請求を行うよりも、内定辞退してきた学生等を説得する方が、コストはかからないでしょう。

採用内定に関する裁判例

採用内定について、労働契約成立を認めたものについて、大日本印刷事件判決があります。

事件の概要

これは、採用内定の段階においては、内定者が企業において有する地位、受ける給与、勤務時間、勤務場所等、労働契約の内容である労働条件が何ら明らかにされていないので、当事者間に労働契約が成立したと認める事情はないとして、企業が採用内定による労働契約の成立を争った事件です。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

最判昭和54年 7月20日によると、
「本件採用内定通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていなかつたことを考慮するとき、上告人からの募集(申込みの誘引)に対し、被上告人が応募したのは、労働契約の申込みであり、これに対する上告人からの採用内定通知は、右申込みに対する承諾であつて、被上告人の本件誓約書の提出とあいまつて、これにより、被上告人と上告人との間に、被上告人の就労の始期を昭和四四年大学卒業直後とし、それまでの間、本件誓約書記載の五項目の採用内定取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したと解するのを相当とした原審の判断は正当であ」るとして、労働契約の成立を認めました。

ポイント・解説

本判例のポイントは、採用予定としての内定(=内々定)と、採用決定としての内定との違いの判断に関する基準を示したことにあります。
内々定にすぎない内定を出す場合には、「労働契約締結のための特段の意思表示をすること」を予定する必要があるため、未だ採用決定に至っておらず、次の意思表示を予定していることを当事者間のやり取りのメール等によって明らかにしておく必要があります。

採用内定に関して不明点があれば、法律の専門家である弁護士にご相談下さい。

以上に述べてきたように、採用内定については、労働契約が成立しているかどうか、取消しが可能か等、法的に様々な問題があります。
企業にとって、人材の採用が重要であることは言うまでもありませんので、採用活動に伴う採用内定の法律問題について、企業が目を背けることは出来ません。
採用内定に関して問題を抱える埼玉県内の企業は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

新型コロナウイルスに感染した、PCR検査で陽性だった、そういった社員が現れることは、現在の状況では他人ごとではありません。
自社で、そういった社員が生じた場合、どういった対策を取っていくべきなのか。本日は、新型コロナウイルスに伴う自宅待機命令についてご説明いたします。

新型コロナウイルス流行に伴う自宅待機命令

「自宅待機」とは、使用者が労働者を出社させるのが不適当と判断した場合に、当該労働者を出社させずに自宅で待機するように命じる措置です。
新型コロナウイルスは、人と人の接触によって感染すると言われることから、自社で新型コロナウイルスに感染した場合等に、自宅待機命令を行うことで感染拡大防止を図れないか検討することになります。

自宅待機命令の効力について

従業員には、原則として働く権利(就労請求権)はないため、自宅待機命令が適法になされているのであれば、従業員はこれに従い、自宅で待機しなければなりません。

業務命令としての自宅待機命令とは

会社は、随時、人事権の行使として自宅待機命令を出すことができます。
もっとも、会社の指揮命令に復していることから、原則として有給としなければなりません。

新型コロナウイルスによる就業制限は可能か?

では、新型コロナウイルスを理由とする自宅待機、就業制限を行うことは可能なのでしょうか。
結論から言うと可能です。
新型コロナウイルスに感染している場合、新型コロナウイルス感染症は、感染症法上の指定感染症ですから、感染した従業員は就業制限の対象となります。そのため、就業制限をすることが可能となります。

感染が疑われる段階での自宅待機命令

では、感染が疑われる段階で自宅待機とさせることはどうでしょうか。これ自体も、もちろん人事権の行使として可能です。
ただ、以下に述べるように、自宅待機中の給与の問題が生じますので、可能な限りテレワークを検討することをお勧めします。

自宅待機中の給与を支払う義務

給与というのは、労務の給付の対価として支払われるものですから、労働者が自らの意思によって労働をしなければ労働の対価である給与を請求することは出来ないのが大原則です。
他方で、自宅待機命令等労働者の意思によらずに休業する場合には、民法の危険負担の原則に立ち返ることになります(民法536条)。この場合、使用者の都合(責めに帰すべき事由)で休業させる場合には、労働者は給与を請求することができます。

しかしながら、新型コロナウイルス感染症は、世界的に蔓延しているもので、感染経路がわからない感染者も増えてきている感染症です。会社が適切な感染予防策を取っていたとしても、完全に防ぐことは不可能といわざるを得ません。
そのため、民法上の使用者の責めに帰すべき事由に該当し、賃金の全額を保障すべき休業と判断される可能性は一般的に低いと考えられます。
したがって、新型コロナウイルスに感染している疑いがある場合には、感自宅待機中の給与の支払いは、不要であると考えられます。

「使用者の責に帰すべき事由による休業」とは

他方で、労基法26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない」と規定しています。
休業手当の保障における「責めに帰すべき事由」は、天災事変などの不可抗力に該当しない限りは認められるとされており、労働者の保護を図ったものとされています。
民法上は使用者の責めに帰すべき事由に該当しないとしても、その発生原因が使用者の支配領域に近いところから発生したもので、労働者の賃金生活の保障という観点から、使用者に6割の程度で保障させた方がよいとされる場合には使用者には休業手当の支払い義務があるとされています。
新型コロナウイルスを理由とする自宅待機については、こちらの事由に該当する可能性があります。
そのため、テレワークによる自宅勤務の可否については十分に検討することをお勧めします。

自宅待機期間の終了について

新型コロナウイルス感染症の潜伏期間を踏まえ、WHOにより健康状態の観察が推奨されている期間としては、最低で14日間とされています。
医師と相談する必要がありますが、14日程度を目安とすると良いでしょう。
※もちろん、症状がある場合は別ですし、PCRで陰性が明らかとなった場合も別です。

派遣社員への自宅待機命令

派遣契約の内容によりますが、派遣先企業が派遣社員に対して自宅待機命令を下すことは出来ます。
この場合、派遣契約の定めに従って派遣料金は処理されることになりますが、定めがない場合には、民法に立ち返って、派遣先に責めに帰すべき事由があるかどうかが検討されることになります。

自宅待機の要否は派遣元、派遣先のどちらが判断するのか?

派遣先企業が実際の指揮命令権を有し、また実際にそこで労働を行っていることから、派遣先企業が自宅待機の要否を判断することになります。

高年齢者を雇用している場合の対応

新型コロナウイルス感染症は、高リスク患者であればあるほど、死亡率が上昇するとされています。そして、高年齢者は高リスクを有している場合が多いとの見解もあります。
会社は従業員に対して安全配慮義務があることから、高年齢の従業員に対しては、例えば、優先的にテレワークにするなど、そのリスクに応じた対応を求められることになります。

高年齢労働者のみに自宅待機を命じることは可能か?

前記したとおり、高年齢者に対する安全配慮義務の履行として、そのような判断も可能です。
自社において自宅待機を命じる基準の中に年齢が一定以上に達している者等の条件を設けることも考えられます。

自宅待機命令に関するQ&A

緊急時の連絡手段として、社内連絡網を作成することは問題ないでしょうか?

個人情報ですので、使用目的、共有範囲などを明確にしておく必要があります。

就業規則に規程がなくても自宅待機を命じることは可能ですか?

自宅待機命令は、人事権の行使として認められますので、就業規則に規程が無くても可能です。

社員の家族に風邪の症状がある場合、自宅待機を命じるべきでしょうか?

ケースバイケースです。社員の家族が濃厚接触者であったとしても、社員自体は濃厚接触者に該当しないこともありますから、症状や状況を見て判断しましょう。

自宅待機中に有給休暇を取得してもらうことは可能ですか?

労使間の合意があれば可能ですが、その意思に反して有給休暇を取得させることは出来ません。

在宅勤務が可能な社員に自宅待機を命じた場合、休業手当の支払いは必要ですか?

厚生労働省のQAによれば必要です。在宅勤務が可能な場合は、まず在宅勤務を命じてください。

新型コロナウイルス感染の疑いがある社員を自宅待機とした場合、傷病手当金は支給されますか?

傷病手当金支給の要件を満たせば支給されますが、被保険者自身が労務不能であることが要件なので、症状がない場合(陽性者である場合は別ですが。)は難しいでしょう。

自宅待機中の社員に、定期的に病状の報告をさせることは可能でしょうか?

自宅待機は業務命令の一環ですから、定期的に病状の報告をさせることは可能です。ただ、症状がある社員などに対しては一定の配慮が必要です。

自宅待機命令と出勤停止命令の違いについて教えて下さい。

自宅待機命令は業務命令であり、出勤停止命令は懲戒処分です。
自宅待機命令は、就業規則上の定義がなくても実施できますが、出勤停止は懲戒処分であり、就業規則の規定なしに下すことはできません。また、懲戒事由なく下すこともできません。

新入社員を自宅待機させる場合、休業手当の支払いは必要ですか?

新入社員であっても従業員であることに変わりはありません。
使用者の責に帰すべき事由により自宅待機をさせるとすれば、通常の社員と同様の休業手当の支払いが求められることになります。

自宅待機中に新型コロナウイルスに感染した場合、労災は適用されますか?

自宅待機中に新型コロナウイルスに感染したと断言できるケースはほぼないでしょう。労災の場合には、業務起因性が求められるため、非常に難しいと言わざるを得ません。

自宅待機命令に関する様々なご質問に弁護士がお答えします。お気軽にご相談ください

新型コロナウイルス感染症については、ようやくワクチン接種が始まったこともあり、まだまだ予断を許さない状況が続いています。自社において、新型コロナウイルス感染症に関連して自宅待機命令を下さなければならない状況は、まだ続くでしょう。
こういった場合の給与支払い義務の有無等については、法的な判断が絡むことから弁護士にご相談することをお勧めいたします。

埼玉県内で新型コロナウイルス感染症に伴う自宅待機命令でお悩みの企業の方々は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にお問い合わせください。

団体交渉を申し込まれた際、どのように進めていくべきなのか、悩まれる経営者や担当者の方は多いです。今回は、団体交渉の流れと進め方について、ご説明いたします。

団体交渉の流れと進め方について

団体交渉は、組合側からの申入れによって始まります。

団体交渉の申し入れがあった場合の初動対応

団体交渉の申入れがあった場合の初動対応としては、まず、団体交渉を行う法的義務の有無を判断することになります。自身が団体交渉義務を有する使用者であるか、また労働組合の求めている事項が、義務的団交事項であるかどうかを検討します。
また、申入れの内容が抽象的であった場合には、団体交渉の充実のためにも、釈明を行っておく必要があります。

団体交渉の事前準備と予備折衝

そして、団体交渉を受けることになった場合には団体交渉の場所、日時等について、使用者が主導して労働組合に提案しなければなりません。
団体交渉の場所と日時を決めた後は、実施される日までの間に、出来る限りの事前準備を行うことが重要です。使用者側の主張を明確にし、その根拠資料を揃えることや、想定問答集を準備します。

団体交渉に向けて決めておくべき事項

団体交渉に向けて、出席者や発言者、場所、日時、費用負担などは検討しておく必要があります。

団体交渉の出席者・発言者

使用者側の出席者・発言者を誰にするか決めることが重要です。
中小企業であれば社長が出席されることも重要ですが、具体的な団交事項について、事情を把握している社員や管理職にあるものも出席するほうが、有意義な交渉を行うことができます。
また、実際の団体交渉の場において誰が主導して発言するかなども、あらかじめ決めておくことが重要です。

団体交渉の場所

団体交渉の場所については、自社会議室での開催を求められることもありますが、特に外部の合同労組から断行を求められた場合は情報管理等の観点から相当でないので、外部の貸会議室などで時間を区切って行うことがよろしいです。

団体交渉の日時

団体交渉の日時についても、使用者側から積極的に提案をすることが重要です。
もっとも、あまりに合理性のない日程(数カ月先等)を誠実団体交渉義務に違反することになるので注意が必要です。
この際、団体交渉の時間も併せて定めておく方が望ましいといえます。

団体交渉の費用負担

例えば、貸会議室での団体交渉を行う場合、費用が掛かりますが、これについては基本的に使用者側にて負担することをお勧めします。
費用が掛かることを理由に外部での開催を拒否されることは、使用者側にとってメリットがありません。

弁護士への依頼の検討

団体交渉に際し、使用者側に弁護士を介入することにはメリットがあります。
団体交渉に詳しい弁護士を介入させることによって、法的な観点から、どこまで交渉に応じるべきかといった事項から、日時や場所の設定までアドバイスすることができます。
使用者側の負担を軽減するためにも、弁護士への依頼をご検討ください。

団体交渉当日の進め方

以上のような事前準備を行ったうえで、団体交渉当日を迎えることになります。
当日は、実際に団体交渉を行い、議事録等の作成を行うことになります。

団体交渉の協議内容

団体交渉の協議の対象となる事項は、企業が処理し得る事項であれば、使用者が任意に対応する限りは、どのような事項でも良いとされています(任意的団交事項)。
しかしながら、労組法によって、労働組合からの団体交渉の要求に対して、団体交渉に応じなければならない事項は、そこまで広くありません(義務的団交事項)。

概括的に述べれば「組合員である労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なもの」となります。例えば、労働条件や人事評価などは、義務的団交事項に該当します。
そして、労働組合から申し入れられた事項について協議を行っていくことになります。

録音や議事録の作成

どのような交渉事においてもそうですが、のちの紛争を避けるためにも、録音や議事録の作成を行っておく必要があります。
議事録がある場合には、次回の交渉の準備の際にも資することになるので、議事録の作成を忘れないようにすべきです。
なお、録音を行う場合には、労使双方の同意を取ることが重要です。

団体交渉の場で会社がやってはいけないこと

当然ですが、暴力の行使はいかなる場合でもいけません。また、暴言もいけません。団体交渉の中では「聞けや、ボケ」「やれ団交だ、やれ何だかんだって言ってる場合じゃねえぞ」等、不穏当な発言がされることもありますが、使用者側がこのような発言をして団体交渉が実質的に滞る事態に至った場合に誠実団体交渉義務に反するものとして不当労働行為にもなりかねません。

そして、組合の要求を全て飲む必要がないにもかかわらず、安易に応じてしまうこともいけません。誠実に交渉するべき義務はありますが、要求の内容に必ず応じる義務はありません。
こういった点に留意すべきでしょう。

労働組合との団体交渉の終結

団体交渉が集結する場合は、労使間での合意が形成できた場合と、交渉が決裂した場合が考えられます。

労使間で合意に至った場合

労使間で合意に至った場合には、合意書を作成し、労働協約を締結することになります。
労働者の雇用や賃金での交渉であった場合には、当事者である労働者の署名押印や清算条項をいれることを忘れないようにしましょう。

団体交渉が決裂した場合

交渉が決裂したからといって、即座に団体交渉を打ち切ってしまうと、誠実交渉義務違反となりかねません。
労使双方が、主張や説明、提案を尽くし、交渉がこれ以上進展することが無い段階に至った場合に初めて、決裂したとして、交渉を終結させるべきです。
その際は、議事録において、合意に至らなかった理由について明記しておくことをお勧めします。

団体交渉に関する裁判例

団体交渉に関する裁判例としては、様々なものがありますが、商大自動車教習所事件判決をご紹介いたします。

事件の概要

本裁判例は、労働組合が、会社に対して団体交渉を申し入れたところ、会社が団体交渉の場所、時間及び人員に関する団体交渉ルールが確立されていないことを理由に団体交渉を拒否したことが不当労働行為であると争われた事件です。

会社は、2時間、場所を指定し、会社側は四名、組合側は合わせて五名程度(本件は2つの労組から申し入れがありました。)での交渉を行いたいと申し入れましたが、組合側はこれを拒否したため、会社が団交を拒否したというものです。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

【東京高判昭和62年9月8日】
「控訴人は、五月一一日より後の状況は、交渉場所について労使の意見の相違があったにすぎないのであって、控訴人による団体交渉拒否というべきものではない旨縷々主張する。しかしながら、(証拠略)によれば、分会及び労組が団体交渉の場所として控訴人会社の施設内(教習所施設内)に固執したことが認められるが、控訴人としては交渉場所については会社施設外を堅持するとしても、交渉の時間及び人員については柔軟に対応することは不可能ではなかったにも拘らず、交渉の場所、時間及び人員についての三条件の全てに関する団体交渉のルールが設定されなければ団体交渉に応じないという態度を崩さなかったことは前記(二)で説示したとおりであって、交渉の時間及び人員について控訴人が提示した条件は後記四で説示するとおり合理性を欠くものであり、以上の点を総合すれば、分会及び労組側にも行き過ぎた行動があったことを考慮しても、控訴人は団体交渉のルールが設定されていないことを理由として団体交渉を拒否していたものといわざるをえない。当審における控訴人の主張(一)は採用することができない。」と述べて、誠実交渉義務に違反すると判断した。

ポイント・解説

使用者が団体交渉の場所、時間、人員に関するルール設定に固執し、交渉に応じないことが、組合側の交渉要求にも行過ぎがあつたことを考慮しても、不当な交渉拒否に当るとされた点がポイントです。

一般に、使用者が団体交渉の場所、時間、人員について労組からの提案とは別の提案を行うことは許されていますが、あまりに固執しすぎると違法となることが有るので注意が必要です。

早期解決には冷静かつ粘り強い交渉が必要

団体交渉については、労使ともに熱くなってしまうことが有りますが、感情的な対立を引き起こすような交渉態度は良くありません。
団体交渉はあくまでも、労使の協議の場であり、合意の形成を目指す場でもあります。冷静かつ粘り強く、互いの主張について根拠を交えて交渉し、合意の形成を目指すことが肝要です。

団体交渉を有利に進めるためには、専門的な知識が必要となります。まずは弁護士にご相談下さい。

以上に述べたように、団体交渉にあたり、組合からの申入れに対して受け身の姿勢を取るだけでは、団体交渉を有利に進めることは出来ません。他方で、対立的な態度を取ってしまった場合には、違法となってしまうリスクもあります。
団体交渉を有利に進めるためには、専門的な知識を有する弁護士にご相談いただくことが必要になります。

埼玉県内で、団体交渉の進め方でお困りの使用者の方や担当者の方は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

会社の経営者の方から労働問題の相談を受けるとき、「勤務態度の悪い従業員を解雇したところ、労働組合から団体交渉を申し入れられた」、「うつ病で満足に仕事ができない従業員に退職勧告を出したところ、不当解雇だと言われている」、「突然、社外の労働組合から団体交渉を申し込まれた」といった話を聞くことがあります。 特に、ユニオン、合同労組といった外部の労働組合からの団体交渉の申入れについて悩まれる方も多いのではないでしょうか。

労働組合側は、労働法の知識や、団体交渉の経験がある者が交渉にあたるので、使用者側としても、労働法の知識を有し、労働関連紛争の経験がある弁護士を団体交渉に関与させておくことにメリットがあります。

団体交渉には専門的な知識と経験が必要

どのような交渉であってもそうですが、労働組との団体交渉においても、専門的な知識と経験が必要です。

団体交渉で協議する内容は、労働者の労働条件や待遇等に関するものです。この協議には、労働法の規制に関する専門的知識が必要です。

また、使用者には単に外形上、交渉の席に着くだけでなく、労働者の代表者と誠実に交渉する義務があるため、誠実に交渉を行わなければなりません。誠実交渉義務に違反した場合、使用者が、不法行為に基づく損害賠償の責任を負うこともあります。誠実交渉義務に反しないように、団体交渉を進めるには、団体交渉の経験があることが望ましいと言えます。

有利に進めるには弁護士の関与が不可欠

以上の様に、団体交渉を有利に進めるには、労働法に関する専門的な知識と、団体交渉の経験が不可欠です。

自社で、このような人材を用意することができれば何よりですが、専門的な知識と経験を有する弁護士を関与させることで、団体交渉を有利に進める方策を立てることができます。

また、団体交渉の場にも弁護士が出席することで、労働組合からの圧力に屈しないように、交渉を進めていくことも可能となります。

団体交渉における弁護士の役割

団体交渉における弁護士の役割は、事前準備と、実際の交渉です。

使用者には、団体交渉義務がありますが、義務的団交事項出ない交渉を要求されても、応じる必要はありません。
弁護士としては、まずは、義務的団交事項であるか否かを検討することになります。

また、団体交渉に応じることとなった場合も、場所や日時について、イニシアチブをもって決定していくこと、交渉の際に、労働組合の要求を拒絶するとしても、その理由を具体的に説明するように準備しておかなければなりません。

そして、実際の団体交渉において、交渉を主導していくことが、弁護士の主な役割です。

団体交渉で弁護士に依頼することのメリット

団体交渉を弁護士に依頼することのメリットは、やはり、専門的な知識と経験を持った使用者側の味方を用意することができる点です。

経験に基づく交渉戦略の立案

例えば、団体交渉を申し入れられた場合、早期の団体交渉を希望されることが多いですが、これに不必要に応じる必要はなく、無理な日程での団体交渉を受け入れなければならないわけではありません。
もちろん、使用者側も不必要に交渉時期を引き延ばすことは許されませんが、交渉に当たって準備する時間が必要であれば、それは認められます。

こういったように、労働組合から団体交渉を申し入れられたとしても、交渉日時や場所の設定から使用者側でイニシアティブ握っていかなければならないのですが、弁護士に依頼することで、こういった交渉戦略についてのアドバイスを受けることができます。

また、誤解されかねない発言や撤回困難な説明をしてしまえば、労働組合との交渉がまとまらなくなる恐れもありますが、弁護士に依頼することで、使用者側の主張の明確化や、根拠の整理や、想定問答などを準備したうえで、交渉に臨むことができるようになります。
交渉は、弁護士業務の基本でもありますから、弁護士に依頼することで、経験に基づいた団体交渉の戦略を立案していくことができます。

迅速な対応と最良な解決策の提案

不必要に短期な日程で、団体交渉に応じる必要はありませんが、迅速な対応は、誠実な交渉の表れであることから、出来る限り早い対応が求められます。

しかしながら、自社のみであれば、専門的な知識と経験の不足から、迅速な対応をしていくことには限界があります。団体交渉の経験を有する弁護士に依頼することで、準備すべき事項などについて主導してもらうことができるため、迅速な対応が可能となります。

団体交渉を解決していく(合意に向けて進めていく)にしても、労働法の知識がなければ、適正な解決を行うことは出来ませんから、専門的な知識を有する弁護士に依頼することで、最良な解決策の提案を受けることができます。

事態の悪化・会社の不利益を防ぐ

労働者の解雇や未払い賃金の請求などが団体交渉で解決できなかった場合には、労働審判、訴訟などの別手続きに移行することになります。また、団体交渉中に、誤解されかねない発言をしてしまったことで、団体交渉がこじれたり、長引いたりすることもあり得ます。

紛争の長期化は、それ自体で会社の不利益となりますから、団体交渉に弁護士を関与させることによって、事態の悪化や会社の不利益を防ぐことが可能となります。

弁護士が味方につくことで冷静な話し合いができる

もちろん、当事者によりますが、当事者である使用者と労働組合のみで交渉を行っても、感情的な争いとなってしまうことがあります。

例えば、労働組合側の感情的な発言によって、使用者側も感情的な発言をしてしまうなど、感情的な対立を引き起こし、紛争の長期化につながってしまうことが有ります。
使用者側に弁護士を関与させることによって、弁護士が冷静に団体交渉を取り仕切ることで、冷静な話し合いが期待できます。

交渉中止や和解の落としどころを判断できる

使用者には誠実交渉義務がありますが、交渉の結果、交渉が成立する見込みがないと判断できる場合には交渉を打ち切ることができます。しかし、交渉の打ち切りは、労働者側から、使用者が誠実交渉義務に反して交渉を打ち切った等として争われる恐れもあります。
弁護士を関与させることで、誠実交渉義務に反しない交渉の打ち切り、中止のタイミングの判断が可能になります。

また、和解の落としどころについて、弁護士が関与することによって、相当な落としどころがどこかを判断することもできるようになります。

労務トラブルを未然に防ぐ体制づくりをサポート

団体交渉を申し込まれた事案の中には、使用者側の対応に問題がある場合や労務トラブルにつながりやすいという場合があります。
弁護士を関与させることで、団体交渉を適切に行うだけでなく、労務トラブルを未然に防ぐ体制づくりまでアドバイスを行うことが可能になります。
次の団体交渉を申入れられるような問題を生じさせない体制づくりをサポートすることができます。

団体交渉の解決を目指すなら顧問契約の締結を

紛争は発生してしまった段階で、解決にコストがかかりますから、使用者側にとってはデメリットです。
真に団体交渉の解決を目指すのであれば、そういった紛争が発生しないような企業体制を作っていくことが肝要です。

弁護士と顧問契約を締結することによって、紛争を未然に防ぐ体制づくりを目指すことができます。また、弁護士としても、普段から関係のあるよく知った企業の事案であった方が、事案をよく理解し、解決に結びつけやすいというメリットもあります。

団体交渉のトラブルは深刻化する恐れがあります。早期解決のためにも弁護士に依頼することをお勧めします。

団体交渉にまで至ったトラブルは、大きな問題となって、会社に深刻な影響を与える恐れがあります。
団体交渉を誠実に実施していくためにも、これ以上の大きな問題としないためにも、早期に弁護士に相談することをお勧めします。

埼玉県内で団体交渉でお悩みの企業の方は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

労基法上、管理監督者に対しては、残業代を支払う必要はありません。ただ、この管理監督者とは、日常的に使われる管理職とは違います。

今回は、実務上も頻繁に問題となる管理職の残業代について、ご説明いたします。

管理職に対しても残業代を支払う義務があるのか?

よくあるご相談の一つに、管理職の地位にあった従業員から残業代を請求されているが、管理職に対して残業代は支払わなくて良いんですよね。というものがあります。

確かに、労基法上の管理監督者に該当するというのであれば、残業代の支払いをする必要はありませんが、それが単なる名ばかり管理職というのであれば、管理監督者に該当するとは言えませんから、残業代を支払う必要があります。

管理監督者に残業代を支払う義務はない

労基法上、「監督もしくは管理の地位にある者」(=管理監督者。41条2号)では、労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用を除外しています(=時間外手当の支払い義務を免れるということです。深夜割増賃金の支払い義務までは免れません。)。

しかしながら、単に管理職の地位にあるだけでは、労基法上の管理監督者とは言えません。

管理監督者とは?

管理監督者とは、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」(労基法41条2号)のことを言います。

労基法上、管理監督者に該当するものには、労基法の労働時間、休憩、休日に関する規定が除外されます。管理監督者として認められた場合には、労働者の健康確保等のために定められた労働時間等の規制がかからなくなるため、労働者の心身の安全に極めて重大な影響を及ぼすものです。

名ばかり管理職では、管理監督者と認められない

そのため、店長という名前で稼働しているとはいえ、単なる雇われ店長にすぎず、何の権限もない方や、平社員と同様に勤怠管理がされている課長などは、管理監督者とは認められません。

逆に、経営方針を決定するような重要な会議に積極的に参加していたとか、労働時間に自由裁量があるとか、それに見合うだけの賃金を得ていたという場合であれば、労基法上の管理監督者と認められる方向に傾きます。

管理監督者でも深夜手当の支払いは必要

管理監督者に該当した場合に適用が除外されるのは、労働時間、休憩及び休日に関する規定ですが、労基法は、労働時間と深夜業を区別しているので、管理監督者であっても、深夜割増賃金を請求することは出来ます。

もっとも、所定賃金内に一定額の深夜増賃金を含める趣旨で定められていることが、労働協約、就業規則等によって明らかな場合には、既に支払っていることになりますから、支払う必要はありません(昭和63年3月14日基発150号)。

管理職には残業代を支払わないと就業規則で定めている場合は?

管理職には残業代を支払わないという就業規則を定めていたとしても、これが管理監督者には支払わないという趣旨であればともかく、労基法上の管理監督者に該当しない、自社の管理職に対して残業代を支払わないという規定であったとすれば、無効です。

就業規則よりも、労基法の定めが優先されます。

労働基準法における管理監督者の該当性

裁判所は、労基法上の管理監督者に該当するかどうかについて、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」などと定義した上で、管理監督者に該当するかどうかを、職位等の名称にとらわれず、職務内容、権限及び責任並びに勤務態様等に関する実態を総合的に考慮して判断しています。

労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有している

例えば、会社の経営会議に参加に参加し、その会社の行く末を決定するような職務内容であるとか、労働者の枠に収まらない重要な職務内容を有していなければ管理監督者とは言えないとされています。

労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有している

例えば、労働条件の決定その他労務管理について、自らの裁量にゆだねられていなければ、管理監督者とは言えません。

課長やリーダーなどの肩書があっても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事項について上司に決済を仰ぐ必要がある場合には、管理監督者とは言えません。

現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものである

経営者と一体の立場にある者は、時を選ばず経営上の判断や対応が要請されます。そのため、労務管理においても普通の労働者とは異なる立場にある必要があります。

労働時間について厳格な管理をされている場合には、管理監督者とは言えません。

賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされている

管理監督者は、その職務の重要性から、一般労働者としてふさわしい待遇(高い給与や賞与など)がなされていなければなりません。

そのため、課長やリーダーなどの肩書があっても、肩書がない労働者と待遇に異なるところが無ければ管理監督者とは言えません。

管理職が必ずしも管理監督者に該当するわけではない

以上に述べたように、管理職(課長など)の役職がついているからと言って、必ずしも管理監督者に該当するわけではありません。

その実態として、労基法の労働時間の規制の適用を除外するほどの職務や権限、待遇を得ている必要があります。

企業で違う管理職の扱い

そもそも、企業ごとにどのような管理職の地位を設け、どのような取り扱いをしているかは異なります。

係長や課長、次長、部長などの名称から、マネージャー等の名称を用いるものまで、企業によって異なります。

その企業の必要によって設けられた役職と、労基法の管理監督者が異なることは必然ともいえます。

「名ばかり管理職」と残業代の問題

労基法上は「名ばかり管理職」であったとしても、会社としては、管理監督者であると捉えてしまい、残業代を支払わなくてよいと勘違いしていることが有ります。

しかしながら、名ばかり管理職であったとしても、通常の従業員よりは賃金がある程度高かったり、また労働時間が長時間に及んでいることが多いです。

そのため、名ばかり管理職からの残業代の請求は高額の請求になりやすく、企業にとっては無視できないリスクとなっているのです。

管理職の勤務実態を把握する必要性について

管理監督者であれば、適用除外を受けることになり、他方で名ばかり管理職であれば残業代の支払いなどが義務となってきます。

自社の管理職が、どちらに該当するのかについては、その勤務実態から改めて確認し、適切に対処していかなければなりません。

今一度、管理職が、管理監督者に該当するのか、しないのか、確認されることをお勧めいたします。

管理監督者の該当性が問われた裁判例

管理監督者の該当性が問題となった裁判例は数多くありますが、特に有名なものとして、日本マクドナルド事件があります。

事件の概要

ファーストフードチェーン店の店長が、管理監督者に該当するかどうかが問題となったものです。

アルバイトの採用権限や時給額、人事考課、勤務シフト等の決定に関する権限を有し、自己の勤怠の自由もあったという事案です。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

裁判所は、店長である労働者について、その権限について、アルバイトの人事上の権限を有してはいるものの、将来アシスタントマネージャーや店長に昇格していく社員を採用する権限はないことや、企業全体としての経営方針等の決定に関与していないということから、重要な職務と権限を付与されているとは認められないとされ、勤怠の自由についても、形式的には裁量があることもあるが、労働時間に関する自由裁量性があったとも認められないとし、処遇についても、シフトマネージャーの業務も兼務していたこと等から労働時間等も踏まえれば、管理監督者に対する待遇としては不十分であるとして、管理監督者性を否定しました。

ポイントと解説

チェーン店とはいえ、店長という独立した職場の長が、ある程度の権限を有していたにもかかわらず管理監督者性を否定されたところが大きなポイントです。

判断要素自体は従前重要視されていたところと変わらないのですが、この裁判例によると、経営者との一体的な立場については、企業全体の運営への関与を要するとしたように見えるところがあり、担当する組織(店など)について、経営者の分身として経営者に代わって管理を行う立場にあることで、経営者と一体とみても良いのではないか、という評価も受けています。

もっとも、事案判断としては、シフトマネージャーとしての営業業務にも従事していたにもかかわらず、店長としての報酬しか得ていなかったという事情もあることから、事案判断としては、相当なものであると評価されています。

管理職について正しい知識を持つ必要があります。企業法務でお悩みなら弁護士にご相談ください。

以上に述べてきたように、単に管理職であるからと言って、残業代を支払う義務がないとは直ちには言えません。

管理職は、会社でそれ相応の地位にあることが多いことも相まって、通常の従業員よりも高額な賃金を得ているために、残業代の金額も高額になってしまいます。また、管理職であるがために、長時間労働をしているケースも多く、時間外労働時間もかなり長時間に及ぶことも多いです。

そのため、単価も高く、また支払うべき時間外労働時間も長くなってしまうケースが多く、管理職の未払い残業代問題が会社に与える経済的な負担は極めて大きなものになりがちです。

このようなリスクがあるにもかかわらず、管理監督者に該当するか否かは、役職名だけで決まるものではなく法的な判断を伴います。

そのため、自社のみで判断することなく、弁護士などの専門家に相談することは必要不可欠と言わざるを得ません。

埼玉県内で、自社の管理職が管理監督者に該当するか否かお悩みの企業の方は、ぜひ一度弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所にご相談ください。

整理解雇について

事業を経営している場合、売上の減少や経営状況悪化に伴い、固定経費を削減しないといけない場面が出てくることが有ります。会社内の人員の整理もその一つです。

今回は、人員整理の方法として、整理解雇についてご説明させていただきます。

普通の解雇と整理解雇は何が違うのか

解雇とは

解雇とは、会社の一方的な意思表示によって、従業員との間の労働契約を終了させるものです。会社と従業員との間には、力関係に明確な差があることから、日本では、会社からの一方的な解雇に対する法的な規制がなされています。

労働契約法第十六条において、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」されています。

整理解雇とは?

経営不振などの経営上の理由により人員削減の手段として行われる解雇を整理解雇といいます。すなわち、整理解雇とは解雇に求められる合理的な理由のうち、経営上の必要性との理由によって行われるものです。

整理解雇4要件と整理解雇の流れ

整理解雇に求められる要件

整理解雇は、例えば労働者の義務違反等、労働者側の事情に基づくものではなく、会社の事情に基づく解雇であることから、その他の理由に基づく解雇よりも厳しい制約が課されています。

いわゆる整理解雇4要件(①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④手続きの妥当性)が要求されることになります。

人員削減の必要性

解雇の理由として、人員を整理=削減する必要を掲げている以上、当然かもしれませんが、経営上の理由により、人員削減する必要性があることが要件とされています。

実務上は、企業の経営実態を詳細に審査して人員削減の必要性を認定しているわけではなく、会社の経営判断を基本的に尊重する方向にあります。

但し、財政状況に全く問題が無い場合や、整理解雇を行いながらも新規採用を行っているなどといった事案では、人員削減の必要性が無かったと評価されてしまうことはあります。

以下に述べる手続きの妥当性ともかかわってきますが、実際に整理解雇に踏み切る前には、経営状態の悪化について説明会を実施するなどして従業員にも人員削減の必要性を理解してもらえるように勤めることになります。

解雇回避努力

また、人員を削減する必要性が認められるとしても、解雇以外の人員削減手段を模索し、解雇をできる限り回避することが求められます。

どういうことかといえば、残業の削減、新規採用の手控え、余剰人員の配転・出向、非正規従業員の雇止め・解雇、一時休業、希望退職者の募集などの手段を取ることが求められています。

そうはいっても、各会社によって事情が異なりますので機械的・画一的にこの処理のすべてを求められるわけではありません。抽象的にはなってしまいますが、当該企業において可能な限りの措置を取って解雇を回避するよう努力を尽くすことが必要です。

例えば、小規模な法人で、余剰人員を配転・出向させる余地がなかったという会社で、退職勧奨を行いながら話合いによる解決を目指したという事案では、解雇回避に向けて一応の努力を肯定しています(財団法院市川房枝記念会事件)。

実際に整理解雇を行う際には、まずは希望退職者を募集することが一般的です。この際、有能な従業員に退職されることを防ぐために、対象者は会社が承認した者という限定をつけておく方がよろしいです。

希望退職者の募集を行ったあと、役員報酬の減額や余剰人員の配転・出向、派遣社員やパート社員など非正規従業員の雇止めなどを検討すべきことになります。ただ、雇止め等においても、解雇権濫用法理と同等の保護がなされていますので、簡単に雇止めができるとはお考えいただかない方が無難です。

人選の合理性

解雇回避努力を尽くしたとしても、なお余剰な人員がいるという場合には、余剰人員数を確定したうえで、合理的な人選基準を定めて、その基準を運用し、解雇する従業員を決定することが求められます。

例えば、勤務成績や勤続年数、労働者の生活上の打撃(扶養家族の有無・数等)が、人選基準において考慮される要素といわれます。

恣意的な基準であると、整理解雇が無効となってしまうため、できる限り客観的な基準を用意することをお勧めします。

例えば、欠勤日数が合計何日以上あるものとか、懲戒処分歴があるもの、人事考課による評価がある基準以下であったもの等、後で恣意的な判断であると疑われないようにしておくと良いでしょう。

手続きの妥当性

労働協約や就業規則に解雇協議約款がある場合はもちろん、そうでなかったとしても整理解雇を行うにあたっては、人員整理の必要性や解雇回避の方法等について説明し、誠意をもって協議しなければなりません。 ある裁判例では、労働組合と協議し合意を得ていても、解雇される労働者本人から意見聴取の手続きを取っていなかったことを指摘して解雇手続きは十分な相当性を備えていないとしたものもあります(ジャパンエナジー事件)。

従業員に対して、十分な説明・周知を行うことが肝要です。

不意打ち的な整理解雇は手続の妥当性を欠くものとされる恐れが高いです。

まとめ

以上に述べた4要件を満たすかどうかを判断して整理解雇が有効かどうかを判断することになります。

もちろん、各会社によって実情・実態が異なりますから、それぞれの要件をどの程度満たすべきかどうかは、会社の実情・実態に応じて変わることになります。近年の裁判例では、4要件ではなく4「要素」(整理解雇が有効であるためには、全てを満たす必要がないという意味です。)であるとして、総合的に整理解雇の合理性・相当性を判断しているものもあるほどです。

自社に即した整理解雇の流れや具体的な要件の充足、整理解雇の有効性については、弁護士にご相談いただいた方がよろしいです。

埼玉県内で整理解雇についてお悩みの企業は、弁護士へご相談ください

以上に述べたとおり、整理解雇は、会社の都合によって解雇を請求していくものであることから要件を充足しない限り無効となりかねません。

会社としても従業員を解雇することは最終手段だとご理解いただいているとは思います。しかしながら、急激な経済状況の悪化から、会社としてやむなく整理解雇に踏み切らざるを得ないというケースもどうしてもあります。全員で倒れるのではなく、会社で働く従業員のうち、一人でも多くの生活を守る手段として、整理解雇という選択肢があるのだと思います。

整理解雇には、法的に難しいところがありますので、自社のみで手続を進めたり、判断されずに専門家である弁護士にご相談されることを強くお勧めいたします。

弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所では、整理解雇を行うにあたって、会社の実情から整理解雇の要件を満たしうるかの精査や、従業員に対する説明への立ち合いなど、整理解雇を行う段階で様々なサポートが可能です。

また、整理解雇を行った後、従業員から解雇無効を主張された場合の交渉や、労働審判等の紛争対応にもサポート可能です。

埼玉県内で整理解雇についてお悩みの企業は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

はじめに

新型コロナウイルス感染症の感染拡大予防のためには、人と人との接触を減らしていくことこそが肝要であるとされています。

今までは、どこか特定のオフィスに勤め、自宅からそのオフィスに通勤したり、オフィス内で同僚と接触、また取引先と折衝を行うときも対面であるなど、人と人との直接的な接触が前提となっていました。しかしながら、今後は、人と人との直接的な接触を減らしていかなければなりません。

また会社が従業員に対して果たすべき安全配慮義務の実現や、休業手当の支払い義務の有無においても、テレワークの可否を検討しなければなりません。

今回は、テレワークを実現するにあたっての法的な留意点(労働時間管理など)について、ご説明していきたいと思います。

テレワークとは

テレワークとは、「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた言葉で、一般的に労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務のことをいいます。

ざっくり言うのであれば、オフィスに固定されず、勤務場所や時間にとらわれることのない働き方のことを言います。

テレワークの種類

テレワークは、労働者が労働する場所に応じて①在宅勤務、②サテライトオフィス勤務、③モバイル勤務の3つに分けられるとされています。

  1. 在宅勤務は、労働者の自宅で勤務を行うもので、通勤時間がなくなります。仕事と家庭との両立に資する働き方であるといわれてます。
  2. サテライトオフィス勤務は、労働者が属するメインのオフィス以外に設けられたオフィスを利用して勤務を行うものです。これは①と②の中間的なもので通勤時間を短縮しつつ、在宅勤務やモバイル勤務以上に作業環境が整った場所で働く働き方です。
  3. モバイル勤務は、ノートパソコンや携帯電話などを活用して臨機応変に選択した場所で業務を行うもので、労働者が自由に働く場所を選択できる最も柔軟な働き方です。

テレワークのメリット、デメリット

テレワークのメリットはなんといっても通勤時間の短縮です。労働者に自由な時間が増えることで家庭と仕事の両立が可能となります。また、会社にとっても、遠隔地の優秀な人材を確保したり、オフィスのコストを削減するなど様々なメリットがあります。

他方で、テレワークのデメリットは、場所に拘束されないからこそ、仕事と仕事以外の切り分けが難しくなり、長時間労働になりやすい恐れがあることです。これは労働者にとってもデメリットですし、労働時間管理が困難になることから、使用者にとってもデメリットです。

その他、コミュニケーションの取り方が従来と変わってしまうので、コミュニケーションを取りづらいとか、情報セキュリティの問題などの様々なデメリットもあるといわれています。

新型コロナウイルス感染拡大防止には、テレワークは避けて通れないこと

テレワークにはメリット、デメリットがあります。

ただ、新型コロナウイルスの感染が拡大している現状においては、人と人との接触を減らすテレワークの採用を検討しないということは出来ません。

もちろん、業種によってはテレワークが不可能という業種もありますが、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、部分的であってもテレワークの導入を検討することをお勧めいたします。

テレワークの導入にあたって検討しておくべきこと

テレワークを導入するにあたっては、最低限、どのようなテレワークを導入するか、また運用するかのルール作りをしなければなりません。

その際に検討すべきことは、インフラ面の整備も大事ですが、①労働時間管理や業績評価の方法を検討したり、②従業員のメンタルヘルスケアを心がけておく必要があります。

テレワークにおける労働時間管理

テレワークであろうと、労働時間制度に変わりはありません。

そのため、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」にしたがって、適切に労働時間管理を行わなければなりません。

同ガイドラインによれば、労働時間を記録する原則的な方法としては、パソコンの使用時間などの客観的な記録によるべきであるとされています。

したがって、テレワークにおいてもパソコンの使用時間などの客観的な記録による管理が求められます。

テレワークにおける労働時間管理の難しさと評価方法の転換の必要性

テレワークの特徴としては、労働者が、使用者から離れた場所で就労していることです。

そうしますと、残業しているかどうかもわかりづらいところがありますから、テレワークの長時間労働になりやすいという特徴を防止するために、就業規則上、原則として残業は禁止しておくことが必要でしょう。

また、労働者が中抜けをしたとしても、パソコンさえ起動していえば、把握しづらいという問題もあります。もちろん、中抜け時間について、労使で協議し時間単位の年次有給休暇の制度を用いる等して対応することも考えられます。

ただ、いずれにせよテレワークである以上は、ある程度目が届かないことは避けられません。

そのため、テレワークにおいては、労働時間を見るのではなく、成果物で評価することと評価方法を転換していくことが不可欠だといえます。

事業場外みなし労働時間制の活用

テレワークであると労働時間管理に困難が生じるというのであれば、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときに該当するとして、事業場外みなし労働制を採用するという手段も考えられます。

ただ、テレワークにおいては①使用者の指示に即応する義務がないこと(情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態に置くこととされていないこと等)と、②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないことの二つの要件を満たす形で導入しなければ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときに該当しないとされています(「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」)。

いわゆる手待ち状態で待機させておくことは出来ません。なお、業務の目的、目標、期限等の基本的事項を指示することは、②にいう具体的な指示には該当しません。

要するにオフィスで作業させているときに近い環境でテレワークをさせたいというのであれば、みなし労働時間制を採用することは困難です。

テレワークに伴い、事業場外みなし労働時間制を活用したいのであれば、労働者の管理方法や評価方法について根本的な方針転換が必要になってくるでしょう。

テレワークとメンタルヘルス

テレワークの方がメンタルヘルスに影響を及ぼしやすいといわれています。

特に在宅勤務は勤務時間があいまいになりがちなところから、時間外労働につながりやすいといわれています。時間外労働はメンタルヘルスに影響しやすいとされますから、会社としても、時間外労働を防止するように心がけておく必要があります。

また、上司や同僚と空間を共有していないことから、指示を受けづらいとか、相談しづらい環境になってしまうともいわれます。

会社としては、チャットを駆使したり、定期的にビデオ会議によるミーティングを設定するなどして、普段よりもコミュニケーションの場を提供するように心がけていく必要があります。

そして、社員の心身に不調が見られる場合には、早期に産業医との面談を設定するなどしてメンタルヘルスケアを図っていく必要があるでしょう。

新型コロナウイルス感染症に関するテレワークの整備でお悩みの方は、弁護士にご連絡ください。

テレワークは、新型コロナウイルス感染症の流行前から、その導入の是非が検討されてきました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、その予防のために体制を十分に整備しないままにテレワークに踏み切らざるを得なかった企業様も多いです。

テレワークの整備には、労働時間管理やメンタルヘルスケアの問題も絡みますから、専門家のアドバイスを受けつつ、自社に適合したテレワーク環境を整備していく必要があります。

弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所では、テレワーク導入にあたって就業規則の整備など、多岐にわたる法的助言や導入支援を行うことが可能です。

埼玉県内で、テレワーク導入に関してお悩みの企業様は、ぜひ一度弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

令和2年5月13日(水)、同月20日(水)に、使用者側弁護士による社会保険労務士様向けシリーズ勉強会「ハラスメント対応―パワハラ防止法で求められる対処法―」をWEBにて開催しました。

当初の予定では、弊所の会議室にて開催を予定しておりましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のために、急遽Zoomを用いた方法に変更させていただきました。

急なお願いにもかかわらず多くの社会保険労務士の先生方に参加いただくことができました。

令和2年6月1日に施行される改正労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)について、同法において規定された職場におけるパワーハラスメントの定義や、雇用管理上講ずべき措置義務の具体的内容(相談体制の整備等)を中心に勉強会を開催させていただきました。

特に、来月より企業に課せられる措置義務の具体的な内容について、相談事例などを踏まえて重点的にお話しさせていただきました。

今後、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所では新型コロナウイルス感染症が落ち着くまでは、セミナーや勉強会はWEBでの開催とさせていただくことになるかと思います。

社会保険労務士の先生方に有意義な、弁護士の視点からの労務問題に関する勉強会を今後も開催できるよう、WEBでの勉強会のより良い開催方法についても研鑽に努めてまいります。

ご参加頂きました先生方には、改めて感謝申し上げます。