管理職と残業代請求-管理監督者とは

コラム

労基法上、管理監督者に対しては、残業代を支払う必要はありません。ただ、この管理監督者とは、日常的に使われる管理職とは違います。

今回は、実務上も頻繁に問題となる管理職の残業代について、ご説明いたします。

管理職に対しても残業代を支払う義務があるのか?

よくあるご相談の一つに、管理職の地位にあった従業員から残業代を請求されているが、管理職に対して残業代は支払わなくて良いんですよね。というものがあります。

確かに、労基法上の管理監督者に該当するというのであれば、残業代の支払いをする必要はありませんが、それが単なる名ばかり管理職というのであれば、管理監督者に該当するとは言えませんから、残業代を支払う必要があります。

管理監督者に残業代を支払う義務はない

労基法上、「監督もしくは管理の地位にある者」(=管理監督者。41条2号)では、労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用を除外しています(=時間外手当の支払い義務を免れるということです。深夜割増賃金の支払い義務までは免れません。)。

しかしながら、単に管理職の地位にあるだけでは、労基法上の管理監督者とは言えません。

管理監督者とは?

管理監督者とは、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」(労基法41条2号)のことを言います。

労基法上、管理監督者に該当するものには、労基法の労働時間、休憩、休日に関する規定が除外されます。管理監督者として認められた場合には、労働者の健康確保等のために定められた労働時間等の規制がかからなくなるため、労働者の心身の安全に極めて重大な影響を及ぼすものです。

名ばかり管理職では、管理監督者と認められない

そのため、店長という名前で稼働しているとはいえ、単なる雇われ店長にすぎず、何の権限もない方や、平社員と同様に勤怠管理がされている課長などは、管理監督者とは認められません。

逆に、経営方針を決定するような重要な会議に積極的に参加していたとか、労働時間に自由裁量があるとか、それに見合うだけの賃金を得ていたという場合であれば、労基法上の管理監督者と認められる方向に傾きます。

管理監督者でも深夜手当の支払いは必要

管理監督者に該当した場合に適用が除外されるのは、労働時間、休憩及び休日に関する規定ですが、労基法は、労働時間と深夜業を区別しているので、管理監督者であっても、深夜割増賃金を請求することは出来ます。

もっとも、所定賃金内に一定額の深夜増賃金を含める趣旨で定められていることが、労働協約、就業規則等によって明らかな場合には、既に支払っていることになりますから、支払う必要はありません(昭和63年3月14日基発150号)。

管理職には残業代を支払わないと就業規則で定めている場合は?

管理職には残業代を支払わないという就業規則を定めていたとしても、これが管理監督者には支払わないという趣旨であればともかく、労基法上の管理監督者に該当しない、自社の管理職に対して残業代を支払わないという規定であったとすれば、無効です。

就業規則よりも、労基法の定めが優先されます。

労働基準法における管理監督者の該当性

裁判所は、労基法上の管理監督者に該当するかどうかについて、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」などと定義した上で、管理監督者に該当するかどうかを、職位等の名称にとらわれず、職務内容、権限及び責任並びに勤務態様等に関する実態を総合的に考慮して判断しています。

労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有している

例えば、会社の経営会議に参加に参加し、その会社の行く末を決定するような職務内容であるとか、労働者の枠に収まらない重要な職務内容を有していなければ管理監督者とは言えないとされています。

労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有している

例えば、労働条件の決定その他労務管理について、自らの裁量にゆだねられていなければ、管理監督者とは言えません。

課長やリーダーなどの肩書があっても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事項について上司に決済を仰ぐ必要がある場合には、管理監督者とは言えません。

現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものである

経営者と一体の立場にある者は、時を選ばず経営上の判断や対応が要請されます。そのため、労務管理においても普通の労働者とは異なる立場にある必要があります。

労働時間について厳格な管理をされている場合には、管理監督者とは言えません。

賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされている

管理監督者は、その職務の重要性から、一般労働者としてふさわしい待遇(高い給与や賞与など)がなされていなければなりません。

そのため、課長やリーダーなどの肩書があっても、肩書がない労働者と待遇に異なるところが無ければ管理監督者とは言えません。

管理職が必ずしも管理監督者に該当するわけではない

以上に述べたように、管理職(課長など)の役職がついているからと言って、必ずしも管理監督者に該当するわけではありません。

その実態として、労基法の労働時間の規制の適用を除外するほどの職務や権限、待遇を得ている必要があります。

企業で違う管理職の扱い

そもそも、企業ごとにどのような管理職の地位を設け、どのような取り扱いをしているかは異なります。

係長や課長、次長、部長などの名称から、マネージャー等の名称を用いるものまで、企業によって異なります。

その企業の必要によって設けられた役職と、労基法の管理監督者が異なることは必然ともいえます。

「名ばかり管理職」と残業代の問題

労基法上は「名ばかり管理職」であったとしても、会社としては、管理監督者であると捉えてしまい、残業代を支払わなくてよいと勘違いしていることが有ります。

しかしながら、名ばかり管理職であったとしても、通常の従業員よりは賃金がある程度高かったり、また労働時間が長時間に及んでいることが多いです。

そのため、名ばかり管理職からの残業代の請求は高額の請求になりやすく、企業にとっては無視できないリスクとなっているのです。

管理職の勤務実態を把握する必要性について

管理監督者であれば、適用除外を受けることになり、他方で名ばかり管理職であれば残業代の支払いなどが義務となってきます。

自社の管理職が、どちらに該当するのかについては、その勤務実態から改めて確認し、適切に対処していかなければなりません。

今一度、管理職が、管理監督者に該当するのか、しないのか、確認されることをお勧めいたします。

管理監督者の該当性が問われた裁判例

管理監督者の該当性が問題となった裁判例は数多くありますが、特に有名なものとして、日本マクドナルド事件があります。

事件の概要

ファーストフードチェーン店の店長が、管理監督者に該当するかどうかが問題となったものです。

アルバイトの採用権限や時給額、人事考課、勤務シフト等の決定に関する権限を有し、自己の勤怠の自由もあったという事案です。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

裁判所は、店長である労働者について、その権限について、アルバイトの人事上の権限を有してはいるものの、将来アシスタントマネージャーや店長に昇格していく社員を採用する権限はないことや、企業全体としての経営方針等の決定に関与していないということから、重要な職務と権限を付与されているとは認められないとされ、勤怠の自由についても、形式的には裁量があることもあるが、労働時間に関する自由裁量性があったとも認められないとし、処遇についても、シフトマネージャーの業務も兼務していたこと等から労働時間等も踏まえれば、管理監督者に対する待遇としては不十分であるとして、管理監督者性を否定しました。

ポイントと解説

チェーン店とはいえ、店長という独立した職場の長が、ある程度の権限を有していたにもかかわらず管理監督者性を否定されたところが大きなポイントです。

判断要素自体は従前重要視されていたところと変わらないのですが、この裁判例によると、経営者との一体的な立場については、企業全体の運営への関与を要するとしたように見えるところがあり、担当する組織(店など)について、経営者の分身として経営者に代わって管理を行う立場にあることで、経営者と一体とみても良いのではないか、という評価も受けています。

もっとも、事案判断としては、シフトマネージャーとしての営業業務にも従事していたにもかかわらず、店長としての報酬しか得ていなかったという事情もあることから、事案判断としては、相当なものであると評価されています。

管理職について正しい知識を持つ必要があります。企業法務でお悩みなら弁護士にご相談ください。

以上に述べてきたように、単に管理職であるからと言って、残業代を支払う義務がないとは直ちには言えません。

管理職は、会社でそれ相応の地位にあることが多いことも相まって、通常の従業員よりも高額な賃金を得ているために、残業代の金額も高額になってしまいます。また、管理職であるがために、長時間労働をしているケースも多く、時間外労働時間もかなり長時間に及ぶことも多いです。

そのため、単価も高く、また支払うべき時間外労働時間も長くなってしまうケースが多く、管理職の未払い残業代問題が会社に与える経済的な負担は極めて大きなものになりがちです。

このようなリスクがあるにもかかわらず、管理監督者に該当するか否かは、役職名だけで決まるものではなく法的な判断を伴います。

そのため、自社のみで判断することなく、弁護士などの専門家に相談することは必要不可欠と言わざるを得ません。

埼玉県内で、自社の管理職が管理監督者に該当するか否かお悩みの企業の方は、ぜひ一度弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所にご相談ください。

整理解雇について

事業を経営している場合、売上の減少や経営状況悪化に伴い、固定経費を削減しないといけない場面が出てくることが有ります。会社内の人員の整理もその一つです。

今回は、人員整理の方法として、整理解雇についてご説明させていただきます。

普通の解雇と整理解雇は何が違うのか

解雇とは

解雇とは、会社の一方的な意思表示によって、従業員との間の労働契約を終了させるものです。会社と従業員との間には、力関係に明確な差があることから、日本では、会社からの一方的な解雇に対する法的な規制がなされています。

労働契約法第十六条において、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」されています。

整理解雇とは?

経営不振などの経営上の理由により人員削減の手段として行われる解雇を整理解雇といいます。すなわち、整理解雇とは解雇に求められる合理的な理由のうち、経営上の必要性との理由によって行われるものです。

整理解雇4要件と整理解雇の流れ

整理解雇に求められる要件

整理解雇は、例えば労働者の義務違反等、労働者側の事情に基づくものではなく、会社の事情に基づく解雇であることから、その他の理由に基づく解雇よりも厳しい制約が課されています。

いわゆる整理解雇4要件(①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④手続きの妥当性)が要求されることになります。

人員削減の必要性

解雇の理由として、人員を整理=削減する必要を掲げている以上、当然かもしれませんが、経営上の理由により、人員削減する必要性があることが要件とされています。

実務上は、企業の経営実態を詳細に審査して人員削減の必要性を認定しているわけではなく、会社の経営判断を基本的に尊重する方向にあります。

但し、財政状況に全く問題が無い場合や、整理解雇を行いながらも新規採用を行っているなどといった事案では、人員削減の必要性が無かったと評価されてしまうことはあります。

以下に述べる手続きの妥当性ともかかわってきますが、実際に整理解雇に踏み切る前には、経営状態の悪化について説明会を実施するなどして従業員にも人員削減の必要性を理解してもらえるように勤めることになります。

解雇回避努力

また、人員を削減する必要性が認められるとしても、解雇以外の人員削減手段を模索し、解雇をできる限り回避することが求められます。

どういうことかといえば、残業の削減、新規採用の手控え、余剰人員の配転・出向、非正規従業員の雇止め・解雇、一時休業、希望退職者の募集などの手段を取ることが求められています。

そうはいっても、各会社によって事情が異なりますので機械的・画一的にこの処理のすべてを求められるわけではありません。抽象的にはなってしまいますが、当該企業において可能な限りの措置を取って解雇を回避するよう努力を尽くすことが必要です。

例えば、小規模な法人で、余剰人員を配転・出向させる余地がなかったという会社で、退職勧奨を行いながら話合いによる解決を目指したという事案では、解雇回避に向けて一応の努力を肯定しています(財団法院市川房枝記念会事件)。

実際に整理解雇を行う際には、まずは希望退職者を募集することが一般的です。この際、有能な従業員に退職されることを防ぐために、対象者は会社が承認した者という限定をつけておく方がよろしいです。

希望退職者の募集を行ったあと、役員報酬の減額や余剰人員の配転・出向、派遣社員やパート社員など非正規従業員の雇止めなどを検討すべきことになります。ただ、雇止め等においても、解雇権濫用法理と同等の保護がなされていますので、簡単に雇止めができるとはお考えいただかない方が無難です。

人選の合理性

解雇回避努力を尽くしたとしても、なお余剰な人員がいるという場合には、余剰人員数を確定したうえで、合理的な人選基準を定めて、その基準を運用し、解雇する従業員を決定することが求められます。

例えば、勤務成績や勤続年数、労働者の生活上の打撃(扶養家族の有無・数等)が、人選基準において考慮される要素といわれます。

恣意的な基準であると、整理解雇が無効となってしまうため、できる限り客観的な基準を用意することをお勧めします。

例えば、欠勤日数が合計何日以上あるものとか、懲戒処分歴があるもの、人事考課による評価がある基準以下であったもの等、後で恣意的な判断であると疑われないようにしておくと良いでしょう。

手続きの妥当性

労働協約や就業規則に解雇協議約款がある場合はもちろん、そうでなかったとしても整理解雇を行うにあたっては、人員整理の必要性や解雇回避の方法等について説明し、誠意をもって協議しなければなりません。 ある裁判例では、労働組合と協議し合意を得ていても、解雇される労働者本人から意見聴取の手続きを取っていなかったことを指摘して解雇手続きは十分な相当性を備えていないとしたものもあります(ジャパンエナジー事件)。

従業員に対して、十分な説明・周知を行うことが肝要です。

不意打ち的な整理解雇は手続の妥当性を欠くものとされる恐れが高いです。

まとめ

以上に述べた4要件を満たすかどうかを判断して整理解雇が有効かどうかを判断することになります。

もちろん、各会社によって実情・実態が異なりますから、それぞれの要件をどの程度満たすべきかどうかは、会社の実情・実態に応じて変わることになります。近年の裁判例では、4要件ではなく4「要素」(整理解雇が有効であるためには、全てを満たす必要がないという意味です。)であるとして、総合的に整理解雇の合理性・相当性を判断しているものもあるほどです。

自社に即した整理解雇の流れや具体的な要件の充足、整理解雇の有効性については、弁護士にご相談いただいた方がよろしいです。

埼玉県内で整理解雇についてお悩みの企業は、弁護士へご相談ください

以上に述べたとおり、整理解雇は、会社の都合によって解雇を請求していくものであることから要件を充足しない限り無効となりかねません。

会社としても従業員を解雇することは最終手段だとご理解いただいているとは思います。しかしながら、急激な経済状況の悪化から、会社としてやむなく整理解雇に踏み切らざるを得ないというケースもどうしてもあります。全員で倒れるのではなく、会社で働く従業員のうち、一人でも多くの生活を守る手段として、整理解雇という選択肢があるのだと思います。

整理解雇には、法的に難しいところがありますので、自社のみで手続を進めたり、判断されずに専門家である弁護士にご相談されることを強くお勧めいたします。

弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所では、整理解雇を行うにあたって、会社の実情から整理解雇の要件を満たしうるかの精査や、従業員に対する説明への立ち合いなど、整理解雇を行う段階で様々なサポートが可能です。

また、整理解雇を行った後、従業員から解雇無効を主張された場合の交渉や、労働審判等の紛争対応にもサポート可能です。

埼玉県内で整理解雇についてお悩みの企業は、ぜひ一度、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

はじめに

新型コロナウイルス感染症の感染拡大予防のためには、人と人との接触を減らしていくことこそが肝要であるとされています。

今までは、どこか特定のオフィスに勤め、自宅からそのオフィスに通勤したり、オフィス内で同僚と接触、また取引先と折衝を行うときも対面であるなど、人と人との直接的な接触が前提となっていました。しかしながら、今後は、人と人との直接的な接触を減らしていかなければなりません。

また会社が従業員に対して果たすべき安全配慮義務の実現や、休業手当の支払い義務の有無においても、テレワークの可否を検討しなければなりません。

今回は、テレワークを実現するにあたっての法的な留意点(労働時間管理など)について、ご説明していきたいと思います。

テレワークとは

テレワークとは、「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた言葉で、一般的に労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務のことをいいます。

ざっくり言うのであれば、オフィスに固定されず、勤務場所や時間にとらわれることのない働き方のことを言います。

テレワークの種類

テレワークは、労働者が労働する場所に応じて①在宅勤務、②サテライトオフィス勤務、③モバイル勤務の3つに分けられるとされています。

  1. 在宅勤務は、労働者の自宅で勤務を行うもので、通勤時間がなくなります。仕事と家庭との両立に資する働き方であるといわれてます。
  2. サテライトオフィス勤務は、労働者が属するメインのオフィス以外に設けられたオフィスを利用して勤務を行うものです。これは①と②の中間的なもので通勤時間を短縮しつつ、在宅勤務やモバイル勤務以上に作業環境が整った場所で働く働き方です。
  3. モバイル勤務は、ノートパソコンや携帯電話などを活用して臨機応変に選択した場所で業務を行うもので、労働者が自由に働く場所を選択できる最も柔軟な働き方です。

テレワークのメリット、デメリット

テレワークのメリットはなんといっても通勤時間の短縮です。労働者に自由な時間が増えることで家庭と仕事の両立が可能となります。また、会社にとっても、遠隔地の優秀な人材を確保したり、オフィスのコストを削減するなど様々なメリットがあります。

他方で、テレワークのデメリットは、場所に拘束されないからこそ、仕事と仕事以外の切り分けが難しくなり、長時間労働になりやすい恐れがあることです。これは労働者にとってもデメリットですし、労働時間管理が困難になることから、使用者にとってもデメリットです。

その他、コミュニケーションの取り方が従来と変わってしまうので、コミュニケーションを取りづらいとか、情報セキュリティの問題などの様々なデメリットもあるといわれています。

新型コロナウイルス感染拡大防止には、テレワークは避けて通れないこと

テレワークにはメリット、デメリットがあります。

ただ、新型コロナウイルスの感染が拡大している現状においては、人と人との接触を減らすテレワークの採用を検討しないということは出来ません。

もちろん、業種によってはテレワークが不可能という業種もありますが、新型コロナウイルス感染拡大防止のために、部分的であってもテレワークの導入を検討することをお勧めいたします。

テレワークの導入にあたって検討しておくべきこと

テレワークを導入するにあたっては、最低限、どのようなテレワークを導入するか、また運用するかのルール作りをしなければなりません。

その際に検討すべきことは、インフラ面の整備も大事ですが、①労働時間管理や業績評価の方法を検討したり、②従業員のメンタルヘルスケアを心がけておく必要があります。

テレワークにおける労働時間管理

テレワークであろうと、労働時間制度に変わりはありません。

そのため、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」にしたがって、適切に労働時間管理を行わなければなりません。

同ガイドラインによれば、労働時間を記録する原則的な方法としては、パソコンの使用時間などの客観的な記録によるべきであるとされています。

したがって、テレワークにおいてもパソコンの使用時間などの客観的な記録による管理が求められます。

テレワークにおける労働時間管理の難しさと評価方法の転換の必要性

テレワークの特徴としては、労働者が、使用者から離れた場所で就労していることです。

そうしますと、残業しているかどうかもわかりづらいところがありますから、テレワークの長時間労働になりやすいという特徴を防止するために、就業規則上、原則として残業は禁止しておくことが必要でしょう。

また、労働者が中抜けをしたとしても、パソコンさえ起動していえば、把握しづらいという問題もあります。もちろん、中抜け時間について、労使で協議し時間単位の年次有給休暇の制度を用いる等して対応することも考えられます。

ただ、いずれにせよテレワークである以上は、ある程度目が届かないことは避けられません。

そのため、テレワークにおいては、労働時間を見るのではなく、成果物で評価することと評価方法を転換していくことが不可欠だといえます。

事業場外みなし労働時間制の活用

テレワークであると労働時間管理に困難が生じるというのであれば、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときに該当するとして、事業場外みなし労働制を採用するという手段も考えられます。

ただ、テレワークにおいては①使用者の指示に即応する義務がないこと(情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態に置くこととされていないこと等)と、②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないことの二つの要件を満たす形で導入しなければ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難なときに該当しないとされています(「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」)。

いわゆる手待ち状態で待機させておくことは出来ません。なお、業務の目的、目標、期限等の基本的事項を指示することは、②にいう具体的な指示には該当しません。

要するにオフィスで作業させているときに近い環境でテレワークをさせたいというのであれば、みなし労働時間制を採用することは困難です。

テレワークに伴い、事業場外みなし労働時間制を活用したいのであれば、労働者の管理方法や評価方法について根本的な方針転換が必要になってくるでしょう。

テレワークとメンタルヘルス

テレワークの方がメンタルヘルスに影響を及ぼしやすいといわれています。

特に在宅勤務は勤務時間があいまいになりがちなところから、時間外労働につながりやすいといわれています。時間外労働はメンタルヘルスに影響しやすいとされますから、会社としても、時間外労働を防止するように心がけておく必要があります。

また、上司や同僚と空間を共有していないことから、指示を受けづらいとか、相談しづらい環境になってしまうともいわれます。

会社としては、チャットを駆使したり、定期的にビデオ会議によるミーティングを設定するなどして、普段よりもコミュニケーションの場を提供するように心がけていく必要があります。

そして、社員の心身に不調が見られる場合には、早期に産業医との面談を設定するなどしてメンタルヘルスケアを図っていく必要があるでしょう。

新型コロナウイルス感染症に関するテレワークの整備でお悩みの方は、弁護士にご連絡ください。

テレワークは、新型コロナウイルス感染症の流行前から、その導入の是非が検討されてきました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、その予防のために体制を十分に整備しないままにテレワークに踏み切らざるを得なかった企業様も多いです。

テレワークの整備には、労働時間管理やメンタルヘルスケアの問題も絡みますから、専門家のアドバイスを受けつつ、自社に適合したテレワーク環境を整備していく必要があります。

弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所では、テレワーク導入にあたって就業規則の整備など、多岐にわたる法的助言や導入支援を行うことが可能です。

埼玉県内で、テレワーク導入に関してお悩みの企業様は、ぜひ一度弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

令和2年5月13日(水)、同月20日(水)に、使用者側弁護士による社会保険労務士様向けシリーズ勉強会「ハラスメント対応―パワハラ防止法で求められる対処法―」をWEBにて開催しました。

当初の予定では、弊所の会議室にて開催を予定しておりましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のために、急遽Zoomを用いた方法に変更させていただきました。

急なお願いにもかかわらず多くの社会保険労務士の先生方に参加いただくことができました。

令和2年6月1日に施行される改正労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)について、同法において規定された職場におけるパワーハラスメントの定義や、雇用管理上講ずべき措置義務の具体的内容(相談体制の整備等)を中心に勉強会を開催させていただきました。

特に、来月より企業に課せられる措置義務の具体的な内容について、相談事例などを踏まえて重点的にお話しさせていただきました。

今後、弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所では新型コロナウイルス感染症が落ち着くまでは、セミナーや勉強会はWEBでの開催とさせていただくことになるかと思います。

社会保険労務士の先生方に有意義な、弁護士の視点からの労務問題に関する勉強会を今後も開催できるよう、WEBでの勉強会のより良い開催方法についても研鑽に努めてまいります。

ご参加頂きました先生方には、改めて感謝申し上げます。

はじめに

「うちの会社はコロナの感染拡大に何もしてくれない」「テレワークにもしてくれないんだ」「コロナが怖いので、休業してくれませんか」

従業員から、このように言われたとき、自分の会社では感染拡大防止措置を取っているから大丈夫だと答えられるでしょうか。

「高熱が出て、咳が止まらないんです。」「病院にいってPCR検査をしたら・・・」

ある日、従業員からこのような連絡が入ったとしたら、自分の会社ではどのように対応するのでしょうか。

新型コロナウイルスの感染拡大は、とどまるところを知りません。世間では自粛などによって感染拡大に努めていますが、それでも感染を完全に食い止めることは難しいでしょう。

ついに、令和2年4月7日には、七つの都府県に緊急事態宣言も出される事態となりました。また、同月16日には、全国まで対象地域を拡大していくことも表明されました。

自社の社員が感染してしまうことは、会社にとって、もはや避けられない問題です。

ですが、新型コロナウイルス感染症に対して、どのような対応を取るべきか、決めきれていない会社も多いのではないでしょうか。

新型コロナウイルスについて、気になる問題について、ご説明いたします。

新型コロナウイルス感染拡大防止措置について

新型コロナウイルスの特徴について

新型コロナウイルスとは

令和元年12月に中国武漢で原因不明の重篤な肺炎が発生し、この原因として新しいコロナウイルスが検出されました。これが、世にいう新型コロナウイルスです。

世間では、コロナと略されてることが非常に多いですが、WHOは令和2年2月11日にCOVID-19と命名しました。

インフルエンザと同じというのは本当なの?

世間では、当初、インフルエンザと似ているといったような風潮がありました。

インフルエンザは、3~4日までの症状が重く、その後は改善に向かうといわれますが、新型コロナウイルス感染症では、症状が一週間前後続くことが特徴であるといわれています。

そのため、4日を過ぎても発熱が続くようなケースは、インフルエンザではなくて、新型コロナウイルス感染症を疑うことになります。

また、潜伏期間は最長14日程度あるともされています。

重症例での死亡率は、新型インフルエンザと比べると高いとの報告もなされています。

感染の仕方について

新型コロナウイルスは、物を介する感染と飛沫感染が考えられるといわれています。

物を介する感染は、例えば、感染している人が、鼻をかむなどした場合、ウイルスが手につきますが、この手で、ドアノブなどを触ったりすれば、そこにもウイルスが付着します。このドアノブを他人が触ることで、その人の手にもウイルスがつき、その手で口や鼻、目などを触っていくことで感染するという感染の仕方です。現在のデータによれば、乾燥したプラスチック表面であれば72時間程度はウイルスの感染力があるとも言われます。

飛沫感染は、感染している人が咳やくしゃみをする際に飛び散る飛沫の中にウイルス含まれており、それが他人の口や鼻等に入ることで感染するという感染の仕方です。一般、飛沫感染は2m離れれば感染しないとされています。

特徴を踏まえた予防策

感染の仕方から考えれば、多くの人が触れる物に自分が触れる機会を減らすことや、こまめな消毒作業、人との距離を2m以上保つといったことが有効になってきます。

また、症状が長引くことが特徴とされていることから、1~2日の体調不良はともかく、4日以上体調不良が続く社員がいた場合には、注意しておく必要があります。

潜伏期間も最大14日と長いといわれていますから、仮に感染者が出た場合などは、この期間を目安に、他の従業員の感染を防止していくことが必要となっていくでしょう。

予防策の実例

以上の特徴に鑑みて、様々な予防策が考えられます。中には、実際に町で見たことがあるという予防策もあるかと思います。

政府が言うように、基本的には三つの密(①密閉空間(換気の悪い密閉空間である)、②密集場所(多くの人が密集している)、③密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や発声が行われる))を避けることが肝要です。

以下に述べる全てを併用していなければ安全配慮義務に反する、等とされないでしょうし、その他の予防策もあるでしょうが、自社の社員を守るために、参考にしてみてください。

検温の実施と報告の徹底

新型コロナウイルス感染症の症状は、咳と発熱であるとされています。

毎朝検温し、会社に報告を求めるといった対応が考えられます。

また、発熱がある場合には、上司など決裁権のある人間にまで報告するルートを確立しておくことも重要です。

これをすることで、37.5℃以上の発熱が継続するようであれば、出社を停止する、保健所に相談するなど、素早い初期対応を行うことができるようになります。

これにより、他者への拡散を防ぐなとの感染予防につながります。

マスク着用

咳エチケットの徹底などともいわれていますが、他人と接するときは、マスクを着用するようにしておくことで、飛沫感染予防になります。

飛沫感染を防ぐことはもちろん、物を介する感染は、ウイルスが付着した手で、口や鼻、目を触ることで起きるのですから、口や鼻への接触を防ぐという意味でもマスクは有用です。手を消毒するまで、マスクは原則外さないというようにしておくことで、物を介する感染予防につながります。

この一環か、一部の小売業の店舗では、マスクのみならず、レジ前に透明なフィルムをぶら下げることで客との飛沫感染を防ごうとしているところも見受けられます。

手や、良く触れる場所の消毒

新型コロナウイルス感染症の感染の仕方には、物を介する感染があります。

これは、例えば、感染している人が、鼻をかむなどした場合、ウイルスが手につきますが、この手で、ドアノブなどを触ったりすれば、そこにもウイルスが付着します。このドアノブを他人が触ることで、その人の手にもウイルスがつき、その手で口や鼻、目などを触っていくことで感染するという感染の仕方です。

そのため、従業員の手の消毒を徹底させるということや、人が手を触れる部分をこまめに消毒することで、物を介する感染予防につながります。

人の集まりを避け、移動を減らす

新型コロナウイルス感染症は、無症候又は症状の明確でない者からも感染するとも言われています。そのため、明確に症状が現れていない人からも感染する恐れがあります。

だからこそ、人と人との距離をとること(social distance:社会的距離)が感染予防には重要とされています。

具体的には、対面での会議を減らす、イベント毎は中止しwebでの配信などに切り替えられないか検討する等が考えられます。

また、出張や、出向などは、できる限り控えることをお勧めします。

テレワークの実施

新型コロナウイルス感染症の感染の仕方に照らせば、物を介する感染を予防することで、感染予防をすることができます。すなわち、人と人が接触する機会、人が物に触れる機会、人が触れた物に触れる機会を減らすことで、物を介した感染を予防することができます。

そのため、そもそも従業員を同一の場所に集めないテレワーク・在宅勤務を用いることで、感染予防策を実施することができます。

※テレワークに伴う労務問題は別記事参照

テレワークの態様

テレワークの方法としては、何パターンか考えることができます。

完全にテレワークとする方法と、テレワークを併用するという方法があり得ます。

完全にテレワークしてしまう方法は、わかりやすいです。従業員全てに在宅や所属オフィス外での勤務を命じるということで、物を介した感染(もちろん飛沫感染もですが)を予防することができます。

他方で、テレワークの設備が整っていない会社も多く、設備面から実現ができない問題や、どうしても会社内の設備を用いなければ仕事ができないといった場合も考えれます(郵便対応など)。

その場合には、テレワーク社員と、通常勤務を併用することが考えられます。

2日交替制にするとか、1週間交替制にするなど、シフトをどのように組むかといった問題はありますが、接触する人間を限定することで、物を介した感染や飛沫感染の予防に一定の効果が認められると考えます。

テレワーク併用時の注意点

気を付けたいのは、物を介した感染は、例えばプラスチック表面上であれば72時間の間ウイルスに感染力が残存するとも言われている点です。

単に交代制にしたのみならず、入り口での手の消毒や、ドアノブなど人が良く手を触れるところの消毒作業を徹底することで、シフトが異なる集団の物を介する感染予防に注意しておく必要があります。

完全に人と人の接触(物を介しても。)をなくすテレワークができないのであれば、併せて消毒作業も行うようにしましょう。

感染者が出た場合、事業所は閉鎖すべきか

感染予防策を実施したものの、感染者が生じた場合、事業所を閉鎖すべきかは悩ましい問題です。

これについては、結論から申し上げますと、ケースバイケースと言わざるを得ません。

ただし、消毒作業や、濃厚接触者の待機は必ずすべきである

感染の仕方に物を介する感染があるといわれていることから、感染者が出た場合には、消毒作業が不可欠の対応となります。

仮に消毒作業をしないとすると、他の従業員に対する感染症予防策が不十分であるとして、安全配慮義務に反する可能性が出てくるため、消毒作業中は、新たな物を介する感染を防ぐため、最低限閉鎖せざるを得ません。

また、濃厚接触者については、潜伏期間が最長14日間というデータがあることから、その間は自宅待機を命じることになります。

しかしながら、消毒作業が終わった後、濃厚接触者以外の従業員も出社させず、事業所を閉鎖し続けるべきかどうかは悩ましい問題です。

中小企業であれば、1~2週間の事業所の閉鎖によって、売上がなくなれば、そのまま倒産ということも考えられなくはないからです。

法律上、閉鎖を命じられることがあるのか。

いわゆる感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)によると、第32条において、都道府県知事が建物の立ち入りを制限又は禁止、封鎖することができるとされています。しかしながら、同条は、エボラ出血熱など致死率が非常に高い一類感染症に限定されたものであり、新型コロナウイルスにおいても直ちに適用があるとは言えません。

また緊急事態宣言においても、原則として自粛要請ですから、閉鎖を命じられることはありません。

そのため、法律上、罰則をもって閉鎖を命じられることは、今のところは考え難いです。

もっとも、行政からの強い自粛要請はあり得るでしょうし、それによる事実上の閉鎖をしなければならなくなるといった事態は考えられます。

安全配慮義務の履行としての閉鎖

他方で、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」(労契法5条)とされています。

事業所内から、新型コロナウイルス感染症に罹患した従業員が出たというのに、何らの措置を取らないというのは安全配慮義務に反する可能性があります。

初めにも触れましたが、感染の仕方には物を介する感染もあります。そのため、消毒作業が必要不可欠となるでしょう。

また、完ぺきな消毒作業ができるかはわかりませんから、ウイルスの感染力を低下させるために一定時間以上、事業所の出入りを制限しておいた方が物を介する感染の予防にはつながります(その間も換気はし続けた方がよいでしょう。)。

そういった意味で、全く閉鎖しないということは、安全配慮義務に反するとされるリスクがあります。

なお、潜伏期間中の従業員がいるかもしれませんから、感染者と14日以内に濃厚接触した者がいる場合には閉鎖を解除するとしても、その期間中は出社制限を行う必要があるでしょう。出社させてしまった場合には、消毒の意味も、閉鎖の意味も失ってしまう恐れがあります。

閉鎖すべき期間は?

ウイルスの特徴などを踏まえると、消毒後72時間以上閉鎖し、かつ、濃厚接触者を14日間出勤停止にしたうえで、事業所を閉鎖し続けることが感染予防にとって効果が非常に高いとは言い難いとも考えられます。

そういった意味で、閉鎖、休業の期間は、ケースバイケースということになるでしょう。

埼玉県内で新型コロナウイルス感染症に関する安全配慮義務でお悩みの企業の方は弁護士にご相談ください。

新型コロナウイルス感染症は、世界中に感染が拡大しており、日本においても予断を許さない状況が継続し続けています。感染予防拡大のために、また従業員への安全配慮義務を果たすために、会社として、できることをしていく必要があります。

ただ、事業所の閉鎖や休業に関しては、経営に大打撃を与える可能性もあり、簡単に決断できるものではありません。また、今回は触れていませんが、休業した場合に休業手当を支払うべきかといった賃金に関する問題や、テレワーク導入時の労働時間管理の問題など、様々な労務問題があり、実際の対策には、弁護士など労働法に詳しい専門家の協力は不可欠です。

専門家の協力を得ることで、この困難を乗り越えて、企業活動を継続し、自社の社員を雇用し続けることができるようにしていくことができるはずです。

埼玉県内で新型コロナウイルス感染症に関する安全配慮義務等でお悩みの企業の方は弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

休業した場合の賃金の支払いはどうなるのか。

労働者にとっても、使用者にとっても休業となった場合の賃金の支払いは気にかかるポイントです。

以下では、気になる賃金の支払いについて、まずは原則からお話しいたします。

ノーワークノーペイの原則

賃金というのは、労務の給付の対価として支払われるものですから、労働者が自らの意思によって労働をしなければ労働の対価である賃金を請求することは出来ないのが大原則です。

「使用者の責めに帰すべき事由」による休業

他方で、労働者の意思によらずに休業する場合には、民法の危険負担の原則に立ち返ることになります(民法536条)。

そのため、使用者の都合(責めに帰すべき事由)で休業させる場合には、労働者は賃金を請求することができます。

休業手当について

また、労基法26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない」と規定しています。

休業手当の保障における「責めに帰すべき事由」は、天災事変などの不可抗力に該当しない限りは認められるとされており、労働者の保護を図ったものとされています。

そのため、外部起因性及び防止不可能性の2要件を満たし、民法上は使用者の責めに帰すべき事由に該当しないとしても、その発生原因が使用者の支配領域に近いところから発生したもので、労働者の賃金生活の保障という観点から、使用者に6割の程度で保障させた方がよいとされる場合には使用者には休業手当の支払い義務があるとされています。

新型コロナウイルス感染症に伴う場合は、休業手当の方が問題となることが多い

新型コロナウイルス感染症は、世界的に蔓延しているもので、感染経路がわからない感染者も増えてきている感染症です。会社が適切な感染予防策を取っていたとしても、完全に防ぐことは不可能といわざるを得ません。

そのため、民法上の使用者の責めに帰すべき事由に該当し、賃金の全額を保障すべき休業と判断される可能性は一般的に低いと考えられます。

他方で、休業手当の支払いは、不可抗力による休業の場合以外では支払い義務があるとされています。

厚生労働省の新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)(令和2年4月24日時点版)によれば、「ここでいう不可抗力とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。例えば、自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分検討するなど休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた場合には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当する場合があり、休業手当の支払が必要となることがあります。」とされています。

そのため、仮に新型コロナウイルス感染症によって事業所を閉鎖しなければならなくなったとしても、自宅勤務などの方法によって事業活動を継続し、労働者を業務に従事させる手段を模索しなければ、休業手当の支払い義務があるとされる可能性があります。

具体的な事例ごとの休業手当支払い義務について

以下では、具体的な事例ごとに、休業手当支払い義務の有無についてお話ししたいと思います。

新型コロナウイルスに罹患した社員

自社の社員が、新型コロナウイルス感染症に罹患した場合には、その症状等から出社不可能という場合もありますし、他の従業員への安全配慮義務の観点からも出社させることは出来ないでしょう。

そのため、休業させることになります。

仮に、その労働者に対して都道府県知事が行う就業制限(感染症法)がなされていれば、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はないとされています(厚生労働省QA参照)。

他方で、就業制限がなされていない場合はどうでしょうか。この場合は、厚生労働省のQAでは触れられていません。

ただ、同QA上に述べられる不可抗力の要件からすれば、会社が通常の経営者として最大の注意を尽くしても、なお新型コロナウイルス感染症に従業員が感染し、その在宅勤務などによって就労をさせることが困難であるという場合には、不可抗力に該当し得ると考えられます。

そのため、もちろん個別の事案にはよりますが、使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当せず、休業手当の支払いをする必要はないでしょう。

発熱や咳などの症状がある者

これは新型コロナウイルス感染症かどうか、未だわからず、また濃厚接触を行ったものでもないケースを想定ください。

労働者が、自主的に休業している場合には、通常の病欠と同様に取り扱うことになります(厚生労働省QA参照)。

他方で、会社が一律で休業を命じる場合には、どうでしょうか。

個別の事案ごとに異なりますが、あまりに画一的措置の場合には、「使用者の責めに帰すべき事由」に該当し、休業手当の支払いが必要になる可能性があります。

例えば、微熱や、軽い咳をする程度で、通常であれば労務に従事することが可能な従業員に対して、一律で休業を命じるという場合には、休業手当の支払いが必要になる可能性が高いです。

この場合は、まず在宅勤務が可能かどうか等を検討することが必要になります。

他の労働者に対する安全配慮義務を満たすために、厳しい基準を設定すること自体はよろしいと考えますが、休業させる労働者の保護(賃金面での)も検討しなければなりません。

新型コロナウイルスに罹患した者との濃厚接触者

この場合、他の労働者に対する安全配慮義務の履行等として出勤停止を命じることはよろしいですが、その場合に休業させる(労務に従事させない)かどうかは、個別判断になります。

一般に濃厚接触者という場合には、未だ無症候である者として使われているかと思います。

そのため、労働させることは可能であるケースもあるかと思います。

その労働者に対して、在宅勤務が可能かどうかを検討せずに業務に従事させない場合には休業手当の支払いが必要となる可能性が高いです。

繰り返しとなりますが、在宅勤務の導入について検討しておくことが重要となります。

新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や要請・指示による休業

緊急事態宣言は全国に発令されました。

また、都道府県知事などから、居酒屋などに対しては休業要請もなされています。

緊急事態宣言の発令や、都道府県知事からの休業要請に従って事業場の閉鎖や休業する場合、休業手当の支払いは必要となるのでしょうか。

厚生労働省のQA(令和2年4月24日版)によれば、不可抗力に該当し、休業手当の支払い義務がない場合とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であることの2つの要件を満たす必要があるとしています。

緊急事態宣言や休業要請が、①を満たすことは、厚生労働省のQA上、認められています。

他方で、②を満たすかどうかは、もう一段階検討を要するとしています。

②を満たすためには、使用者として休業を回避するための具体的努力を最大限尽くしていると言える必要があるとしています。

この具体的な努力を尽くしたと言えるか否かについて、以下の様に述べています。

「例えば、

  • 自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分に検討しているか
  • 労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないか

といった事情から判断されます。

したがって、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や、要請や指示を受けて事業を休止し、労働者を休業させる場合であっても、一律に労働基準法に基づく休業手当の支払義務がなくなるものではありません。」

この見解によるのであれば、やはり休業手当の支払い義務の有無を判断するにあたっては、単に休業(事業場を閉鎖)しなければならないというだけではなく、事業場外で労働者に労働をさせることが可能かどうかを検討しなければなりません。

そのため、在宅勤務(リモートワーク)が可能であるかどうかを検討せずに、休業手当を支払わずに休業は出来ません。

事業場を閉鎖、休業する場合であっても、在宅勤務が可能かどうかを検討することを強くお勧めいたします。

新型コロナウイルス感染症に関する休業に伴う賃金、休業手当の支払いでお悩みの方は弁護士のご相談ください。

当然ながら、個別の事案ごとに結論は異なりますが、以上に述べたように、新型コロナウイルス感染症に関する休業をした場合、労働者に賃金を支払うべきか、また休業手当を支払うかどうかは、法的に難しい問題です。

前記した厚生労働省のQAでも、「新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合、欠勤中の賃金の取り扱いについては、労使で十分に話し合っていただき、労使が協力して、労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えていただくようお願いします。」とされているように、自社で働く労働者が不安に思うような休業のさせ方は、会社が、今後も事業活動を継続させていく中で様々な不都合をもたらすでしょう。

ただ、事業活動を停止または停滞させてしまう以上、会社の存続という面からは、気前よく賃金を支払っていくこともまた困難といわざるを得ません。

最終的には、労使の話し合いや、国等からの助成金(雇調金等)を活用することで解決を図っていくべきでしょう。

ただ、その前提となる賃金、休業手当の支払い義務の有無は、専門家の意見を聞いたうえで判断されるべきです。当法人では、労働事件の経験が豊富な弁護士による法律相談や企業内での調整に関する顧問先対応の一環としてお引き受けさせていただいております。

埼玉県内で、新型コロナウイルス感染症に関する休業に伴う賃金、休業手当の支払いでお悩みの方は弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所にご相談ください。

令和2年2月19日(水)、同月26日(水)に、当事務所にて、使用者側弁護士による社会保険労務士様向けシリーズ勉強会「残業代対応―残業代を請求された際の初動対応の実務―」を開催しました。

第1回同様、多くの社会保険労務士の先生方に参加いただくことができ、当初予定から別日も設けて開催させていただきました。

残業代について、実際に請求された際に、弁護士が注意するポイントや流れ、紛争で頻繁に問題となる労働時間や固定残業代などについて、事例や裁判例を交えながら、解説させていただきました。

社会保険労務士の先生方からも、具体的な事例に関する疑問などを多く頂き、盛況のうちに終了することができました。

ただ、同年3月に予定されていた勉強会は、コロナウイルス感染拡大防止のために、延期とさせていただきました。

ご迷惑をおかけし、大変申し訳ありませんが、開催日が確定次第、参加を予定されておられた先生方には改めてご連絡差し上げます。

弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所では、社会保険労務士の先生方に有意義な、弁護士の視点からの労務問題に関する勉強会を今後も開催できるよう、努めて参ります。

ご参加頂きました先生方には、改めて感謝申し上げます。

令和2年2月18日(火)、貸会議室6F(ロクエフ)(大宮駅東口)にて、使用者側弁護士による労務セミナー~“実務”と“事例”に基づき徹底解説~「2020年6月施行パワハラ防止法~法改正に向けて企業が今から備えておくべき具体的対応策~」を開催いたしました。

2時間という短い時間ではありましたが、令和2年6月のパワハラ防止法の施行に向けて、厚生労働省から発表された指針を踏まえて解説させていただきました。

パワハラとはどういった行為が該当するのか、何故防止する必要があるのかといった基礎的なところから、パワハラ防止法及び指針で事業主に求められる防止措置の具体的内容について、実際に社内でパワハラの相談があったときを想定した事例などを基に、検討・説明させていただきました。

弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所では、埼玉県内の企業に有意義な、弁護士の視点からの労務問題に関するセミナーを今後も開催できるよう、努めて参ります。

ご参加頂きました企業の方々には、改めて感謝申し上げます。

健康な働き方には、組織マネジメントが不可欠

労働者が健康に働き続けるためには、組織マネジメントが不可欠です。

如何に労働者にやる気や能力があったとしても、職場内の環境が様々な意味で悪い場合、健康に働き続けることは出来ません。

そのため、労働者に、持続的に健康に働いてもらうためには、組織マネジメントが必要です。

労働時間管理

心身が健康な労働者であっても、長時間労働が続けば体調を崩していくものです。

日本では、無視できないほどの時間外労働がなされていましたが、健康な働き方には、長時間労働の抑制が不可欠です。これを実現するには、労働者の個々人の力だけではなく、組織マネジメントが不可欠です。

働き方改革関連法の施行によって、年次有給休暇取得の義務化や、時間外労働時間の上限規制なども定められましたから、これを機に、長時間労働を抑制できるような組織マネジメントに取り組みましょう。

ハラスメント防止措置

職場内でハラスメント(=いやがらせ)を受けたことで、精神障害を発症したという事案は、平成30年には69件あり、具体的な出来事別の支給決定件数のうち多数を占めています。

労災認定の結果だけを見ても明らかですが、ハラスメントによって、うつ病になってしまうことがあり、ハラスメントがある職場では、持続的に健康に働くことは出来ません。

会社は、職場の各種ハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ等)を防止するように組織マネジメントしていかなければなりません。

2020年6月からはパワハラ防止法も施行されますので、これを機に、ハラスメントが生じない職場環境を整えるような組織マネジメントに取り組んでいくことをお勧めします。

組織マネジメントによって、健康的な働き方を目指されている企業の方は弁護士にご相談ください。

このような組織マネジメントは、企業のトップのリーダーシップや、労働者の意識改革によって進めていくことになりますが、その際に就業規則の整備や、ハラスメント防止の研修の実施等を行うことも不可欠です。

組織内の人事部だけでは足りず、弁護士といった専門家とともに進めていくことをお勧めします。

埼玉県内で、組織マネジメントによる健康的な働き方を目指されている企業の方はぜひ一度弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所にご相談ください。

メンタルヘルスに対する国の施策

我が国の労働者は、現在その半数以上が仕事にストレスを抱えているとも言われています。

メンタルヘルス不調による労災補償の認定だけをみても、増加傾向にあり、メンタルヘルスの防止は、労働者の健康維持には必要不可欠なものといって過言ではありません。

近年では、以下のような法改正・規制によって、メンタルヘルス(心の健康)確保対策を図っています。

ストレスチェックの導入

平成27年12月に施行された労働安全衛生法によって、ストレスチェックが導入されました。

「ストレスは見えません。チェックしましょう。」といった標語で宣伝されましたが、平成27年から、ストレスチェックの制度が導入されました(50人未満の事業場は努力義務)。

これは定期的に労働者のストレス状況を検査することで、検査結果を集団的に分析し、職場改善につなげたり、検査結果を本人に通知することで、自身のストレス状況を把握させ、メンタルヘルス不調を未然に防止できるようにすることに主な狙いがあります。

産業医との面談

また、ストレスチェックの結果を通知された労働者は、希望に応じて医師による面接指導が実施されます。

会社は面接指導の後、医師の意見を聴いた上で、必要な場合には、作業の転換、労働時間の短縮その他の適切な就業上の措置を講じなければならないともされました。

過労死等ゼロ緊急対策による措置

平成28年末には、厚労省の第4回長時間労働削減推進本部において「『過労死等ゼロ』緊急対策」が決定されました。

これによって、⑴ 精神障害に関する労災支給決定が行われた事業場及び企業の本社事業場に対するメンタルヘルス対策の特別指導の実施や、違法な長時間労働が認められる等の事業場に対するメンタルヘルス対策の指導の充実、パワーハラスメントの予防・解決に向けた周知啓発の徹底、長時間労働等によりハイリスクな状況にある労働者を見逃さない取組の徹底などがなされることにもなりました。

労働時間法制の見直し

働き方改革の中で、労働時間法制の見直しがなされました。

これは、メンタルヘルスを防止することも目的の一つです。過重労働の結果、過労自殺などに至るケースがあり、長時間労働の抑制は不可欠とされました。

これによって時間外労働時間には、上限規制が設けられました。

月45時間、年360時間を超える時間外労働は罰則によって規制されます。

臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度としています。

また、1人1年あたり5日間の年次有給休暇の取得が、企業に義務づけられました。

加えて、健康管理のために、管理監督者も含めた労働者の労働時間を客観的に把握するようにも義務づけられました。

パラハラ防止法の制定

パワハラは、今まで法律で定義されていたわけではありませんでした。しかし、2020年6月からは労働施策総合推進法によって、定義され、企業に各種のパワハラ防止措置が義務付けられました。

職場によるハラスメントが原因でうつ病など、メンタルヘルス疾患に至ることは周知の事実です。

このようなハラスメントを防止することで、職場の生産性を高めるとともに、メンタルヘルスを防止しているのです。

メンタルヘルスを防止することにお悩みの企業の方は弁護士にご相談ください。

以上に挙げたものは、近年の法改正のうちの一部です。

労務に関しては時代の移り変わりとともに関係法令や通達などが新設、更新されていきますから、都度都度時代にあわせた対応が必要不可欠です。そこには、弁護士などの専門家の協力を求めることで、企業のリスクを最小化することができます。

埼玉県内で、メンタルヘルスを防止すること等、近年の労働法の改正についてお悩みの企業の方は、ぜひ一度弁護士法人ALG&Associates 埼玉法律事務所にご相談ください。