人事権に基づく配置転換を拒否された場合の対処法

コラム

日本の企業では、従業員(特に正社員)に対して定期的な配置転換(配転)をおこなっているところが多いです。
しかしながら、この配置転換について、従業員から拒否された場合、どのように対処していけばよいでしょうか。今回は、配置転換を拒否された場合に企業がとるべき対処法についてご説明いたします。

従業員は原則として人事異動(配置転換)を拒否できない

従業員は、会社から配置転換を命令された場合には、例外的な場合を除いて拒否することはできません。
これは、ほとんどの会社では、労働協約や就業規則等において、「業務上の都合により配転を命じることができる」といった規定により、会社側が人事権を有しているからです。

配置転換の根拠となる「人事権」とは?

人事権とは、一般に、人事に関する広範な決定権限をいいます。
日本企業においては、正社員を長期雇用慣行の下に置き雇用の継続性が保証する代わりに、この人事権を柔軟に運用することで企業組織の柔軟性や効率性を確保してきたという歴史的な経緯があります。

人事権に基づく配置転換を拒否された場合の対処法

前記したとおり、会社には人事に関する広範な決定権限がありますから、従業員は、例外的な場合を除いて、これに従う義務があります。
しかしながら、実際には配置転換を拒否する従業員は一定数いますし、意向を無視しすぎた場合には、退職につながることもありますので、以下の点に留意して対処していく必要があります。

従業員の個別状況を確認し、十分な説明を行う

その従業員に介護を要する同居の親族がいる場合などは、従業員としても、居住地の変更を伴う配置転換に唯々諾々と従うということは期待できません。場合によっては、例外的なケースとして配置転換が権利濫用として無効となる可能性もあります。
会社としても、従業員の個別の状況を確認したうえで、従業員の配置転換を検討すべきですし、その配置転換の必要性については、従業員に対して十分な説明を行うべきです。

給与や手当などの待遇面を見直す

また、配置転換によって業務内容が変わる場合に関しては、単に配置転換を命令するだけでなく、給与や手当などの待遇面の見直しも併せて行うことで、従業員の納得感を得られやすくなりますし、むしろ配置転換をポジティブに受けとめて仕事に励むことも考えられます。
その意味で、配置転換によって待遇面の見直しが必要かどうかも、十分に検討しておく必要があります。

懲戒処分を検討する

以上のような従業員の個別事情の考慮や配置転換の必要性についての説明、待遇面の見直しを行ったとしても、その従業員が配置転換を拒否した場合には、最終手段ではありますが、配置転換を拒否したことを理由に懲戒処分を検討することになります。

配置転換の拒否を理由に懲戒解雇できるか?

もっとも、配置転換の拒否のみを理由に懲戒解雇を行うことは慎重であるべきです。
懲戒解雇は、刑事事件でいえば極刑に当たる処分ですから、その有効性については非常に慎重に判断されます。配置転換を拒否されたとしても、従業員に対して、十分な説明・協議をしたうえで、手続きを進めておかなければ、配置転換自体は適法でも、懲戒解雇を無効とされる可能性があります。
会社としては、配置転換を拒否されたとしても、できる限り、普通解雇や退職合意を得る方向性を取った方が、事後的な紛争リスクは抑えることができます。

配置転換の拒否が認められるケースとは?人事異動の制限について

前記したとおり、通常、会社には労働契約上、広範な人事権がありますから、従業員が配置転換を拒否することは原則できません。
しかしながら、①労働契約上、配置転換の根拠がない場合や、②配置転換が権利濫用と判断される場合には、従業員が配置転換を拒否することも認められます。

職種や勤務エリアが限定されている場合

医師や看護師など特殊な資格や技能を有する従業員については、一般に労働契約上、職種を限定する合意があると判断されることが多いですし、労働契約に明記されていることもあります。
他にも、現地採用の補助職員等、勤務地が限定された労働契約を結んでいる従業員もいます。
この場合、限定された職種、勤務地と異なる職種、勤務地に配置転換させることは、労働契約上配置転換の根拠がなく、配置転換を拒否することが認められます。

業務上の必要性がない場合

また、業務上必要が認められない配置転換をおこなうことも、権利濫用に該当して、配置転換が無効と判断されます。
但し、この必要性は、余人をもって代えがたいという高度の必要性までは求められていません。
労働者の適正配置や業務運営の円滑化といった事情で足りますので、あまり問題となる事はありません。

従業員が被る不利益が大きすぎる場合

例えば、病気の家族を介護・看護できなくなる配置転換については、従業員が被る不利益が多すぎるとして、権利濫用に当たり無効と判断される場合があります。

配置転換の動機・目的が不当な場合

嫌がらせや退職へ追い込むために、配置転換を行う場合がありますが、これは動機・目的が不当と判断され、権利濫用として配置転換が無効と判断されます。

賃金の減額を伴う配置転換の場合

配置転換に伴って、賃金の減額をしようということがありますが、配置転換はともかく、賃金の減額は、従業員の同意がない中で、安易に行えるものではありませんから、賃金の減額自体が無効と判断される可能性が高いです。そのため、賃金の減額を伴う配置転換を命じられた場合には、賃金減額が無効であるとして、配置転換も拒否されてしまうでしょう。

人事異動(配置転換)を適切に行うためのポイント

会社と従業員の労働契約(就業規則なども含む)上に、配置転換を命じる根拠があることが大前提ですが、そもそも不意打ち的な配置転換は、従業員の個別事情が把握できず、従業員への不利益が過大に大きくなるリスクがありますし、それで労使紛争となった場合には、余計なコストもかかりかねません。
配置転換を適切に行うポイントは、会社が、その従業員を対象として配置転換を行うべきかどうかについて、従業員の個別事情も確認したうえで、十分に協議して進めていくことが何より大事であると考えます。

配置転換の有効性が問われた裁判例

会社の配置転換命令について、東亜ペイント事件判決が有名です。

事件の概要

従業員は、会社に入社する際、特に勤務地を限定する合意などはしていませんでした。従業員は、神戸営業所に勤務していましたが、会社から広島営業所に転勤して欲しいと内示を出され、これを家庭の事情で転勤できないとして拒否しました。
その場合、会社としては別の人間を広島に転勤させることになり、その穴埋めとして、従業員を名古屋に転勤させなければならないとして、従業員を説得しましたが、最終的に従業員が拒否したため、従業員を名古屋に転勤するように配置転換命令を下しました。
従業員は、配置転換命令が発令された当時、母親(七一歳)、妻(二八歳)及び長女(二歳)と共に堺市内の母親名義の家屋に居住し、母親を扶養していましたが、特に介護や看病が必要な家族がいるということはありませんでした。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

最高裁(最判昭和61年7月14日)は、会社は、労働協約及び就業規則に根拠があれば配置転換を命令できる権限があるとし、本件事情では、権利濫用に当たる事情も認められないとして、配置転換は適法であると判断しました。

ポイント・解説

この判例は、配置転換の有効性に関するリーディングケースであり、①労働契約上、配置転換の根拠がない場合や、②配置転換が権利濫用と判断される場合に限って、配置転換は無効となることを明示したもので、実務上非常に重要な事案です。

配置転換命令を拒否されてお困りなら、労働問題に特化した弁護士にご相談下さい

以上に述べてきたように、配置転換命令は、原則として従業員は拒否することはできません。
しかしながら、従業員からは拒否されることも多々あり、労使紛争につながりやすい問題でもあります。
個別事情によっては、配置転換命令が無効と判断されてしまうケースもありますから、できる限り、弁護士などの専門家のアドバイスを受けながら進めるべきです。
埼玉県内で、従業員から配置転換命令を拒否されてお困りの企業の方は、ぜひ一度弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

働き方改革がなされた後も、所定労働時間を超える労働、いわゆる残業を行っている企業は数多くあります。
日常的に、残業が行われている一方で、会社からの残業命令が違法となるケースがあります。

今回は、残業命令が違法となるケースと対処法について解説していきます。

会社が残業を命じるために必要な要件とは?

労働基準法は、1週及び1日の最長労働時間について、1週間について40時間を超えて、また1週間の各日については、1日について8時間を超えて労働させてはならないとしています(労基32条1項、2項)。では、会社がこれを超えた労働を命じることはできないのでしょうか。

36協定を締結している

いわゆる36(サブロク)協定が締結されている場合には、その範囲内であれば、法定労働時間を超えて労働させ、法定休日に労働させても、労働基準法違反とはなりません(労基法36条)。

労働契約や就業規則に残業の規定がある

企業は、従業員に時間外・休日労働を命じるためには、36協定を締結するだけでなく、労働契約や就業規則によって時間外・休日労働義務があると規定しておく必要があります。とはいっても、この契約や就業規則の内容は、ある程度包括的なもの足りると解されています(業務上必要がある場合時間外または休日労働をさせることができる等)。

残業命令が違法となるケースとは?

上記要件を満たしたうえでも、残業命令が違法となり得るケースがあります。

法律が定める上限時間を超えている

働き方改革関連法の施行により、時間外労働には上限時間が設定されました(労基法36条参照)。
この上限時間を超える残業は違法となります。

残業代を支払わない(サービス残業)

残業させているにもかかわらず、賃金を支払わない、いわゆるサービス残業は許されません。
残業=労働時間になりますので、割増賃金支払い義務が生じ、従業員に残業代を支払う必要があります(労基法37条)。

残業命令がパワハラに該当する

残業命令が、職場における優越的な関係性に基づき、業務上の必要性や相当性を超えてなされた場合、パワハラに該当し得ますので、パワーハラスメントとして違法となり得ます。

労働者の心身の健康を害するおそれがある

いわゆる過労死の典型に、長時間労働があげられています。一月100時間以上の時間外労働をさせた場合には、会社に責任があるとされやすく、その意味で違法と判断される恐れがあります。

妊娠中または出産から1年未満の労働者への残業命令

妊婦や産後直ぐの労働者については、時間外労働をさせてはならないとしています(労基法66条)。
したがって、妊産婦に対して残業命令を出すことは違法となります。

育児・介護中の労働者への残業命令

育児介護休業法では、育児・介護中の労働者への残業命令が制限されています。
3歳までの子を育てる場合は、例外(雇われて1年未満等)を除き、残業が免除されます(育児介護休業法16条の8)。また、要介護状態にある対象家族を介護する労働者についても同様です(同法16条の9)。

違法な残業命令をした会社が負う不利益・罰則

会社が違法な残業命令をした場合には、労基法違反などによって刑事罰を負う可能性もあります(労基法119条等)。
また、サービス残業をさせていた場合には、事後的に残業代の支払いが一時に命じられる可能性もあり、思わぬキャッシュアウトとなり、会社の経営に大きな不利益を与える可能性もあります。

残業命令が違法とならないための対処法

残業命令の適法性を確認する

当たり前のことですが、残業命令を出す際に、適法であるかどうかを考えることです。
残業時間が長すぎないか、必要性はあるのか、育児や介護中じゃないか等、そういった事情を改めて検討することで、違法な残業命令を下すことを未然に防げます。

正当な理由がある場合は残業を強制しない

残業を強制することを止めれば残業命令を出す必要もなくなりますので、違法な残業命令が出されるリスクは自ずと低くなります。

労働時間を適正に把握・管理する

上限規制が設定された現時点においては、労働者がどの程度の時間労働しているのかを、会社はより注意をもって把握・管理する必要があります。
管理の誤りで、上限規制を超えた残業となった場合には違法な残業命令となってしまいますので、改めて,自社における労働時間の管理手法を見直しておく必要があります。

残業命令を拒否した従業員の懲戒処分や解雇は違法か?

適法な残業命令は、業務命令の一種ですからこれを拒否した従業員に対して懲戒処分や解雇を行うことは法的には可能です。
しかしながら、事案によって懲戒処分や解雇の有効無効は変わってきますから、懲戒処分や解雇を行う前に弁護士に相談することを強くお勧めします。

残業命令の違法性が問われた裁判例

残業命令拒否が懲戒の対象となるかどうか争われたものに、日立製作所武蔵工場事件判決(最判平成3年11月28日)があります。

事件の概要

工場で働く労働者が、労働者自身が担当する業務で労働者の手抜き作業のために問題が生じたため、上司から残業を命じられたにもかかわらず、「残業は労働者の権利」である等と述べて帰社し、始末書の提出も拒否したり、その後も数回にわたり業務命令に不服従であったことから懲戒解雇された事案です。
懲戒解雇の適否を争う前提として、残業命令の適法性が争われました。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

最高裁は、以下の様に述べて、会社が労働者に対して残業命令を下しうると判示しました。
「労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間を延長して労働させることにつき、使用者が、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合等と書面による協定(いわゆる三六協定)を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出た場合において、使用者が当該事業場に適用される就業規則に当該三六協定の範囲内で一定の業務上の事由があれば労働契約に定める労働時間を延長して労働者を労働させることができる旨定めているときは、当該就業規則の規定の内容が合理的なものである限り、それが具体的労働契約の内容をなすから、右就業規則の規定の適用を受ける労働者は、その定めるところに従い、労働契約に定める労働時間を超えて労働する義務を負うものと解するを相当とする。」

ポイント・解説

同判例は、労働者がどのような場合に時間外労働(残業)の義務を負うのかについて、判断を示した最初の最高裁判例です。同裁判例によって、労働契約又は就業規則に合理的な内容の規定があれば、残業命令を出しうるということが明確にされました。

残業命令や残業代に関するお悩みは、弁護士までご相談ください。

以上に述べたように、残業を命じたとしても違法となり得るケースがあります。また、残業代の支払い等についても紛争となりやすいことは周知の事実かと考えます。
残業命令の適否や、残業代に関するお悩みをお持ちの企業や経営者の方々は、専門家である弁護士にご相談されることをお勧めします。
埼玉県内で残業についてお悩みの企業や経営者の方々は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

経営していくということは、必ず雇用=人を雇うことでもあります。もちろん、縁故採用といったものもありますが、一般的な企業では、求人募集を行うことで、労働者を募集することが一般的かと思います。では、求人募集に関する法律、法的規制にはどのようなものがあるのでしょうか。
今回は、求人募集に関する法律についてご説明させていただきます。

企業の求人募集は法律で規制されるのか?

企業の求人募集は法律で規制されているのでしょうか。
そもそも、企業には、どのような従業員を採用するかどうかについて、採用の自由が認められています。そうであれば、どのような求人募集を出すことも、企業の自由といえそうです。
しかしながら、だからといって、就職を希望するものの権利を侵害するようなことが認められるわけではありませんから、広く公正な募集を行う必要があり、以下の様な法律で、募集に関して規制があります。

労働条件として明示が必要な事項(職業安定法)

職業安定法上、求人募集の際に、労働条件について、大よそ以下の事項を明示しなければならないとしています。

  • 業務内容
  • 契約期間
  • 職業場所
  • 試用期間
  • 就業場所
  • 労働時間
  • 休憩時間
  • 休日
  • 時間外労働の有無
  • 賃金
  • 加入保険
  • 募集者の氏名又は名称
  • 派遣労働者として雇用する場合、その雇用形態

労働条件はどのタイミングで明示すべき?

労基法上の労働条件の明示であれば労務の提供までに明示すべきですが、求人募集については、募集時に明示しなければならないとされています。
そのため、求人募集について明示すべきとされる労働条件は、求人募集時に明示しておく必要があります。

求人募集に載せてはいけない事項・禁止されている表現

求人募集には、以下の様に載せてはいけない事項や禁止されている表現があります。

性差別となる表現(男女雇用機会均等法)

男女雇用機会均等法第5条には、性別を理由とする差別の禁止が定められています。
第五条 事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。
したがって、性差別となる表現を用いることは禁止されています。

性差別の例外となる「ポジティブアクション」とは?

例えば、「女性優遇」「女性のみ」といった募集を行う場合、形式的に言えば、男女で異なる取扱いをしているため、男女雇用機会均等法に反するとも思えます。
しかしながら、同法第8条には、女性労働者に係る措置に関する特例との条文が定められています。
同上では、過去の女性労働者に対する取扱いなどが原因で生じている、男女労働者の間の事実上の格差を解消する目的で行う 「女性のみを対象にした取組」や「女性を有利に取り扱う取組」については法に違反しない旨が明記されています。
そのため、女性優遇といった募集であれば、性差別の例外として、用いることが可能です。

年齢を制限する表現(労働施策総合推進法(雇用対策法))

雇用対策法の改正により、平成19年10月から、事業主は労働者の募集及び採用について、年齢に関わりなく均等な機会を与えなければならないこととされ、年齢制限の禁止が義務化されました。
そのため、年齢制限の表現は禁止されています。

例外的に年齢制限が認められる事由とは?

雇用対策法では、原則として年齢制限を禁止していますが、例外事由がいくつか定めれれています。
例えば、就職氷河期世代(35歳以上55歳未満)の不安定就労者・無業者に限定した募集を行うことが認められています。また、演劇の子役のように、表現の真実性が求められる場合にも、「演劇の子役のため、〇歳以下の人を募集」といった表現が認められています。
その他の例外事由については、労働施策総合推進法施行規則第1条の3第1項をご確認ください。

若年者を募集する上での注意点(若者雇用促進法)

新規学卒者等を募集する場合には、若者雇用促進法によって、注意をしなければならない点があります。
大学等卒業・終了予定者の就職・採用活動日程について配慮が求められています。
例えば、2023年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程では、以下の様に定められています。

広報活動開始 :卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
採用選考活動開始 :卒業・修了年度の6月1日以降
正式な内定日 :卒業・修了年度の10月1日以降

また、職場情報についても、新卒者の募集を行う企業に対して、企業規模を問わず、幅広い情報提供を努力義務として定めています。
応募者等から求めがあった場合は、①募集・採用に関する状況、②職業能力の開発・向上に関する状況、③企業における職場定着に関する状況の3類型ごとに1つ以上の情報提供を義務としています。

特定の人を差別または優遇する表現(労働基準法)

当然のことですが、労働者の国籍、信条又は社会的身分によって特定の人を差別又は優遇する表現での求人募集も禁止されています(労基法3条)。

障害者差別となる表現(障害者雇用促進法)

求人募集の際に、障害者に対する差別はされており、障碍者差別となるような表現を用いることはできません。例えば、車椅子の利用や人工呼吸器の使用などを理由として採用を拒否するような募集はできません。

虚偽または法令に違反する労働条件(職安法など)

求人募集に際し、虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を提示した場合には、罰則の対象となります(職安法65条8号)。

著作権の侵害となる求人公告の掲載(著作権法)

求人募集も、創作性が認められるような文章である限り、著作物に該当し得ることから著作権が発生します。そうなりますと、他社の著作権を侵害するような態様(他社の紹介文を丸々コピーする等)で求人広告を掲載する場合には、著作権侵害となりえます。

求人募集で明示した労働条件に変更がある場合は?

職安法の改正により、求人募集で明示した条件に変更があった場合には、可能な限り速やかに、変更内容を明示しなければならなくなりました。
また、労働者から変更した理由について質問された場合には、適切に説明を行うことも必要になります。

違法な求人募集を行った企業への罰則

労基法3条及び4条に違反した場合、会社の社長などの代表者に、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金刑が科せられます(労基法119条)。
また、求人募集に際し、虚偽の公告なし、又は虚偽の条件を提示した場合にも、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科せられます。

求人募集や労働条件に関する裁判例

求人募集や労働条件の明示に関する裁判例としては、八州測量事件(東京高判昭和58年12月19日労判421号33頁)が有名です。

事件の概要

本件は、新卒予定の労働者が、会社の出した新入社員募集に応じて、採用内定を経て、入社したところ、会社が求人時に提示した求人票に記載していた賃金の基本給見込額と入社時に労働者に現実に支給された額との間に、5000円前後の差があったことから、労働者が、その不足額の支払いを求めた事案です。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

裁判所は、求人票や募集広告は、労働者からの契約の申し込みの誘引であって、契約時に就業規則や個別合意によって決定された内容が契約内容となるのが原則として、労働者からの請求を棄却しました。

ポイント・解説

求人票に記載された金額は、あくまで見込みに過ぎないので、実際の契約時に確定されるのであるから、求人票と異なっていても、直ちに問題がないとした点がポイントです。
ただし、労働者は、普通、求人票や募集広告に記載された条件で募集に応じ、契約の申し込みをするので、契約合意時の状況によっては、求人票や求人広告に記載された条件で契約が成立したと判断されることもあり得る点にも注意が必要です(東京地判平成29年5月19日等)。

適正な求人募集を行えるよう、法律の専門家である弁護士がサポートいたします。

以上に述べたように、求人募集には、ある程度の規制があります。
労働者に対して、適正な求人募集を行うには、法律の専門家である弁護士のサポートが有用です。
埼玉県内の企業で、適正な求人募集にお悩みの企業の方は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

会社は、従業員に対して、指揮命令権を有しています。したがって、従業員は、会社から業務命令を下された場合には、従う義務があります。
しかしながら、会社が、どのような業務命令を出してもいいというわけではありません。業務命令の内容が濫用的なものであれば、業務命令が無効となり、その命令に従う必要はありません。
今回は、業務命令が無効となるケースについて解説します。

業務命令が無効になるケースとは?

業務命令が違反になるケースには、以下のものが考えられます。

法令や社内規則に違反するケース

会社は従業員に対して業務命令権を有していますが、それは労働契約から生じる権利義務関係です。したがって、労働契約の合意内容の枠内に収まらない、例えば就業規則に明確に反するような命令については、無効となり得ます。
他にも、強行法規に違反するような業務命令も無効となります。

権利の濫用に該当するケース

会社は、単純な労務の指揮それ自体にとどまらず、業務の遂行全般について労働者に対し必要な指示・命令を発することができますが、それも無制約なわけではありません。
例えば、不合理ないし不当な目的を有する命令は、裁量の範囲を逸脱又は濫用して、違法無効となり得ると考えられます。

そもそも「業務命令」とは?

労働者は、会社に対して、労働契約の合意内容の枠内で、労働の内容・遂行方法・場所などに関する使用者の指揮に従った労働を誠実に遂行する義務を負っています。
この使用者=会社の指揮が、いわゆる業務命令です。

業務命令権の範囲はどこまで認められる?

労働契約から生じるものですから、労働契約の合意の枠内で認められるものですが、単なる労務士危険に限られず、業務の遂行全般について労働者に対して必要な指示命令を出すことが認められます。
就業規則に規定がある合理的な事項であり、かつ、相当な命令である場合には、労働者は、その命令に従う義務を有すると考えられます。

業務命令が権利の濫用にあたるかどうかの判断基準

前記したとおり、業務命令が権利の濫用、裁量の範囲を逸脱するようなものであれば、業務命令は無効となります。その判断は、例えば、配置転換などの場合においては、以下の要素を総合考慮していると考えられています。

①業務上の必要性

業務上の必要性については、比較的緩やかに考えられています。
配置転換についても、「当該転勤先への異動が余人をもっては容易に代えがたいといった行動の必要性に限定することは相当でなく」(最判昭和61年7月14日)とされており、会社の合理的運営に寄与すると認められる限りは、業務上の必要は認められるとされています。

②不当な動機・目的

不当な動機・目的でなされた業務命令についても権利の濫用に該当するとして違法・無効と判断されることがあります。
例えば、会社の今までの人事異動から極めて異例なものが、会社の方針に強く反抗してきた元労働組合幹部に対してなされた場合等に不当な動機・目的をもってなされたものと認定された事案があります(東京地決平成4年6月23日)。

③労働者への著しい不利益

業務上の必要性が認められ、不当な動機・目的がない場合であっても、配転命令による労働者不利益が著しければ、権利の濫用として配転命令は無効となるとされています。
ここで言う不利益とは、多くの場合私生活上の不利益で、典型的には、介護が必要な同居の肉親を抱えている労働者の遠隔地への転勤が想定されます。

業務命令権の濫用について争われた裁判例

業務命令権の濫用について争われた裁判例として、東亜ペイント事件が有名です。

事件の概要

当時大阪に高齢の母(但し、元気であったと認定されています。)と妻及び長女とともに居住していた労働者が、当初広島への転勤を命じられ、それを拒否した後、名古屋への転勤を命じられたという事案です。
なお、労働者が会社に就職する際、特に就業場所の限定は無く、当然に転勤も予定されていました。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

裁判所は、①労働契約成立時、就業場所限定が無かったこと、②会社の労働協約及び就業規則上、労働者に転勤命令を下すことができることを指摘するとともに、③当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもつてなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではないというべきであると述べて、今回の労働者について、特段の事情は認められず、家族構成などに照らすと、名古屋への転勤は、通常甘受すべき程度の不利益しか労働者転勤に与えないとして、転勤命令は権利の濫用といえず、適法であると判断しました。

ポイント・解説

この裁判例のポイントは、業務上の必要性があったとしても、不当な動機・目的がある場合や、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合には、権利濫用によって配転命令が違法となることを判示したことと、一般的な夫婦・家族別居という可能性だけでは、通常甘受すべきであると判断したことにあります。

業務命令違反があった場合の懲戒処分について

業務命令違反に対して、懲戒処分することについては、手続き等を遵守している限り、一般に認められますが、その業務命令が有効であるかどうかにも、注意が必要です。

懲戒処分をするには業務命令が有効であることが前提

当然のことですが、無効な業務命令に従う義務は労働者にはありませんから、その業務命令が有効であることが、懲戒処分が有効であることの前提となります。
なお、業務命令が有効であったとしても、懲戒処分として相当であるかは別途問題となりますので、その点についてもご注意いただく必要はあります。

業務命令の違法性が疑われた場合の企業リスク

業務命令の違法性が疑われた場合、例えば、違法な休日出勤であるとか、配転命令については、それが違法であった場合、企業としては休日手当の支払いを求められるとか、配転命令については、その後に解雇無効等で争われた場合には、バックペイの支払いが必要になる等、予想外の出費を招くリスクがあります。
また、会社内の秩序としても、業務命令の有効性について労働者が疑義を持つような場合には、指揮命令系統に不具合が生じ、円滑な企業経営ができなくなるリスクも生じます。

業務命令についてお悩みなら、労務問題に詳しい弁護士にご相談下さい。

以上に述べたように、会社は、労働者に対して業務命令を出すことができます。しかしながら、それが有効かどうかについては、法的な判断を伴うこともあり、仮に無効とされた場合には、企業運営に予期せぬ支障を生じさせる可能性も高いです。
会社としても、労働者に対して、業務命令して良いかどうかに悩むことも多いと思われます。
このような時に、自社内で検討するだけでなく、顧問弁護士や、労働法に詳しい弁護士に相談することで、事後的に裁判所などで業務命令が予期せず無効と判断されるリスクを減らすこともできます。
埼玉県内で業務命令の有効・無効にお悩みの企業の方は、ぜひ一度弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

近年、新型コロナウイルスの影響で、テレワーク、リモートワークが推し進められてきました。
テレワークには、通勤時間を減らすメリット等もありますが、他方でテレワーク中にハラスメントにあったという方も増えてきています。
今回は、近年増加しているリモートハラスメントについてご説明いたします。

近年増加している「リモートハラスメント」とは?

リモートハラスメントとは、リモートワーク中に行われるセクハラ、パワハラなどのハラスメントを意味します。
新型コロナウイルスの影響で、リモートワークが増加したことから、それに伴って、リモートハラスメントも増加しています。

テレワーク中に起こりやすいパワハラの事例

リモートワーク中は、チャットやメールによって同僚や上司部下とコミュニケーションをとることになるため、感情のままにチャットやメールで「死ね!」等と罵倒してしまうというケースがあります。
また、そういったツールに慣れていない中高年に対して、使い方を教えないとか、無視するというケースもリモートハラスメントの一種です。

リモートワークは、自宅で行う方がほとんどですが、ウェブミーティングで、自宅の部屋の様子や私服などが映ったときに、それをきっかけにプライベートに踏み込んだ話題を切り出されるなどのハラスメントもあります。

なぜテレワーク中にパワハラが起きてしまうのか?

テレワークの働き方に慣れていない

コロナ前の対面でのコミュニケーションと異なり、リモートでのコミュニケーションは、チャットヤメールなどの言語をメインとすることになります。このような不慣れなコミュニケーション方法が原因となって、摩擦を生んでしまうことがテレワーク中のパワハラの原因の一つです。

テレワーク体制や就業規則が整備されていない

テレワーク体制を整備できていないうちに、感染防止のためにやむなくテレワークに踏み切った会社もあり、テレワークでどのように働けばよいのか、十分に労働者に指示できていない会社や、就業規則も整備できていない会社があります。
このような環境では、労働者の不安や不満が生じやすくなりますので、苛立ちからハラスメントが発生しやすくなってしまいます。

仕事とプライベートの線引きが難しい

テレワークは、自宅というプライベート空間で仕事をすることになります。
個人的な空間で仕事を行うため、部屋の内装や私服が見えることで、仕事と関係ないプライベートな話をしてしまう方が多くいます。

テレワークでパワハラが生じることの企業リスク

以下の記事で詳しく解説していますので参考になさってください。

ハラスメントが他の従業員に及ぼす悪影響

「パワハラを受けた」と従業員から相談あったらどう対応すべき?

以下の記事で詳しく解説していますので参考になさってください。

職場におけるパワーハラスメント対応

テレワーク中のパワハラを防ぐために企業がとるべき対策

パワハラ防止の社内研修を実施する

パワハラについては、無自覚に行っている方も多いです。
そこで、社内研修を行って、実施することによって、テレワーク中にしてしまいがちなパワハラについて説明し、自覚を促し、パワハラを防止することが考えられます。

テレワーク中の社内ルールを明確化する

テレワークのやり方が確立していないことで、労働者の不安や不満がたまって、パワハラが生じやすい環境に陥ってしまうことがあります。
そのため、社内でテレワーク中のルールを定めることで、労働者の不安や不満を解消し、パワハラが生じやすい環境を改善することが考えられます。

ハラスメント相談窓口を設置、周知する

社内研修や社内ルールの明確化だけでなく、ハラスメント相談窓口を設置し、周知しておくことで、パワハラの早期発見、改善につながります。
どんなに手当をしても、問題が起きてしまうことはありますので、問題が起きた後の手当を用意しておくことも、パワハラ防止に効果的です。

ハラスメントを防止するために取るべき対応策

テレワークにおいてもパワハラ対策は必須です。ハラスメントに関するご相談は弁護士にお任せ下さい。

テレワークという労働環境でも、パワハラは生じます。むしろ、慣れないコミュニケーションであることや、プライベートが見えやすくなってしまったことで、パワハラが生じやすい土壌を作ってしまうことすらあります。
パワハラを放置しておくことで、社員の離職や企業の風評被害等の損害が生じるリスクがありますので、企業としては、テレワークにおいてもパワハラ対策は必須です。
弁護士などの専門家に依頼することで、共にパワハラ防止の仕組みを作るとか、社内研修の充実を図る等といったことも可能です。
埼玉県内でテレワークにおけるハラスメントにお悩みの企業の方は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

最低賃金という単語を聞いたことがある方は多いと思います。
ただ、最低賃金制度の詳細については、ぼんやりとしか理解していない方が多いです。今回は、最低賃金制度の概要と、最低賃金制度に違反した場合の労基署の対応について、ご説明したいと思います。

最低賃金制度の概要

最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、会社が、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です(労基法28条、最低賃金法)。
仮に最低賃金よりも低い給与額で労働者を雇い入れたとしても、最低賃金法によって無効とされて、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされます(最低賃金法第4条2項)。
そのため、仮に会社が労働者に最低賃金未満の賃金しか支払っていない場合には、最低賃金との差額を支払う必要があります。

地域別最低賃金

地域別最低賃金とは、産業や職種にかかわりなく、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金として定められるものです。
各都道府県ごとに定められているので、全部で47件の最低賃金が定められています。

特定最低賃金

特定最低賃金とは、特定の産業について定められた最低賃金です。
関係労使の申出に基づいて最低賃金審議会の調査審議を経て、同審議会が地域別最低賃金よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認めた産業について定められています(ただし、18歳未満又は65歳以上の方、雇入れ後一定期間未満で技能習得中の方、その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する方などには適用されません。)。
令和2年4月1日時点で、全国で228件の最低賃金が定められています。
この228件のうち、1件だけ全国単位で定められており(全国非金属鉱業最低賃金)、その他は各都道府県内の特定の産業について定められています。

最低賃金の減額特例について

最低賃金制度は例外が定められています。
一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの場合に、最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭めるおそれなどがあるため、①精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者、②試の使用期間中の者、③基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める者、④軽易な業務に従事する者、⑤断続的労働に従事する者については、会社が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として個別に最低賃金の減額の特例が認められています。

最低賃金法に違反した場合のリスク・罰則とは?

最低賃金法に違反した場合には、前記したとおり、最低賃金額との差額の支払い義務があります。
また、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わなかった場合、50万円以下の罰金が定められています(最低賃金法40条)。特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わなかった場合には、30万円以下の罰金が定められています(労働基準法120条)。
それ以外にも、最低賃金を支払っていない会社として、会社の社会的信用を失うリスクもあります。

最低賃金制度に違反した場合の労基署対応

最低賃金制度に違反した場合には、労基署から以下の対応がなされます。

労働基準監督署による立ち入り調査

まず、労基署から立ち入り調査をされる可能性があります。

立ち入り調査(臨検監督)の種類

立ち入り調査には、定期監督と言われるものと、災害時監督、申告監督、再監督といったものがあります。
最低賃金違反については、定期監督か申告監督によることになりますが、予告なく行われる場合が多いです。

立ち入り調査でやってはいけない対応とは?

企業は誠実に立ち入り調査に対応しなければなりません。
間違っても、労基署からの調査を拒むことはしない方が良いです。それをきっかけに強制捜査に発展する可能性もあります。

弁護士の立ち会いを依頼すべき理由

顧問弁護士等に立ち合いを依頼することで、労基署に対し、企業の実情を踏まえた対応を行うことができます。
また、労基署に対して、顧問弁護士と共に改善に着手することを伝えることで、労基署に対して法令順守の姿勢をアピールすることもできます。

違反が認められた場合の是正勧告書の交付

仮に立ち入り調査で問題点等が発見された場合、労基署からは是正勧告書、指導票、使用停止等命令書が交付されます。
臨検監督を行い、当該事業場において法違反が発見された場合に、労働基準監督官が違反事項を説明し、期日を指定して是正を勧告します。この際に交付するのが是正勧告書です。

是正報告書の作成・提出

是正勧告書には、違反している法律の街灯条項、違反事項、是正期日が規定されていますので、企業は、是正勧告書に記載された事項の趣旨に従って是正期日までに、労働基準監督署所長に是正報告書を作成・提出することになります。

指導票を交付された場合の対応は?

指導票は、法違反には該当しないものの、改善した方が好ましい点がある場合等に交付されます。
ただ、指導票に対しても、指定された日までに是正報告書を作成・提出しなければなりません。
法違反が認定されていないので、従わなくても、そのこと自体で処罰されることはありませんが、コンプライアンス上は好ましくありません。

是正勧告に従わない場合は逮捕・送検のおそれ

是正勧告に従わない場合は、是正する意図のない悪質な事業者と判断されて、送検などの厳しい対応を受けかねません。
労基署とコミュニケーションを取りながら、是正措置を行っていくべきです。

最低賃金制度に違反しないために企業がとるべき対策

一般的に最低賃金額を下回る賃金を採用している企業は存在しません。
しかしながら、地域別最低賃金額は、毎年(10月に改訂されることが多いです。)確認しておかなければ、事後的に最低賃金を下回ってしまう恐れがあります。
企業は、毎年定められる地域別最低賃金額に十分に注意を払っておく必要があります。

最低賃金を下回っていないか確認する方法

最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です。
具体的には、実際に支払われる賃金から①臨時に支払われる賃金(結婚手当など)、②1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)、③ 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)、④所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)、⑤午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)、⑥精皆勤手当、通勤手当及び家族手当を除外したものが最低賃金の対象となります。

自社の給与が最低賃金を下回っていないかを確認する方法としては、最低賃金の対象となる上記賃金額と適用される最低賃金額を以下の方法で比較することになります。

① 時間給制の場合
時間給≧最低賃金額(時間額)

② 日給制の場合
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、
日給≧最低賃金額(日額)

③ 月給制の場合
月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

④ 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合
出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較します。

⑤ 上記①~④の組み合わせの場合
例えば、基本給が日給制で、各手当(職務手当など)が月給制などの場合は、それぞれ上記②、③の式により時間額に換算し、それを合計したものと最低賃金額(時間額)を比較します。

最低賃金にまつわる裁判例

最低賃金にまつわる裁判例として帝産キャブ奈良事件(奈良地判平成25・3・26労判1076号54頁)があります。

事件の概要

固定給+歩合給のタクシー乗務員として勤務していた乗務員が、最低賃金との差額を請求してきた事案です。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

裁判所は、不就労時間及び組合活動時間を所定労働時間から控除すべきとする企業側の主張を退け、1か月の所定労働時間の実数を算定し、また、特別勤務手当は雇用契約とは別個の労務に対する報酬に該当するから、同手当を最低賃金の制限対象としての歩合給に含めるべきではないなどとして、未払賃金請求を一部認容しました。

ポイント・解説

(月額固定給÷月間所定労働時間+月額歩合給÷月間総労働時間)で、当該月の時間当たり賃金額を算出して、最低賃金(時間当たり)と比較したところがポイントです。

労働基準監督署への対応でお困りなら弁護士にご相談ください。

労働基準監督署からの立ち入り調査は、対応を間違うと強制捜査のおそれもあり、企業にとって非常に重要な問題です。
可能な限り、顧問弁護士等の専門家の協力の下、立ち入り調査などに対応していくべきです。
埼玉県内で労働基準監督署への対応でお悩みの企業の方は、ぜひ一度弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

育児・介護休業法が令和3年6月に改正されました。改正法は順次施行されていきますが、令和4年4月1日から施行される部分もあります。今回は企業の方が令和4年4月施行分の育児・介護休業法について対応しておくべきポイントについてお話いたします。

令和4年4月より施行される「育児・介護休業法改正」で何が変わる?

令和4年4月1日から、企業では、①育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置が義務付けられたこと、②有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件が緩和されたことがポイントです。

育児・介護休業法とはどんな法律?

育児・介護休業法は、子供や介護を要する家族がいる労働者が、働きながら育児・介護を行えるようにするために、雇用継続や再就職の促進を目的として制定された法律です。
少子高齢化で労働人口が減少していく中、仕事と育児・介護が両立しやすい職場づくりをすることで、企業にとっても優秀な人材の確保・育成・定着に結び付けるようなメリットがあります。

育児・介護休業法が改正された目的は?

現実問題として約5割の女性が出産・育児によって退職しており、その理由が仕事と育児の両立の難しさで辞めたとの調査もあります。
令和3年改正では、こういった現状に対処し、育児と仕事の両立という目的を更に促進するため、「出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにするため、子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設、育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け、育児休業給付に関する所要の規定の整備等の措置を講ずる。」ことを目的とするとされています。

育児・介護休業法の改正内容とポイント(令和4年4月施行)

前記した様に、令和4年4月1日に施行される育児・介護休業法の改正内容は、①雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化と、②有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和です。

①雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化

育児休業を取得しやすい雇用環境の整備として、①育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施、②育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等、③自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供、④自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休養取得促進に関する方針の周知、④自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知のいずれかの措置を講じなければならないとされました。なお、複数の措置を講じることが望ましいとされています。

また、妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置として、①育児休業・産後パパ育休に関する制度、②育児休業。産後パパ育休の申し出先、③育児休業給付に関すること、④労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会社会保険料の取扱いについて、面談(オンライン面談でも可)、書面交付、FAX、電子メールなどのいずれかの手段によって行わなければならなくなりました。

②有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

現行法上、①引き続き雇用された期間が1年以上、②1歳6カ月までの間に契約が満了することが明らかでない場合に取得が可能でしたが、これが緩和され、①の要件は撤廃されることとなりました。
もっとも、無期雇用者と同様の取扱いになっただけですので、引き続き雇用された期間が1年未満の場合は、労使協定において対象から除外可能です。

法改正への対応を怠った場合のペナルティは?

育児・介護休業法が改正されたことで、事業主の義務が増えたわけですが、これに違反した場合、事業主は行政から報告を求められます。
また、行政から必要な措置を講ずるように助言、指導、勧告を受ける場合もあります。
仮に勧告に従わないとか、もしくは虚偽の報告を行った場合には罰則として、企業名の公表と20万円を上限とする過料のペナルティがあります。

育児・介護休業法改正に向けて企業がとるべき対応

企業は、施行後に上記①②の措置を取らなければなりませんので、就業規則の変更や実際に妊娠・出産を申し出た労働者への個別周知と意向確認に関するマニュアルの整備、研修の準備などをしておく必要があります。

妊娠・出産を申し出た労働者への個別周知と意向確認

個別の周知事項とは?

企業は、本人または配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、個別に、①育児休業・産後パパ育休に関する制度、②育児休業・産後パパ育休の申し出先、③育児休業給付に関すること、④労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会社会保険料の取扱いを周知させる必要があります。
ただ、このうち、産後パパ育休は施行日との関係で令和4年10月1日から対象となります。

個別周知・意向確認はどのような方法で行う?

個別周知・意向確認は、面談、書面交付、FAX、電子メールなどのいずれかの手段によって行う必要があります。なお、面談はオンラインでも可能です。また、FAXと電子メール等は労働者が希望した場合のみに行うことが出来ます。

個別周知・意向確認を行うタイミングは?

労働者が希望の日から円滑に育児休業を取得することが出来るように配慮して適切な時期に実施することが必要とされています。
具体的には、①妊娠・出産の申出が出産予定日の1カ月半以上前に行われた場合は出産予定日の1か月前までに、②それ以降に申出があった場合でも、出産予定日の1か月前までに申し出が行われた場合には申出から2週間以内、出産予定日の1か月前から2週間前の間に申出がお紺われたバイは1週間以内など、出来る限り早い時期に措置を行う必要があります。
仮に出産予定日の2週間前以降に申出があった場合や子の出生後に申出があった場合でも、出来る限り速やかに措置を行う必要があるとされています。

就業規則の変更・周知

有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和については、就業規則の見直しが必要になりますので、施行前に変更・周知しておく必要があります。

必要に応じて労使協定の締結

また、有期雇用労働者については無期雇用労働者と同様の扱いになることから、引き続き雇用された期間が1年未満の労働者については、労使協定の締結によって除外が可能ですので、企業の必要に応じて労使協定を締結しておく必要があります。

今後も改正育児・介護休業法が順次施行されます!

今後も、改正育児・介護休業法は淳司施行されていきます。
具体的には、以下のスケジュールで施行されます。

男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設 (令和4年10月1日施行)
育児休業の分割取得 (令和4年10月1日施行)
育児休業の取得の状況の公表の義務付け (令和5年4月1日施行) 

育児・介護休業法改正へ適切に対応できるよう、弁護士がアドバイスいたします。

育児・介護休業法の改正に適切に対応するためには、社内での制度整備(研修や個別周知・意向確認に関するマニュアル作成など。)や、就業規則の変更(有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和や産後パパ育休の創設など。)が必要となります。
このような改正については、労働法務の専門家である弁護士のアドバイスを受けながら対処していくことをお勧めします。
埼玉県内で育児・介護休業法改正についてお悩みの企業様は弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所に是非ご相談ください。

皆さんは令和3年1月から労働者派遣契約書を電磁的記録によって作成することが出来るようになったことをご存知でしょうか。
今回は、労働者派遣契約の電子化の解禁について、ご説明させていただきたいと思います。

令和3年1月1日から労働派遣契約の電子化が解禁

労働者派遣法が改正されたことにより、令和3年1月1日から、派遣元企業と派遣先企業との間で取り交わされる労働者派遣(個別)契約を、電磁的記録(電子データ)によって行うことが出来るようになりました。

労働派遣契約の電子化が解禁された背景

労働者派遣(個別)契約は、期間が短いものも多いことから契約締結が繰り返されることもありますが、改正前は、書面による契約締結が義務付けられていたため(改正前労働者派遣法26条1項、改正前労働者派遣法規則26条1項)、一回一回書面によって契約を締結していました。
これは、事務作業が頻繁に発生するもので、様々なコストがかかるとして、電子化が望まれていました。
これらの声に押されて、労働者派遣契約書の電磁的記録による作成が認められるに至りました。

電子化は義務?書面契約のままだと罰則はあるのか?

電子化は義務ではなく、書面の作成に代えて認められただけですので、書面契約のままだと罰を受けるといったことはありません。

企業が労働派遣契約を電子化するメリットは?

企業が労働者派遣契約を電子化するメリットは何と言っても、事務作業のコスト削減にあります。

ペーパーレス化によるコスト削減

書面を一々印刷、製本することは、それだけ事務作業の時間を増やすことになります。
このようなペーパレス化によるコスト削減が期待されます。

捺印申請や郵送手続きなどの工程削減

また、署名押印を行うということは、捺印申請や双方の郵送手続きなどの工程が必要となりますが、電子化すれば、そのような手間はありません。

データの保管・管理の簡便化

書面であれば保管場所にもコストがかかりますが、電子データであれば、そのような保管に関するコストも不要となり、また管理も簡便となります。

テレワークでも対応が可能

コロナウイルスの影響で、日本でもテレワークが浸透してきました。郵送であると、送付先、受領先とも固定されがちですし、封筒等の資材も職場に行かなければなりませんが、電子データであれば、場所を問いませんので、テレワークにも対応することが可能です。

電子契約はセキュリティ面で問題ないのか?

もちろん、サイバー攻撃や情報漏洩による不安というものは存在しますが、それは社内における電子データ一般に言えることであり、電子契約についてのみにリスクがあるわけではありません。
社内での情報漏洩やサイバー攻撃に対する意識改革や、対策を取っていくことで対処していくべき問題でしょう。

労働派遣契約の電子化で企業に求められる対応

労働者派遣契約の電子化によるメリットは、上記したようなコストの削減にあります。
企業としては、DX推進の一環として、電子契約に対応できるような環境を整備しておく必要があります。

電子契約システム導入の検討

まずはインフラが整っていなければなりませんので、電子契約システムの導入を検討することになります。

社内ルールの策定と周知

セキュリティ面での対策として、情報漏洩などの対策に関する社内ルールを策定する必要があります。
また、ルールを策定しただけで終わるのではなく、実働する方々がルールを熟知していないことには、ルールは機能しませんから、社員に周知することが重要です。

派遣契約に関するご相談は、労働問題を得意とする弁護士にお任せください。

労働法に関する問題は、派遣契約に関するものも含めて、頻繁に改正が繰り返されています。こういった改正に対応していくには、労働問題を得意とする弁護士の協力が不可欠です。
埼玉県内で派遣契約に関するお悩みを抱えている企業の方は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

令和3年6月に育児・介護休業法が改正され、令和4年4月1日から3段階で施行されることとなりました。今回は、育児・介護休業法改正のポイントについて、ご説明いたします。

育児介護休業法とはどんな法律?改正された目的は?

育児・介護休業法とは、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の略称です。
この法律は、子供や介護を要する家族がいる労働者が、働きながら育児・介護を行えるようにするため、雇用継続や再就職の促進を目的として制定された法律です。
少子高齢化で労働人口が減少していく中、仕事と育児・介護が両立しやすい職場づくりをすることで、企業にとっても優秀な人材の確保・育成・定着に結び付けるようなメリットがあります。

令和3年改正では、このうち育児と仕事の両立という目的を更に促進するため、「出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにするため、子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設、育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け、育児休業給付に関する所要の規定の整備等の措置を講ずる。」ことを目的とするとされています。

【2022年4月~】育児介護休業法改正のポイント

令和3年6月改正のポイントは、以下の5点です。

①男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設 (令和4年10月1日施行)
②育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け(令和4年4月1日施行)
③育児休業の分割取得 (令和4年10月1日施行)
④育児休業の取得の状況の公表の義務付け (令和5年4月1日施行) 
⑤有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和(令和4年4月1日施行)

男性の育児休業取得促進のための「出生時育休制度」の創設

これまでも男性であろうと育休を取得することは可能でした。
しかしながら、実際の育児休業取得率は、男女で大きな差が存在していました。また、男性で育休の取得を希望していた労働者のうち、約4割は、育休の利用ができなかったというデータもあり、男性労働者の休業取得の希望が十分に叶えられていないという現状がありました。
そこで、男性の育児休業促進のため、産後パパ育休(出生児育児休業)が創設されることになりました。
この制度は、この出生後8週間以内に4週間まで育休とは別に取得可能な制度です。
また、分割して2回取得することが可能です(ただ、原則として休業の2週間前までに、まとめて申し出る必要があります。)。

「雇用環境整備」と「個別の周知・意向確認」が事業主の義務に

育児休業を取得しやすい雇用環境の整備がとして、①育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施、②育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等、③自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供、④自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休養取得促進に関する方針の周知、④自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知のいずれかの措置を講じなければならないとされました。
また、妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置として、①育児休業・産後パパ育休に関する制度、②育児休業。産後パパ育休の申し出先、③育児休業給付に関すること、④労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会社会保険料の取扱いについて、面談(オンライン面談でも可)、書面交付、FAX、電子メールなどのいずれかの手段によって行わなければならなくなりました。

従来の育児休業が2回まで分割取得可能に

従来の育児休業は、原則として分割ができませんでしたが、2回まで分割して取得することが可能になりました。例えば、夫婦が育休を交代できる回数が増えるなど、柔軟な取得が可能となりました。

パートなど有期雇用労働者の育児・介護休業の取得要件が緩和

現行法上、①引き続き雇用された期間が1年以上、②1歳6カ月までの間に契約が満了することが明らかでない場合に取得が可能でしたが、これが緩和され、①の要件は撤廃されることとなりました。
もっとも、無期雇用者と同様、引き続き雇用された期間が1年未満の場合は、労使協定において対象から除外可能です。

事業主に「育児休業取得状況」の公表を義務付け

常時雇用する労働者が1000人を超える事業主は、育児休業との取得の状況を年1回公表することが義務付けられました。
具体的には、育児休業等の取得割合又は育児休業等と育児目的休暇の取得割合のいずれかをインターネットの利用その他適切な方法で、一般の方が閲覧できるように公表するように求められます。

育児介護休業法の改正で企業に求められる対応

このようなポイントごとに、企業には以下の対応が求められます。

就業規則の見直し

有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件が緩和されたことや、産後パパ育休の創設、育児休業の分割取得の規定を設ける必要がありますので、就業規則の見直しが必要となります。

制度の説明と取得の意向確認

妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認が義務付けられましたので、先ほど述べた①育児休業・産後パパ育休に関する制度、②育児休業。産後パパ育休の申し出先、③育児休業給付に関すること、④労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会社会保険料の取扱いについて、面談(オンライン面談でも可)、書面交付、FAX、電子メールなどのいずれかの手段によって行わなければなりません。

研修の実施や相談窓口の設置

そして、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備の措置を講じなければなりませんから、前記したような①育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施、②育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等、③自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供、④自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休養取得促進に関する方針の周知、④自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知のいずれかの措置を講じなければなりません。

事業主の義務を怠った場合のペナルティは?

育児・介護休業法が改正されたことで、事業主の義務が増えたわけですが、これに違反した場合、事業主は行政から報告を求められます。
また、行政から必要な措置を講ずるように助言、指導、勧告を受ける場合もあります。
仮に勧告に従わないとか、もしくは虚偽の報告を行った場合には罰則として、企業名の公表と、20万円を上限とする過料のペナルティがあります。

育児介護休業法に伴う対応で不明点があれば弁護士にご相談下さい。

今回の改正では、新たな休業制度や意向確認の措置、雇用環境の整備など大きな変更がありますので、会社としては、就業規則の改訂、研修の実施や、個別の説明に関するスキーム作りなど、対応を求められることが多いです。
労働法に詳しい弁護士と共に制度設計をしていくことで、改訂の際の誤りを防止することも可能となりますので、育児・介護休業法の改正に伴う対応にご不明点がある埼玉県内の企業様は、ぜひ一度弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

最初から正社員として採用するのではなく、試用期間を設ける会社は非常に多いかと思います。同様に、有期雇用契約を締結した後、無期雇用に転換されるような会社も多いです。
では、有期雇用契約において試用期間を設けることはできるのでしょうか。
本日は有期雇用と試用期間について、ご説明いたします。

試用期間と有期雇用の法的性格

試用期間とは、一般的に解約権留保付労働契約と解されています。
他方で、有期雇用契約とは、1年等といった期間の定めがある労働契約を意味します。

試用期間を設けるメリット

採用面接や試験といった短期間で限定された手法で採用者の適性を正確に評価することは難しいと言わざるを得ません。
そのため、採用者に本当に適性があるか否かを判断するために、3~6か月程度の試用期間を設ける必要があります。
こうすることで、試用期間経過での本採用拒否については、本採用後の解雇よりも、適法と認められやすくなるメリットがあります。

有期雇用契約をするメリット

いわゆる正社員の場合は、一時的な労働力需要のために採用したとしても、簡単に契約を終了することが出来ません。
有期雇用契約は、その名のとおり、期間の定めがありますので、労契法19条に反しない限り、期間満了によって終了します。そのため、一時的に労働力が必要な場合にメリットがあります。

試用期間としての有期雇用契約は認められるか?

では、試用期間としての役割を持った有期雇用契約を利用することはできるのでしょうか。
実務上、有期雇用契約を試用期間のように扱い、その期間中に適性があると判断した場合に、期間の定めのない労働契約を締結されるということがあります。
このような場合、裁判例上、有期雇用契約の成立が否定されて、期間の定めのない労働契約の試用期間であったと判断されたことがあります(神戸弘陵学園事件判決)。
会社としては、契約期間満了の方が、都合が良いのでしょうが、裁判所からは、期間の定めのない労働契約の試用期間とされることがあり得ます。

試用期間として有期雇用契約した場合、期間満了による雇止めは可能か?

以上に述べたように、試用期間として有期雇用契約を締結した場合、期間の定めのない労働契約の試用期間と判断される可能性があります。
したがって、雇止めは考えられず、本採用拒否の適否が検討されるにすぎないことになります。

試用期間満了による本採用拒否は解雇と同等の扱い

試用期間満了による本採用拒否は、会社が解約権として留保してきた権利を行使するため、法的性質は解雇となります。そのため、解雇と同様に簡単には認められませんが、本採用後の解雇に比べれば、認められやすい傾向にあります。

有期雇用契約でも試用期間と判断される可能性がある

以上に述べたように、有期雇用契約を締結していたものの、その後に無期雇用が続くことが構造的に予定される場合には、有期雇用が試用期間と解釈されることがあります。

試用期間を有期雇用契約とする際の留意点

試用期間の代わりに有期雇用契約を締結したところで、裁判所からは、実態として試用期間であると判断される可能性もあります。
少なくとも、有期雇用契約を利用する際には、以下の点に留意が必要です。

契約期間満了により労働契約が終了する旨の合意が必要

この点が無ければ、有期雇用契約ではなく、試用期間と判断されてしまう可能性が上がります。
仮に有期雇用契約と判断されたとしても、更新の期待があるとされてしまった場合には、労契法19条の適用を受ける可能性も出てきます。

有期雇用契約は期間途中での解除が困難

有期雇用契約は、「やむを得ない事由がある場合」でなければ中途解約はできません(労契法17条)。
安易に試用期間代わりに1年間に期間を定めて契約した場合、途中で解約することは非常に困難であると考えていただいた方がよろしいです。

試用期間と有期雇用に関する裁判例

前記しましたが、神戸弘陵学園事件が有名です。

事件の概要

常勤講師が、学園から、最初の契約期間を1年とする有期雇用契約を締結させられたものの、その間の勤務状態を見て期間の定めなく再雇用するか否かの判定を受けると説明されていたという事案です。
この常勤講師は、学園から最初の契約期間の満了で再雇用されることが無かったため、その有期雇用契約の実態が試用期間であったと訴えた事案です。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

裁判所は、「使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当である。」と述べて有期雇用契約ではなく試用期間であると判示しました。

ポイント・解説

名目だけを有期雇用契約としても、その実態が試用期間であるのであれば、裁判所としては、期間の定めがあるとは認定しません。
会社に一方的に都合が良いということは認められない点に注意が必要です。

試用期間や有期雇用に関するお悩みは、労働問題に詳しい弁護士にご相談下さい。

以上に述べたように、試用期間と有期雇用に関しては、その実態を見ながら判断していく必要があり、会社としては有期雇用契約であるから大丈夫であろうと考えていたとしても、裁判所から試用期間と判断されて、期間の定めのない労働契約を締結していたということにもなりかねません。
このような法的判断を含む事項については、自社のみで悩まず、労働問題に詳しい弁護士などの専門家にご相談されることをお勧めいたします。
埼玉県内で試用期間や有期雇用にお悩みの企業の方は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。