新型コロナウイルスによる自宅待機命令

コラム

新型コロナウイルスに感染した、PCR検査で陽性だった、そういった社員が現れることは、現在の状況では他人ごとではありません。
自社で、そういった社員が生じた場合、どういった対策を取っていくべきなのか。本日は、新型コロナウイルスに伴う自宅待機命令についてご説明いたします。

新型コロナウイルス流行に伴う自宅待機命令

「自宅待機」とは、使用者が労働者を出社させるのが不適当と判断した場合に、当該労働者を出社させずに自宅で待機するように命じる措置です。
新型コロナウイルスは、人と人の接触によって感染すると言われることから、自社で新型コロナウイルスに感染した場合等に、自宅待機命令を行うことで感染拡大防止を図れないか検討することになります。

自宅待機命令の効力について

従業員には、原則として働く権利(就労請求権)はないため、自宅待機命令が適法になされているのであれば、従業員はこれに従い、自宅で待機しなければなりません。

業務命令としての自宅待機命令とは

会社は、随時、人事権の行使として自宅待機命令を出すことができます。
もっとも、会社の指揮命令に復していることから、原則として有給としなければなりません。

新型コロナウイルスによる就業制限は可能か?

では、新型コロナウイルスを理由とする自宅待機、就業制限を行うことは可能なのでしょうか。
結論から言うと可能です。
新型コロナウイルスに感染している場合、新型コロナウイルス感染症は、感染症法上の指定感染症ですから、感染した従業員は就業制限の対象となります。そのため、就業制限をすることが可能となります。

感染が疑われる段階での自宅待機命令

では、感染が疑われる段階で自宅待機とさせることはどうでしょうか。これ自体も、もちろん人事権の行使として可能です。
ただ、以下に述べるように、自宅待機中の給与の問題が生じますので、可能な限りテレワークを検討することをお勧めします。

自宅待機中の給与を支払う義務

給与というのは、労務の給付の対価として支払われるものですから、労働者が自らの意思によって労働をしなければ労働の対価である給与を請求することは出来ないのが大原則です。
他方で、自宅待機命令等労働者の意思によらずに休業する場合には、民法の危険負担の原則に立ち返ることになります(民法536条)。この場合、使用者の都合(責めに帰すべき事由)で休業させる場合には、労働者は給与を請求することができます。

しかしながら、新型コロナウイルス感染症は、世界的に蔓延しているもので、感染経路がわからない感染者も増えてきている感染症です。会社が適切な感染予防策を取っていたとしても、完全に防ぐことは不可能といわざるを得ません。
そのため、民法上の使用者の責めに帰すべき事由に該当し、賃金の全額を保障すべき休業と判断される可能性は一般的に低いと考えられます。
したがって、新型コロナウイルスに感染している疑いがある場合には、感自宅待機中の給与の支払いは、不要であると考えられます。

「使用者の責に帰すべき事由による休業」とは

他方で、労基法26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない」と規定しています。
休業手当の保障における「責めに帰すべき事由」は、天災事変などの不可抗力に該当しない限りは認められるとされており、労働者の保護を図ったものとされています。
民法上は使用者の責めに帰すべき事由に該当しないとしても、その発生原因が使用者の支配領域に近いところから発生したもので、労働者の賃金生活の保障という観点から、使用者に6割の程度で保障させた方がよいとされる場合には使用者には休業手当の支払い義務があるとされています。
新型コロナウイルスを理由とする自宅待機については、こちらの事由に該当する可能性があります。
そのため、テレワークによる自宅勤務の可否については十分に検討することをお勧めします。

自宅待機期間の終了について

新型コロナウイルス感染症の潜伏期間を踏まえ、WHOにより健康状態の観察が推奨されている期間としては、最低で14日間とされています。
医師と相談する必要がありますが、14日程度を目安とすると良いでしょう。
※もちろん、症状がある場合は別ですし、PCRで陰性が明らかとなった場合も別です。

派遣社員への自宅待機命令

派遣契約の内容によりますが、派遣先企業が派遣社員に対して自宅待機命令を下すことは出来ます。
この場合、派遣契約の定めに従って派遣料金は処理されることになりますが、定めがない場合には、民法に立ち返って、派遣先に責めに帰すべき事由があるかどうかが検討されることになります。

自宅待機の要否は派遣元、派遣先のどちらが判断するのか?

派遣先企業が実際の指揮命令権を有し、また実際にそこで労働を行っていることから、派遣先企業が自宅待機の要否を判断することになります。

高年齢者を雇用している場合の対応

新型コロナウイルス感染症は、高リスク患者であればあるほど、死亡率が上昇するとされています。そして、高年齢者は高リスクを有している場合が多いとの見解もあります。
会社は従業員に対して安全配慮義務があることから、高年齢の従業員に対しては、例えば、優先的にテレワークにするなど、そのリスクに応じた対応を求められることになります。

高年齢労働者のみに自宅待機を命じることは可能か?

前記したとおり、高年齢者に対する安全配慮義務の履行として、そのような判断も可能です。
自社において自宅待機を命じる基準の中に年齢が一定以上に達している者等の条件を設けることも考えられます。

自宅待機命令に関するQ&A

緊急時の連絡手段として、社内連絡網を作成することは問題ないでしょうか?

個人情報ですので、使用目的、共有範囲などを明確にしておく必要があります。

就業規則に規程がなくても自宅待機を命じることは可能ですか?

自宅待機命令は、人事権の行使として認められますので、就業規則に規程が無くても可能です。

社員の家族に風邪の症状がある場合、自宅待機を命じるべきでしょうか?

ケースバイケースです。社員の家族が濃厚接触者であったとしても、社員自体は濃厚接触者に該当しないこともありますから、症状や状況を見て判断しましょう。

自宅待機中に有給休暇を取得してもらうことは可能ですか?

労使間の合意があれば可能ですが、その意思に反して有給休暇を取得させることは出来ません。

在宅勤務が可能な社員に自宅待機を命じた場合、休業手当の支払いは必要ですか?

厚生労働省のQAによれば必要です。在宅勤務が可能な場合は、まず在宅勤務を命じてください。

新型コロナウイルス感染の疑いがある社員を自宅待機とした場合、傷病手当金は支給されますか?

傷病手当金支給の要件を満たせば支給されますが、被保険者自身が労務不能であることが要件なので、症状がない場合(陽性者である場合は別ですが。)は難しいでしょう。

自宅待機中の社員に、定期的に病状の報告をさせることは可能でしょうか?

自宅待機は業務命令の一環ですから、定期的に病状の報告をさせることは可能です。ただ、症状がある社員などに対しては一定の配慮が必要です。

自宅待機命令と出勤停止命令の違いについて教えて下さい。

自宅待機命令は業務命令であり、出勤停止命令は懲戒処分です。
自宅待機命令は、就業規則上の定義がなくても実施できますが、出勤停止は懲戒処分であり、就業規則の規定なしに下すことはできません。また、懲戒事由なく下すこともできません。

新入社員を自宅待機させる場合、休業手当の支払いは必要ですか?

新入社員であっても従業員であることに変わりはありません。
使用者の責に帰すべき事由により自宅待機をさせるとすれば、通常の社員と同様の休業手当の支払いが求められることになります。

自宅待機中に新型コロナウイルスに感染した場合、労災は適用されますか?

自宅待機中に新型コロナウイルスに感染したと断言できるケースはほぼないでしょう。労災の場合には、業務起因性が求められるため、非常に難しいと言わざるを得ません。

自宅待機命令に関する様々なご質問に弁護士がお答えします。お気軽にご相談ください

新型コロナウイルス感染症については、ようやくワクチン接種が始まったこともあり、まだまだ予断を許さない状況が続いています。自社において、新型コロナウイルス感染症に関連して自宅待機命令を下さなければならない状況は、まだ続くでしょう。
こういった場合の給与支払い義務の有無等については、法的な判断が絡むことから弁護士にご相談することをお勧めいたします。

埼玉県内で新型コロナウイルス感染症に伴う自宅待機命令でお悩みの企業の方々は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にお問い合わせください。

団体交渉を申し込まれた際、どのように進めていくべきなのか、悩まれる経営者や担当者の方は多いです。今回は、団体交渉の流れと進め方について、ご説明いたします。

団体交渉の流れと進め方について

団体交渉は、組合側からの申入れによって始まります。

団体交渉の申し入れがあった場合の初動対応

団体交渉の申入れがあった場合の初動対応としては、まず、団体交渉を行う法的義務の有無を判断することになります。自身が団体交渉義務を有する使用者であるか、また労働組合の求めている事項が、義務的団交事項であるかどうかを検討します。
また、申入れの内容が抽象的であった場合には、団体交渉の充実のためにも、釈明を行っておく必要があります。

団体交渉の事前準備と予備折衝

そして、団体交渉を受けることになった場合には団体交渉の場所、日時等について、使用者が主導して労働組合に提案しなければなりません。
団体交渉の場所と日時を決めた後は、実施される日までの間に、出来る限りの事前準備を行うことが重要です。使用者側の主張を明確にし、その根拠資料を揃えることや、想定問答集を準備します。

団体交渉に向けて決めておくべき事項

団体交渉に向けて、出席者や発言者、場所、日時、費用負担などは検討しておく必要があります。

団体交渉の出席者・発言者

使用者側の出席者・発言者を誰にするか決めることが重要です。
中小企業であれば社長が出席されることも重要ですが、具体的な団交事項について、事情を把握している社員や管理職にあるものも出席するほうが、有意義な交渉を行うことができます。
また、実際の団体交渉の場において誰が主導して発言するかなども、あらかじめ決めておくことが重要です。

団体交渉の場所

団体交渉の場所については、自社会議室での開催を求められることもありますが、特に外部の合同労組から断行を求められた場合は情報管理等の観点から相当でないので、外部の貸会議室などで時間を区切って行うことがよろしいです。

団体交渉の日時

団体交渉の日時についても、使用者側から積極的に提案をすることが重要です。
もっとも、あまりに合理性のない日程(数カ月先等)を誠実団体交渉義務に違反することになるので注意が必要です。
この際、団体交渉の時間も併せて定めておく方が望ましいといえます。

団体交渉の費用負担

例えば、貸会議室での団体交渉を行う場合、費用が掛かりますが、これについては基本的に使用者側にて負担することをお勧めします。
費用が掛かることを理由に外部での開催を拒否されることは、使用者側にとってメリットがありません。

弁護士への依頼の検討

団体交渉に際し、使用者側に弁護士を介入することにはメリットがあります。
団体交渉に詳しい弁護士を介入させることによって、法的な観点から、どこまで交渉に応じるべきかといった事項から、日時や場所の設定までアドバイスすることができます。
使用者側の負担を軽減するためにも、弁護士への依頼をご検討ください。

団体交渉当日の進め方

以上のような事前準備を行ったうえで、団体交渉当日を迎えることになります。
当日は、実際に団体交渉を行い、議事録等の作成を行うことになります。

団体交渉の協議内容

団体交渉の協議の対象となる事項は、企業が処理し得る事項であれば、使用者が任意に対応する限りは、どのような事項でも良いとされています(任意的団交事項)。
しかしながら、労組法によって、労働組合からの団体交渉の要求に対して、団体交渉に応じなければならない事項は、そこまで広くありません(義務的団交事項)。

概括的に述べれば「組合員である労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なもの」となります。例えば、労働条件や人事評価などは、義務的団交事項に該当します。
そして、労働組合から申し入れられた事項について協議を行っていくことになります。

録音や議事録の作成

どのような交渉事においてもそうですが、のちの紛争を避けるためにも、録音や議事録の作成を行っておく必要があります。
議事録がある場合には、次回の交渉の準備の際にも資することになるので、議事録の作成を忘れないようにすべきです。
なお、録音を行う場合には、労使双方の同意を取ることが重要です。

団体交渉の場で会社がやってはいけないこと

当然ですが、暴力の行使はいかなる場合でもいけません。また、暴言もいけません。団体交渉の中では「聞けや、ボケ」「やれ団交だ、やれ何だかんだって言ってる場合じゃねえぞ」等、不穏当な発言がされることもありますが、使用者側がこのような発言をして団体交渉が実質的に滞る事態に至った場合に誠実団体交渉義務に反するものとして不当労働行為にもなりかねません。

そして、組合の要求を全て飲む必要がないにもかかわらず、安易に応じてしまうこともいけません。誠実に交渉するべき義務はありますが、要求の内容に必ず応じる義務はありません。
こういった点に留意すべきでしょう。

労働組合との団体交渉の終結

団体交渉が集結する場合は、労使間での合意が形成できた場合と、交渉が決裂した場合が考えられます。

労使間で合意に至った場合

労使間で合意に至った場合には、合意書を作成し、労働協約を締結することになります。
労働者の雇用や賃金での交渉であった場合には、当事者である労働者の署名押印や清算条項をいれることを忘れないようにしましょう。

団体交渉が決裂した場合

交渉が決裂したからといって、即座に団体交渉を打ち切ってしまうと、誠実交渉義務違反となりかねません。
労使双方が、主張や説明、提案を尽くし、交渉がこれ以上進展することが無い段階に至った場合に初めて、決裂したとして、交渉を終結させるべきです。
その際は、議事録において、合意に至らなかった理由について明記しておくことをお勧めします。

団体交渉に関する裁判例

団体交渉に関する裁判例としては、様々なものがありますが、商大自動車教習所事件判決をご紹介いたします。

事件の概要

本裁判例は、労働組合が、会社に対して団体交渉を申し入れたところ、会社が団体交渉の場所、時間及び人員に関する団体交渉ルールが確立されていないことを理由に団体交渉を拒否したことが不当労働行為であると争われた事件です。

会社は、2時間、場所を指定し、会社側は四名、組合側は合わせて五名程度(本件は2つの労組から申し入れがありました。)での交渉を行いたいと申し入れましたが、組合側はこれを拒否したため、会社が団交を拒否したというものです。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

【東京高判昭和62年9月8日】
「控訴人は、五月一一日より後の状況は、交渉場所について労使の意見の相違があったにすぎないのであって、控訴人による団体交渉拒否というべきものではない旨縷々主張する。しかしながら、(証拠略)によれば、分会及び労組が団体交渉の場所として控訴人会社の施設内(教習所施設内)に固執したことが認められるが、控訴人としては交渉場所については会社施設外を堅持するとしても、交渉の時間及び人員については柔軟に対応することは不可能ではなかったにも拘らず、交渉の場所、時間及び人員についての三条件の全てに関する団体交渉のルールが設定されなければ団体交渉に応じないという態度を崩さなかったことは前記(二)で説示したとおりであって、交渉の時間及び人員について控訴人が提示した条件は後記四で説示するとおり合理性を欠くものであり、以上の点を総合すれば、分会及び労組側にも行き過ぎた行動があったことを考慮しても、控訴人は団体交渉のルールが設定されていないことを理由として団体交渉を拒否していたものといわざるをえない。当審における控訴人の主張(一)は採用することができない。」と述べて、誠実交渉義務に違反すると判断した。

ポイント・解説

使用者が団体交渉の場所、時間、人員に関するルール設定に固執し、交渉に応じないことが、組合側の交渉要求にも行過ぎがあつたことを考慮しても、不当な交渉拒否に当るとされた点がポイントです。

一般に、使用者が団体交渉の場所、時間、人員について労組からの提案とは別の提案を行うことは許されていますが、あまりに固執しすぎると違法となることが有るので注意が必要です。

早期解決には冷静かつ粘り強い交渉が必要

団体交渉については、労使ともに熱くなってしまうことが有りますが、感情的な対立を引き起こすような交渉態度は良くありません。
団体交渉はあくまでも、労使の協議の場であり、合意の形成を目指す場でもあります。冷静かつ粘り強く、互いの主張について根拠を交えて交渉し、合意の形成を目指すことが肝要です。

団体交渉を有利に進めるためには、専門的な知識が必要となります。まずは弁護士にご相談下さい。

以上に述べたように、団体交渉にあたり、組合からの申入れに対して受け身の姿勢を取るだけでは、団体交渉を有利に進めることは出来ません。他方で、対立的な態度を取ってしまった場合には、違法となってしまうリスクもあります。
団体交渉を有利に進めるためには、専門的な知識を有する弁護士にご相談いただくことが必要になります。

埼玉県内で、団体交渉の進め方でお困りの使用者の方や担当者の方は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

会社の経営者の方から労働問題の相談を受けるとき、「勤務態度の悪い従業員を解雇したところ、労働組合から団体交渉を申し入れられた」、「うつ病で満足に仕事ができない従業員に退職勧告を出したところ、不当解雇だと言われている」、「突然、社外の労働組合から団体交渉を申し込まれた」といった話を聞くことがあります。 特に、ユニオン、合同労組といった外部の労働組合からの団体交渉の申入れについて悩まれる方も多いのではないでしょうか。

労働組合側は、労働法の知識や、団体交渉の経験がある者が交渉にあたるので、使用者側としても、労働法の知識を有し、労働関連紛争の経験がある弁護士を団体交渉に関与させておくことにメリットがあります。

団体交渉には専門的な知識と経験が必要

どのような交渉であってもそうですが、労働組との団体交渉においても、専門的な知識と経験が必要です。

団体交渉で協議する内容は、労働者の労働条件や待遇等に関するものです。この協議には、労働法の規制に関する専門的知識が必要です。

また、使用者には単に外形上、交渉の席に着くだけでなく、労働者の代表者と誠実に交渉する義務があるため、誠実に交渉を行わなければなりません。誠実交渉義務に違反した場合、使用者が、不法行為に基づく損害賠償の責任を負うこともあります。誠実交渉義務に反しないように、団体交渉を進めるには、団体交渉の経験があることが望ましいと言えます。

有利に進めるには弁護士の関与が不可欠

以上の様に、団体交渉を有利に進めるには、労働法に関する専門的な知識と、団体交渉の経験が不可欠です。

自社で、このような人材を用意することができれば何よりですが、専門的な知識と経験を有する弁護士を関与させることで、団体交渉を有利に進める方策を立てることができます。

また、団体交渉の場にも弁護士が出席することで、労働組合からの圧力に屈しないように、交渉を進めていくことも可能となります。

団体交渉における弁護士の役割

団体交渉における弁護士の役割は、事前準備と、実際の交渉です。

使用者には、団体交渉義務がありますが、義務的団交事項出ない交渉を要求されても、応じる必要はありません。
弁護士としては、まずは、義務的団交事項であるか否かを検討することになります。

また、団体交渉に応じることとなった場合も、場所や日時について、イニシアチブをもって決定していくこと、交渉の際に、労働組合の要求を拒絶するとしても、その理由を具体的に説明するように準備しておかなければなりません。

そして、実際の団体交渉において、交渉を主導していくことが、弁護士の主な役割です。

団体交渉で弁護士に依頼することのメリット

団体交渉を弁護士に依頼することのメリットは、やはり、専門的な知識と経験を持った使用者側の味方を用意することができる点です。

経験に基づく交渉戦略の立案

例えば、団体交渉を申し入れられた場合、早期の団体交渉を希望されることが多いですが、これに不必要に応じる必要はなく、無理な日程での団体交渉を受け入れなければならないわけではありません。
もちろん、使用者側も不必要に交渉時期を引き延ばすことは許されませんが、交渉に当たって準備する時間が必要であれば、それは認められます。

こういったように、労働組合から団体交渉を申し入れられたとしても、交渉日時や場所の設定から使用者側でイニシアティブ握っていかなければならないのですが、弁護士に依頼することで、こういった交渉戦略についてのアドバイスを受けることができます。

また、誤解されかねない発言や撤回困難な説明をしてしまえば、労働組合との交渉がまとまらなくなる恐れもありますが、弁護士に依頼することで、使用者側の主張の明確化や、根拠の整理や、想定問答などを準備したうえで、交渉に臨むことができるようになります。
交渉は、弁護士業務の基本でもありますから、弁護士に依頼することで、経験に基づいた団体交渉の戦略を立案していくことができます。

迅速な対応と最良な解決策の提案

不必要に短期な日程で、団体交渉に応じる必要はありませんが、迅速な対応は、誠実な交渉の表れであることから、出来る限り早い対応が求められます。

しかしながら、自社のみであれば、専門的な知識と経験の不足から、迅速な対応をしていくことには限界があります。団体交渉の経験を有する弁護士に依頼することで、準備すべき事項などについて主導してもらうことができるため、迅速な対応が可能となります。

団体交渉を解決していく(合意に向けて進めていく)にしても、労働法の知識がなければ、適正な解決を行うことは出来ませんから、専門的な知識を有する弁護士に依頼することで、最良な解決策の提案を受けることができます。

事態の悪化・会社の不利益を防ぐ

労働者の解雇や未払い賃金の請求などが団体交渉で解決できなかった場合には、労働審判、訴訟などの別手続きに移行することになります。また、団体交渉中に、誤解されかねない発言をしてしまったことで、団体交渉がこじれたり、長引いたりすることもあり得ます。

紛争の長期化は、それ自体で会社の不利益となりますから、団体交渉に弁護士を関与させることによって、事態の悪化や会社の不利益を防ぐことが可能となります。

弁護士が味方につくことで冷静な話し合いができる

もちろん、当事者によりますが、当事者である使用者と労働組合のみで交渉を行っても、感情的な争いとなってしまうことがあります。

例えば、労働組合側の感情的な発言によって、使用者側も感情的な発言をしてしまうなど、感情的な対立を引き起こし、紛争の長期化につながってしまうことが有ります。
使用者側に弁護士を関与させることによって、弁護士が冷静に団体交渉を取り仕切ることで、冷静な話し合いが期待できます。

交渉中止や和解の落としどころを判断できる

使用者には誠実交渉義務がありますが、交渉の結果、交渉が成立する見込みがないと判断できる場合には交渉を打ち切ることができます。しかし、交渉の打ち切りは、労働者側から、使用者が誠実交渉義務に反して交渉を打ち切った等として争われる恐れもあります。
弁護士を関与させることで、誠実交渉義務に反しない交渉の打ち切り、中止のタイミングの判断が可能になります。

また、和解の落としどころについて、弁護士が関与することによって、相当な落としどころがどこかを判断することもできるようになります。

労務トラブルを未然に防ぐ体制づくりをサポート

団体交渉を申し込まれた事案の中には、使用者側の対応に問題がある場合や労務トラブルにつながりやすいという場合があります。
弁護士を関与させることで、団体交渉を適切に行うだけでなく、労務トラブルを未然に防ぐ体制づくりまでアドバイスを行うことが可能になります。
次の団体交渉を申入れられるような問題を生じさせない体制づくりをサポートすることができます。

団体交渉の解決を目指すなら顧問契約の締結を

紛争は発生してしまった段階で、解決にコストがかかりますから、使用者側にとってはデメリットです。
真に団体交渉の解決を目指すのであれば、そういった紛争が発生しないような企業体制を作っていくことが肝要です。

弁護士と顧問契約を締結することによって、紛争を未然に防ぐ体制づくりを目指すことができます。また、弁護士としても、普段から関係のあるよく知った企業の事案であった方が、事案をよく理解し、解決に結びつけやすいというメリットもあります。

団体交渉のトラブルは深刻化する恐れがあります。早期解決のためにも弁護士に依頼することをお勧めします。

団体交渉にまで至ったトラブルは、大きな問題となって、会社に深刻な影響を与える恐れがあります。
団体交渉を誠実に実施していくためにも、これ以上の大きな問題としないためにも、早期に弁護士に相談することをお勧めします。

埼玉県内で団体交渉でお悩みの企業の方は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

労基法上、管理監督者に対しては、残業代を支払う必要はありません。ただ、この管理監督者とは、日常的に使われる管理職とは違います。

今回は、実務上も頻繁に問題となる管理職の残業代について、ご説明いたします。

管理職に対しても残業代を支払う義務があるのか?

よくあるご相談の一つに、管理職の地位にあった従業員から残業代を請求されているが、管理職に対して残業代は支払わなくて良いんですよね。というものがあります。

確かに、労基法上の管理監督者に該当するというのであれば、残業代の支払いをする必要はありませんが、それが単なる名ばかり管理職というのであれば、管理監督者に該当するとは言えませんから、残業代を支払う必要があります。

管理監督者に残業代を支払う義務はない

労基法上、「監督もしくは管理の地位にある者」(=管理監督者。41条2号)では、労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用を除外しています(=時間外手当の支払い義務を免れるということです。深夜割増賃金の支払い義務までは免れません。)。

しかしながら、単に管理職の地位にあるだけでは、労基法上の管理監督者とは言えません。

管理監督者とは?

管理監督者とは、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」(労基法41条2号)のことを言います。

労基法上、管理監督者に該当するものには、労基法の労働時間、休憩、休日に関する規定が除外されます。管理監督者として認められた場合には、労働者の健康確保等のために定められた労働時間等の規制がかからなくなるため、労働者の心身の安全に極めて重大な影響を及ぼすものです。

名ばかり管理職では、管理監督者と認められない

そのため、店長という名前で稼働しているとはいえ、単なる雇われ店長にすぎず、何の権限もない方や、平社員と同様に勤怠管理がされている課長などは、管理監督者とは認められません。

逆に、経営方針を決定するような重要な会議に積極的に参加していたとか、労働時間に自由裁量があるとか、それに見合うだけの賃金を得ていたという場合であれば、労基法上の管理監督者と認められる方向に傾きます。

管理監督者でも深夜手当の支払いは必要

管理監督者に該当した場合に適用が除外されるのは、労働時間、休憩及び休日に関する規定ですが、労基法は、労働時間と深夜業を区別しているので、管理監督者であっても、深夜割増賃金を請求することは出来ます。

もっとも、所定賃金内に一定額の深夜増賃金を含める趣旨で定められていることが、労働協約、就業規則等によって明らかな場合には、既に支払っていることになりますから、支払う必要はありません(昭和63年3月14日基発150号)。

管理職には残業代を支払わないと就業規則で定めている場合は?

管理職には残業代を支払わないという就業規則を定めていたとしても、これが管理監督者には支払わないという趣旨であればともかく、労基法上の管理監督者に該当しない、自社の管理職に対して残業代を支払わないという規定であったとすれば、無効です。

就業規則よりも、労基法の定めが優先されます。

労働基準法における管理監督者の該当性

裁判所は、労基法上の管理監督者に該当するかどうかについて、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」などと定義した上で、管理監督者に該当するかどうかを、職位等の名称にとらわれず、職務内容、権限及び責任並びに勤務態様等に関する実態を総合的に考慮して判断しています。

労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有している

例えば、会社の経営会議に参加に参加し、その会社の行く末を決定するような職務内容であるとか、労働者の枠に収まらない重要な職務内容を有していなければ管理監督者とは言えないとされています。

労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有している

例えば、労働条件の決定その他労務管理について、自らの裁量にゆだねられていなければ、管理監督者とは言えません。

課長やリーダーなどの肩書があっても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事項について上司に決済を仰ぐ必要がある場合には、管理監督者とは言えません。

現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものである

経営者と一体の立場にある者は、時を選ばず経営上の判断や対応が要請されます。そのため、労務管理においても普通の労働者とは異なる立場にある必要があります。

労働時間について厳格な管理をされている場合には、管理監督者とは言えません。

賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされている

管理監督者は、その職務の重要性から、一般労働者としてふさわしい待遇(高い給与や賞与など)がなされていなければなりません。

そのため、課長やリーダーなどの肩書があっても、肩書がない労働者と待遇に異なるところが無ければ管理監督者とは言えません。

管理職が必ずしも管理監督者に該当するわけではない

以上に述べたように、管理職(課長など)の役職がついているからと言って、必ずしも管理監督者に該当するわけではありません。

その実態として、労基法の労働時間の規制の適用を除外するほどの職務や権限、待遇を得ている必要があります。

企業で違う管理職の扱い

そもそも、企業ごとにどのような管理職の地位を設け、どのような取り扱いをしているかは異なります。

係長や課長、次長、部長などの名称から、マネージャー等の名称を用いるものまで、企業によって異なります。

その企業の必要によって設けられた役職と、労基法の管理監督者が異なることは必然ともいえます。

「名ばかり管理職」と残業代の問題

労基法上は「名ばかり管理職」であったとしても、会社としては、管理監督者であると捉えてしまい、残業代を支払わなくてよいと勘違いしていることが有ります。

しかしながら、名ばかり管理職であったとしても、通常の従業員よりは賃金がある程度高かったり、また労働時間が長時間に及んでいることが多いです。

そのため、名ばかり管理職からの残業代の請求は高額の請求になりやすく、企業にとっては無視できないリスクとなっているのです。

管理職の勤務実態を把握する必要性について

管理監督者であれば、適用除外を受けることになり、他方で名ばかり管理職であれば残業代の支払いなどが義務となってきます。

自社の管理職が、どちらに該当するのかについては、その勤務実態から改めて確認し、適切に対処していかなければなりません。

今一度、管理職が、管理監督者に該当するのか、しないのか、確認されることをお勧めいたします。

管理監督者の該当性が問われた裁判例

管理監督者の該当性が問題となった裁判例は数多くありますが、特に有名なものとして、日本マクドナルド事件があります。

事件の概要

ファーストフードチェーン店の店長が、管理監督者に該当するかどうかが問題となったものです。

アルバイトの採用権限や時給額、人事考課、勤務シフト等の決定に関する権限を有し、自己の勤怠の自由もあったという事案です。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

裁判所は、店長である労働者について、その権限について、アルバイトの人事上の権限を有してはいるものの、将来アシスタントマネージャーや店長に昇格していく社員を採用する権限はないことや、企業全体としての経営方針等の決定に関与していないということから、重要な職務と権限を付与されているとは認められないとされ、勤怠の自由についても、形式的には裁量があることもあるが、労働時間に関する自由裁量性があったとも認められないとし、処遇についても、シフトマネージャーの業務も兼務していたこと等から労働時間等も踏まえれば、管理監督者に対する待遇としては不十分であるとして、管理監督者性を否定しました。

ポイントと解説

チェーン店とはいえ、店長という独立した職場の長が、ある程度の権限を有していたにもかかわらず管理監督者性を否定されたところが大きなポイントです。

判断要素自体は従前重要視されていたところと変わらないのですが、この裁判例によると、経営者との一体的な立場については、企業全体の運営への関与を要するとしたように見えるところがあり、担当する組織(店など)について、経営者の分身として経営者に代わって管理を行う立場にあることで、経営者と一体とみても良いのではないか、という評価も受けています。

もっとも、事案判断としては、シフトマネージャーとしての営業業務にも従事していたにもかかわらず、店長としての報酬しか得ていなかったという事情もあることから、事案判断としては、相当なものであると評価されています。

管理職について正しい知識を持つ必要があります。企業法務でお悩みなら弁護士にご相談ください。

以上に述べてきたように、単に管理職であるからと言って、残業代を支払う義務がないとは直ちには言えません。

管理職は、会社でそれ相応の地位にあることが多いことも相まって、通常の従業員よりも高額な賃金を得ているために、残業代の金額も高額になってしまいます。また、管理職であるがために、長時間労働をしているケースも多く、時間外労働時間もかなり長時間に及ぶことも多いです。

そのため、単価も高く、また支払うべき時間外労働時間も長くなってしまうケースが多く、管理職の未払い残業代問題が会社に与える経済的な負担は極めて大きなものになりがちです。

このようなリスクがあるにもかかわらず、管理監督者に該当するか否かは、役職名だけで決まるものではなく法的な判断を伴います。

そのため、自社のみで判断することなく、弁護士などの専門家に相談することは必要不可欠と言わざるを得ません。

埼玉県内で、自社の管理職が管理監督者に該当するか否かお悩みの企業の方は、ぜひ一度弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所にご相談ください。

整理解雇について

事業を経営している場合、売上の減少や経営状況悪化に伴い、固定経費を削減しないといけない場面が出てくることが有ります。会社内の人員の整理もその一つです。

今回は、人員整理の方法として、整理解雇についてご説明させていただきます。

普通の解雇と整理解雇は何が違うのか

解雇とは

解雇とは、会社の一方的な意思表示によって、従業員との間の労働契約を終了させるものです。会社と従業員との間には、力関係に明確な差があることから、日本では、会社からの一方的な解雇に対する法的な規制がなされています。

労働契約法第十六条において、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」されています。

整理解雇とは?

経営不振などの経営上の理由により人員削減の手段として行われる解雇を整理解雇といいます。すなわち、整理解雇とは解雇に求められる合理的な理由のうち、経営上の必要性との理由によって行われるものです。

整理解雇4要件と整理解雇の流れ

整理解雇に求められる要件

整理解雇は、例えば労働者の義務違反等、労働者側の事情に基づくものではなく、会社の事情に基づく解雇であることから、その他の理由に基づく解雇よりも厳しい制約が課されています。

いわゆる整理解雇4要件(①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④手続きの妥当性)が要求されることになります。

人員削減の必要性

解雇の理由として、人員を整理=削減する必要を掲げている以上、当然かもしれませんが、経営上の理由により、人員削減する必要性があることが要件とされています。

実務上は、企業の経営実態を詳細に審査して人員削減の必要性を認定しているわけではなく、会社の経営判断を基本的に尊重する方向にあります。

但し、財政状況に全く問題が無い場合や、整理解雇を行いながらも新規採用を行っているなどといった事案では、人員削減の必要性が無かったと評価されてしまうことはあります。

以下に述べる手続きの妥当性ともかかわってきますが、実際に整理解雇に踏み切る前には、経営状態の悪化について説明会を実施するなどして従業員にも人員削減の必要性を理解してもらえるように勤めることになります。

解雇回避努力

また、人員を削減する必要性が認められるとしても、解雇以外の人員削減手段を模索し、解雇をできる限り回避することが求められます。

どういうことかといえば、残業の削減、新規採用の手控え、余剰人員の配転・出向、非正規従業員の雇止め・解雇、一時休業、希望退職者の募集などの手段を取ることが求められています。

そうはいっても、各会社によって事情が異なりますので機械的・画一的にこの処理のすべてを求められるわけではありません。抽象的にはなってしまいますが、当該企業において可能な限りの措置を取って解雇を回避するよう努力を尽くすことが必要です。

例えば、小規模な法人で、余剰人員を配転・出向させる余地がなかったという会社で、退職勧奨を行いながら話合いによる解決を目指したという事案では、解雇回避に向けて一応の努力を肯定しています(財団法院市川房枝記念会事件)。

実際に整理解雇を行う際には、まずは希望退職者を募集することが一般的です。この際、有能な従業員に退職されることを防ぐために、対象者は会社が承認した者という限定をつけておく方がよろしいです。

希望退職者の募集を行ったあと、役員報酬の減額や余剰人員の配転・出向、派遣社員やパート社員など非正規従業員の雇止めなどを検討すべきことになります。ただ、雇止め等においても、解雇権濫用法理と同等の保護がなされていますので、簡単に雇止めができるとはお考えいただかない方が無難です。

人選の合理性

解雇回避努力を尽くしたとしても、なお余剰な人員がいるという場合には、余剰人員数を確定したうえで、合理的な人選基準を定めて、その基準を運用し、解雇する従業員を決定することが求められます。

例えば、勤務成績や勤続年数、労働者の生活上の打撃(扶養家族の有無・数等)が、人選基準において考慮される要素といわれます。

恣意的な基準であると、整理解雇が無効となってしまうため、できる限り客観的な基準を用意することをお勧めします。

例えば、欠勤日数が合計何日以上あるものとか、懲戒処分歴があるもの、人事考課による評価がある基準以下であったもの等、後で恣意的な判断であると疑われないようにしておくと良いでしょう。

手続きの妥当性

労働協約や就業規則に解雇協議約款がある場合はもちろん、そうでなかったとしても整理解雇を行うにあたっては、人員整理の必要性や解雇回避の方法等について説明し、誠意をもって協議しなければなりません。 ある裁判例では、労働組合と協議し合意を得ていても、解雇される労働者本人から意見聴取の手続きを取っていなかったことを指摘して解雇手続きは十分な相当性を備えていないとしたものもあります(ジャパンエナジー事件)。

従業員に対して、十分な説明・周知を行うことが肝要です。

不意打ち的な整理解雇は手続の妥当性を欠くものとされる恐れが高いです。

まとめ

以上に述べた4要件を満たすかどうかを判断して整理解雇が有効かどうかを判断することになります。

もちろん、各会社によって実情・実態が異なりますから、それぞれの要件をどの程度満たすべきかどうかは、会社の実情・実態に応じて変わることになります。近年の裁判例では、4要件ではなく4「要素」(整理解雇が有効であるためには、全てを満たす必要がないという意味です。)であるとして、総合的に整理解雇の合理性・相当性を判断しているものもあるほどです。

自社に即した整理解雇の流れや具体的な要件の充足、整理解雇の有効性については、弁護士にご相談いただいた方がよろしいです。

埼玉県内で整理解雇についてお悩みの企業は、弁護士へご相談ください

以上に述べたとおり、整理解雇は、会社の都合によって解雇を請求していくものであることから要件を充足しない限り無効となりかねません。

会社としても従業員を解雇することは最終手段だとご理解いただいているとは思います。しかしながら、急激な経済状況の悪化から、会社としてやむなく整理解雇に踏み切らざるを得ないというケースもどうしてもあります。全員で倒れるのではなく、会社で働く従業員のうち、一人でも多くの生活を守る手段として、整理解雇という選択肢があるのだと思います。

整理解雇には、法的に難しいところがありますので、自社のみで手続を進めたり、判断されずに専門家である弁護士にご相談されることを強くお勧めいたします。

弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所では、整理解雇を行うにあたって、会社の実情から整理解雇の要件を満たしうるかの精査や、従業員に対する説明への立ち合いなど、整理解雇を行う段階で様々なサポートが可能です。

また、整理解雇を行った後、従業員から解雇無効を主張された場合の交渉や、労働審判等の紛争対応にもサポート可能です。

埼玉県内で整理解雇についてお悩みの企業は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

はじめに

新型コロナウイルス感染症の感染拡大予防のためには、人と人との接触を減らしていくことこそが肝要であるとされています。

今までは、どこか特定のオフィスに勤め、自宅からそのオフィスに通勤したり、オフィス内で同僚と接触、また取引先と折衝を行うときも対面であるなど、人と人との直接的な接触が前提となっていました。しかしながら、今後は、人と人との直接的な接触を減らしていかなければなりません。

また会社が従業員に対して果たすべき安全配慮義務の実現や、休業手当の支払い義務の有無においても、テレワークの可否を検討しなければなりません。

今回は、テレワークを実現するにあたっての法的な留意点(労働時間管理など)について、ご説明していきたいと思います。

テレワークとは

テレワークとは、「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた言葉で、一般的に労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務のことをいいます。

ざっくり言うのであれば、オフィスに固定されず、勤務場所や時間にとらわれることのない働き方のことを言います。

テレワークの種類

テレワークは、労働者が労働する場所に応じて①在宅勤務、②サテライトオフィス勤務、③モバイル勤務の3つに分けられるとされています。

  1. 在宅勤務は、労働者の自宅で勤務を行うもので、通勤時間がなくなります。仕事と家庭との両立に資する働き方であるといわれてます。
  2. サテライトオフィス勤務は、労働者が属するメインのオフィス以外に設けられたオフィスを利用して勤務を行うものです。これは①と②の中間的なもので通勤時間を短縮しつつ、在宅勤務やモバイル勤務以上に作業環境が整った場所で働く働き方です。
  3. モバイル勤務は、ノートパソコンや携帯電話などを活用して臨機応変に選択した場所で業務を行うもので、労働者が自由に働く場所を選択できる最も柔軟な働き方です。

テレワークのメリット、デメリット

テレワークのメリットはなんといっても通勤時間の短縮です。労働者に自由な時間が増えることで家庭と仕事の両立が可能となります。また、会社にとっても、遠隔地の優秀な人材を確保したり、オフィスのコストを削減するなど様々なメリットがあります。

他方で、テレワークのデメリットは、場所に拘束されないからこそ、仕事と仕事以外の切り分けが難しくなり、長時間労働になりやすい恐れがあることです。これは労働者にとってもデメリットですし、労働時間管理が困難になることから、使用者にとってもデメリットです。

その他、コミュニケーションの取り方が従来と変わってしまうので、コミュニケーションを取りづらいとか、情報セキュリティの問題などの様々なデメリットもあるといわれています。

新型コロナウイルス感染拡大防止には、テレワークは避けて通れないこと

テレワークにはメリット、デメリットがあります。

ただ、新型コロナウイルスの感染が拡大している現状においては、人と人との接触を減らすテレワークの採用を検討しないということは出来ません。

もちろん、業種によってはテレワークが不可能という業種もありますが、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、部分的であってもテレワークの導入を検討することをお勧めいたします。

テレワークの導入にあたって検討しておくべきこと

テレワークを導入するにあたっては、最低限、どのようなテレワークを導入するか、また運用するかのルール作りをしなければなりません。

その際に検討すべきことは、インフラ面の整備も大事ですが、①労働時間管理や業績評価の方法を検討したり、②従業員のメンタルヘルスケアを心がけておく必要があります。

テレワークにおける労働時間管理

テレワークであろうと、労働時間制度に変わりはありません。

そのため、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」にしたがって、適切に労働時間管理を行わなければなりません。

同ガイドラインによれば、労働時間を記録する原則的な方法としては、パソコンの使用時間などの客観的な記録によるべきであるとされています。

したがって、テレワークにおいてもパソコンの使用時間などの客観的な記録による管理が求められます。

テレワークにおける労働時間管理の難しさと評価方法の転換の必要性

テレワークの特徴としては、労働者が、使用者から離れた場所で就労していることです。

そうしますと、残業しているかどうかもわかりづらいところがありますから、テレワークの長時間労働になりやすいという特徴を防止するために、就業規則上、原則として残業は禁止しておくことが必要でしょう。

また、労働者が中抜けをしたとしても、パソコンさえ起動していえば、把握しづらいという問題もあります。もちろん、中抜け時間について、労使で協議し時間単位の年次有給休暇の制度を用いる等して対応することも考えられます。

ただ、いずれにせよテレワークである以上は、ある程度目が届かないことは避けられません。

そのため、テレワークにおいては、労働時間を見るのではなく、成果物で評価することと評価方法を転換していくことが不可欠だといえます。

事業場外みなし労働時間制の活用

テレワークであると労働時間管理に困難が生じるというのであれば、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときに該当するとして、事業場外みなし労働制を採用するという手段も考えられます。

ただ、テレワークにおいては①使用者の指示に即応する義務がないこと(情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態に置くこととされていないこと等)と、②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないことの二つの要件を満たす形で導入しなければ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときに該当しないとされています(「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」)。

いわゆる手待ち状態で待機させておくことは出来ません。なお、業務の目的、目標、期限等の基本的事項を指示することは、②にいう具体的な指示には該当しません。

要するにオフィスで作業させているときに近い環境でテレワークをさせたいというのであれば、みなし労働時間制を採用することは困難です。

テレワークに伴い、事業場外みなし労働時間制を活用したいのであれば、労働者の管理方法や評価方法について根本的な方針転換が必要になってくるでしょう。

テレワークとメンタルヘルス

テレワークの方がメンタルヘルスに影響を及ぼしやすいといわれています。

特に在宅勤務は勤務時間があいまいになりがちなところから、時間外労働につながりやすいといわれています。時間外労働はメンタルヘルスに影響しやすいとされますから、会社としても、時間外労働を防止するように心がけておく必要があります。

また、上司や同僚と空間を共有していないことから、指示を受けづらいとか、相談しづらい環境になってしまうともいわれます。

会社としては、チャットを駆使したり、定期的にビデオ会議によるミーティングを設定するなどして、普段よりもコミュニケーションの場を提供するように心がけていく必要があります。

そして、社員の心身に不調が見られる場合には、早期に産業医との面談を設定するなどしてメンタルヘルスケアを図っていく必要があるでしょう。

新型コロナウイルス感染症に関するテレワークの整備でお悩みの方は、弁護士にご連絡ください。

テレワークは、新型コロナウイルス感染症の流行前から、その導入の是非が検討されてきました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、その予防のために体制を十分に整備しないままにテレワークに踏み切らざるを得なかった企業様も多いです。

テレワークの整備には、労働時間管理やメンタルヘルスケアの問題も絡みますから、専門家のアドバイスを受けつつ、自社に適合したテレワーク環境を整備していく必要があります。

弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所では、テレワーク導入にあたって就業規則の整備など、多岐にわたる法的助言や導入支援を行うことが可能です。

埼玉県内で、テレワーク導入に関してお悩みの企業様は、ぜひ一度弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

令和2年5月13日(水)、同月20日(水)に、使用者側弁護士による社会保険労務士様向けシリーズ勉強会「ハラスメント対応―パワハラ防止法で求められる対処法―」をWEBにて開催しました。

当初の予定では、弊所の会議室にて開催を予定しておりましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のために、急遽Zoomを用いた方法に変更させていただきました。

急なお願いにもかかわらず多くの社会保険労務士の先生方に参加いただくことができました。

令和2年6月1日に施行される改正労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)について、同法において規定された職場におけるパワーハラスメントの定義や、雇用管理上講ずべき措置義務の具体的内容(相談体制の整備等)を中心に勉強会を開催させていただきました。

特に、来月より企業に課せられる措置義務の具体的な内容について、相談事例などを踏まえて重点的にお話しさせていただきました。

今後、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所では新型コロナウイルス感染症が落ち着くまでは、セミナーや勉強会はWEBでの開催とさせていただくことになるかと思います。

社会保険労務士の先生方に有意義な、弁護士の視点からの労務問題に関する勉強会を今後も開催できるよう、WEBでの勉強会のより良い開催方法についても研鑽に努めてまいります。

ご参加頂きました先生方には、改めて感謝申し上げます。

はじめに

「うちの会社はコロナの感染拡大に何もしてくれない」「テレワークにもしてくれないんだ」「コロナが怖いので、休業してくれませんか」

従業員から、このように言われたとき、自分の会社では感染拡大防止措置を取っているから大丈夫だと答えられるでしょうか。

「高熱が出て、咳が止まらないんです。」「病院にいってPCR検査をしたら・・・」

ある日、従業員からこのような連絡が入ったとしたら、自分の会社ではどのように対応するのでしょうか。

新型コロナウイルスの感染拡大は、とどまるところを知りません。世間では自粛などによって感染拡大に努めていますが、それでも感染を完全に食い止めることは難しいでしょう。

ついに、令和2年4月7日には、七つの都府県に緊急事態宣言も出される事態となりました。また、同月16日には、全国まで対象地域を拡大していくことも表明されました。

自社の社員が感染してしまうことは、会社にとって、もはや避けられない問題です。

ですが、新型コロナウイルス感染症に対して、どのような対応を取るべきか、決めきれていない会社も多いのではないでしょうか。

新型コロナウイルスについて、気になる問題について、ご説明いたします。

新型コロナウイルス感染拡大防止措置について

新型コロナウイルスの特徴について

新型コロナウイルスとは

令和元年12月に中国武漢で原因不明の重篤な肺炎が発生し、この原因として新しいコロナウイルスが検出されました。これが、世にいう新型コロナウイルスです。

世間では、コロナと略されてることが非常に多いですが、WHOは令和2年2月11日にCOVID-19と命名しました。

インフルエンザと同じというのは本当なの?

世間では、当初、インフルエンザと似ているといったような風潮がありました。

インフルエンザは、3~4日までの症状が重く、その後は改善に向かうといわれますが、新型コロナウイルス感染症では、症状が一週間前後続くことが特徴であるといわれています。

そのため、4日を過ぎても発熱が続くようなケースは、インフルエンザではなくて、新型コロナウイルス感染症を疑うことになります。

また、潜伏期間は最長14日程度あるともされています。

重症例での死亡率は、新型インフルエンザと比べると高いとの報告もなされています。

感染の仕方について

新型コロナウイルスは、物を介する感染と飛沫感染が考えられるといわれています。

物を介する感染は、例えば、感染している人が、鼻をかむなどした場合、ウイルスが手につきますが、この手で、ドアノブなどを触ったりすれば、そこにもウイルスが付着します。このドアノブを他人が触ることで、その人の手にもウイルスがつき、その手で口や鼻、目などを触っていくことで感染するという感染の仕方です。現在のデータによれば、乾燥したプラスチック表面であれば72時間程度はウイルスの感染力があるとも言われます。

飛沫感染は、感染している人が咳やくしゃみをする際に飛び散る飛沫の中にウイルス含まれており、それが他人の口や鼻等に入ることで感染するという感染の仕方です。一般、飛沫感染は2m離れれば感染しないとされています。

特徴を踏まえた予防策

感染の仕方から考えれば、多くの人が触れる物に自分が触れる機会を減らすことや、こまめな消毒作業、人との距離を2m以上保つといったことが有効になってきます。

また、症状が長引くことが特徴とされていることから、1~2日の体調不良はともかく、4日以上体調不良が続く社員がいた場合には、注意しておく必要があります。

潜伏期間も最大14日と長いといわれていますから、仮に感染者が出た場合などは、この期間を目安に、他の従業員の感染を防止していくことが必要となっていくでしょう。

予防策の実例

以上の特徴に鑑みて、様々な予防策が考えられます。中には、実際に町で見たことがあるという予防策もあるかと思います。

政府が言うように、基本的には三つの密(①密閉空間(換気の悪い密閉空間である)、②密集場所(多くの人が密集している)、③密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や発声が行われる))を避けることが肝要です。

以下に述べる全てを併用していなければ安全配慮義務に反する、等とされないでしょうし、その他の予防策もあるでしょうが、自社の社員を守るために、参考にしてみてください。

検温の実施と報告の徹底

新型コロナウイルス感染症の症状は、咳と発熱であるとされています。

毎朝検温し、会社に報告を求めるといった対応が考えられます。

また、発熱がある場合には、上司など決裁権のある人間にまで報告するルートを確立しておくことも重要です。

これをすることで、37.5℃以上の発熱が継続するようであれば、出社を停止する、保健所に相談するなど、素早い初期対応を行うことができるようになります。

これにより、他者への拡散を防ぐなとの感染予防につながります。

マスク着用

咳エチケットの徹底などともいわれていますが、他人と接するときは、マスクを着用するようにしておくことで、飛沫感染予防になります。

飛沫感染を防ぐことはもちろん、物を介する感染は、ウイルスが付着した手で、口や鼻、目を触ることで起きるのですから、口や鼻への接触を防ぐという意味でもマスクは有用です。手を消毒するまで、マスクは原則外さないというようにしておくことで、物を介する感染予防につながります。

この一環か、一部の小売業の店舗では、マスクのみならず、レジ前に透明なフィルムをぶら下げることで客との飛沫感染を防ごうとしているところも見受けられます。

手や、良く触れる場所の消毒

新型コロナウイルス感染症の感染の仕方には、物を介する感染があります。

これは、例えば、感染している人が、鼻をかむなどした場合、ウイルスが手につきますが、この手で、ドアノブなどを触ったりすれば、そこにもウイルスが付着します。このドアノブを他人が触ることで、その人の手にもウイルスがつき、その手で口や鼻、目などを触っていくことで感染するという感染の仕方です。

そのため、従業員の手の消毒を徹底させるということや、人が手を触れる部分をこまめに消毒することで、物を介する感染予防につながります。

人の集まりを避け、移動を減らす

新型コロナウイルス感染症は、無症候又は症状の明確でない者からも感染するとも言われています。そのため、明確に症状が現れていない人からも感染する恐れがあります。

だからこそ、人と人との距離をとること(social distance:社会的距離)が感染予防には重要とされています。

具体的には、対面での会議を減らす、イベント毎は中止しwebでの配信などに切り替えられないか検討する等が考えられます。

また、出張や、出向などは、できる限り控えることをお勧めします。

テレワークの実施

新型コロナウイルス感染症の感染の仕方に照らせば、物を介する感染を予防することで、感染予防をすることができます。すなわち、人と人が接触する機会、人が物に触れる機会、人が触れた物に触れる機会を減らすことで、物を介した感染を予防することができます。

そのため、そもそも従業員を同一の場所に集めないテレワーク・在宅勤務を用いることで、感染予防策を実施することができます。

※テレワークに伴う労務問題は別記事参照

テレワークの態様

テレワークの方法としては、何パターンか考えることができます。

完全にテレワークとする方法と、テレワークを併用するという方法があり得ます。

完全にテレワークしてしまう方法は、わかりやすいです。従業員全てに在宅や所属オフィス外での勤務を命じるということで、物を介した感染(もちろん飛沫感染もですが)を予防することができます。

他方で、テレワークの設備が整っていない会社も多く、設備面から実現ができない問題や、どうしても会社内の設備を用いなければ仕事ができないといった場合も考えれます(郵便対応など)。

その場合には、テレワーク社員と、通常勤務を併用することが考えられます。

2日交替制にするとか、1週間交替制にするなど、シフトをどのように組むかといった問題はありますが、接触する人間を限定することで、物を介した感染や飛沫感染の予防に一定の効果が認められると考えます。

テレワーク併用時の注意点

気を付けたいのは、物を介した感染は、例えばプラスチック表面上であれば72時間の間ウイルスに感染力が残存するとも言われている点です。

単に交代制にしたのみならず、入り口での手の消毒や、ドアノブなど人が良く手を触れるところの消毒作業を徹底することで、シフトが異なる集団の物を介する感染予防に注意しておく必要があります。

完全に人と人の接触(物を介しても。)をなくすテレワークができないのであれば、併せて消毒作業も行うようにしましょう。

感染者が出た場合、事業所は閉鎖すべきか

感染予防策を実施したものの、感染者が生じた場合、事業所を閉鎖すべきかは悩ましい問題です。

これについては、結論から申し上げますと、ケースバイケースと言わざるを得ません。

ただし、消毒作業や、濃厚接触者の待機は必ずすべきである

感染の仕方に物を介する感染があるといわれていることから、感染者が出た場合には、消毒作業が不可欠の対応となります。

仮に消毒作業をしないとすると、他の従業員に対する感染症予防策が不十分であるとして、安全配慮義務に反する可能性が出てくるため、消毒作業中は、新たな物を介する感染を防ぐため、最低限閉鎖せざるを得ません。

また、濃厚接触者については、潜伏期間が最長14日間というデータがあることから、その間は自宅待機を命じることになります。

しかしながら、消毒作業が終わった後、濃厚接触者以外の従業員も出社させず、事業所を閉鎖し続けるべきかどうかは悩ましい問題です。

中小企業であれば、1~2週間の事業所の閉鎖によって、売上がなくなれば、そのまま倒産ということも考えられなくはないからです。

法律上、閉鎖を命じられることがあるのか。

いわゆる感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)によると、第32条において、都道府県知事が建物の立ち入りを制限又は禁止、封鎖することができるとされています。しかしながら、同条は、エボラ出血熱など致死率が非常に高い一類感染症に限定されたものであり、新型コロナウイルスにおいても直ちに適用があるとは言えません。

また緊急事態宣言においても、原則として自粛要請ですから、閉鎖を命じられることはありません。

そのため、法律上、罰則をもって閉鎖を命じられることは、今のところは考え難いです。

もっとも、行政からの強い自粛要請はあり得るでしょうし、それによる事実上の閉鎖をしなければならなくなるといった事態は考えられます。

安全配慮義務の履行としての閉鎖

他方で、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」(労契法5条)とされています。

事業所内から、新型コロナウイルス感染症に罹患した従業員が出たというのに、何らの措置を取らないというのは安全配慮義務に反する可能性があります。

初めにも触れましたが、感染の仕方には物を介する感染もあります。そのため、消毒作業が必要不可欠となるでしょう。

また、完ぺきな消毒作業ができるかはわかりませんから、ウイルスの感染力を低下させるために一定時間以上、事業所の出入りを制限しておいた方が物を介する感染の予防にはつながります(その間も換気はし続けた方がよいでしょう。)。

そういった意味で、全く閉鎖しないということは、安全配慮義務に反するとされるリスクがあります。

なお、潜伏期間中の従業員がいるかもしれませんから、感染者と14日以内に濃厚接触した者がいる場合には閉鎖を解除するとしても、その期間中は出社制限を行う必要があるでしょう。出社させてしまった場合には、消毒の意味も、閉鎖の意味も失ってしまう恐れがあります。

閉鎖すべき期間は?

ウイルスの特徴などを踏まえると、消毒後72時間以上閉鎖し、かつ、濃厚接触者を14日間出勤停止にしたうえで、事業所を閉鎖し続けることが感染予防にとって効果が非常に高いとは言い難いとも考えられます。

そういった意味で、閉鎖、休業の期間は、ケースバイケースということになるでしょう。

埼玉県内で新型コロナウイルス感染症に関する安全配慮義務でお悩みの企業の方は弁護士にご相談ください。

新型コロナウイルス感染症は、世界中に感染が拡大しており、日本においても予断を許さない状況が継続し続けています。感染予防拡大のために、また従業員への安全配慮義務を果たすために、会社として、できることをしていく必要があります。

ただ、事業所の閉鎖や休業に関しては、経営に大打撃を与える可能性もあり、簡単に決断できるものではありません。また、今回は触れていませんが、休業した場合に休業手当を支払うべきかといった賃金に関する問題や、テレワーク導入時の労働時間管理の問題など、様々な労務問題があり、実際の対策には、弁護士など労働法に詳しい専門家の協力は不可欠です。

専門家の協力を得ることで、この困難を乗り越えて、企業活動を継続し、自社の社員を雇用し続けることができるようにしていくことができるはずです。

埼玉県内で新型コロナウイルス感染症に関する安全配慮義務等でお悩みの企業の方は弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

休業した場合の賃金の支払いはどうなるのか。

労働者にとっても、使用者にとっても休業となった場合の賃金の支払いは気にかかるポイントです。

以下では、気になる賃金の支払いについて、まずは原則からお話しいたします。

ノーワークノーペイの原則

賃金というのは、労務の給付の対価として支払われるものですから、労働者が自らの意思によって労働をしなければ労働の対価である賃金を請求することは出来ないのが大原則です。

「使用者の責めに帰すべき事由」による休業

他方で、労働者の意思によらずに休業する場合には、民法の危険負担の原則に立ち返ることになります(民法536条)。

そのため、使用者の都合(責めに帰すべき事由)で休業させる場合には、労働者は賃金を請求することができます。

休業手当について

また、労基法26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない」と規定しています。

休業手当の保障における「責めに帰すべき事由」は、天災事変などの不可抗力に該当しない限りは認められるとされており、労働者の保護を図ったものとされています。

そのため、外部起因性及び防止不可能性の2要件を満たし、民法上は使用者の責めに帰すべき事由に該当しないとしても、その発生原因が使用者の支配領域に近いところから発生したもので、労働者の賃金生活の保障という観点から、使用者に6割の程度で保障させた方がよいとされる場合には使用者には休業手当の支払い義務があるとされています。

新型コロナウイルス感染症に伴う場合は、休業手当の方が問題となることが多い

新型コロナウイルス感染症は、世界的に蔓延しているもので、感染経路がわからない感染者も増えてきている感染症です。会社が適切な感染予防策を取っていたとしても、完全に防ぐことは不可能といわざるを得ません。

そのため、民法上の使用者の責めに帰すべき事由に該当し、賃金の全額を保障すべき休業と判断される可能性は一般的に低いと考えられます。

他方で、休業手当の支払いは、不可抗力による休業の場合以外では支払い義務があるとされています。

厚生労働省の新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)(令和2年4月24日時点版)によれば、「ここでいう不可抗力とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。例えば、自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分検討するなど休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた場合には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当する場合があり、休業手当の支払が必要となることがあります。」とされています。

そのため、仮に新型コロナウイルス感染症によって事業所を閉鎖しなければならなくなったとしても、自宅勤務などの方法によって事業活動を継続し、労働者を業務に従事させる手段を模索しなければ、休業手当の支払い義務があるとされる可能性があります。

具体的な事例ごとの休業手当支払い義務について

以下では、具体的な事例ごとに、休業手当支払い義務の有無についてお話ししたいと思います。

新型コロナウイルスに罹患した社員

自社の社員が、新型コロナウイルス感染症に罹患した場合には、その症状等から出社不可能という場合もありますし、他の従業員への安全配慮義務の観点からも出社させることは出来ないでしょう。

そのため、休業させることになります。

仮に、その労働者に対して都道府県知事が行う就業制限(感染症法)がなされていれば、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はないとされています(厚生労働省QA参照)。

他方で、就業制限がなされていない場合はどうでしょうか。この場合は、厚生労働省のQAでは触れられていません。

ただ、同QA上に述べられる不可抗力の要件からすれば、会社が通常の経営者として最大の注意を尽くしても、なお新型コロナウイルス感染症に従業員が感染し、その在宅勤務などによって就労をさせることが困難であるという場合には、不可抗力に該当し得ると考えられます。

そのため、もちろん個別の事案にはよりますが、使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当せず、休業手当の支払いをする必要はないでしょう。

発熱や咳などの症状がある者

これは新型コロナウイルス感染症かどうか、未だわからず、また濃厚接触を行ったものでもないケースを想定ください。

労働者が、自主的に休業している場合には、通常の病欠と同様に取り扱うことになります(厚生労働省QA参照)。

他方で、会社が一律で休業を命じる場合には、どうでしょうか。

個別の事案ごとに異なりますが、あまりに画一的措置の場合には、「使用者の責めに帰すべき事由」に該当し、休業手当の支払いが必要になる可能性があります。

例えば、微熱や、軽い咳をする程度で、通常であれば労務に従事することが可能な従業員に対して、一律で休業を命じるという場合には、休業手当の支払いが必要になる可能性が高いです。

この場合は、まず在宅勤務が可能かどうか等を検討することが必要になります。

他の労働者に対する安全配慮義務を満たすために、厳しい基準を設定すること自体はよろしいと考えますが、休業させる労働者の保護(賃金面での)も検討しなければなりません。

新型コロナウイルスに罹患した者との濃厚接触者

この場合、他の労働者に対する安全配慮義務の履行等として出勤停止を命じることはよろしいですが、その場合に休業させる(労務に従事させない)かどうかは、個別判断になります。

一般に濃厚接触者という場合には、未だ無症候である者として使われているかと思います。

そのため、労働させることは可能であるケースもあるかと思います。

その労働者に対して、在宅勤務が可能かどうかを検討せずに業務に従事させない場合には休業手当の支払いが必要となる可能性が高いです。

繰り返しとなりますが、在宅勤務の導入について検討しておくことが重要となります。

新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や要請・指示による休業

緊急事態宣言は全国に発令されました。

また、都道府県知事などから、居酒屋などに対しては休業要請もなされています。

緊急事態宣言の発令や、都道府県知事からの休業要請に従って事業場の閉鎖や休業する場合、休業手当の支払いは必要となるのでしょうか。

厚生労働省のQA(令和2年4月24日版)によれば、不可抗力に該当し、休業手当の支払い義務がない場合とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であることの2つの要件を満たす必要があるとしています。

緊急事態宣言や休業要請が、①を満たすことは、厚生労働省のQA上、認められています。

他方で、②を満たすかどうかは、もう一段階検討を要するとしています。

②を満たすためには、使用者として休業を回避するための具体的努力を最大限尽くしていると言える必要があるとしています。

この具体的な努力を尽くしたと言えるか否かについて、以下の様に述べています。

「例えば、

  • 自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分に検討しているか
  • 労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないか

といった事情から判断されます。

したがって、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や、要請や指示を受けて事業を休止し、労働者を休業させる場合であっても、一律に労働基準法に基づく休業手当の支払義務がなくなるものではありません。」

この見解によるのであれば、やはり休業手当の支払い義務の有無を判断するにあたっては、単に休業(事業場を閉鎖)しなければならないというだけではなく、事業場外で労働者に労働をさせることが可能かどうかを検討しなければなりません。

そのため、在宅勤務(リモートワーク)が可能であるかどうかを検討せずに、休業手当を支払わずに休業は出来ません。

事業場を閉鎖、休業する場合であっても、在宅勤務が可能かどうかを検討することを強くお勧めいたします。

新型コロナウイルス感染症に関する休業に伴う賃金、休業手当の支払いでお悩みの方は弁護士のご相談ください。

当然ながら、個別の事案ごとに結論は異なりますが、以上に述べたように、新型コロナウイルス感染症に関する休業をした場合、労働者に賃金を支払うべきか、また休業手当を支払うかどうかは、法的に難しい問題です。

前記した厚生労働省のQAでも、「新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合、欠勤中の賃金の取り扱いについては、労使で十分に話し合っていただき、労使が協力して、労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えていただくようお願いします。」とされているように、自社で働く労働者が不安に思うような休業のさせ方は、会社が、今後も事業活動を継続させていく中で様々な不都合をもたらすでしょう。

ただ、事業活動を停止または停滞させてしまう以上、会社の存続という面からは、気前よく賃金を支払っていくこともまた困難といわざるを得ません。

最終的には、労使の話し合いや、国等からの助成金(雇調金等)を活用することで解決を図っていくべきでしょう。

ただ、その前提となる賃金、休業手当の支払い義務の有無は、専門家の意見を聞いたうえで判断されるべきです。当法人では、労働事件の経験が豊富な弁護士による法律相談や企業内での調整に関する顧問先対応の一環としてお引き受けさせていただいております。

埼玉県内で、新型コロナウイルス感染症に関する休業に伴う賃金、休業手当の支払いでお悩みの方は弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

令和2年2月19日(水)、同月26日(水)に、当事務所にて、使用者側弁護士による社会保険労務士様向けシリーズ勉強会「残業代対応―残業代を請求された際の初動対応の実務―」を開催しました。

第1回同様、多くの社会保険労務士の先生方に参加いただくことができ、当初予定から別日も設けて開催させていただきました。

残業代について、実際に請求された際に、弁護士が注意するポイントや流れ、紛争で頻繁に問題となる労働時間や固定残業代などについて、事例や裁判例を交えながら、解説させていただきました。

社会保険労務士の先生方からも、具体的な事例に関する疑問などを多く頂き、盛況のうちに終了することができました。

ただ、同年3月に予定されていた勉強会は、コロナウイルス感染拡大防止のために、延期とさせていただきました。

ご迷惑をおかけし、大変申し訳ありませんが、開催日が確定次第、参加を予定されておられた先生方には改めてご連絡差し上げます。

弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所では、社会保険労務士の先生方に有意義な、弁護士の視点からの労務問題に関する勉強会を今後も開催できるよう、努めて参ります。

ご参加頂きました先生方には、改めて感謝申し上げます。