退職者による顧客の引き抜き行為を防止する方法

コラム

退職者が顧客を連れて行ってしまう、いわゆる顧客の引き抜き行為は、企業に対して非常に大きな損害を与える行為であり、企業としては、対策しておきたい事柄です。
今日は、退職者による引き抜き行為を防止する方法について、解説していきたいと思います。

退職者による顧客の引き抜きが行われることのリスク

企業内で活躍していたものであればあるほど、退職時に顧客を引き抜いていく可能性があります。
このような引き抜きによって、会社は予定されていた売上の減少や、顧客から信頼を失うといったリスクがあります。

顧客の引き抜き行為を防止する方法とは?

では、実際に顧客の引き抜き行為を防止するにはどうしたらいいのでしょうか。

退職後の競業行為を禁止する

まず、退職後の競業行為を禁止することが考えられます。
退職時に、退職合意書や誓約書の形で退職者に対して競業行為を禁止することで顧客の引き抜きを防止することが可能となります。
ただ、在職時と異なり退職後の競業避止義務は職業選択の自由を側面する側面などから、無限定に認められるものではありません。場所的範囲や期間を限定するなどの工夫も必要となってきます。

顧客との取引を禁止する

また、顧客との取引を禁止する合意を書面で行うことも考えられます。
ただ、次の各点に注意しておく必要があります。

取引を禁止する顧客の範囲や期間を設ける

在職時と異なり、退職後にも競業避止義務を課すということは、退職者の転職の選択肢を奪ってしまうことになるため、合意したとしても裁判所から無効と判断されてしまう可能性があります。
他方で、顧客の範囲や期間を限定することで、退職者の利益に配慮している場合には、裁判所からも有効と判断される可能性が上がります。

顧客情報の持ち出しを禁止する

退職者が、退職後に顧客にアプローチしないように、退職時に顧客情報の持ち出しを禁止しておく必要もあります。

秘密保持契約を締結する必要性

退職時に秘密保持契約を締結することで顧客情報の持ち出しを禁止することが出来るようになります。

顧客情報は不正競争防止法上の「営業秘密」にあたるか?

顧客情報も不正競争防止法上の営業秘密に該当します。
ただ、以下の3要件を満たす必要があります。
①秘密管理性
②有用性
③非公知性
このような要件を満たす顧客情報であれば、営業秘密に該当します。

そもそも顧客の引き抜き行為で違法性を問えるのか?

在職時であれば会社に対する忠実義務、誠実義務等に反するものとして責任を追及することが出来ます。
退職後であっても、不正競争防止法違反があれば違法性を問うことはできますし、あまりに社会的相当性を逸脱するような引き抜き行為であれば、損害賠償請求の対象となることもあります。

顧客の引き抜き行為を禁止する上での注意点

顧客の引き抜き行為を禁止するうえでは、以下の点に注意しておく必要があります。

禁止事項は就業規則と誓約書のどちらかに規定しておけば良い?

どちらにも規定しておくことが望ましいです。
就業規則に定めることが前提ですが、個別に誓約書を取ることで、従業員に引き抜き行為が禁止されていることを認識させることも重要です。

不当な禁止事項を定めると無効になる場合も

労働者には職業選択の自由があることから、あまりに自由を制限するような事項を定めた場合には、合意したとしても無効とされてしまう場合もあります。
事後的な無効は、それこそ企業に不測のリスクを生じさせかねませんので、あまりにも制限的な事項とならないように注意しましょう。

退職者による顧客の引き抜き行為が発覚した際にできること

退職者による顧客の引き抜き行為が発覚した場合には、内容証明郵便などで警告書を送付する、損害賠償請求を提起する、退職金の没収を行う、差し止め請求を行う等といった手段が考えられます。
ただ、事案に応じた対応が求められますので、退職者による顧客の引き抜き行為が発覚した場合には、弁護士に相談されることを強くお勧めします。

顧客の引き抜き行為に関する裁判例

顧客の引き抜き行為に関する裁判例では、例えば以下の三田エンジニアリング事件があります。

事件の概要

ビルの空調機器、システムの保守点検等の作業に従事していた退職者が、会社の承諾が無い限り退職後1年間は競業してはならないという規定に反し、退職直後に競業他社に入社したとして退職金の返還を求められた事案です。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

東京高判平成22年4月27日
これについて、東京高裁は、「本件競業禁止規定により禁止されるのは,従業員が退職後に行う競業する事業の実施あるいは競業他社への就職のうち,それにより会社の営業機密を開示,漏洩し,あるいはこれを第三者のために使用するに至るような態様のものに限定されるものと解すべきであり,かつ,このように本件競業禁止規定の趣旨を限定的に解してのみ本件競業禁止規定の有効性を認めることができるというべきである。」と述べて、競業禁止規定の限定解釈を行いました。
そして、本件退職者は、そのような行為を行ったとは言えないとして、退職金の返還を認めませんでした。

ポイントと解説

この裁判例のポイントは、1年という期間制限を定めたと競業禁止規定についても、退職金返還の場合には無限定には認めず限定を課してその有効性を肯定した点です。退職金は、賃金の後払い的性格があることもあって、簡単にその有効性は認められません。
画一的な基準を見出すことは難しく、事案ごとの検討が求められることになります。

退職者による顧客の引き抜きで会社が損害を負わないよう、労働問題に強い弁護士がサポートいたします。

以上に述べてきたように、退職者の顧客の引き抜き行為については、退職前からの準備が不可欠です。また、発覚後の対応についても、専門的な知見が必要な難しい分野でもあります。労働問題に強い弁護士にサポートしてもらうことをお勧めいたします。
埼玉県内で退職者の顧客の引き抜き行為についてお悩みの企業の方は、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にぜひ一度ご相談ください。

新型コロナウイルスについては、現在ワクチン接種が進んでおり、令和3年9月30日時点で、一回目接種率は63.93%、二回目接種率も54.08%と、国民の半数以上がワクチン接種を完了している状況になっています(政府CIOポータル参照 https://cio.go.jp/c19vaccine_dashboard)。 しかしながら、ワクチン接種が進むにつれて、新しい労務問題が生じてきています。

従業員に新型コロナウイルスのワクチン接種を義務付けることは可能?

新型コロナウイルスのワクチンは、「いずれも、新型コロナウイルス感染症の発症を予防する高い効果があり、また、重症化を予防する効果が期待されています。」とされるように(厚生労働省新型コロナワクチンQ&A参照)、新型コロナウイルスの脅威に対向する手段として、非常に有用なところがあります。
従業員が新型コロナウイルスに感染した場合、営業所の一時閉鎖などを行うリスクを抱えていますから、企業にとっては、可能であれば、従業員全員に接種してほしいと考えることは自然です。
しかしながら、ワクチン接種を会社が従業員に対して義務付けることまでは出来ません。
ワクチンには、副反応のリスクもあり、この接種を強制することは、従業員の自由を制限しすぎるものであって、認められません。
国も、国民に対し、予防接種法第9条の規定による努力義務(強制ではない)を課しているにすぎません。

ワクチン接種証明書の提出を求めてもいい?

では、ワクチン接種証明書の提出を求めるのはどうでしょうか。
これも義務化することは難しいと言わざるを得ません。接種証明書の提出を義務付けることはワクチン接種を義務付けることと同じになってしまいかねません。
提出するかどうかは、従業員の自由な意思に任せるしかなく、接種証明書の提出を強制するようなことはできないとお考え下さい。

ワクチン接種を推奨するための企業の措置

ワクチン接種を義務付けることは出来ませんが、企業にとっては新型コロナウイルスのリスクに備える手段であって、必要性も高いことから、これを推奨していくこと自体に問題はありません。

有給休暇や欠勤扱いとすることは問題ないか?

推奨するからといって、業務命令として接種させているわけではありませんので、ワクチン接種中に、従業員が使用者の指揮命令下にあるとは言えません。ワクチン接種については、労働者の自由意思に基づくものであることから、業務として行われるものとは認められません。
したがって、ワクチン接種について有給休暇扱いや欠勤扱いとすることに問題はありません。

厚生労働省が望ましいとする労働時間の取り扱い

厚生労働省としては、「職場における感染防止対策の観点からも、労働者の方が安心して新型コロナワクチンの接種を受けられるよう、ワクチンの接種や、接種後に労働者が体調を崩した場合などに活用できる休暇制度等を設けていただくなどの対応は望ましいものです。」とされています(厚生労働省QA参照)。
中抜けなどをペナルティなく認めるようにすることも推奨されています。

職域接種の場合は労働時間として扱うべき?

職域接種であろうと、ワクチン接種は個人の自由意思に任されているものです。

そのため、労働時間として扱わなくても問題ありません。 ただ、従業員の負担もあるため、労使で協議して、ペナルティなく中抜けなどさせるとか、特別休暇を創設するといった手段はあり得ます。

ワクチン接種に備えた「ワクチン休暇」の新設について

前記したとおり、ワクチン接種に備えたワクチン休暇の創設は、厚生労働省としては望ましいものとしています。

ワクチン休暇は有給か?無給としてもいいか?

ワクチン休暇は、法定の有給休暇と異なり、企業の福利厚生の一環として導入するかどうかを決めるものです。慶弔休暇等と同様に、会社の制度ですので、それを有給とするのか無給とするのかは、会社の広範な裁量にゆだねられています。
そのため、有給とするか、無給とするかは、会社で決断してよろしいです。

就業規則の変更について

仮にワクチン休暇を導入する場合、「一般的には、労働者にとって不利益なものではなく、合理的であると考えられることから、就業規則の変更を伴う場合であっても、変更後の就業規則を周知することで効力が発生するものと考えられます。」とされています(厚生労働省QA)。

ワクチン接種で健康被害が出た場合は労災の対象?

ワクチン接種を接種するかどうかは、従業員の意思にゆだねられている以上、業務起因性は認められず、労災の対象とはならないことが原則です。
ただ、医療従事者については、強制こそされないものの、業務の性質上、ワクチン接種をしなければならない状態にあります。
そのため、「医療従事者等に係るワクチン接種は、労働者の自由意思に基づくものではあるものの、医療機関等の事業主の事業目的の達成に資するものであり、労災保険における取扱いとしては、労働者の業務遂行のために必要な行為として、業務行為に該当するものと認められることから、労災保険給付の対象となります。なお、高齢者施設等の従事者に係るワクチン接種についても、同様の取扱いとなります。」とされています(厚生労働省QA)。

ワクチン接種の拒否を理由に懲戒処分とすることは可能?

これは出来ないとお考えいただく方がよろしいです。
あくまでワクチン接種は従業員の自由意思に基づいて行われるものであり、これをしないからといって、懲戒処分とすることは出来ません。

ワクチン接種に関する不利益な取り扱い・ワクハラ(ワクチンハラスメント)の禁止

当然ですが、ワクチン接種を推奨する際、ワクチンを接種しないものの人格を否定するような行為は、パワーハラスメントに該当する行為で、禁止されます。
また、これに伴って解雇や雇止めなどの不利益な取り扱いを行うことも当然出来ません。

従業員のワクチン接種において求められる企業対応

企業としては、従業員にワクチンを接種してほしいと考えるのは自然ですし、ワクチン自体の有効性もあります。
そのため、企業としては、あくまでも従業員の自由な意思による接種が前提であることを周知しながら、従業員に対して、自分の身を守ることや、周囲の従業員、取引先などの身を守ることにもつながること、ワクチンに対する正確な理解を周知していくなどしてワクチン接種を推奨していくことが求められます。

新型コロナのワクチン接種における労務管理で不明点があれば弁護士にご相談ください

新型コロナウイルスのワクチン接種については、コロナ禍同様、企業にとって経験したことのない出来事であり、また、副反応のリスク等もあることから、非常にデリケートな問題です。
ワクチン接種に伴う欠勤等も問題となり得ますし、いわゆるワクハラ(ワクチンハラスメント)の被害も聞こえてくるところがあります。このような労務管理の問題については、専門家である弁護士と共に進めていくことが何より大事です。
埼玉県内で、新型コロナのワクチン接種における労務管理でお悩みの企業様はぜひ一度弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

成果が上がらない社員に対して改善の業務命令をだすとか、上司の指示に従わない従業員に対して改善の業務命令を出すといったことがあります。
しかしながら、そのような業務命令に従ってくれる労働者ばかりではありません。
このような業務命令に従わない労働者に対して、どのように対処していくべきなのでしょうか。

業務命令に従わない労働者への処分はどうするべきか?

業務命令に従わない労働者にたいしては、まず懲戒処分を下すかどうかが検討されます。
上司からの業務指示の違反、時間外労働(休日労働)命令、配転命令、出向命令に従わない場合には、業務命令違反という形で、懲戒事由に該当し得ることになります。

労働者が負う「誠実労働義務」とは

労働者は、労働義務を「債務の本旨に従って」履行しなければなりません(民法493条)。
この義務を、職務専念義務ないし誠実労働義務といいます。
例えば、会社から出張・外勤の業務命令が出ているにもかかわらず、労働者が勝手に内勤業務に従事したという場合では、債務の本旨に従った労働の提供とは言えず、職務専念義務ないし誠実労働義務に反するものといえます。
業務命令違反は、こういった労働者の義務に反しますので、懲戒処分が検討されることになります。

業務命令に従わないことを理由に解雇はできるか?

では、業務命令に従わないことを理由に、直ちに解雇できるのでしょうか。
もちろん、最終的には解雇ということも考えられますが、業務命令に従わなかっただけで直ちに解雇しても、無効とされるリスクが高いです。

懲戒解雇の有効性が争われた裁判例

懲戒解雇の有効性が争われた裁判例として、ユニスコープ事件判決があります。

事件の概要

翻訳業に従事していた労働者が、スケジュールや納期を守らなかったり、業務の進行状況に対する問い合わせにも答えないといった問題があり、改善命令を出したところ、2か月間タイムカードを押さずに反抗する態度を取ったため、懲戒解雇したという事案です。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

東京地判平成6年3月11日
裁判所は、労働者の「勤務態度は、非協調的・独善的なものであったものと評価されてもやむをえないものということができる。」と指摘し、他方で、会社代表者は、労働者のこのような勤務態度を理由に直ちに労働者を解雇したものではなく、労働者が会社に勤務していた約一年五か月の間、労働者に対し、その勤務態度の問題点を度々指摘して注意を喚起したり、勤務体制に配慮するなどして、労働者の非協調的な勤務態度の改善を求めてきたことや、労働者は解雇されるまで、その勤務態度を改善しなかったばかりか、かえって、反抗手段としてタイムカードを押さなかったり、無断欠勤をするなどしたことを考慮して、解雇には合理的理由があると指摘しました。

ポイント・解説

ポイントとしては、労働者がどれだけひどい勤務態度であったとしても、業務命令によって、労働者に対して改善の機会をあたえたかどうかが、解雇の有効性について考慮されている点です。
解雇が最終手段であることから、裁判所は解雇の効力について非常に謙抑的に判断しています。労働者に対して改善の機会(=業務命令など)を与えずに解雇することは、まずできませんので、注意が必要です。

業務命令違反による懲戒処分が認められるための要件

では、解雇に至らずとも、業務命令違反によって懲戒処分が認められるためには、どのような点に注意すればよいでしょうか。

①業務命令が有効であるか

当然のことですが、業務命令自体が有効でなければ、これに反したことを理由として、懲戒処分を下しても無効となってしまいます。

業務命令が無効になるケースとは?

例えば、配転命令において労働者に著しい不利益があるような場合には、配点命令は無効とされることになります。そのため、配転命令に違反していたとしても、配転命令自体が無効であることから、その違反を理由とした懲戒処分も無効となります。

②業務命令違反の事実は存在するか

これも前提となりますが、業務命令に反した事実が無ければ、それを理由として懲戒処分を下すことは出来ません。
労働者が、実際に業務命令を受けたか、それに反する行動をとったかどうかについては、極力、客観的な証拠や資料で裏付けし、周囲からの聞き取り調査を行って、事実の存否を確認しておく必要があります。

③就業規則に懲戒事由として規定されているか

また、就業規則に懲戒事由として明定されているかどうかが問題となります。
裁判例は、就業規則に明らかに定められていない事由に基づく懲戒処分については否定的です。

④懲戒処分の程度は相当なものか

懲戒処分にも軽重がありますから、行為に見合わないような処分がなされた場合には、社会通念上相当でないものとして、無効となります。

⑤懲戒手続が適正に行われているか

懲戒処分は、制裁罰として刑事処罰との類似性を持ちますから、罪刑法定主義類似の諸原則を満たすものでなければならないとされています。
このため、懲戒処分を行うには、適正な手続きを踏むことが必要であるとされ、その中でも、労働者(被処分者)に対して、弁明の機会を与えることが重要とされています。
被処分者に、懲戒事由を告知し、弁明の機会を与えなければ、懲戒処分は特段の事情が無い限り(事実関係が明白で疑いの余地が無い場合等。)有効とされませんので、注意が必要です。

業務命令違反に対する懲戒処分の進め方と注意点

では、具体的な処分としてはどのように進めていけばよいでしょうか。

弁明や是正の機会を与える

まずは、懲戒事由となる業務命令違反を告知し、弁明や是正の機会を与えることが第一です。
懲戒処分は、労働者に不利益なものですから、まずは弁明や是正の機会を与えることから始めます。

段階的に処分を実施する

業務命令違反が明らかとなれば、次は処分を下すかどうか検討することになります。
これは、どの程度の懲戒処分を下すか、という量刑判断も含みます。
出来る限り、けん責などの軽い懲戒処分から始めることをお勧めします。
重い懲戒処分を直ちに下す場合には、無効となる可能性が高くなります。
軽度の懲戒処分や、形に残る注意指導を実施して、今後労働者がどうなっていくかを見守る方が、妥当なことが多いです。

合意による退職を目指す

懲戒処分を下された労働者は、その後、改善すればよいのですが、改善しないことも多いです。
また、労働者としても、会社に居づらい状況になりますし、これ以上業務命令違反が続けば、懲戒解雇を検討せざるを得なくなることもあります。
そこで、退職勧奨を行う等して、合意による退職を目指すことが、労使双方にとって良い結果をもたらすことが有ります。
労働者との合意による退職を目指すことも、ご検討ください。

最終的には懲戒解雇を検討

合意による退職は出来ず、懲戒処分後も業務命令違反も継続する場合には、最終的には懲戒解雇を検討いただくことになります。
数度の懲戒処分にもかかわらず、業務命令違反が継続するのであれば、懲戒解雇を行ったとしても有効と判断される可能性は高くなってきます。

業務命令に従わない社員の処分でお困りなら弁護士にご相談ください

業務命令に従わない社員に対しては、注意指導や軽度の懲戒処分などで改善を図ることが何より大事ですが、労働者によっては、全く改善せず、会社に対して反抗的な態度に終始することもあります。
こういった労働者が、会社に在籍しづるけることは、会社にとっても、他の従業員にとっても、良いことではありません。
もちろん、上記してきたように、懲戒解雇は簡単なものではありませんから、慎重な決断が求められます。この際に、弁護士などの専門家に相談、依頼できる環境を整えておく必要があります。
埼玉県内で業務命令に従わない社員の処分でお困りの企業の方は、ぜひ一度弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

日本では、長期雇用を原則とした制度のため、採用してから、辞めるまで、経営の状況や周囲の環境が変わらないことの方が珍しいです。最近も、コロナウイルスの影響でテレワークが促進されたこと等がありましたが、思いもよらないタイミングで労働条件の変更を考えなければならないことも有ります。
ただ、一度決めた労働条件を変更する際、それが労働者にとって有利であればともかく、不利益な内容も含まれている場合には、注意が必要です。

就業規則や労働条件の不利益変更の禁止について

労働者の同意もなく、就業規則や労働条件を、労働者の不利益に変更することは原則としてできません(労契法9条参照)。

不利益変更を行うことのリスク

例えば、賃金の減額を伴う不利益変更の場合、減額される労働者は、非常に不満に感じるため、労使間の激しい紛争を生じるリスクがあります。
既存労働者の大勢と労使紛争となれば、会社の生産性も低下する恐れがあります。

労働条件の不利益変更が認められる条件とは?

労働条件の不利益変更は、どうあっても認められないものではなく、使用者と個々の労働者の合意によって変更できることはもちろん、就業規則の不利益変更によっても、条件次第では認められます。

就業規則の不利益変が認められる条件

労働契約法第10条には、就業規則による不利益変更が認められる条件が規定されています。
「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。」
同条によれば、労働者の個別の同意がなくとも、合理的なものであるとされた場合には、労働条件の不利益変更は有効なものとされます。

不利益変更の「合理性」を判断する基準

合理性を判断する判断要素は、同条に定められています。
①労働者の受ける不利益の程度、
②労働条件の変更の必要性、
③変更後の就業規則の内容の相当性、
④労働組合等との交渉の状況、
⑤その他の就業規則の変更に係る事情
ただ、これらを総合的に勘案することになるため、その変更が合理的であるかどうかは非常に難しい判断になります。同じ事案であっても、地裁と高裁など、審級毎に判断が覆ることも少なくありません。

不利益変更のケース別のトラブル防止のためのポイント

労働条件といっても、賃金に関するものや労働時間に関するもの等、様々な条件があり、それぞれを変更するにあたっては、以下の点に注意しておく必要があります。
なお、どのような不利益変更の場合にも当てはまりますが、それぞれの労働者と合意を得ることを目指すことが第一であるので、個別の労働者の納得が得られるような変更にすることが肝要です。

賃金・手当に関する不利益変更の注意点

賃金・手当に関する不利益変更は、そもそも減額の前に就業規則を変更しておく必要があります。
そして、賃金・手当は労働者にとって特に重要な権利であることから、高度の必要性に基づいた合理的なものである必要があるとされます。
賃金制度をどのように設計しなおすか、またそれが長期で見ればとの程度の不利益となるか、なぜ賃金・手当を減額する必要があるのか、代償措置や経過措置を取れないか、等といったことに注意しながら、進めていくことが重要です。

時間外労働・残業代に関する不利益変更の注意点

時間外労働に対する割増賃金、いわゆる残業代について、労基法よりも高い割増率を設定している企業は少ないため、固定残業代を不利益に変更しようとする場合に問題になることが多いです。
この場合も、賃金・手当の変更同様の注意点があります。

労働時間・休日・休暇に関する不利益変更の注意点

年次有給休暇の5日間の取得が義務付けられたことに伴い、今まで休日や休暇としていたところに年休を当てようとすることがあると聞きますが、労働者にとって、休日や休暇を奪うことにほかならず、不利益変更に該当します。
実際には休む日数が変わっていなくとも、権利が奪われるような場合も、当然不利益変更となりますので、労働時間・休日・休暇に関する変更を行う際には、それが不利益であるかどうか、きちんと検討しておくことが必要です。

不利益変更でトラブルにならないために企業がすべきこと

労働条件が不利益変更される場合、労働者は既得権益を侵されたと感じ、非常に抵抗し、激しい労使紛争に発展するリスクが大きいことは、前記したとおりです。
そのため、不利益変更に伴う労使紛争を避けるため、以下の点に注意する必要があります。

従業員と合意書を取り交わしておく

個別の合意を取ることが何より大事ですので、合意を得た場合には、合意書を取り交わしましょう。
事後のトラブルの際も、従業員が合意したことを証明する書面が残っていれば、不利益変更の有効性を主張する証拠になります。

代償措置や経過措置の検討

合理性を判断する一要素でもありますが、不利益変更について、代償措置や経過措置を設けることで、従業員から合意を取りやすくなります。
即座に労働条件が変更されることにはならず、即効性は低いですが、長期的に見れば、不利益変更を実現できるため、このような措置も検討しておく必要があります。

従業員から労働審判や訴訟を起こされた場合の対応

従業員から、労働条件の不利益変更に対して、労働審判や訴訟を起こされることが有ります。
この場合は、同意が無いのであれば、従前ご説明したとおり、合理性の判断で争っていかなければなりませんが、これは評価が伴うことから非常に難しい事件となります。
自社のみで対応することは不可能ですので、専門家である弁護士に依頼することをお勧めいたします。

労働条件の不利益変更に関する裁判例

労働条件の不利益変更については、同意によるものや就業規則変更による方法がありますが、就業規則による変更に関する判例として著名なものに大曲農協事件判決があります。

事件の概要

農業協同組合の合併に伴って、労働条件を統一しようとして、新たな就業規則を作成しましたが、ある労働者との関係では、退職金算定における支給倍率が、例えば64→55.55、55→45.945、61→53.75といった具合に下げられたという事件です。
この退職金の引き下げに不満を抱いた従業員が、新規程への不利益な変更は効力を生じないから、旧規程の支給倍率を乗じた金額から実際に受領した退職金額を差し引いた金額が退職金として未払いであるとして、その差額の支払を求めた事件です。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

これに対して、最高裁は、農業協同組合の合併に伴って新たに作成された退職給与規程の退職金支給倍率の定めが一つの旧組合の支給倍率を低減するものであっても、それによる不利益は退職金額算定の基礎となる基本月俸が合併後に増額されたため軽減されていることや、合併前の農業協同組合の労働条件の格差が是正されない場合には、合併後の協同組合の人事管理の面で著しい支障が生じること、給与調整の累計額からすれば、そもそも旧規程の退職金水準に達していること、休日、休暇などの点で、有利な取り扱いを受けたこと(但し、代償措置としてではない。)などを鑑みれば、新規程への変更に合理性があると判断しました(最判昭和63年2月16日)。

ポイント・解説

裁判所は、「賃金、退職金など労働者にとつて重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については、当該条項が、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容できるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、その効力を生ずるものというべきである」とも述べており、特に賃金などの重要な権利についての不利益変更には厳しい立場を取っています。
もっとも、合併に伴う必要性や、退職金を減額したとしても、その他の条件での優遇なども考慮すれば、合理性があるとしており、いかなる場合でも労働条件の不利益変更が許されないものではないとしたところがポイントです。

不利益変更で無用な労使トラブルを避けるためにも、弁護士に相談することをおすすめします。

労働条件の不利益変更は、会社としては必要性があると思っていても、従業員には理解されず、労使紛争に発展する可能性が高いです。こうした場合には、個別の合意を取るための十分な説明を行うことが第一ですが、労使紛争に発展した場合には、裁判所から思いもよらず、その効力を否定されることもあり得ます。
不利益変更に関する労使紛争は非常に難しいところが多い為、不利益変更を行う前から、専門家である弁護士に相談されることをお勧めします。
埼玉県内で労働条件の不利益変更でお悩みの企業は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

企業にとって、人材の採用は避けては通れない課題です。より良い人材を採用し、自社で気持ちよく働いてもらいたいというのは、どの企業も共通した気持ちだと思います。
では、面接の結果、そのような人材に内定を出したところ、内定者から妊娠したという連絡があった場合、企業としてはどう対応すべきでしょうか。

妊娠を理由に内定取消はできるのか?

妊娠自体は、非常に喜ばしいことで、これを咎める企業はないでしょう。
しかしながら、予定していた勤務開始日に勤務を行うことができなくなったり、使用期間中に産休に入ってしまうなど、企業が予定していなかった事態にもなります。
人手が欲しいから採用するわけですから、内定取り消しして、別の人を採用したいという思いもわかります。
しかしながら、妊娠を理由に内定取り消しはできません。

内定取消は法律上「解雇」と同じ扱い

内定の法的性質は、始期付解約権留保付労働契約の成立であるとされています。
つまり、内定を取り消すということは労働契約を取り消す=解雇することになります。

妊娠による内定取消は「男女雇用機会均等法」に反する

妊娠を理由とする内定取消(=解雇)は、男女雇用機会均等法第9条3項によって禁止されています。
「事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」 したがって、内定者が妊娠をしたことを理由とする内定取消は、男女雇用機会均等法に反する以上、出来ません。

採用面接の段階で妊娠の有無を質問して良いか?

では、内定を取り消すことができないのであれば、内定を出す前の段階、採用面接の段階で妊娠の有無を質問して良いのでしょうか。
一般論として、労働者には採用の自由があり、その一環として調査の自由が認められています。
しかしながら、「採用面接に際して、結婚の予定の有無、子供が生まれた場合の継続就労の希望の有無等一定の事項について女性に対してのみ質問すること。」は男女雇用機会均等法第5条に反する恐れがあります(労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針参照)。
仮に、このような質問を行うとしても、男女問わず、質問するようにする方が無難です。

入社直後の妊娠でも産休・育休を与える必要はあるか?

産休とは、出産予定日の6週間前から与えられる産前休業と、出産の翌日から8週間経過するまでの間に与えられる産後休業の二つを併せたものをいいます。
産休は、全女性労働者に与えられるものですから、入社直後の妊娠でも産休は与えなければなりません(労基法第65条)。

育休とは、育児休業のことをいいます。これは、1歳に満たない子供を養育する男女労働者が、会社に申し出ることにより、子供が1歳になるまでの間で希望する期間、育児のために休業することができる制度です。
①同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること、②子どもの1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれること、③子どもの2歳の誕生日の前々日までに、労働契約の期間が満了しており、かつ、契約が更新されないことが明らかでないことの要件を満たした労働者に与えられます。
また、以下に述べる労使協定を結ぶことで、入社直後の社員について育休制度の対象から除外することができます。

入社1年未満の育児休業の適用除外について

労使協定を結ぶ必要がありますが、雇用された期間が1年に満たない労働者について、育休制度を適用除外とすることができます(育児介護6条1項1号)。

産休・育休の取得を理由とする不利益取扱いも違法

産休や育休の取得を理由とする不利益取り扱いは、男女雇用機会均等法や育児介護休業法によって禁止されています(男女雇用機会均等法第9条3項、育児介護休業法第10条)。

内定後の妊娠について企業が講じておくべき対策

妊娠自体は喜ばしいことですが、入社直後に産休に入る場合には、人が足りなくなることは事実であり、企業としては、事前に対策を講じておくべきです。
まず、過度な人手不足を防ぐために、余裕を持った人員を採用しておくことが考えられます。
また、採用時の認識の違いをなくすために、男女問わずに質問する前提ですが、結婚や出産等、今後のライフプランをどのように考えているのか、面接を受けに来る者にきちんと確認しておくこと等が考えられます。

企業に義務付けられるマタハラ防止措置とは?

企業は、いわゆるマタハラ防止指針において、①職場のマタハラの内容、マタハラがあってはならない旨の方針の明確化及び周知・啓発、②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、③職場における育児休業等に関するはアスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応、④職場における育児休業等に関するハラスメント原因や背景となる要因を解消するための措置、⑤①~④までの措置と併せて講ずべき措置(プライバシー保護等)を講ずることが要求されています。

男女雇用機会均等法違反に対する罰則

男女雇用機会均等法違反に関しては、第33条に、第29条による報告をしなかった、又は虚偽の報告をしたものについては、20万円以下の過料に処すとされています。
なお、同法第29条は、「厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。」という条文です。

妊娠を理由とした内定取消に関する判例

妊娠を理由とした内定取消に関する判例で、有名なものはありません。
ただ、有名な大日本印刷事件の判旨に照らせば、妊娠を理由とする内定取消は、違法無効なものと判断されるでしょう。

事件の概要

Xは大学にあったYの求人に応募、内定を得たところ、Yは、昭和44年2月に、突然、Xに対する採用内定を取り消した。
これについてXがYに対して、解約権の濫用に該当するとして争った事案です。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

最大判昭和54年7月20日(民集33-5-582)
最高裁は、本件について、XとYの間で労働契約が成立していると解するのが相当であると判断したうえで、内定取消について、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られると述べました。
そのうえで、Yは、Xの陰気な印象を内定取消事由としたが、Xの印象は当初から分かっていたものであって、これを社会通念上相当とは是認できないとして、解約権の濫用にあたり、内定取消は違法無効であると判断しました。

ポイント・解説

ポイントとしては、内定取消といえど、労働契約の解消=解雇と同様に、客観的に合理的と認められ、社会通念上相当であることを有効性の要件とした点です。
男女雇用機会均等法の趣旨からも明らかですが、妊娠したことのみを理由として内定取消することは、客観的に合理的ではなく、社会通念上相当とも言えません。
したがって、同判例の趣旨からすれば、妊娠を理由とする内定取消は、違法無効と判断sれることになります。

内定後の妊娠への対応でお困りの際は、早めに弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

以上に述べたように、内定後の妊娠については、それを理由に内定取り消しを行うことが困難であることや、産休等の対応についても、専門的な知識を要します。
出来れば、内定を出す前に、対応できる部分は対応しておく必要がありますので、内定後の妊娠で悩む前に、可能な限り早めに、弁護士等の専門家にご相談されることをお勧めいたします。
埼玉県内で内定後の妊娠への対応でお困りの企業の方は、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にぜひご相談ください。

派遣社員が業務上のけがや病気で休むときや、派遣社員を自社の都合で休ませなければならないとき、
休業補償や休業手当の支払いは、自社の社員と同様に必要なのでしょうか。

派遣社員にも休業補償・休業手当の支払いは必要か?

派遣社員であろうと、労働者である以上、休業補償・休業手当の支払いは必要です。

休業補償と休業手当の違いとは

休業補償とは、労働者が業務上負傷し又は疾病にかかった場合に、労働することができないために賃金を受けない場合において、労働者の平均賃金の60%が使用者から支給されるものをいいます(労基法76条)。
他方で、休業手当とは、使用者の責に帰すべき事由(使用者都合)で労働者を休業させる場合に、平均賃金の60%以上の賃金が使用者から支給されるものをいいます(労基法26条)。
前者は、いわゆる労災の件で、後者は会社都合での休業命令などの際に支払われるものです。

休業補償・休業手当の対象について

休業補償も休業手当も、労基法上の労働者であれば、支払対象となります。
そのため、派遣社員であっても、休業補償や休業手当の対象となります。

支払い義務は派遣元・派遣先のどちらにあるのか

しかしながら派遣労働者の場合、派遣元企業と派遣先企業のどちらが休業補償や休業手当を支払うべきなのでしょうか。
結論からいうと、派遣元企業が支払うべきです。
派遣社員と直接の労働契約を締結しているのは、派遣元ですから、休業補償や休業手当の支払い義務は派遣元企業にあります。

派遣先は休業補償や休業手当を一切負担しなくても良いか

負担する必要はありません。派遣元と派遣社員との問題となります。
但し、以下の点に注意が必要です。

休業補償で不足する部分の支払いを求められるケースも

派遣元企業から、派遣先企業に対して金銭補償を求められるケースはありますが、結論としては労働者派遣契約の契約の内容によります。
労働者派遣契約上の規定でどうなっているかに応じて、負担すべきかどうかが決まってくることになります。

派遣先の都合で休ませた場合の休業手当は?

派遣先の都合で休ませた場合も、派遣元が休業手当を支払うことになります。
ただし、労働者派遣契約上の規定で派遣元に対する派遣料金は支払う必要があります。

派遣契約を中途解約した場合はどうなる?

労働者派遣契約を中途解約した場合、派遣料金として休業手当に相当する額以上の額について支払い義務があるとの説があります(派遣先指針)。
そのため、この場合には、派遣元に対する派遣料金として、休業手当に相当する額以上の支払いを行う必要があります。

緊急事態宣言下における派遣社員の休業手当

労働者派遣契約の期間中に派遣先の事業所が休業したこと等に伴って派遣会社が派遣労働者を休業させる場合には、派遣元は休業手当を支払う必要があります。
ただ、緊急事態宣言によって休業することが派遣先の責めに帰すべき事由とは言えないと解釈する余地もあります。派遣元と派遣先でよく話し合い、対応していく必要があります。

派遣先企業の損害賠償責任について

休業補償の原因となる災害の原因が派遣先にある場合、休業補償とは別に、派遣先の安全配慮義務違反等を原因として損害賠償請求をされる可能性があります。
この場合は、休業補償とは別の話になりますので、派遣先企業が損害賠償責任を負う可能性がございます。

休業補償・休業手当の不払いに対する罰則

休業補償の不払いの場合、六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金を受ける可能性があります(労基法119条)。
休業手当の不払いに対しても、三十万円以下の罰金を受ける可能性があります(労基法120条)。
また、休業手当の不払いについては、不払い分と同額の付加金の支払いが命じられる場合があります(労基法114条)。

派遣の休業補償・休業手当に関する判例

派遣労働者の休業手当等の支払いについて、三都企画建設事件があります。

事件の概要

派遣労働者としてYに登録されていたXが、とある会社Aに派遣されていたところ、AからXを交代するようにYへ要請されました。
その結果、YはXに対して交代を命じ、同時にXを解雇したという事案です。
主位的には派遣の残期間に受け取ることができたであろう賃金請求を行い、予備的に休業手当などを請求しました。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

大阪地判平成18年1月6日
同裁判では、派遣先からXの就労を拒絶され、YがXを交代するようにとの要請に応じたことによって、Xの就労が履行不能となった場合、特段の事情がない限り、XのYに対する賃金請求権は消滅するとして、賃金請求は棄却しました。
他方で、この交代は労働基準法第 26 条にいう使用者の責に帰すべき事由による休業に該当し、原告は被告に対し休業手当の支給を求めることができるとしました。

ポイント・解説

派遣元が派遣先から労働者派遣契約を解除されたために派遣を打ち切った場合や、派遣先の陽性に応じて派遣期間の途中で派遣労働者を交代させた場合には、派遣元と派遣労働者との間の派遣労働契約は、契約期間が残っていれば、その間は存続することになります。この場合の処理としては賃金又は休業手当の支払いが必要になるのではないか、という問題があります。先の裁判例は、休業手当を支払うようにと判断しました。

休業補償・休業手当に関して派遣社員とトラブルにならないためにも、弁護士に相談したうえで正しい対応をとることが重要です。

以上に述べてきたように、派遣社員の問題は、正社員と異なり、派遣先と派遣元という二つの企業がかかわることから、そのどちらが費用を負担すべきか問題となります。自社で対応すべきなのかどうか、判断するには専門知識が不可欠です。
埼玉県内で、派遣社員に関する休業補償・休業手当に関してお悩みの企業様は、ぜひ一度弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

企業にとって、採用活動は非常に重要な業務の一つです。その企業で働く人が企業を支えていくわけですから、企業にマッチした良い人材を採用することで、更なる企業の発展を図ることができます。
他方で、採用内定を出した後に、内定を取り消したい事情が発覚することもあります。企業にマッチしない人材を採用することは、企業にとっても労働者にとっても良いことではありません。この場合、双方の合意があれば問題ありませんが、企業の一方的な意思表示で内定を取り消すことができるのでしょうか。本日は、採用内定の法律問題についてご説明させていただきます。

採用内定はどのような法的性質を持つのか?

採用内定という言葉が広く使われていますが、採用決定した場合の採用内定については、始期付解約権留保付労働契約が成立したものと扱われます。
そのため、労働契約上の地位を主張することができる(解雇権濫用法理の適用を受けるなどする。)ことになります。

採用内定は労働契約の成立と解されるのか?

企業としては、採用内定というものについては、未だ労働契約の成立に至っていない(労働条件なども明示していない)という主張をしたいところですが、「採用通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定」されていない場合には、労働契約が成立したものと解されてしまいます(最判昭和54年7月20日・大日本印刷事件判決参照)。
一般的には、採用内定を行った場合には、労働契約が成立しているものと解されるでしょう。

内々定の場合は?

他方で、内々定の場合はどうでしょうか。
内々定という言葉が労働法令に記載されているわけではありませんが、これを採用決定の前段階、採用予定の通知と解するのであれば、労働契約は未だ成立していないと解されます。
採用内々定は、正式な内定までの間の囲い込みという事実上の活動にすぎないと解されます。
もっとも、採用内々定の取消の過程について信義則違反があるとして、使用者側に損害賠償を命じた裁判例もありますので(福岡高判平成23年3月10日)、内々定だからといって、何をしても良いわけではありませんので、注意が必要です。

「始期付解約権留保付の労働契約」の考え方とは

始期付解約権留保付の労働契約とは、労働契約が開始される時期は決まっているものの、それまでの期間に内定を取消すべき事情等が発生した場合には、企業が労働契約を解約する権利を留保している労働契約です。
未だ労働契約が開始されていない点と会社が解約権を有している点が、始期付解約権留保付きの労働契約の特徴です。

取消事由に該当する事実があれば内定取消は認められるか?

解約権を留保している以上、取消事由に該当する事実があれば、無制限に内定取消が可能かといえば、そうではありません。

労働契約法における「解雇権濫用法理」の適用

採用決定としての採用内定は、労働契約が成立している以上、労働契約上の地位を主張することができます。
そのため、解雇権濫用法理(労契法16条)と同様の規制に服することになります。
採用内定決定当時知ることができず、また知ることが期待できない事実が判明し、しかも、それにより採用内定を取り消すことが客観的に合理的と認められ社会通念上相当として全することができる場合に限って、採用内定を取り消されるとされます。

内定取消が認められる合理的理由とは?

例えば、重大な経歴詐称や、就労開始日までに犯罪行為を行った場合には、合理的理由があるとされます。
他方で、健康診断で何らかの異常が発見されたとしても、それが業務遂行と関係がなく、あるいは業務遂行に支障を来さないものである場合には、内定取消の合理的な理由がないものと判断出れます。

不当な内定取消は損害賠償事由になり得る

内定取消が不当であり、無効である場合には、通常の解雇同様、就労開始予定日以降の地位確認やバックペイの支払いが認められます。
また、損害賠償としての慰謝料請求などの損害賠償請求を受ける可能性もあります。

内定取消時の解雇予告・解雇予告手当の必要性

行政解釈では、解雇予告を行う必要があるとされていますが、労基法上、14日を超えて使用されるに至った場合に初めて解雇予告の保護を受けるとされています(労基法21条)。
これとの均衡上、採用内定には解雇予告の適用はないと考えられています。

新卒者の内定取消に関する職業安定法上の規制

新規学校卒業者の採用に関する指針により、事業主は、採用内定取消しを防止するため、最大限の経営努力を行う等あらゆる手段を講じることが求められます。
また、やむを得ない事情により、新規学校卒業者の採用内定取消しを行おうとする事業主は、所定の様式により、あらかじめハローワーク及び施設の長に通知することが必要です(職業安定法施行規則第35条第2項)。

内定期間中の内定者の義務について

内定の法的性質は、始期付解約権留保付労働契約です。ただ、この始期というものが、就労の始期なのか、労働契約の効力発生の始期なのかは事案によって異なります。
前者であれば、就労以外の労働契約上の義務を課すことは可能となります。

入社前研修の実施は法律上問題ないか?

では、入社前研修はどうでしょうか。就労始期付の契約となれば、研修を命じることは出来ますが、内定者が新卒学生である場合には、学業が優先されるため、効力始期付と解される場合が多いため、研修を命じるのは難しいでしょう。
また、仮に労働契約の遂行と認められる場合には、賃金の支払いも必要となってきますので、留意が必要です。

内定者に就業規則を適用できるか?

これも、契約の解釈に応じます。就労始期の契約と解されれば、労働契約の適用があります。

内定者からの内定辞退は法的に認められる?

これは特段の事情のない限り、内定者から一方的に辞退することが認められます。
企業が内定者を強制的に就労させることは出来ませんし(労基法5条)、期間の定めのない現実に就労している労働者であっても2週間以上の予告期間を置けば自由に辞職できる(民法627条1項)ことからすれば、内定者は自由に内定を辞退することができると考えられます。

内定辞退に対して損害賠償を請求できるか?

内定者が自由に内定を辞退することができる反面、企業は、内定者に対し、内定辞退に関して、原則として損害賠償請求は出来ません。
ただ、理論上、内定者からの一方的な内定辞退について、時期や理由によっては、濫用であるとして賠償請求できる可能性はあります。そうであったとしても、企業に対して、そこまでの損害賠償をしなけらばならないとの判決が出るとは考えられませんので、損害賠償請求を行うよりも、内定辞退してきた学生等を説得する方が、コストはかからないでしょう。

採用内定に関する裁判例

採用内定について、労働契約成立を認めたものについて、大日本印刷事件判決があります。

事件の概要

これは、採用内定の段階においては、内定者が企業において有する地位、受ける給与、勤務時間、勤務場所等、労働契約の内容である労働条件が何ら明らかにされていないので、当事者間に労働契約が成立したと認める事情はないとして、企業が採用内定による労働契約の成立を争った事件です。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

最判昭和54年 7月20日によると、
「本件採用内定通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていなかつたことを考慮するとき、上告人からの募集(申込みの誘引)に対し、被上告人が応募したのは、労働契約の申込みであり、これに対する上告人からの採用内定通知は、右申込みに対する承諾であつて、被上告人の本件誓約書の提出とあいまつて、これにより、被上告人と上告人との間に、被上告人の就労の始期を昭和四四年大学卒業直後とし、それまでの間、本件誓約書記載の五項目の採用内定取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したと解するのを相当とした原審の判断は正当であ」るとして、労働契約の成立を認めました。

ポイント・解説

本判例のポイントは、採用予定としての内定(=内々定)と、採用決定としての内定との違いの判断に関する基準を示したことにあります。
内々定にすぎない内定を出す場合には、「労働契約締結のための特段の意思表示をすること」を予定する必要があるため、未だ採用決定に至っておらず、次の意思表示を予定していることを当事者間のやり取りのメール等によって明らかにしておく必要があります。

採用内定に関して不明点があれば、法律の専門家である弁護士にご相談下さい。

以上に述べてきたように、採用内定については、労働契約が成立しているかどうか、取消しが可能か等、法的に様々な問題があります。
企業にとって、人材の採用が重要であることは言うまでもありませんので、採用活動に伴う採用内定の法律問題について、企業が目を背けることは出来ません。
採用内定に関して問題を抱える埼玉県内の企業は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

新型コロナウイルスに感染した、PCR検査で陽性だった、そういった社員が現れることは、現在の状況では他人ごとではありません。
自社で、そういった社員が生じた場合、どういった対策を取っていくべきなのか。本日は、新型コロナウイルスに伴う自宅待機命令についてご説明いたします。

新型コロナウイルス流行に伴う自宅待機命令

「自宅待機」とは、使用者が労働者を出社させるのが不適当と判断した場合に、当該労働者を出社させずに自宅で待機するように命じる措置です。
新型コロナウイルスは、人と人の接触によって感染すると言われることから、自社で新型コロナウイルスに感染した場合等に、自宅待機命令を行うことで感染拡大防止を図れないか検討することになります。

自宅待機命令の効力について

従業員には、原則として働く権利(就労請求権)はないため、自宅待機命令が適法になされているのであれば、従業員はこれに従い、自宅で待機しなければなりません。

業務命令としての自宅待機命令とは

会社は、随時、人事権の行使として自宅待機命令を出すことができます。
もっとも、会社の指揮命令に復していることから、原則として有給としなければなりません。

新型コロナウイルスによる就業制限は可能か?

では、新型コロナウイルスを理由とする自宅待機、就業制限を行うことは可能なのでしょうか。
結論から言うと可能です。
新型コロナウイルスに感染している場合、新型コロナウイルス感染症は、感染症法上の指定感染症ですから、感染した従業員は就業制限の対象となります。そのため、就業制限をすることが可能となります。

感染が疑われる段階での自宅待機命令

では、感染が疑われる段階で自宅待機とさせることはどうでしょうか。これ自体も、もちろん人事権の行使として可能です。
ただ、以下に述べるように、自宅待機中の給与の問題が生じますので、可能な限りテレワークを検討することをお勧めします。

自宅待機中の給与を支払う義務

給与というのは、労務の給付の対価として支払われるものですから、労働者が自らの意思によって労働をしなければ労働の対価である給与を請求することは出来ないのが大原則です。
他方で、自宅待機命令等労働者の意思によらずに休業する場合には、民法の危険負担の原則に立ち返ることになります(民法536条)。この場合、使用者の都合(責めに帰すべき事由)で休業させる場合には、労働者は給与を請求することができます。

しかしながら、新型コロナウイルス感染症は、世界的に蔓延しているもので、感染経路がわからない感染者も増えてきている感染症です。会社が適切な感染予防策を取っていたとしても、完全に防ぐことは不可能といわざるを得ません。
そのため、民法上の使用者の責めに帰すべき事由に該当し、賃金の全額を保障すべき休業と判断される可能性は一般的に低いと考えられます。
したがって、新型コロナウイルスに感染している疑いがある場合には、感自宅待機中の給与の支払いは、不要であると考えられます。

「使用者の責に帰すべき事由による休業」とは

他方で、労基法26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない」と規定しています。
休業手当の保障における「責めに帰すべき事由」は、天災事変などの不可抗力に該当しない限りは認められるとされており、労働者の保護を図ったものとされています。
民法上は使用者の責めに帰すべき事由に該当しないとしても、その発生原因が使用者の支配領域に近いところから発生したもので、労働者の賃金生活の保障という観点から、使用者に6割の程度で保障させた方がよいとされる場合には使用者には休業手当の支払い義務があるとされています。
新型コロナウイルスを理由とする自宅待機については、こちらの事由に該当する可能性があります。
そのため、テレワークによる自宅勤務の可否については十分に検討することをお勧めします。

自宅待機期間の終了について

新型コロナウイルス感染症の潜伏期間を踏まえ、WHOにより健康状態の観察が推奨されている期間としては、最低で14日間とされています。
医師と相談する必要がありますが、14日程度を目安とすると良いでしょう。
※もちろん、症状がある場合は別ですし、PCRで陰性が明らかとなった場合も別です。

派遣社員への自宅待機命令

派遣契約の内容によりますが、派遣先企業が派遣社員に対して自宅待機命令を下すことは出来ます。
この場合、派遣契約の定めに従って派遣料金は処理されることになりますが、定めがない場合には、民法に立ち返って、派遣先に責めに帰すべき事由があるかどうかが検討されることになります。

自宅待機の要否は派遣元、派遣先のどちらが判断するのか?

派遣先企業が実際の指揮命令権を有し、また実際にそこで労働を行っていることから、派遣先企業が自宅待機の要否を判断することになります。

高年齢者を雇用している場合の対応

新型コロナウイルス感染症は、高リスク患者であればあるほど、死亡率が上昇するとされています。そして、高年齢者は高リスクを有している場合が多いとの見解もあります。
会社は従業員に対して安全配慮義務があることから、高年齢の従業員に対しては、例えば、優先的にテレワークにするなど、そのリスクに応じた対応を求められることになります。

高年齢労働者のみに自宅待機を命じることは可能か?

前記したとおり、高年齢者に対する安全配慮義務の履行として、そのような判断も可能です。
自社において自宅待機を命じる基準の中に年齢が一定以上に達している者等の条件を設けることも考えられます。

自宅待機命令に関するQ&A

緊急時の連絡手段として、社内連絡網を作成することは問題ないでしょうか?

個人情報ですので、使用目的、共有範囲などを明確にしておく必要があります。

就業規則に規程がなくても自宅待機を命じることは可能ですか?

自宅待機命令は、人事権の行使として認められますので、就業規則に規程が無くても可能です。

社員の家族に風邪の症状がある場合、自宅待機を命じるべきでしょうか?

ケースバイケースです。社員の家族が濃厚接触者であったとしても、社員自体は濃厚接触者に該当しないこともありますから、症状や状況を見て判断しましょう。

自宅待機中に有給休暇を取得してもらうことは可能ですか?

労使間の合意があれば可能ですが、その意思に反して有給休暇を取得させることは出来ません。

在宅勤務が可能な社員に自宅待機を命じた場合、休業手当の支払いは必要ですか?

厚生労働省のQAによれば必要です。在宅勤務が可能な場合は、まず在宅勤務を命じてください。

新型コロナウイルス感染の疑いがある社員を自宅待機とした場合、傷病手当金は支給されますか?

傷病手当金支給の要件を満たせば支給されますが、被保険者自身が労務不能であることが要件なので、症状がない場合(陽性者である場合は別ですが。)は難しいでしょう。

自宅待機中の社員に、定期的に病状の報告をさせることは可能でしょうか?

自宅待機は業務命令の一環ですから、定期的に病状の報告をさせることは可能です。ただ、症状がある社員などに対しては一定の配慮が必要です。

自宅待機命令と出勤停止命令の違いについて教えて下さい。

自宅待機命令は業務命令であり、出勤停止命令は懲戒処分です。
自宅待機命令は、就業規則上の定義がなくても実施できますが、出勤停止は懲戒処分であり、就業規則の規定なしに下すことはできません。また、懲戒事由なく下すこともできません。

新入社員を自宅待機させる場合、休業手当の支払いは必要ですか?

新入社員であっても従業員であることに変わりはありません。
使用者の責に帰すべき事由により自宅待機をさせるとすれば、通常の社員と同様の休業手当の支払いが求められることになります。

自宅待機中に新型コロナウイルスに感染した場合、労災は適用されますか?

自宅待機中に新型コロナウイルスに感染したと断言できるケースはほぼないでしょう。労災の場合には、業務起因性が求められるため、非常に難しいと言わざるを得ません。

自宅待機命令に関する様々なご質問に弁護士がお答えします。お気軽にご相談ください

新型コロナウイルス感染症については、ようやくワクチン接種が始まったこともあり、まだまだ予断を許さない状況が続いています。自社において、新型コロナウイルス感染症に関連して自宅待機命令を下さなければならない状況は、まだ続くでしょう。
こういった場合の給与支払い義務の有無等については、法的な判断が絡むことから弁護士にご相談することをお勧めいたします。

埼玉県内で新型コロナウイルス感染症に伴う自宅待機命令でお悩みの企業の方々は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にお問い合わせください。

団体交渉を申し込まれた際、どのように進めていくべきなのか、悩まれる経営者や担当者の方は多いです。今回は、団体交渉の流れと進め方について、ご説明いたします。

団体交渉の流れと進め方について

団体交渉は、組合側からの申入れによって始まります。

団体交渉の申し入れがあった場合の初動対応

団体交渉の申入れがあった場合の初動対応としては、まず、団体交渉を行う法的義務の有無を判断することになります。自身が団体交渉義務を有する使用者であるか、また労働組合の求めている事項が、義務的団交事項であるかどうかを検討します。
また、申入れの内容が抽象的であった場合には、団体交渉の充実のためにも、釈明を行っておく必要があります。

団体交渉の事前準備と予備折衝

そして、団体交渉を受けることになった場合には団体交渉の場所、日時等について、使用者が主導して労働組合に提案しなければなりません。
団体交渉の場所と日時を決めた後は、実施される日までの間に、出来る限りの事前準備を行うことが重要です。使用者側の主張を明確にし、その根拠資料を揃えることや、想定問答集を準備します。

団体交渉に向けて決めておくべき事項

団体交渉に向けて、出席者や発言者、場所、日時、費用負担などは検討しておく必要があります。

団体交渉の出席者・発言者

使用者側の出席者・発言者を誰にするか決めることが重要です。
中小企業であれば社長が出席されることも重要ですが、具体的な団交事項について、事情を把握している社員や管理職にあるものも出席するほうが、有意義な交渉を行うことができます。
また、実際の団体交渉の場において誰が主導して発言するかなども、あらかじめ決めておくことが重要です。

団体交渉の場所

団体交渉の場所については、自社会議室での開催を求められることもありますが、特に外部の合同労組から断行を求められた場合は情報管理等の観点から相当でないので、外部の貸会議室などで時間を区切って行うことがよろしいです。

団体交渉の日時

団体交渉の日時についても、使用者側から積極的に提案をすることが重要です。
もっとも、あまりに合理性のない日程(数カ月先等)を誠実団体交渉義務に違反することになるので注意が必要です。
この際、団体交渉の時間も併せて定めておく方が望ましいといえます。

団体交渉の費用負担

例えば、貸会議室での団体交渉を行う場合、費用が掛かりますが、これについては基本的に使用者側にて負担することをお勧めします。
費用が掛かることを理由に外部での開催を拒否されることは、使用者側にとってメリットがありません。

弁護士への依頼の検討

団体交渉に際し、使用者側に弁護士を介入することにはメリットがあります。
団体交渉に詳しい弁護士を介入させることによって、法的な観点から、どこまで交渉に応じるべきかといった事項から、日時や場所の設定までアドバイスすることができます。
使用者側の負担を軽減するためにも、弁護士への依頼をご検討ください。

団体交渉当日の進め方

以上のような事前準備を行ったうえで、団体交渉当日を迎えることになります。
当日は、実際に団体交渉を行い、議事録等の作成を行うことになります。

団体交渉の協議内容

団体交渉の協議の対象となる事項は、企業が処理し得る事項であれば、使用者が任意に対応する限りは、どのような事項でも良いとされています(任意的団交事項)。
しかしながら、労組法によって、労働組合からの団体交渉の要求に対して、団体交渉に応じなければならない事項は、そこまで広くありません(義務的団交事項)。

概括的に述べれば「組合員である労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なもの」となります。例えば、労働条件や人事評価などは、義務的団交事項に該当します。
そして、労働組合から申し入れられた事項について協議を行っていくことになります。

録音や議事録の作成

どのような交渉事においてもそうですが、のちの紛争を避けるためにも、録音や議事録の作成を行っておく必要があります。
議事録がある場合には、次回の交渉の準備の際にも資することになるので、議事録の作成を忘れないようにすべきです。
なお、録音を行う場合には、労使双方の同意を取ることが重要です。

団体交渉の場で会社がやってはいけないこと

当然ですが、暴力の行使はいかなる場合でもいけません。また、暴言もいけません。団体交渉の中では「聞けや、ボケ」「やれ団交だ、やれ何だかんだって言ってる場合じゃねえぞ」等、不穏当な発言がされることもありますが、使用者側がこのような発言をして団体交渉が実質的に滞る事態に至った場合に誠実団体交渉義務に反するものとして不当労働行為にもなりかねません。

そして、組合の要求を全て飲む必要がないにもかかわらず、安易に応じてしまうこともいけません。誠実に交渉するべき義務はありますが、要求の内容に必ず応じる義務はありません。
こういった点に留意すべきでしょう。

労働組合との団体交渉の終結

団体交渉が集結する場合は、労使間での合意が形成できた場合と、交渉が決裂した場合が考えられます。

労使間で合意に至った場合

労使間で合意に至った場合には、合意書を作成し、労働協約を締結することになります。
労働者の雇用や賃金での交渉であった場合には、当事者である労働者の署名押印や清算条項をいれることを忘れないようにしましょう。

団体交渉が決裂した場合

交渉が決裂したからといって、即座に団体交渉を打ち切ってしまうと、誠実交渉義務違反となりかねません。
労使双方が、主張や説明、提案を尽くし、交渉がこれ以上進展することが無い段階に至った場合に初めて、決裂したとして、交渉を終結させるべきです。
その際は、議事録において、合意に至らなかった理由について明記しておくことをお勧めします。

団体交渉に関する裁判例

団体交渉に関する裁判例としては、様々なものがありますが、商大自動車教習所事件判決をご紹介いたします。

事件の概要

本裁判例は、労働組合が、会社に対して団体交渉を申し入れたところ、会社が団体交渉の場所、時間及び人員に関する団体交渉ルールが確立されていないことを理由に団体交渉を拒否したことが不当労働行為であると争われた事件です。

会社は、2時間、場所を指定し、会社側は四名、組合側は合わせて五名程度(本件は2つの労組から申し入れがありました。)での交渉を行いたいと申し入れましたが、組合側はこれを拒否したため、会社が団交を拒否したというものです。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

【東京高判昭和62年9月8日】
「控訴人は、五月一一日より後の状況は、交渉場所について労使の意見の相違があったにすぎないのであって、控訴人による団体交渉拒否というべきものではない旨縷々主張する。しかしながら、(証拠略)によれば、分会及び労組が団体交渉の場所として控訴人会社の施設内(教習所施設内)に固執したことが認められるが、控訴人としては交渉場所については会社施設外を堅持するとしても、交渉の時間及び人員については柔軟に対応することは不可能ではなかったにも拘らず、交渉の場所、時間及び人員についての三条件の全てに関する団体交渉のルールが設定されなければ団体交渉に応じないという態度を崩さなかったことは前記(二)で説示したとおりであって、交渉の時間及び人員について控訴人が提示した条件は後記四で説示するとおり合理性を欠くものであり、以上の点を総合すれば、分会及び労組側にも行き過ぎた行動があったことを考慮しても、控訴人は団体交渉のルールが設定されていないことを理由として団体交渉を拒否していたものといわざるをえない。当審における控訴人の主張(一)は採用することができない。」と述べて、誠実交渉義務に違反すると判断した。

ポイント・解説

使用者が団体交渉の場所、時間、人員に関するルール設定に固執し、交渉に応じないことが、組合側の交渉要求にも行過ぎがあつたことを考慮しても、不当な交渉拒否に当るとされた点がポイントです。

一般に、使用者が団体交渉の場所、時間、人員について労組からの提案とは別の提案を行うことは許されていますが、あまりに固執しすぎると違法となることが有るので注意が必要です。

早期解決には冷静かつ粘り強い交渉が必要

団体交渉については、労使ともに熱くなってしまうことが有りますが、感情的な対立を引き起こすような交渉態度は良くありません。
団体交渉はあくまでも、労使の協議の場であり、合意の形成を目指す場でもあります。冷静かつ粘り強く、互いの主張について根拠を交えて交渉し、合意の形成を目指すことが肝要です。

団体交渉を有利に進めるためには、専門的な知識が必要となります。まずは弁護士にご相談下さい。

以上に述べたように、団体交渉にあたり、組合からの申入れに対して受け身の姿勢を取るだけでは、団体交渉を有利に進めることは出来ません。他方で、対立的な態度を取ってしまった場合には、違法となってしまうリスクもあります。
団体交渉を有利に進めるためには、専門的な知識を有する弁護士にご相談いただくことが必要になります。

埼玉県内で、団体交渉の進め方でお困りの使用者の方や担当者の方は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

会社の経営者の方から労働問題の相談を受けるとき、「勤務態度の悪い従業員を解雇したところ、労働組合から団体交渉を申し入れられた」、「うつ病で満足に仕事ができない従業員に退職勧告を出したところ、不当解雇だと言われている」、「突然、社外の労働組合から団体交渉を申し込まれた」といった話を聞くことがあります。 特に、ユニオン、合同労組といった外部の労働組合からの団体交渉の申入れについて悩まれる方も多いのではないでしょうか。

労働組合側は、労働法の知識や、団体交渉の経験がある者が交渉にあたるので、使用者側としても、労働法の知識を有し、労働関連紛争の経験がある弁護士を団体交渉に関与させておくことにメリットがあります。

団体交渉には専門的な知識と経験が必要

どのような交渉であってもそうですが、労働組との団体交渉においても、専門的な知識と経験が必要です。

団体交渉で協議する内容は、労働者の労働条件や待遇等に関するものです。この協議には、労働法の規制に関する専門的知識が必要です。

また、使用者には単に外形上、交渉の席に着くだけでなく、労働者の代表者と誠実に交渉する義務があるため、誠実に交渉を行わなければなりません。誠実交渉義務に違反した場合、使用者が、不法行為に基づく損害賠償の責任を負うこともあります。誠実交渉義務に反しないように、団体交渉を進めるには、団体交渉の経験があることが望ましいと言えます。

有利に進めるには弁護士の関与が不可欠

以上の様に、団体交渉を有利に進めるには、労働法に関する専門的な知識と、団体交渉の経験が不可欠です。

自社で、このような人材を用意することができれば何よりですが、専門的な知識と経験を有する弁護士を関与させることで、団体交渉を有利に進める方策を立てることができます。

また、団体交渉の場にも弁護士が出席することで、労働組合からの圧力に屈しないように、交渉を進めていくことも可能となります。

団体交渉における弁護士の役割

団体交渉における弁護士の役割は、事前準備と、実際の交渉です。

使用者には、団体交渉義務がありますが、義務的団交事項出ない交渉を要求されても、応じる必要はありません。
弁護士としては、まずは、義務的団交事項であるか否かを検討することになります。

また、団体交渉に応じることとなった場合も、場所や日時について、イニシアチブをもって決定していくこと、交渉の際に、労働組合の要求を拒絶するとしても、その理由を具体的に説明するように準備しておかなければなりません。

そして、実際の団体交渉において、交渉を主導していくことが、弁護士の主な役割です。

団体交渉で弁護士に依頼することのメリット

団体交渉を弁護士に依頼することのメリットは、やはり、専門的な知識と経験を持った使用者側の味方を用意することができる点です。

経験に基づく交渉戦略の立案

例えば、団体交渉を申し入れられた場合、早期の団体交渉を希望されることが多いですが、これに不必要に応じる必要はなく、無理な日程での団体交渉を受け入れなければならないわけではありません。
もちろん、使用者側も不必要に交渉時期を引き延ばすことは許されませんが、交渉に当たって準備する時間が必要であれば、それは認められます。

こういったように、労働組合から団体交渉を申し入れられたとしても、交渉日時や場所の設定から使用者側でイニシアティブ握っていかなければならないのですが、弁護士に依頼することで、こういった交渉戦略についてのアドバイスを受けることができます。

また、誤解されかねない発言や撤回困難な説明をしてしまえば、労働組合との交渉がまとまらなくなる恐れもありますが、弁護士に依頼することで、使用者側の主張の明確化や、根拠の整理や、想定問答などを準備したうえで、交渉に臨むことができるようになります。
交渉は、弁護士業務の基本でもありますから、弁護士に依頼することで、経験に基づいた団体交渉の戦略を立案していくことができます。

迅速な対応と最良な解決策の提案

不必要に短期な日程で、団体交渉に応じる必要はありませんが、迅速な対応は、誠実な交渉の表れであることから、出来る限り早い対応が求められます。

しかしながら、自社のみであれば、専門的な知識と経験の不足から、迅速な対応をしていくことには限界があります。団体交渉の経験を有する弁護士に依頼することで、準備すべき事項などについて主導してもらうことができるため、迅速な対応が可能となります。

団体交渉を解決していく(合意に向けて進めていく)にしても、労働法の知識がなければ、適正な解決を行うことは出来ませんから、専門的な知識を有する弁護士に依頼することで、最良な解決策の提案を受けることができます。

事態の悪化・会社の不利益を防ぐ

労働者の解雇や未払い賃金の請求などが団体交渉で解決できなかった場合には、労働審判、訴訟などの別手続きに移行することになります。また、団体交渉中に、誤解されかねない発言をしてしまったことで、団体交渉がこじれたり、長引いたりすることもあり得ます。

紛争の長期化は、それ自体で会社の不利益となりますから、団体交渉に弁護士を関与させることによって、事態の悪化や会社の不利益を防ぐことが可能となります。

弁護士が味方につくことで冷静な話し合いができる

もちろん、当事者によりますが、当事者である使用者と労働組合のみで交渉を行っても、感情的な争いとなってしまうことがあります。

例えば、労働組合側の感情的な発言によって、使用者側も感情的な発言をしてしまうなど、感情的な対立を引き起こし、紛争の長期化につながってしまうことが有ります。
使用者側に弁護士を関与させることによって、弁護士が冷静に団体交渉を取り仕切ることで、冷静な話し合いが期待できます。

交渉中止や和解の落としどころを判断できる

使用者には誠実交渉義務がありますが、交渉の結果、交渉が成立する見込みがないと判断できる場合には交渉を打ち切ることができます。しかし、交渉の打ち切りは、労働者側から、使用者が誠実交渉義務に反して交渉を打ち切った等として争われる恐れもあります。
弁護士を関与させることで、誠実交渉義務に反しない交渉の打ち切り、中止のタイミングの判断が可能になります。

また、和解の落としどころについて、弁護士が関与することによって、相当な落としどころがどこかを判断することもできるようになります。

労務トラブルを未然に防ぐ体制づくりをサポート

団体交渉を申し込まれた事案の中には、使用者側の対応に問題がある場合や労務トラブルにつながりやすいという場合があります。
弁護士を関与させることで、団体交渉を適切に行うだけでなく、労務トラブルを未然に防ぐ体制づくりまでアドバイスを行うことが可能になります。
次の団体交渉を申入れられるような問題を生じさせない体制づくりをサポートすることができます。

団体交渉の解決を目指すなら顧問契約の締結を

紛争は発生してしまった段階で、解決にコストがかかりますから、使用者側にとってはデメリットです。
真に団体交渉の解決を目指すのであれば、そういった紛争が発生しないような企業体制を作っていくことが肝要です。

弁護士と顧問契約を締結することによって、紛争を未然に防ぐ体制づくりを目指すことができます。また、弁護士としても、普段から関係のあるよく知った企業の事案であった方が、事案をよく理解し、解決に結びつけやすいというメリットもあります。

団体交渉のトラブルは深刻化する恐れがあります。早期解決のためにも弁護士に依頼することをお勧めします。

団体交渉にまで至ったトラブルは、大きな問題となって、会社に深刻な影響を与える恐れがあります。
団体交渉を誠実に実施していくためにも、これ以上の大きな問題としないためにも、早期に弁護士に相談することをお勧めします。

埼玉県内で団体交渉でお悩みの企業の方は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。